最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
★コメントを歓迎しております。初めてコメントくださる方は、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。
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「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
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ジム・モリアーティーとジョン・クレー

『忌まわしき~』どころか"His Last Vow"も1周めが終わってないのに、何で今さら第2シリーズ!?って話ですよね、ホントすみません!
でもたぶん第1シリーズにも戻ると思う……ザルもいいとこの元ネタ探しブログ・21世紀探偵です。
別件で原作を読み返していて、あれ、これ書いてたっけ?書いてなかったっけ?と思って一応このカテゴリを見直したらなかったので……(どこかの記事に書いてたらすみません!ジムはまだ『キャラクター』カテゴリでも記事がないので、たぶん書いてないと思うですが!)

ロンドン塔で、ジムが展示されているクラウン・ジュエルを身に着けて、玉座に座っている場面。
この後逮捕されるわけですが、この「高貴な罪人」ぶり、赤髪組合のこの場面を思い出しませんでしたか?

「そんなけがれた手でさわるのはよしてもらいたいね」ジョン・クレーは手錠をはめられながらいった。「君は知るまいが、僕はこれで王室の血をうけている身だからね。僕に何かいうときは、『あなた』とか『どうぞ』とかいうきれいな言葉を使うようにしてもらいたい」
「よろしい」ジョーンズが眼を丸くし、苦笑をうかべていった。「では、恐れいりますが、どうぞ上へおあがりください。馬車を求めて、殿下を警察へご案内申しあげたいと存じます」
「それならよかろう」ジョン・クレーは静かにそういって、われわれ三人に頭をさげておき、ジョーンズに護られてしずしずと歩みさった。



"No rush."(急ぐことはない)と落ち着き払って逮捕されるジムと、よく似てる気がします。

この時ジムはロンドン塔だけでなく、イングランド銀行、ペントンヴィル刑務所のセキュリティも破っています。
現代ではコンピューター管理なのでハッキングという形ですが、銀行破りを開始するための携帯のアイコンに、ジムは「豚さん貯金箱」の絵を使っています(貯金箱が豚さんって、どこの国由来なんだろ)。タップすると金貨が溢れ出すのですが、これはきっと、シティ・エンド・サバーバン銀行の地下にあった3万枚のナポレオン金貨。
それにしてもこの場面、皆が皆お茶してるのが可笑しくてたまらない私。お茶の時間律儀に守りすぎだよ、英国人!
クレーは逃亡の時間を稼ぐために、銀行が休みの週末を狙うのですが、ジムも「泥棒カササギ」ぴったりの時間で犯行を終えるために、ちょっと皆の初動が遅れる時間を狙ったのだったりして。

また、ジムはさまざまな機関に内通者を作っていましたが、『赤髪組合』では依頼人の質屋さんに入り込んだ店員が、地下道を掘っていたわけです。銀行の情報が漏れていることから、銀行上層部にも内通者がいたと考えられます。
前代未聞の大胆な手口で「金庫破り」をやってのけたジョン・クレーとジム、似てないでしょうか。

私は、モリアーティにはどうしても「教授」のイメージがあります。『恐怖の谷』で若いマクドナルド警部が「息子を見守る父親」になぞらえたように、ホームズよりだいぶ歳上な印象。
現代版ジムは、どちらかというとこのジョン・クレーに似ている気がずっとしてたんですが、この場面で決定的になりました。
「小柄ですが肉付きがよくて、万事に抜け目のない」「もう三十はすぎていますのに、髭というものが一本もありません」「つるつる顔」「クッキリした子供っぽい顔」「女のような白い手」を持っているというクレーの容姿もジムっぽい。耳にピアスホールがあるのもクレーの特徴なんですが、ジムはどうだったかしら。

ホームズによると、犯罪者としてのクレーの人物像はこんな感じ。

「ジョン・クレーは殺人犯で窃盗犯で、偽金使いでかつ偽造犯人ですよ、メリーウェザーさん。まだ若い男ですが、悪事にかけては怖るべき腕をもったやつです。ロンドンに悪人は多いですが、たとえ他のやつは全部取り逃がしても、あいつだけはぜひ押えてやりたいと思っているくらいなんです。それほどこのジョン・クレーというやつは若くてすごいのです。
祖父は王族公爵で、彼自身もイートンの貴族学校やオックスフォード大学に学んだ男です。手先もよく動けば、頭も鋭くて、いたるところで痕跡は見うけるけれど、なかなか所在を知らせません。たとえば、今週スコットランドでどろぼうを働いたと思うと、来週はもうコーンウォールに現われて、孤児院建設をたねに金を集めているというやつです。私は多年、どうかしてこの男を捕えてやりたいとねらってきましたが、まだその正体を見たこともないという有様なのです」


