最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
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マイクロフトについて(1)ジョンとマイクロフト

前にも書きましたが、原作でのマイクロフトは、シャーロックの7歳上の兄。セバスチャンとの会話(『8年ぶり』)から察するに、第1シーズンでのシャーロックの年齢は30歳前後でしょうから、原作通りの設定なら37歳(!)
兄弟二人への態度の違いから考えたり、ハリー(36歳)が原作どおり「年上のきょうだい」であると仮定すると、ジョンは二人の間の年齢と考えられます(でも、皆もっと上に見えますよね。これだと役者さんの実年齢から、それぞれマイナス5歳くらいだからなあ…原作の設定を反映するという前提が間違ってるかもしれないし、シャーロックとセバスチャンは卒業後会う機会があったのかもしれませんね)。

ホームズ兄弟の関係が"sibling ribalry"(反目し合う兄弟)に変更されているのはもちろん、ジョンとマイクロフトの出会い方の違い、も大きな変更点です。
原作でのワトスンとマイクロフトの出会いはどうやって訪れたのかというと、ホームズとワトスンの何げない雑談が「才能は遺伝によるものか、環境に育てられるものか」ということに及び、ホームズが自分の場合は遺伝だと思う、と言い出します。

「だって僕の兄弟のマイクロフトなんか、僕より多くその特性を持っているもの」(『ギリシャ語通訳』延原謙訳)

原作のマイクロフトの「特性」については前述の記事にまとめたものを参照していただくとして、この後二人は「ディオゲネス・クラブ」に出かけ、ホームズが兄にワトスンを引き合わせます。既にワトスンの著作を読んでいたマイクロフトは温かく弟の友人を迎える…という、至って穏当な出会い方です。

現代版では、マイクロフトの方からジョンに接近します。いささか特殊なやり方で彼を呼び出し、自らの正体を明かさずにジョンに謎めいた「警告」を与える…という、印象的な登場のしかたです。
この演出は、「モリアーティーではないか」と視聴者をミスリードすることが主な目的と思われますが、マイクロフトをこうした位置に立たせることによって、3人の関係は大きく変わってきます。

まず、兄弟の間にディスコミュニケーションがあることで、ジョンの行動が変わります。
(全然関係ないですが、これ和製英語なんですね!今知りました)
原作ではワトスンが「シャーロック越しに」マイクロフトを見ていたのに対し、現代版では兄弟が「ジョンを介して」交流することになります。3話ではこの構図が上手に使われていて、板ばさみになったジョンの行動を通して、二つの事件が同時進行する様子が描かれました。

もう少し突っ込んで言えば、ジョンの「気持ちのありよう」も違ってくると思います。

原作では、「ギリシャ語通訳」事件までのワトスンは、ホームズのことを「自分と同じように天涯孤独」と思っていたようです。その上でホームズの才能に感動し、無名だったホームズに「僕は事件をみんな日記につけているから、やがて世間の人に発表してやるよ(緋色の研究・延原謙訳)」と言います。
かくして、ホームズとワトスンのコンビが結成され、ホームズの探偵としての本格的な活動期が始まるわけです。
ホームズとワトスンは無名の孤児同士、一人対一人の関係です。

対して、現代版のジョンは、シャーロックの力を知ったその日にマイクロフトにも出会います。
「シャーロックは、初対面の僕のすべてを見抜いた」とジョンはブログに書いていますが、マイクロフトはさらに、シャーロックが口にしなかった、ジョン自身ですら気づいていなかったジョンの心理に言及します。シャーロックにない力がマイクロフトにはあるということを、冒険の初日からジョンは知ることになります。
「緋色の研究」でワトスンがシャーロック・ホームズに抱いた強い印象(プラスの印象もあればマイナスの印象もあると思いますが)の一部が、現代版ではマイクロフトに振り分けられているわけです。

「見抜かれる」ということは、大抵の人間にとっては嫌なことですが(それが災いして、学生時代のシャーロックには友達いなかったわけですもんね…)ホームズ兄弟に出会った時期のジョンにとっては、必要なことでした。
戦闘の記憶、姉との軋轢、そして、戦場こそが彼の生きる場所であるということ。
さまざまな鬱屈を心の奥深くにしまいこんで、「一般市民として」生きていくことを余儀なくされたジョンを、シャーロックとマイクロフトはその闇を暴いてみせることで、本来彼が生きるべき場所に繋ぎ止めました。居場所を与えることで、笑顔を、足を、大切なものを守るために戦うということを、思い出させました。
そして「おかえり」("Welcome back")という決定的な言葉を彼に贈ったのは、マイクロフトでした。

ジョンにとっては、マイクロフトは単にシャーロックの兄というだけでなく、ある部分においてはシャーロックよりも自分のことを理解している人間です。
彼にとって、マイクロフトの存在は、原作よりもずっと大きなものになっていると言えます。

例によって長くなってしまいました。シャーロックとマイクロフトの兄弟関係に関しては、筆を改めたいと思います。




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この記事へのコメント

マイクロフト沼にはまりそうです - らいかみんぐ - 2011年10月25日 23:08:49

2回続けてのマイクロフト記事で、とても喜んでおります。ありがとうございます!

