最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
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教えて、ワトスン君

ひとつ前の記事でホームズの悪口を言ってしまったのでフォローしよう、というわけではないのですが、自負心が強い一方で、自らの頭の良さに溺れない、というのが彼の大きな美点の一つだと思います。

漠然と「頭がいい」と言っても、頭の回転が速い、思考力がある、知識をたくさん持っている、などとさまざまな要素がありますが、ホームズは自分の仕事に必要な力とそうでないものを冷静に分類していて、「知識」に関しては非常に割り切った考え方をしています。その結果、ホームズの知識は物凄く偏っています。「緋色の研究」では、知り合ったばかりのワトスンが面白がってリストを作ったくらいです。
たとえばこんな感じです。

シャーロック・ホームズの特異点

一、文学の知識―――――― ゼロ。
二、哲学の知識―――――― ゼロ。
三、天文学の知識――――――ゼロ。
四、政治上の知識――――――微量。

この後「毒物には詳しいが園芸に関しては全く無知」「化学の知識は深遠」「イギリス法律の実用的知識深い」というように続いていきます。(延原謙訳より抜粋)

会ったばかりのワトスンの見解がどれだけあてになるかはわかりませんが、あれだけ頭のいいホームズがオールマイティーではない、というのはとても面白いです。(ただ、ゼロといっても文学者や哲学者、政治家の言葉が引用されることは多々あり、私のゼロとは比べ物にならないのですが…)

この「弱点」を補うために、ホームズは何かの事柄において自分よりも詳しい人がいれば、誰にでも素直に教えを乞います。ここがホームズの凄いところだと思います。ワトスンや刑事たちを小ばかにすることも多い彼ですが、自分の弱点をさらけだすことにも躊躇がないんです。その結果、彼の元にはさまざまな情報が集まり、事件解決への近道を作ることにつながっています。

地球が太陽の周りをまわっていることを知っている、知らないで言い合いになる場面は、現代版にも引用されていましたね。あの時シャーロックはたまたま直前に訪ねていたプラネタリウムのアナウンスを覚えていたおかげで助かりましたが、ジョンの(医師として以外の)知識が役に立ったこともありました。
同じ第3話でテレビの美容ショー(日本で言う『ビューティー・コロシアム』みたいな?いや、もっと軽い、メイクや服装で変身する感じでしょうか。ワイドショーの1コーナーなんかによくありますね)のホステスを務めるコニー・プリンスの写真が送られてきた時、ジョンはすぐに誰だか分かります。

「僕が結構長い間無職でラッキーだったね」
「ハドスンさんと僕はちょっとテレビの観過ぎだからね」(拙訳)


まだ就職していなかった頃のジョンは、(おそらく昼間、シャーロックが外出している間)しょっちゅうハドスン夫人につかまってはお昼ごはんやらお茶やらに呼ばれて、一緒にテレビを観ていたのでしょうね。それですっかり奥様向けの番組に詳しくなってしまった、と。
2話でサラが急にやってきてジョンが出すものに困っている時、ハドスンさんが飲み物やおつまみを差し入れてくれましたが、二人の絆はこんな風に育まれていたのね、と思うと微笑ましいです。


ところで、「マイクロフトからのメール」という記事のコメント欄でお話していて気がついたのですが、「花嫁失踪事件」(このタイトルは『独身の貴族』の方が通りがいいかもしれません。原題はThe Adventure of the Noble Bachelor)にもホームズがワトスンのゴシップの知識に頼る場面があります。

その日私は終日家にとじこもっていた。というのは天気が急に変って雨になり、強い秋風さえ加わって、アフガン戦争の従軍記念として片方の脚にうけて帰ったジュゼール弾の古傷が、ずきずきとしつこく痛んできたからである。
安楽椅子を二つよせて一方に両足を投げだし、新聞の山に埋もれていたが、それも読みつくしてしまったので、みんなわきに押しやっておいて、テーブルのうえの手紙にある大きな紋章と組合せ頭文字をながめながら、いったいどこの貴族がよこしたのだろうと、横になったままぼんやり考えているところへ、ホームズが帰ってきた。(延原謙訳)

この手紙を送った貴族に関するちょっとした騒動がその日の新聞に載っていたのですが、「僕は新聞は犯罪記事と尋ね人さがし物欄しか目を通さないものだからね」と言うホームズはそれを知らず、暇にあかせて新聞を読みつくしていたワトスンがすらすらと説明してみせるわけです。

まあ、このゴシップは「たまたま」知っていたわけですが、確実にワトスンがホームズより強いジャンルがあります。それは「競馬」です。
「ショスコム荘」という短編には、こんな会話が出てきます。