大絶賛じゃないですか!……と言ったら語弊がありますが、ホームズにここまで言わせる犯罪者もなかなかいないんじゃないでしょうか。
あと、ジムにしてはちょっとフットワーク良すぎか。ジムが自ら動いたのって、この時が初めてですもんね。モリアーティが犯罪界のナポレオンなら、この人は犯罪のデパートっていう感じ。

『赤髪組合』でホームズは見事にクレーを捕らえますが、その前に「二、三回小ぜりあいをやったことがある」らしい。礼を言うメリーウェザー頭取に「私はこのジョン・クレーには、返してやらなければならないちょっとした借りがあったのです。きょうこそその借りをかえしてやったわけです。(後略)」と答えています。これは、ジムがシャーロックに対して繰り返す"I owe you"(君には借りがある)という台詞に呼応しているのではないでしょうか。

それにしてもジョン・クレーがこれっきり出てこないの、もったいないですよね。いいキャラなのに。
どうにか刑務所から出て、暗躍してたりしたら面白いんですが。
クレーがトンネルを掘る肉体労働なんてやらなそうなこと、赤髪組合のトリックには協力者が必要なことから、この事件は組織的な犯罪だと見る研究者もいるそうです(Wiki『赤毛組合』
逮捕されたクレイが余裕綽々なのにも、何か裏がありそうですよね。
グラナダ版ではこの事件、モリアーティーが裏で糸を引いてたことになってました。やっぱり『赤髪組合』は、犯罪王にふさわしいお話なんだと思います。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)

コメントをくださる方へ

まず申し上げたいのは、私は記事にコメントをいただけるとすご~~く嬉しいということです。
ブログを開設した経験のある方には、わかっていただけるのではないでしょうか。
誰かが自分の考えを読んで、何かを考え、言葉をかけてくれる幸せ。
ネットで発言するのにはそれなりの手間と勇気が必要ですし、ブログはSNSに比べて敷居が高いと思います。
それだけに、コメントをくださる方には感謝しております。おそらく、くださる方が想像していらっしゃる何倍も。
コメント通知があれば一日張り切って暮らせると言っても、決して過言ではありません。

幸いなことに、ブログ開設から今までの5年間、「これは嫌だな、非承認にしよう」と思うようなコメントをいただいたことは一度もありません。(万が一非承認になった方がいらっしゃったら、それは単なる承認忘れです!)
まあ読者が少ないからと言ってしまえばそれまでなんですが、こんなご時世に大変稀有でありがたいことだと思います。

それだけに、ローカルルールめいたものを作ることにはずっと抵抗がありましたが、何も書かずにおくと、結局コメントをくださる方にご迷惑をおかけしてしまうことになるので、このコーナーを作りました。

外部サイトへのリンクについて
明らかにリンクフリーであるサイト「以外」の外部サイトへのリンクを貼ったコメントをくださった方には、とりあえず非承認とし、コメント主さまとご連絡がつけば、ご相談してリンクを外させていただく場合があります。
特に、リンク先が個人で運営なさっているブログである場合、無断リンクは避けたいのですが、私が自分の意志でリンクしたわけではないのに御挨拶にあがるのも、互いに微妙な気持ちになるんじゃないかなあ、と思います。
また、ブログの性質上、内容が他のブログとかぶってしまい、先方に不快な思いをさせてしまうことも多々あるかと思うのですが、コメントでリンクが貼られたサイトさんの更新をすべてチェックするのは無理がありますので、基本的に個人サイトさんへの直リンクは避けていただければありがたいです。
コメントをくださった方が、ご自分のサイトへのリンクを貼られるのはもちろん構いません。その場合は、内容がかぶったら直接私に教えてやってください!

コメントの内容について
基本的にブログのコメント欄はmixiやtwitterなどのSNSとは違い、記事に対するレスを書く場所ですが、私は雑談的な書き込みも楽しく拝見しています。
管理人自身、記事の内容や、ヘタすると『SHERLOCK』自体から大きく逸れることもしばしばですが、このブログはそういうもんだと思っていただければありがたいです。

ただ、管理人も歳を重ねて色々と事情が変わり、実生活が多忙になってきました。
今までコメントには基本全レスしてきたつもりですが、今後は、私がご返信する必要があまりなさそうだと判断した場合は、お返しする内容を考える時間を、記事を書く時間や他のことをする時間にまわさせていただきたいと思います。
もちろん、私の書いた記事の内容に対するコメントには、張り切って、そして責任を持ってお返事します。しかし、そうでない場合は「おもしろいな。ありがたいな」と思うだけで終わってしまう場合もあるかもしれません。失礼ながら、ご容赦いただければ幸いです。
まとめると、このブログのコメント欄はSNS的なご利用をしていただいて構いませんが、その場合は管理人にもSNS的な対応(反応したりしなかったりすること)をお許しいただきたいということです。

プライバシーについて
書き込んでくださる方や管理人の、市町村レベルでの居住地、オフラインでの交友関係が容易に推測できてしまうコメントは、承認しないことがあります。