マイクロフトの "Welcome back" は背筋がゾクゾクするささやきでした。
ナツミさんの記事を読みつつ、あらためてゾクゾクしています。そうですね。ジョンの傷を真正面から暴いてみせたのはマイクロフトだったんですよね。あの時のジョンには、警戒する一方で、傷を暴かれる快感のようなものがあった気がします。会見の後はさっぱりした顔をしていましたし。

シャーロックの "Want to see some more?=もっと(危険を)見たい?" これも相当なセリフだと思いますが "Oh, God, yes" と答えてしまうジョンも相当なもの。
そしてbattlefieldでの冒険が始まったとたん、マイクロフトからは "You miss it" "welcome back" なんて言われて中締め。ああ、なんてコワい。怖すぎる兄弟。でもこの兄弟と付き合っているジョンはもっとコワい。シャーロックに関してジョンはほどなく「子ども認定」してしまったようですが、マイクロフトについてはどうでしょう。
>彼にとって、マイクロフトの存在は、原作よりもずっと大きなものになっていると言えます。
そうですよね! ああ、その片鱗がシーズン2でちらっとでも見せてもらえるといいなあと願っております。

なんだか興味の対象がどんどんマイクロフトに傾いている今日この頃、といっても、まさにいま『ブルース・パティントン設計書』を読み終えたという付け焼刃。マイクロフトは『ギリシャ語通訳』では酔狂な隠棲人のイメージだったんですが、けっこう国家の仕事をまじめに楽しんで?いるんですね。
全省庁の決定事項を集め、その情報を集約して、どんな局面にも包括的な見地から判断を下し、政策決定を左右できるとは。
一国に一人マイクロフト。こういう人物がいれば……アメリカのアレとか、ギリシャのアレとか、リビアやアフガンや……いやいやいや。この原典ポジションに、CCTVシステムを自由自在に(私事にまで!)活用する現代版の姿をプラスしたら、まさしく「ビッグ・ブラザー」じゃないですか。オーウェルもびっくりです。

シャーロック以上の頭脳をもって、シャーロックが犯罪に傾けるのと同様の情熱を、政策や国家間の情報戦に傾けることができるとすれば、かなりきな臭い仕事をしていることは想像に難くないですねえ。
エリザベス朝のウォルシンガム卿や、チャーチルのイメージ(主に図体)までダブってしまって、もうしっちゃかめっちゃかです。

しかし英国軍は昔から珍妙な兵器をつくる名人で、トンデモ装備の宝庫です。ブルース・パティントン計画も(潜水艦にしても、ミサイルにしても)中身は相当に変なんじゃないかと、そっちの方もまた、とてもとても気になり始めて困っています。

【超余談/すみません】
たとえばブルーピーコック核地雷なんか、あいた口が三年ぐらいふさがらないようなプロジェクトで、ソ連軍侵攻を阻止するために開発されたはいいけれど、冬季は電子回路が正常に作動しなくなる恐れがあるってんで、対策として地雷内ケージングに生きたニワトリ(!)と餌(!)を入れて保温装置にするってシロモノ。もちろん大真面目。
1958年に計画中止になったものの、2004年まで機密扱いで公表されていなかったという....その上、機密解除されたのがちょうど4月1日だったので、エイプリルフールの冗談だと思われたというおまけつき。

ブルース・パティントンがこれに類するようなトンデモ計画だったとしたら、マイクロフトが軍情報部MI6などのルートを使わなかった理由も、うなづけるやもしれません。

すごい地雷だ・・・ - ナツミ - 2011年10月26日 06:09:30

おおっ、いつも面白いお話、ありがとうございます!
軍事関係とか政治のことがほとんどわからないまま鑑賞しているので(あのUSBなくした兄ちゃんはMI6の人だと思ってました…!あとでちゃんと3話観てみよう)、いつもいつもらいかみんぐ様のコメントは、コメントというより一編の記事を読むように楽しませていただいてます~!

そして、マイクロフトファンとしては、ここでお話ができて嬉しいです!
マイクロフト沼…たしかに彼は、湖とか川じゃなくて沼っぽいな…! 
私にとっては単なる「謎の人」だったので、彼のポジションに近い人の具体的な名前を挙げていただいて嬉しいです!体型が近い人も混ざってますけれど!
うちの国にも一人必要ですよね・・・あ、いても庶民にはわからないのか・・・

「超余談」の部分がすごく面白かったです!
それをまじめに考えてたとしたら、英国軍すごすぎる!
リアルにいしかわじゅんの漫画「うえぽん」の世界!!

