最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
★コメントを歓迎しております。初めてコメントくださる方は、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。
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推理の科学~緑のはしご事件

シャーロックがジョンの携帯を借りて送ったメールの内容は、
「弟が緑のはしごを持っていたら逮捕しろ」。この「緑のはしご事件」の記録は、シャーロックのサイト「推理の科学」に載っています。

シャーロックが書いたこの文章には、彼の性格がとてもよく表れています。
短い文章ですので、たどたどしくではありますが、訳してみました。
訳の内容や、翻訳を掲載することに問題があるようでしたら、ご指摘をいただければありがたいです。
途中でシャーロックの手描きと思われる現場の略図が出てくるのですが、画像の転載はまずい気がするので、元サイトをごらんいただければと思います。


クライアント候補・ジェーン・ダウニングが助けを求めに来た。彼女の夫が亡くなったのだ。
誰もが悲劇的な事故だと思ったが、彼女は夫の弟が犯人だと訴えている。
弟は鉄壁のアリバイを持っている。僕は鉄壁のアリバイが好きだ。
調査を引き受けることにする。

背景:昨年末、サー・ハリー・ダウニングが死んだ。彼は長子であるジャックに家を遺した。しかしながら、権利は家族にもあり、ジャックが子供を遺さずに死んだ場合は、弟のケイスが受け取ることになる。

先月:ジャックが庭の池で死体となって見つかった。自殺の動機はなく、格闘の痕跡もなかった。血液から多量のアルコールが確認された。悲劇的な事故に見える。ケイスが家を受け取る模様である。

ジャックの妻・ジェーンは、納得しなかった。ケイスは平日はエディンバラで過ごし、週末だけロンドンに帰ってくる。
ジャックが死んだ夜、ケイスはスコットランドに居たにも関わらず、ジェーンは夫の死の責任はケイスにあると考えて疑わない。彼に動機があることは間違いない。

更新:件の屋敷に行ってきた。

(画像)

一番上は、庭にある比較的小さな建物のうちの一つの壁である。
窓はなく、従って内部から被害者に何かを投げつけることは不可能。
花壇に足跡はなし。小道はゆるい砂利道。かなり狭いがそれほど危険ではない。
ジャックは泳げなかった。砂利に滑って落ちたか?事故のように見える。

更新:ケイスに会う。絶対に事故ではない。

更新:再びジェーンと話す。被害者について知っていることを全て言わせる。
退屈かつ世俗的な男だったようだ。彼女がテーブルセッティングをしている時に気付いたことがある。彼女は塩をこぼしてしまい、それを少しとって肩越しに投げた。塩をこぼすのは縁起が悪いらしい。彼女の夫もそのようなナンセンスを信じていたのかと確認したところ、そうだと請け合った。彼の飲酒習慣についても聞くと、それほど多くなく、たいがいはビールだけだったとのこと。

更新:家に戻り、花壇を調べる。何もなし。砂利を調べ、詳細な調査のために少量を採取。

更新:砂利に緑のペンキの痕跡。約一メートル離れた所に二つの斑点がある。梯子だ。
壁には窓がないので、はしごをかけるような場所だとは思えない。加えて,もし梯子をかけるなら、小道でなく花壇に置く方が自然だろう。庭師に聞くと、家の所有物には緑の梯子はないそうだ。
結論:梯子は何らかの目的のために持ち込まれ、そこに置かれた。

要約:ケイスは兄が迷信深いことを知っていた。彼はジャックがそこを歩くのを承知の上で、友人を使って梯子を置かせた。家には、ケイスがジャックに贈ったスコッチが一瓶あった。兄があまり酒を飲まないのを知っていてのことだ。ジャックはウイスキーを飲み、酔って散歩に出る。ゆるい砂利道、暗い夜…梯子を見つける。梯子の下を通るのは縁起が悪い。それで迂回する…池に落ちて溺れる。
後でジェーンにメールする。事件解決だ。

事実だけを淡々と記した機械的な文体が、うまく再現できていれば良いのですが。
原作でも現代版でも、ホームズはワトスンの文章に難癖をつけます。
第3話の冒頭でも怒っていましたが、ジョンのブログにも、「僕の仕事は厳正な科学であって、こんなふうに扱われるようなものじゃない。君は全てをロマンチックな冒険物か何かのように仕立てている。もっと、僕の分析的な考え方や物の見方に焦点を置くべきだ(拙訳)」という辛辣なコメントを残しています。

原作のホームズも、しょっちゅうワトスンに文句を言っていたようです。
第2作目「四つの署名」冒頭でも、さっそく処女作「緋色の研究」への批判の言葉が出てきます。

ホームズはかなしげに頭を振って、「僕もちょっと見たがね、正直なところ、あれはあんまり褒められた出来じゃない。探偵するということは、一つの厳正科学なんだ~~であるべきはずなんだ。したがって冷静に、無感情な態度でとり扱われなければならないところを、君はロマンチックな味つけをしているから、まるでユークリッド幾何学の第五定理に、恋愛物語か駆落ちの話を持ち込んだような結果になっている。(延原謙訳)」


この批判は当然ワトスンを憤慨させますが(ちなみに、あんまりしつこく批判するので、ついにワトスンを怒らせてホームズが自分で書く羽目になったという作品が『白面の兵士』です)、
皆さんご承知のとおり、本人が言うほど「冷静、無感情」一辺倒ではないところがシャーロック・ホームズの魅力です。
この「緑のはしご事件」の中でも、容疑者に会って「絶対に」事故ではない、と直感するくだりがあることに気づかれたでしょうか。