これからも、状況によってこの記事の内容を足し引きしていこうと思います。
また、これらの「ルール」は私のブログに関してだけのことですので、他のブログさんに書き込まれる際は、それぞれの管理人さんのお考えを尊重してさしあげてください。

コメントを書き込んでくださる方も、そうでない方も、このブログにお付き合いくださって本当にありがとうございます。
更新ペースはだいぶ落ちていますが、今後も同じテーマで細々と続けていくつもりです。
広告が出ても、コメントや閲覧数がゼロになったとしても、私が無事に生きてる限りはいつでもお待ちしております。
もしよろしければ、これからも、よろしくお願い致します。

2016年9月 
管理人 ナツミ

シャーロックとジョンのディオゲネス・クラブ

さあ、みんな大好きディオゲネス・クラブのお時間ですよ!
もちろん私も大好きです!が、現代版の方(第2シリーズ3話)で出てきた時、マイクロフトの言っていることがよくわからなくて、そこがわからない限りは原作と現代版の比較も無理だろう……と、長い間アンタッチャブル案件でした(※わからないのもアンタッチャブルなのも私だけです)。
しかしそこに『シャーロックの脳内19世紀版』まで登場したとなるとですよ、もう恥をしのんで、一回記事にしとかないと!放置したらいよいよ闇に葬られていくじゃないですか!私の中だけで!

まず、ディオゲネス・クラブの所在地ですが、マイクロフトの自宅があるペルメル街(Pall mall street)を「セント・ジェームズ寺院の方から歩いていった」とあります。

「シャーロック・ホームズはカールトン(The Carlton)からちょっと離れたとある家の戸口に立って、口をきいてはいけないよと私に注意をしてからホールへはいっていった。硝子の羽目板ごしに、ひろい贅沢な部屋がちらりと見えた。そこにはかなりの頭数にのぼる人たちが、おのおの好きなところに陣どって、新聞など読んでいる。ホームズはペルメル街に面した小部屋へ私をつれこんでおいて、ひとりでどっかへ行ってしまったが、すぐに、一見して兄弟と思われる人をつれて帰ってきた。」


Google mapのThe London of Sherlock Holmesによると、ここらへんみたいです。



「ここらへん」って、マークが密集してて分かりづらい!真ん中より少し左下辺りに見つかりましたか?はい見つかりましたね!(←つい最近行ってきたので、いつになく強気ですよ!)
ペルメル街(ポールモールって言ったほうが通じそうなんですが)を東に歩いて行くと、クリミア戦争の記念碑があるウォータールー・プレイス。
ディオゲネス・クラブの所在を探るには"The Carlton"の位置が決め手になるはずなのですが、現代版でのディオゲネス・クラブの場面は、ウォータールー・プレイスからペルメル街を挟んで南のCarlton House Terraceで撮影されたそうです。元々セントジェームズ宮殿の一部で、今も王室所有だとか。その偉大な歴史を語ってたらきりがないので割愛しますが、もうここ、貴族やら政治家やら、V.I.P.ばっかり住んでたんですね。ホームズの登場人物では、『プライオリ学校』のホールダーネス公爵がここの住人でした。

そして、さまざまな公的機関も入ってる。Wikiによると、MI6の一部もここにあったんですね。だから、ビリー・ワイルダーの映画"The Private Life of Sherlock Holmes"の「ディオゲネスクラブ=シークレットサービスの施設」という設定を"SHERLOCK"も踏襲している(参考:Wiki "Diogenes Club")と、建物が語っているということになるのでしょうか。

私がずっとひっかかってたマイクロフトの台詞はこのへんです。(第2シリーズ3話より)

”Tradition, John, our traditions define us.”
”So total silence is traditional, is it?You can't even say pass the sugar?”
"Three-quarters of the diplomatic service and half the government front bench all sharing one tea trolley, i
t's for the best, believe me. They don't want a repeat of... 1972."
「伝統だよ ジョン。ここでは伝統が何にも勝る」
「完全な沈黙が伝統ってことですか?『砂糖をとって』も言えないの?」
「外交官の4分の3と政府の幹部の半分がひとつのワゴンからお茶を飲む。それが一番だ。 そうだろう?皆繰り返したくないんだ…1972年を」(拙訳)



「1972年」が「血の日曜日事件」を意味しているのだ、ということは(調べたし人にも聞きまくったので)わかりますし、負の歴史を繰り返さないために、横のつながりを持つのもわかる。ただ、それと「沈黙の伝統」がどう繋がるのか、ずっとわからなかったのです。
原作でははこう説明されていましたよね。