ブルース・パティントンがどんな面白計画か想像すると楽しいですね!もしブルーピーコック核地雷みたいな内容だったら(そしてあのプールの場面でシャーロックとジムが薄々知っていたら)、シャーロックが渡す気になった説明もつくし、ジムも逆ギレするし、爆弾つけられたジョンも相当複雑な気分でしょうね…

優れた遺伝子 - パンダ - 2014年03月02日 06:56:15

はじめまして、にわかシャーロック・ホームズ好きの者です
マイクロフト兄さんが好きなので、ちょっと気になったとこを補足

>原作でのワトスンとマイクロフトの出会いはどうやって訪れたのかというと、ホームズとワトスンの何げない雑談が「才能は遺伝によるものか、環境に育てられるものか」ということに及び、ホームズが自分の場合は遺伝だと思う、と言い出します。

「だって僕の兄弟のマイクロフトなんか、僕より多くその特性を持っているもの」(『ギリシャ語通訳』延原謙訳)

原作では数少ないホームズの家族に関する記述の一つですね
つまりは、ホームズ兄弟の特別な力は両親の(父親?母親?)の遺伝によるものだってことになりますよね(隔世遺伝や家系なのかも?)

グラナダ版ではワトソンが映画撮影中(笑)だったため、原作ではお目にかかれないホームズ兄弟がコンビで捜査をしたとき(金縁の鼻眼鏡)にマイクロフト兄さんが「全ての不可能性を排除した後に~(省略)」のあと「父上の言葉だったか?」と言っていることから、グラナダ版では父親からの影響が大きいという解釈をしてるみたいです

しかしながら、ある意味マイクロフトに日課を破らせて現場で捜査(オイシイとこ取って、ほとんどサボってたけど)に駆り出させたワトソン…さすがです

シャーロックでも、ジョンが御膳立てしてホームズ兄弟で捜査するなんて話があったら面白いだろうな~
2人の間に入って何とか御膳立てするジョンのシーンとか想像すると、かなり大変で可哀想な気もするけど(笑)

父方?母方? - ナツミ - 2014年03月02日 12:39:48

パンダ様

はじめまして!コメントありがとうございます。


> グラナダ版ではワトソンが映画撮影中(笑)だったため、原作ではお目にかかれないホームズ兄弟がコンビで捜査をしたとき(金縁の鼻眼鏡)にマイクロフト兄さんが「全ての不可能性を排除した後に~(省略)」のあと「父上の言葉だったか?」と言っていることから、グラナダ版では父親からの影響が大きいという解釈をしてるみたいです

そうでしたね!あの会話はちょっと、意味ありげでしたよね。
マイクロフトがお父さんに拡大鏡を譲り受けていたというくだりもありました。
もしそうだとしたら、よりお父さんに似ていて、影響を受けているのは弟のほうなのに、お父さんは兄のほうを認めていたということですよね。父子の間に何らかの確執があったのではないか、と思わせます。

過去記事「シャーロックと子ども」 (http://sherlock221b.blog.fc2.com/blog-entry-238.html)でもほんの少し触れたのですが、ホームズの家族に何かあったのではないか、とうかがわせるセリフはちらちらとありますね。

「遺伝」のお話に戻ると、ホームズ本人は、隔世遺伝ではないか、と思っているようですよね。

「(前略)だがこの性向はやはり血統からきている。たぶん祖母からうけ継いだものらしい。この祖母はヴェルネというフランス人の画家の妹にあたるんだが、えてして芸術家の血統は、いろんな変った人物をつくりだすものだ」(『ギリシャ語通訳』延原謙訳)

後ほど記事にもしたいと思っているのですが、現代版(S3E3)ではお母さんの頭脳が兄弟に遺伝したような描かれ方でしたね。いや、あのドラマのことですから、まだ語られてないけどお父さんにも何か裏設定があるのかも……

> しかしながら、ある意味マイクロフトに日課を破らせて現場で捜査(オイシイとこ取って、ほとんどサボってたけど)に駆り出させたワトソン…さすがです

現代版でも、ジョンの存在がマイクロフトとシャーロックの関係を変えていく、というようなところがありますよね。「原作に忠実」が前提のグラナダ版ではそこまで踏み込んでいないですけれど、間接的にワトソンがマイクロフトを引っ張り出している、と思うと楽しいですね!
ワトソンとマイクロフトが並行して事件を解決していくエピソード(『マザリンの宝石』だったかな?)でも、できればもうちょっと二人が絡むのを見たかったです!

> シャーロックでも、ジョンが御膳立てしてホームズ兄弟で捜査するなんて話があったら面白いだろうな~
> 2人の間に入って何とか御膳立てするジョンのシーンとか想像すると、かなり大変で可哀想な気もするけど(笑)

おお~、それ、すごく面白そうです!
たしかに"The Great Game"で板ばさみになったジョンは大変そうでしたが、弟をなだめたり兄をおだてたり、あたふた走り回るジョンと、いがみ合いながらも一緒に捜査するホームズ兄弟がぜひ観たい!です。

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Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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