最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
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タイトルについて

以前の記事でご紹介した望 岳人様のブログに、第1・第2シーズンの各エピソードの題へのご考察があり、とても興味深く読ませていただきました。
ぜひそちらを先にお読みいただくとして、付け足すような形で、私も各話タイトルについて思うことをすこし書いてみたいと思います。とても雑多で脈絡のない内容になってしまいますが…

NHKの「シャーロック」公式サイトによると、日本語版では

第1話・A Study in Pink →「ピンク色の研究」
第2話・The Blind Banker →「死を呼ぶ暗号」
第3話・The Great Game →「大いなるゲーム」


と訳されたようですね。

1話のタイトル"A Study in Pink"は、当然"A Study in Scarlet"(緋色の研究)のパロディと考えられます。
この「緋色の研究」という訳は、新潮文庫版の翻訳者・延原謙氏のご子息である延原展氏の注釈(1995年1月)によると、後の研究で美術用語である「習作」という訳の方が適当とされたようです。

延原展氏は、お父様の翻訳を改版する際にこの題を変えなかった理由の一つとして、
「『緋色の研究』の方が『緋色の習作』よりも探偵小説としての題名としては優れているという意見もある」ことを挙げていらっしゃいますが、私も本当にそうだと思いました。「研究」という響きは、ホームズの科学的な捜査方法を彷彿とさせますし、ホームズとワトスンの出会いの場であるバーツの一室の空気を感じさせてくれます。

「どうしてわかったの?」という記事のコメント欄でも少し触れたのですが、英語と日本語では、一つの単語の「意味の幅」が異なることが多々あります。たとえば「まだらの紐(The Adventure of the Speckled Band)」。英語のbandが『集団 』も表せるのに対して、日本語の「紐」は一つの意味に絞られてしまいますよね。
このように、翻訳する際、ばっちり合う言葉を探すのは難しいので、推理小説の訳題は言葉の意味よりも作者の意図を汲んでつけられるべきなのだろう、と思います。
この場合は「習作」の方がドイルの意図に近いと結論づけられたということでしょうが、studyと言う言葉が「研究」という意味も包括しているということを考えると、必ずしも正確な訳=良い訳とは言えないのかもしれません。

"A study in scarlet”という言葉は作中のホームズの台詞に出てきます。

「(前略)しかしこれもみんな君のおかげなんだ。君がいなかったら、僕は行かなかったかもしれない。したがって生れてはじめてというこのおもしろい事件を、むなしく逸したかもしれないんだからね。そう、緋色の研究というやつをねえ。
いささか美術的な表現をつかったっていいだろう?人生と言う無色の糸桛には、殺人と言うまっ赤な糸がまざって巻きこまれている。それを解きほぐして分離し、端から端まで一インチきざみに明るみにさらけだして見せるのが、僕らの任務なんだ。」(延原謙訳)

この言葉はホームズの持ち出した比喩で、事件と直接の関連はないわけですが、この色は現場に残された「血で書かれたメッセージ」を想起させますし、もう一人の主人公であるジェファスン・ホープの火のような情熱や執念のイメージにもつながります。あらためて、優れたタイトルだなあと思います。

対して、"A Study in Pink"という題はジョンの発想のようです。

"Pink lady, pink case,pink phone. There was a lot of pink."
「ピンク尽くめの女性、ピンクのケース、ピンク色の携帯、ピンクのものがたくさんあったからね」(第3話より・拙訳)

ではどうして、(製作スタッフによって)A Study in Blue でもyellowでもなく、pinkという色が選ばれたのか。ジョンの言った理由だけなら、どんな色でも話は成立しますよね。

このタイトルが発表されたとき、日本人の汚れた大人である私は、何らかの情事に関連した事件が起こるのかなあ、と考えました。しかし望様がブログに挙げられているピンクの定義によると、日本語で言う「ピンク映画」のような意味は英語にはないとのこと。
ホームズ流に、起こらなかったこと(選択されなかったもの)に対しての推理を働かせるなら、英語話者には青は憂鬱な感じ、黄色は嫉妬を連想させると聞きました。色のイメージによって、タイトルから連想するものは大きく変わりますね。

次に、語感によって選ばれたのかも、と考えました。2話は"The Blind Banker"、 3話は"The Great Game"と各語の先頭にくる音が統一されています(A Study in Scarletもそうですね)。
A study in pinkでのみこの「法則」が破られていますが、イギリスでの放映当時、雑談の中である方が「この題を聞くと"Pretty in Pink"を思い出す」とおっしゃっていました。

この言葉はイギリスのバンド「ザ・サイケデリック・ファーズ」の曲のタイトルでもあり、この曲を主題歌に採用したアメリカ映画のタイトルでもあります。私は寡聞にして知らなかったのですが、80年代の青春映画の代表作のひとつだそうです。
ちなみにその方はジョンの姉(妹の可能性もないわけじゃないけど)・ハリーと同い年、とよくおっしゃっていたので(ハリーの年齢に関してはジョンのブログをご参照ください)、脚本スタッフよりすこし若いものの、大雑把に言ってジョンと同世代と考えられます。脚本家やジョンの発想の根底には、この曲や映画があったと言えるのではないでしょうか。

まだその映画は観ていないのですが、レビューや歌詞を閲覧したところ、pretty in pinkの意味するところは(ピンクのものを身に着けた人に対して)「ピンクが似合うね」という感じみたいです。作中のpink ladyを思わせます。

すこしと言いつつ、長くなってしまいました。第二話と第三話については、また後ほど。

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この記事へのコメント

関係ないコメントで - だい - 2011年10月08日 20:38:49

すみません。

RMさんのブログから遊びに来ました。
いつも、プロフィールのコメントが楽しくて心待ちにしています。
もちろん、sherlock大好きなのですが・・・。
時々、私が大間抜けなのか?と思っていたことも、同じように感じていたようで、なんだか安心しました。

私も曾祖父?の武勇伝が遠からず映画並みに語り継がれるのを楽しみにしています。

Re: 関係ないコメントで - RM - 2011年10月08日 22:51:53

だいさん、こんにちは、RMです。わーい、うれしくてナツミさんのだいさんへのお返事を待たずに書き始めてしまいました。

私も好きなんです、プロフィールのところ。どんどん消えちゃうのがもったいないというか、いさぎよいというか。ナツミさんの文章って、気持ちよく、くすくすっと笑えるのですよね。今日は並んだ二冊のホームズのお話ですね!