「(前略)ときに君は競馬のことをいくらか知っているかい?」
「当然さ。僕は戦傷者年金の半分はそれに注ぎこんでいるよ」
「じゃ君に”競馬案内”になってもらうことにしよう。(後略・延原謙訳)」

当時の戦傷者年金の半分ってどれくらいの額かわからないのですが、あんたさらっと凄いことを…という印象が拭えません。もうすぐ続編が公開されるガイ・リッチー版の映画「シャーロック・ホームズ」では、ワトスンはギャンブル好き、という設定や、ワトスンの小切手帳はホームズが預かっている(踊る人形)という設定が上手に生かされていました。



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この記事へのコメント

- RM - 2011年11月05日 18:33:52

>まだ就職していなかった頃のジョンは、(おそらく昼間、シャーロックが外出している間)しょっちゅうハドスン夫人につかまってはお昼ごはんやらお茶やらに呼ばれて、一緒にテレビを観ていたのでしょうね。

おお、そんな裏話が垣間見えるとは!本当に微笑ましいですね。やはりジョンは誰もが(特に女性が)すぐにこころを許す、不思議な魅力を持っているということでしょうか。それともハドスン夫人が誰とでもすぐに仲良くなる性格だということでしょうか。ハドスン夫人はあのシャーロックとも、随分仲良しですものね。どっちにしても、いいなあ、私もジョンと一緒にテレビを観たりお茶したい。

それから、ガイ・リッチー版の映画はみていないので、そういう設定だったとは知りませんでした。ちょっとおもしろいですね。

>「当然さ。僕は戦傷者年金の半分はそれに注ぎこんでいるよ」

私最近、ジェレミーとエドワードの "The Secret of Sherlock Holmes" の音声を聴いているのですが、第一幕最初のワトスンの独白に対して、年金の額をホームズが言ってつっこんで、観客が笑っていたなあと思って調べたら、これは「緋色の研究」からの引用なのですね。ただ原作ではワトスンが自ら書いているし、「an income」となっているのが、劇では「an Army Pension」と、より特定した言い方をしていました。「an income」はこの時点では戦傷者年金のみと思ってよいのでしょうか?

WATSON: I was without kith or kin to concern me, and therefore I was, I suppose, as free as air.


HOLMES: (from behind him) Or as free as an Army Pension of eleven shillings and sixpence a day will permit a man to be.

これは年額210ポンドにあたるそうですが、多いのか少ないのか、いろんなサイトにいろんなことが書いてありましたが、まあそう多くはないのでしょうね。その半分を費やしてしまうとは!その後、年金以外の収入もふえたのでしょうね。ジョンはブログを書いても収入はふえないだろうなあ。医者の仕事をするしかないですね。

- ナツミ - 2011年11月06日 01:15:39

ハドスンさんはシャーロックのこともすごく可愛がってますけど、お茶を飲む相手としてはやっぱりジョンがいいんじゃないでしょうか。
(でも旦那様はシャーロックタイプなんですよね・・・この辺りのお話、気になります)
おっしゃるように、「1日11シリング6ペンス」は「緋色の研究」に出てくるので、多分ホームズが好きな方にはお馴染みのフレーズなのだと思います。

「ショスコム荘」の頃のワトスンの収入はどうでしょう。

たいへん大雑把ですが、
ベーカー街でホームズとワトスン同居→メアリと結婚して開業→大空白時代(ホームズ失踪・メアリ死去)→ホームズ帰還→再びベーカー街で同居←「ショスコム荘」はこの期間に起こった事件だと思われます。
グラナダ版では、ベーカー街から通いで医師として働いているような感じがしましたよね。
開業医時代の蓄えがあったかどうかわかりませんが、既に作家としての収入はあったはずですし、何より医院をヴァーナー医師に「言い値で」売ったお金もあったはず。(お金を出したのはホームズだから、二人まとめるとプラスマイナスゼロなんですけど・・・)まあ、多少競馬に使っても大丈夫だったのでしょうね。

ジョンの収入はどうなるんでしょうね。案外、大人気ブログになって書籍化!という展開もあるかも。でも人気作家だったり、開業医だったりするジョンがまだあまり想像できないです・・・もうちょっと、「空気のように自由な」感じの二人を見ていたいなあ、と思う私です。

- RM - 2011年11月06日 13:08:28

次の『ジョンの推理」の記事にあったDVDのコメンタリー、私まだきいていないのですが、そんなおもしろい話もしていたのですね!紹介してくださって、ありがとうございました。で、今回の記事にもどって...