「どうもそんなクラブは聞き覚えがないね」
「それもそのはずだよ。内気とか人間ぎらいとかが原因で、人なかへ出たがらない連中が、ロンドンにはずいぶんいるからね。それかといって、坐り心地のいいいすや、新刊の雑誌類がまんざらきらいなわけではない。こういう人たちの便宜のためディオゲネス・クラブができたわけだが、いまではロンドン中の社交ぎらいの男たちを大半網羅している。クラブ員はおたがいにほかのクラブ員に絶対関心をもってはいけないし、外来者室以外では、どんな事情があっても談話することを許されない。もしこの禁を犯し、委員会の注意をうけること三回におよべば、話をした男は除名処分になる。兄はこのクラブの創立者の一人だが、実見して知っているけれど、なかなか感じのよいところだよ」



まあようするに、「社交嫌いの人のための社交しないクラブ」だから「沈黙する伝統」があるってことですよね。
この時点でのホームズは、マイクロフトの仕事を「数字に対する特殊な才能があるので、政府のある商の会計簿の検査を引き受けている」と説明していますが、後年の『ブルース・パティントン設計書』ではこう変わります。

「あのころは君というものをよく知らなかったからね。国家の大事を語るには慎重を要する。兄が政府のもとで働いていると考えるのは当っている。だがある意味では、兄は政府そのものなんだといっても、まちがいではない」
「政府そのものだって?」
「驚くだろうと思った。マイクロフトは年俸四百五十ポンドの下級官吏に甘んじ、どんな意味でも野心なんかもたず、名誉も肩書も望みはしないが、それでいて国家に欠くことのできない人物なのだ」
「ほう、どんなふうに?」
「そうさね、まずその地位が特殊なものだ。自分で作りあげたものだが、前例もなければ、おそらく今後も踏襲する人は現われないだろう。頭がじつに整然としていて、事実を記憶する力にいたっては当代その右に出るものはいない。同じ大きな能力を僕は犯罪の捜査に向けているが、兄はこの特殊な仕事に注いでいるのだ。
各省で決定したことは、すべて兄のところに回付されてくる。中央交換局というか手形交換所というか、均衡を保つところになっているのだね。ほかのものもすべて専門家ばかりだが、兄の専門は全知というところにある。たとえばいま、ある大臣が海軍、インド、カナダ、あるいは金銀両貨複本位制の問題に関する知識を必要とするとしよう。もちろんこの大臣は各省から個々の問題についての報告なり助言なりは得られるが、そいつを集中的に報告し、即座におのおのの関連を指摘し得るのはマイクロフトあるのみなんだ。
そこでみなは、手っ取早くもあるし便利なので兄を利用するようになった。いまではなくてはならない人物になっている。兄の偉大なる頭脳のなかには、あらゆる問題が整理分類されていて、すぐに取り出せるようになっている。マイクロフトの一言が国家の政策を決定したことが幾度だか知れない。兄はそこに生命をうちこんでいるのだ。決してほかのことは考えない。ただどうかして僕がつまらない事件の相談でも持ち込んだときだけは、知力の鍛錬という意味で、その節を曲げるくらいのものだね。
そのジュピターがきょうは下界に降りてくるというのだ。いったい何を意味するのだろうね?カドガン・ウェストって何者だろう?マイクロフトとどう関係があるのだろう?」



『ギリシャ語通訳』と『ブルース・パティントン~』を読み比べると、「マイクロフトの設定、ずいぶん『盛った』な……」と思っちゃいます。「優秀なのに怠惰な変わり者」という印象だったのが、「影の英国政府」にまでなってますもんね。
マイクロフトはディオゲネス・クラブの創立者の一人でもあります。ホームズのこの台詞は、マイクロフト本人のみだけでなく、クラブの役割をも説明しているのかもしれません。
マイクロフトを中心として、政府幹部や外交官が機密事項を持ち込みつつ、交流を図る。それがディオゲネス・クラブの目的だとすれば、「決して口を開かない」「互いに関心を持ってはいけない」伝統には重い意味があり、「社交嫌いのためのクラブ」は表向きの姿ということになります。裁判所で働いてたというメラスさんも、『たまたまご近所に住んでるスーパー通訳さん』ではなくて、クラブに出入りすべくマイクロフトの保護下に置かれてたと考えるほうが自然ですね。
まあ、そうは言ってもマイクロフトも弟も立派に社交嫌いだろうし、プレッシャーの大きい仕事をしている人たちにとっては「フツーに居心地がいい」側面もありますよね。ディオゲネス・クラブを漫画喫茶やネットカフェに例える人がよくいますが、賛成です。

そんなマイクロフトとディオゲネス・クラブですが、現代版ではジョンの目を通して描かれ、『忌まわしき~』では19世紀の描写全体がシャーロックの頭の中の出来事ですから、当然シャーロックの視点で描かれるのが面白いと思います。
つまり、二人が考える「マイクロフトその人」≒「英国政府そのもの」の本質が、そこにあらわれているのではないでしょうか。