というわけで、ナツミさん、私もいつも楽しみにしています。

それからタイトルの話、第二話、第三話では「各語の先頭にくる音が統一されている」というのは気づきませんでした。そして第一話も英語話者は"Pretty in Pink"を思い出す、というのも面白いですね!ここで音が統一されるのですね。第二シーズンももうタイトルが決まっているのでしょうか?

いらっしゃいませ! - ナツミ - 2011年10月08日 23:47:15

RMさんのブログで、いつも「お話したい、けど勇気がでない…」と思春期の少年のような気持ちでそっとみつめておりました!(気持ち悪かったらすみません…)

そもそも日記を書く場所でもないのに、プロフィール欄を読んでいただきありがとうございます!曾祖父も親戚のホラ吹き一同もきっと喜びます。
あの、失礼ながら、ひょっとしてだいさんのお宅にも同じ本が二冊あるのでしょうか…?
勝手にそうだということにして、いま大変救われた気分です。ひとりじゃないって素敵!

私も「わーい」! - ナツミ - 2011年10月09日 00:14:35

RMさん、ブログが更新されていてうれしいです!

本当にくだらない日常の話ばかりですが、お二人に読んでいただいていて、その上お言葉をいただけるなんて感激です。ありがとうございます~!
(ところでお二人とも、新潮文庫版『事件簿』はいりませんか…?)

第2シーズンのタイトル、wikipediaのSHERLOCKのページにありました~!

第1話"A Scandal in Belgravia"
第2話"The Hounds of Baskerville"
第3話"The Reichenbach Fall"

それぞれ"A Scandal in Bohemia"(ボヘミアの醜聞)
"The Hound of the Baskervilles"(バスカヴィル家の犬)
"The Final Problem"(最後の事件)

をベースにしたお話だと思うのですが(3話のThe Reichenbach Fallは『最後の事件』に出てくる滝の名前です)、ちょっとずつひねってありますね。楽しみです!

私もわ〜い - だい - 2011年10月09日 10:39:21

RMさん、ナツミさん。
楽しい話、為になる話、笑える話、等々。
参加させて頂けたら嬉しいです。

ちなみに同じ本が3冊あったこともありました・・。
買った記憶すらなく、夢遊病を疑ったことも・・。

こんな私ですが末永くよろしくお願いします。

3冊ですか! - ナツミ - 2011年10月09日 20:25:46

同じ本が2冊というのは単なる「うっかり者」ですが、
3冊になるとむしろ「大物」の匂いが感じられるのはどうしてでしょう!
よほど大切な御本だったのでしょうね~。内容も気になります。

こちらこそ末永くよろしくお願いします!
気軽に遊びにきていただけたら嬉しいです♪

遅ればせながら・・・・ - YOKO - 2013年07月12日 14:09:58

こんにちは。

この記事初めて拝見しました。
そうか!
プリティーインピンクか~!
なるほど。

そうするとP-Pで頭が揃うわけなんですね。
ひゃー!
すごいな~。

コメント欄の皆さんのやり取りを見て、当時のプロフィール欄に書かれていた内容が気になります。でもこれも一期一会ですね。
ちなみに私も同じ本複数買ってしまうことあります。

2年弱しか経ってないのに懐かしい! - ナツミ - 2013年07月13日 13:24:33

YOKOさま

過去記事へのコメントありがとうございます!
(ここらへんの記事、私やりたい放題ですね…読んでいっそ消したくなりました。いただいたコメントも消えてしまうのでやりませんが…)

> そうか!
> プリティーインピンクか~!

これも、自信を持って元ネタだと思っているわけではないのです。
この記事を書いた頃に比べ、今はSHERLOCK関係のサイトがたくさんできているので、「どうしてピンクなのか」もっと真実に近い所まで考察されている方もいるかと思うのですが、作品中の間違いを修正しなかったドイル先生に敬意を表してこれはこれで残しておこうと思います。 

> コメント欄の皆さんのやり取りを見て、当時のプロフィール欄に書かれていた内容が気になります。

プロフィール欄はバックアップをとっていないので、私もよく覚えていないのですが、だいさんのコメントから察するに、「親戚が集まるたびに、誰の葬式がどうだったとか戦争で誰がどうしたとか、そういう昔話と全く同列に『狸に化かされた話』とかを語るので、どこまでホラなのかわからない」というようなことを書いたのだと思います。この前のお彼岸ではお墓までの道を歩きながら「あそこの家は拝み屋だったよね」という話題で盛り上がっていました。

> ちなみに私も同じ本複数買ってしまうことあります。

YOKOさんは本をたくさんお持ちですものね!(『わが愛しのワトスン』私も買いました!)
私はそんなに冊数を持っていないのですが、ホームズシリーズだけは手放したり買い直したりを繰り返し、「四つの署名」と「事件簿」がだぶってます。
時代による訳の違いも面白いので、2冊持ちもアリですかね~。

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プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスンがより好きです。

2017年エイプリル・フールお片付けしました。お付き合いありがとうございました!片付けきれてないところがあったらお知らせいただければありがたいです。

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