>(でも旦那様はシャーロックタイプなんですよね・・・この辺りのお話、気になります)

そう言えばそうでしたね!うーん、どんな旦那様だったのでしょう。

>医院をヴァーナー医師に「言い値で」売ったお金もあったはず。(お金を出したのはホームズだから、二人まとめるとプラスマイナスゼロなんですけど・・・)

えっ、そんなことが!ああ、まだまだ知らないことがいっぱいです。
そして、「ショスコム荘」の頃はそういう時期だったのですね。

>もうちょっと、「空気のように自由な」感じの二人を見ていたいなあ、と思う私です。

私もです。

ネタバレについてですが… - ナツミ - 2011年11月08日 05:34:47

パイロット版とかコメンタリーなど日本語版が出ていない部分、あまりこのブログでは言及しないほうがいいでしょうか。あとで楽しみに観ようと思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
このブログのテーマはあくまで原作との比較ですので、RMさまもこれをお読みの方も、もしあまり触れて欲しくないという方がいらっしゃったらお声をかけてくださいね。扱い方を一考してみます。

これから英国ではシーズン2の放映があって、その後すぐにDVDが発売になると思いますが、おそらく日本での放映にはまた時間をおくので、それまでシーズン2の内容にどのように触れるかも、考えていかなくてはなりませんね。

ワトスンがヴァーナー医師に医院を売ったエピソードは「ノーウッドの建築士」に出てきます。

これを話しているのは、ホームズがロンドンに戻って数ヶ月後のことであるが、私はそのころ彼の乞いをいれて、ベーカー街で再び彼と同居の生活をしていたのである。ケンジントンの私の小さな医院を買ったのは、ヴァーナーという若い医者で、私の切りだした売値を驚くほど素直に承諾した。これは数年後になって、ふとしたことからわかったのだが、ヴァーナーはホームズの遠い親戚にあたり、金も実際に出したのはホームズであったという。

マイクロフトが紹介される「ギリシャ語通訳」で、ホームズは「(前略)この性向はやはり血統からきている。たぶん祖母からうけ継いだものらしい。この祖母はヴェルネというフランス人の画家の妹にあたるんだが、えてして芸術家の血統は、いろんな変った人物をつくりだすものだ」と語っています。ヴァーナーという名前は、ヴェルネの英語読みにあたるそうです。

さらっと書かれているのですが、「空家の冒険」での「(前略)親友ワトスン君が昔どおり、おなじみのいすに掛けていないのだけが物足りなかった」というホームズの言葉を裏付けるエピソードで、私は好きです。ワトスンの医院を買い取れる経済力があるのですから、もう家賃を出し合う必要はなかったものの、ワトスンがそばにいてくれる必要があったんでしょうね。妻を亡くしたワトスンのことも、思いやっていたのではないかと思います。(引用はいずれも延原謙訳です)




- RM - 2011年11月10日 21:16:03

>パイロット版とかコメンタリーなど日本語版が出ていない部分、あまりこのブログでは言及しないほうがいいでしょうか。

いえ、私はまったくそういうことはありません。むしろ紹介していただいてうれしいです。シーズン2の内容については、うーん、これは人それぞれかもしれませんね。でもシーズン1についても、ナツミさんは核心部分には触れないでこられたと思いますので、シーズン2についても同様であれば、こちらに来られる方は問題ないのでは、と思います。

>ワトスンの医院を買い取れる経済力があるのですから、もう家賃を出し合う必要はなかったものの、ワトスンがそばにいてくれる必要があったんでしょうね。妻を亡くしたワトスンのことも、思いやっていたのではないかと思います。

全然知りませんでした。「数年後になって、ふとしたことからわかった」時のワトスンとホームズを想像すると、こころがあたたかくなりますね。

- ナツミ - 2011年11月12日 16:33:28

>いえ、私はまったくそういうことはありません。むしろ紹介していただいてうれしいです。シーズン2の内容については、うーん、これは人それぞれかもしれませんね。でもシーズン1についても、ナツミさんは核心部分には触れないでこられたと思いますので、シーズン2についても同様であれば、こちらに来られる方は問題ないのでは、と思います。

ありがとうございます。ブログの性質上、どうしても「ネタバレ」は避けられないのですが、コメントをくださる方のご意見はできる限り考慮していこうと思います。

>「数年後になって、ふとしたことからわかった」時のワトスンとホームズを想像すると、こころがあたたかくなりますね。

本当に!
私、ホームズの「乞い」も気になるんです。
ということは、グラナダ版でもホームズがワトスンに「またベーカー街で一緒に暮らそう」と言う場面があったはずなんですよね。それは、「空家の冒険」ラストシーンでハドスンさんと三人で乾杯する前だったのか後だったのか、ジェレミー・ホームズはどんな言い方でそれを言ったのか、ワトスンはあのおみやげの帽子本当に嬉しかったのか、考えると夜も眠れなかった当時の私です。

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シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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