ジョンは、ATMからお金を下ろそうとして、おなじみの車に拉致されてディオゲネス・クラブに連れて行かれます(もはや抵抗なし)。
ジョンはこの時が初めての来訪だったのでしょう。「伝統」を知らないので、わけがわからず大声で質問をしてしまい、スタッフらしき人に捕まってしまいます。【追記:2016.10.22】「シャーロック・ホームズ完全解析読本」(宝島社)によると、ジョンの大声もちゃんと「3回目」までは見逃されているそうです。すごい!ドラマも気付かれた方も、素晴らしいこまやかさ!
当然クラブの「伝統」には批判的な態度。その印象は、弟・シャーロックの危機だというのに本人に接触せず、まわりくどい手順を踏もうとするマイクロフトへの非難につながります。
ただ、マイクロフトを心の底から疎んじているようには見えないですよね。
"SHERLOCK"では、原作では描かれなかった「ジョンとマイクロフトがシャーロック抜きで会う場面」が何度も繰り返されるのですが、それによって、マイクロフトの兄としての心配や苦悩を、視聴者とジョンは感じ取ることができる。マイクロフトは傲岸不遜ですが、決してそれだけの人のようには描かれていません。だから、ジョンがマイクロフトに向ける目には批判や非難だけではなく、同情というか共感というか、ある種の親愛の情が感じられます。

知識も実体験も乏しいので曖昧な言い方になってしまうのですが、時々「愛国心」や「紳士たるもの」なんて表現が持ちだされた原作に比べ、現代の若者、言ってしまえば「庶民」の、「祖国」に対する思いに通じるものがあるのかも、って言ったら斜め上に考えすぎでしょうか。ジョンがマイクロフトに対する時の、苛立ってるような諦めてるような、信じてるような信じてないような、頼ってるような頼られてるような、ビビッドさのない淡い表情が、私にとってはとても興味深かったりします。

シャーロックが見た19世紀のディオゲネス・クラブは、大変優雅な空間ではありますが、手話(という、使わない人にとっては非日常的な手段)でコミュニケーションをとり、それがわからなければコミュニケーションが成り立たない世界。
「談話室以外では声を出せない」という状況から考えていくとそうなるのかもしれませんが、ワトスンが手話で滑稽なことを言ってしまう場面では、クラブの排他性が強調されていると言ってよいと思います。
その中心であるマイクロフトは、動くのが困難なほどに肥え太っていて、自ら死へのカウントダウンをしながら、なおも貪欲に食べ物に手を伸ばします。月並みな解釈ではありますが、マイクロフトの体型は「大英帝国」を表しているのでしょう。ここでのワトスンは、当時の男たちの代表として、頑迷さや偏見の多さが強調されます。

カリカチュアライズされてもそこはマイクロフトなので、シャーロックの考えることを逐一理解し、さらに導く役割を担ってもいる。シャーロックにとってのジョンの導き方とマイクロフトの導き方の違いが比べられるのも、この作品の面白いところじゃないかと思います。
(関係ないんですけど、マイクロフトの余命『2年11ヵ月4日」って何の数字からきてるんだろう。 『緋色の研究』のワトスンの一日あたりの収入『11シリング6ペンス』でしょうか。11しか合ってないから違うかな)

ところで、ご存知かとは思いますが、ディオゲネス・クラブの名は古代ギリシャの哲学者から取られています。
Wikipedia 「ディオゲネス(犬儒学派)」
私には哲学の難しそうな用語は全然わかんないので、ついヘンタ……変人エピソードばっかり拾っちゃうんですが、『ギリシャ語通訳』を一読した限りでは、ディオゲネス・クラブの命名はディオゲネスの社会性のなさというか、世俗を超越してるというか、人を食ったところに関連するような気がしていました。そもそもクラブって社交のためにあるのだろうに、社交しないクラブっていうのがもう、ディオゲネスのシニシズムそのものですよね。
ただ、『ブルース~』での再登場に際して、ドイルはマイクロフトの設定を「盛った」と書きましたけれど、ディオゲネスとアレクサンダー大王のエピソードや、海賊に奴隷として売られた時の台詞なんかを読むと、初めから「影の為政者」にふさわしい名前を与えられていたのかもしれない、と思えてきます。

そんなこんなで、整理すると

・ディオゲネス・クラブには二つの顔がある。『ギリシャ語通訳』で語られた『社交嫌いのためのクラブ』としての顔と、『ブルース・パティントン計画書』で説明されたマイクロフトの特殊な業務に関わる顔。
・ディオゲネス・クラブは、「変わり者」マイクロフトその人のカリカチュアであり、それは「英国政府」のカリカチュアでもある。

という感じでしょうか。目新しい結論でもなくて恐縮ですが……

おまけとして、この場面で気づいた原作ネタをすこし。

・この場面には『ギリシャ語通訳』でのディオゲネス・クラブの場面からそのまま引用されている台詞がいくつかありますが、マイクロフト登場時のi>"To anyone who wishes to study mankind, this is the spot."という台詞もそのひとつです。原作ではホームズ兄弟が張り出し窓からペルメル街を見下ろしながら、通りかかった男について推理合戦を繰り広げます。
そこで男の子どもの数が云々されるのですが、『忌まわしき~』ではそれが「マイクロフトの寿命の年数」のやりとりに変換されているのが、皮肉な感じで面白い。

「初めてお目にかかります」とマイクロフトはアザラシのひれのように平たくて幅の広い手を出して、「あなたがシャーロックの記録を発表されるようになってから、私はあちこちでシャーロックの評判を聞かされますよ。(後略)」
このマイクロフトの「アザラシのひれのような手」、よくできていますよね。特殊メイクすごい!

・『ブルース・パティントン計画書』で、ホームズは自宅と職場とクラブ以外の場所に行かないマイクロフトを「決して軌道をはずれない(なんと、221Bを訪れたのも『ギリシャ語通訳』以来。みっちょん様おすすめのフォルソム年表によれば、7年ぶり!)惑星」に例えています。ホームズが「カドガン・ウェストって誰?」状態なのに対し、新聞を読んでいたワトスンはすぐ反応しましたから、珍しく「ホームズのみが事情に疎い」状態です。マイクロフトの登場にホームズが苦手とする天体の話題が絡んでいたことは、これらの原作エピソードにも第1シリーズ3話”The Great Game"にも、違和感なくつながっています。(参考記事『ホームズと宇宙』)

(原作からの引用はすべて延原謙訳)

ホームズと宇宙

『忌まわしき花嫁』の中で、ホームズは「黄道傾斜角」にずいぶんこだわってましたね。

ホームズも現代版のシャーロックも、知識量はすごいのに、本人が必要ないと判断した分野にはまったく興味を示しません。
"The Great Game"で、シャーロックは「太陽系のことを知らない」件でジョンにドン引きされてました。

「だって太陽系の知識ぐらい!」
「くそ!それが何だっていうんだ! 僕らが太陽の周りを廻ろうと、月の周りを廻ろうと、テディベアみたいに庭を廻ろうと、何の違いもない!」(拙訳)


原作でも、『緋色の研究』でワトスンドン引き。

だがそんなのはまだよいとして、偶然のことから、彼が地動説や太陽系組織をまったく知っていないのを発見したとき、私の驚きは頂点に達した。いやしくもこの十九世紀の教養ある人物で、地球が太陽の周囲を公転しているという事実を知らぬものがあろうとは、あまりの異常さに私はほとんど信じがたくさえあった。
(中略)
「だって太陽系の知識くらい……」と私は抗議した。
「僕にとってそんなものがなんになるものか!」彼はせきこんで私の言葉をおさえた。「君は地球が太陽の周囲を回っているというが、たとえ地球が月の周囲を回転しているとしても、そんなことで僕の生活や僕の仕事に、なんの変化もおこらないんだからね」



あまりにホームズの知識が偏っているので、ワトスンはリストまで作っちゃってます。

一、文学の知識---ゼロ
二、哲学の知識---ゼロ
三、天文学の知識---ゼロ
四、政治学の知識---きわめて薄弱
(以下略)


ここに「天文学の知識ゼロ」とあるのに、『ギリシャ語通訳』では、太陽黄道傾斜角についてワトスンと話す場面があるのです。

ある夏のこと、午後のお茶のあとで、話はゴルフ・クラブのことから、黄道の傾斜度変化の原因におよび、ついには隔世遺伝と遺伝的特性の問題にとぶといった具合で、いたってとりとめないものだった。
ある人物に与えられた特別の才能というものが、どの程度その祖先によるものか、またその人の少年時代のしつけによるものかというのが、論点となった。



ここから兄のマイクロフトの話になり、二人はディオゲネス・クラブに向かいます。記念すべき、マイクロフト初登場の場面ですね。
それにしても、『緋色の研究』の時点でホームズの天文学の知識は本当にゼロだったのか。

1.ホームズには天体の知識があったが、そのことをワトスンに隠していた
2.この時点でのホームズは、本当に天文学のことを知らなかった(あるいは、SHERLOCK風に言うと『ディスクの容量を空けるためにデータを消去していた』)。その後、必要に応じて勉強しなおした


この2つのうちのどちらかだとしたら、私は1じゃないかと思っていました。中学生くらいにはよくいますからね、殊更常識はずれなところを見せつけて、友達を驚かせようとする子が……。それに、「文学の知識ゼロ」とワトスンに断じられてますが、後にホームズはさまざまな文学作品の引用をします。(過去記事:『引用と矛盾』)

しかし、『SHERLOCK』では一貫して2のスタンスを取るようです。
"The Great Game"では、シャーロックが「知らない」と言っていたはずの天体の知識を使って人質の子どもを救うので、私は「ギリシャ語通訳だ!」と思ったのですが、よく考えれば直前のプラネタリウムの場面で「インプット」が行われているんですよね。
(原作同様、もともと知っていたのか、プラネタリウムで学んだから事件解決できたのか、はっきりさせないところが作り手の巧さで、シャーロックというキャラクターに奥行きを与えているんだとも思うのですが)

そして、『忌まわしき花嫁』。(前から謝ろうと思ってたのですが、サブタイトルが日英混ざっててすみません!『忌まわしき花嫁』だけは日本語での公開が早かったから、日本語でインプットされちゃってるもので……)
こちらでは、冒頭で話題に登った「マナーハウスの事件」が、実は天文学絡みだったということになってます。
この「マナーハウスの事件」も『ギリシャ語通訳』から。原作とほとんど同じ会話が繰り返されます。

"By the way, Sherlock, I expected to see you round last week to consult me over that Manor House case. I thought you might be a little out of your depth."
“No, I solved it,” said my friend, smiling.
“It was Adams, of course.”
“Yes, it was Adams.”

「ところでシャーロック、先週は例のメーナ事件で僕のところに相談にくるかと思っていたが、何しろあれは、お前にはすこし荷がかちすぎているからな」
「いや、あれはもう解決をつけましたよ」ホームズはにこにこしている。
「あれはやっぱりアダムズだったろうね」
「ええ、アダムズでした」



原作では、アダムズについてはこれ以上は語られません。
『忌まわしき花嫁』では、このアダムズが王立天文学会に黄道傾斜角についての論文を書いたところ、もっと優れた論文を読んでしまい、嫉妬に駆られて殺してしまったということになってます。

(『忌まわしき花嫁』の)ホームズが黄道傾斜角の論文を読んでいるのは事件解決後、レストレードが来ていた時でしたから、『マナーハウスの事件』では、シャーロックやホームズの言うとおり、天体の知識は「仕事」自体には必要なかったのかもしれません。
しかし、ホームズは「もっと賢い男(ワトスン談)」であるマイクロフトに「理解できた」と言いたいがために、論文を読みふけります。そんなホームズに、マイクロフトは

"It is no easy thing for a great mind to contemplate a still greater one."
「偉大な頭脳にとって、さらに偉大な頭脳に向き合うのは簡単なことじゃない(拙訳)」


と突きつけます。

オチがわかってから見れば、このマイクロフトもまた、シャーロックの頭のなかのマイクロフトです(『英国政府そのもの』だから、英国が肥え太ってる時代はマイクロフトも巨大なんでしょうか)。
シャーロックが取っ組み合わなければならない、「自分よりも優れたもの」って何なのでしょうね。
本人が死んでいるにしても、胸に巣食う「ジム・モリアーティの亡霊」が正解といえば正解なのかもしれない。
でも、この場面でのマイクロフトの文脈から言うと、それはシャーロックが深く理解し得ない「女性」かもしれないし、あるいは自分より優れたものに「殺人的な嫉妬」を抱かなければならない、業のようなものが真の敵なのかもしれない。
作品が深いのか、私が勝手に庭をぐるぐる回っているだけなのかわからないのですけど、これだけ視聴者の妄想を掻き立てるような台詞を畳み掛けてくる『SHERLOCK』って、やっぱり「偉大」だな~、と思わずにいられません。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)


メイドとワトスン

ちょっと(?)生意気なメイドとワトスンのやりとりが可愛らしい……

ベルを鳴らしてもなかなかやってこないメイドにしびれを切らして、懐中時計を取り出して時間をチェックするワトスン。
この懐中時計は、『四つの署名』に出てきた、ワトスンのお父さん→お兄さん→ワトスン、と譲られてきた品ではないでしょうか。

「ちがったら訂正してもらうとして、この時計は君のお父さんから兄さんに伝わっていたものだと思う」
「裏にH.Wと彫ってあるからだろう?」
「そうさ。Wは君の姓だ。制作日付は五十年ばかりまえで、彫り込んだ頭文字もおなじくらい古くなっている。つまりこれは、われわれの親の代の代物なんだ。貴重品というものは親から長男にゆずられるのが普通で、その長男は父親とおなじ名をあたえられていることが多い。君のお父さんはたしか、だいぶ前に亡くなったとか聞いている。だからこの時計は、君のいちばん上の兄さんが持っていたのだ」



『ピンク色の研究』では、妹※・ハリエットからジョンがもらったスマートフォンになっていました。(※上記のような経緯があったので私は『姉』と思い込んでいましたが、SHERLOCK CONでハリーは妹と判明したようです)

さて、ワトスンに叱られてしまうメイドさん。

"The fires are rarely lit, there is dust everywhere and you almost destroyed my boots scraping the mud off them. If it wasn't my wife's business to deal with the staff, I would talk to you myself."
「暖炉にはめったに火を入れてないし、そこら中ほこりだらけ。靴の泥を掻き落とそうとして傷だらけにした。
もしこれが妻の領分じゃなければ、僕が直接言ってやりたいくらいだ」(拙訳)


このメイドさん、ちゃんと原作に出てきます。

"(前略)As to Mary Jane, she is incorrigible, and my wife has given her notice; but there, again, I fail to see how you work it out.”
「女中のメアリー・ジェーンなら、こいつは何とも始末に終えない女でね、たまりかねて家内が、お払い箱の予告を申し渡したが、それにしてもどうしてそんなことまでわかるんだろう?」


ホームズがワトスンの靴にキズがついているのを見て、「靴底の縁にこびりついたどろをかきおとそうとして、そそっかしい者がつけた疵」と推理したわけです。
家事一切を取り仕切るのは女主人の仕事で、いかにメイドが生意気でも、ワトスンはクビを言い渡す立場にはないのですね。
原作を読んだ時は「ワトスン同様、メアリも彼女に手を焼いている」と思い込んでいましたが、本当に、この後すぐクビになったのかしら。
このお話を観て、実はこのメイドさん、意外にメアリと仲良しだったのかもしれないなあ、なんて想像してしまいました。
家庭教師時代にフォレスタ夫人に可愛がられていたメアリのことですもの、たとえ家事の腕前に問題があっても、彼女(メアリー・ジェーン)が賢い子で話が面白かったりしたら……
もっとも家庭教師と雑役女中では違いますから、原作ではその可能性は低いですけれど、このドラマなら、ひょっとしたらそういうこともあるような気がします。

また、ワトスンに"Are you incapable of boiling an egg?!(君は卵をゆでることもできないのか)"と言われてしまったり、電報を渡し忘れた言い訳として「本を読んでいた」と返すくだりもありますが、本に夢中で仕事を疎かにしてしまうのは、実は221Bのコックさんです。

「君を煩わすほどのこともないが、まあ新しいコックがわれわれのために作ってくれた二個の固ゆで卵を君が平げたら、ディスカッションをやってもいい。どうもこのゆで加減ときたら、きのうホールのテーブルで見た”家庭雑誌”と関係がないでもないらしい。卵をゆでるというだけのささいなことでも、時間の経過に気をくばるという注意力を必要とするんだね。あの結構な雑誌の恋愛小説を読みふけっていては成立しないわけだ」(『ソア橋』)



ちなみに、原文にあたると「結構な家庭雑誌」とは"The Family Herald"。 よくこの頃の小説の脚注に出てくる。大衆的な週刊誌って感じなんだと思います。The Strand Magazine との違いはどんな感じなんでしょう。メイドさんがストランド誌を読んでるのって意外なのかな?文藝春秋をギャルが読んでるみたいな……?わ、私でもわかるようなご教示、お待ちしております!

『緋色の研究』の頃は、ハドスンさんともう一人のメイドさんの描写しかないので、ペイジのビリー少年やコックさんは後年雇い入れられたのでしょう。ホームズの家賃払いが良くなったのと、ハドスンさんがお歳を召していったのと、両方の理由からなのでしょうね。

メイドさん側の事情も考慮すると、この頃は大変な人手不足だったようなんです。
この頃、使用人を雇うのはステイタスシンボルのひとつでした。上流階級はもちろんですが、中産階級の家庭に「一人でも使用人を置いていれば、我が家もひとかどの家である」という意識があって、メイドの需要は大変大きかったようです。
ドラマ『ダウントン・アビー』や篠田真由美先生の『レディ・ヴィクトリア』を鑑賞するとよくわかるのですが、大きなお屋敷ではメイドの仕事は細分化されているのに対して、それほどでもない家庭では、膨大な家事をすべて一人のメイドがやらなくてはなりません。
最近の表現で言えば「ブラック」もいいところ。産業革命が進んだことによって、工場などでも働き手の需要はある。
要するに、売り手市場だったのですね。こうした背景を考え合わせれば、彼女のワトスンへの態度にも納得がいきます。

……まあ、マーティンワトスンにもちょっと隙があるというか、単に「上司として言いやすそう」なのも、2世紀後とはいえ同じ労働者として、共感できるんですけどね。

ホームズからワトスンへの電報は、『ピンク色の研究』でのメールと同じ。おなじみのアレ、ですね。

DR. JOHN WATSON 
COME AT ONCE IF CONVENIENT.
IF INCONVENIENT, COME ALL THE SAME.
HOLMES

「都合ヨケレバコイ、ワルクテモコイ(『這う男』)」


原作では差出人がS.H.となってます。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスンがより好きです。

2017年エイプリル・フールお片付けしました。お付き合いありがとうございました!片付けきれてないところがあったらお知らせいただければありがたいです。

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