シャーロック・ホームズも、そして兄のマイクロフトも、時に自らの「直感」や「本能」に信頼をおいている節があります。私にとって最も印象深いのは、「アベ農園」で現場検証を終え、帰りの汽車に乗った後の場面です。

(前略)何を思ったかだしぬけに彼はプラットホームへとび降り、私までひきずり降ろしてしまった。
「ごめん、ごめん」ホームズはカーヴのかなたに消えてゆく汽車の最後尾を見おくりながら、
「気まぐれなでき心かもしれないことに、君まで道づれにまきこんで、まことにすまないわけだが、ただ何となく僕はこのままほっとくことは、どうあってもできないのだよ。あらゆる本能がやかましく反対をさけびつづけるんだよ。これはまちがっている。どこかにまちがいがある。ぜったいにまちがいがある。(後略・延原訳)」


先日ご紹介した「占星術殺人事件」では、御手洗潔がホームズをけなして石岡くんを怒らせた後、こんな会話があります。

「要するに君はホームズしか知らないのか? へえ! それでよくこきおろせたもんだ。あきれてものが言えない! ほう! つまるところ君は無能なホームズには全然感動できないと言うんだな?」
「誰がそんなこと言った? 完全無欠なコンピュータなんかに僕らはどんな用事があるっていうんだ? 僕が魅力を感じるのは彼らの人間だ。機械のまねをしてる部分にじゃない。そういう意味じゃ彼ほど人間らしい人間はいない。彼こそ、僕がこの世で最も好きな人間だ。僕はあの先生が大好きだよ」

御手洗のこの言葉は、ホームズびいきの石岡をちょっと感動させます。
人間離れした機械のようなイメージの後ろに、見え隠れする人間くささ。
いつの世も私たちがホームズに惹かれる理由を、御手洗はずばりと看破してくれています。

あ、マイクロフトが自らの「本能」を語る場面にご興味がある方は、ぜひ探してみてくださいね!
彼の台詞がある作品は、「ギリシャ語通訳」「ブルース・パティントン計画書」だけですので、すぐにみつかると思います。
存在感たっぷりの現代版マイクロフトのおかげで、お兄さんファンが増えるのでは?とひそかに期待している私です。

追記1(2011.9.3)
誤字の修正をしました。また、カテゴリを雑記から1話に移動しました。
追記2(2012.5.3)
カテゴリの整理に伴い、「シャーロックのサイト」カテゴリに移動。
追記3(2013.1.17)
以下は「アルミの松葉杖事件」という記事のコメント欄に書いた内容ですが、ご要望いただいたのでこちらにも載せておきます。実はこの作品は観ておりません。無責任な発言であることを重々お詫び致します…!

「緑のはしご」は"The Woman in Green" に関係あるんじゃないか!?と固執してた時期がありました…(というのも、タイトルを"The Lady in green"と勘違いしてたのです。The Green Lady→The Green Ladderかと!お恥ずかしい…調べたところ、どうやらGreenしか合ってないようなので、記事中でこじつけるのは断念しましたが)






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この記事へのコメント

こんな記録が書かれていたのですね - RM - 2011年09月03日 08:19:56

今回もすごく興味深く読みました。こんなに詳細な記録が、あそこには書いてあったのですね!なんて凝ったことをしてくれるのでしょう。そして、はしごの下をくぐると縁起が悪いのですね。(ちなみに「更新」の3つめのところは、誤変換で「演技」になっています。:-)

>事実だけを淡々と記した機械的な文体が、うまく再現できていれば良いのですが。
本当にいかにも「記録」という感じですね。

>(ちなみに、あんまりしつこく批判するので、ついにワトスンを怒らせてホームズが自分で書く羽目になったという作品が『白面の兵士』です。)
えっ、そんな作品があるとは知りませんでした。と書いたところで調べました。うわ、本当ですね。「書くとなるとやはりできるだけ読者に興味を与えるようにしなければならないということに、いまさら気のついたことを告白せざるを得ないのである。」(延原訳)なんて、殊勝なことを書いていますね。私にはジェレミーの顔で、この言葉が浮かんできます。(カンバーバッチのシャーロックは、まだこういうことは書きそうにないように思えますから。あ、でもそろそろかもしれません。)

ホームズの「直感」や「本能」のこと、そして「占星術殺人事件」からの引用、うれしく読みました。私のブログで、この記事に直接リンクをさせていただいたのですが、お断りが後になって申し訳ございません。記事に直接ではなくサイトのトップページの方がよいですか?「リンクはトップページへお願いします。他ページは変更になる場合があります。」と書かれたサイトをよそでみつけたので、お尋ねします。

ご存知かもしれませんが、朝日新聞のテレビ欄に、BBCの「シャーロック」のテレビ評(という言葉はあるでしょうか)が写真付きで載っていました。お、この人もホームズが好きだな、とわかる、なかなかいい内容でした。

Re: こんな記録が書かれていたのですね - ナツミ - 2011年09月03日 14:22:56

RMさま

まず、コメントの表示設定を元に戻したつもりが戻っていなくてすみませんでした!
(コメントを下さるのがほとんどRM様だけなので、全く気がつかなかった…!)
誤変換のご指摘も本当にありがとうございます~!修正させていただきますね。
リンクの件ですが、FC2ブログの技術的な部分はよく飲み込めていないのですが、記事に直接貼っていただいて大丈夫だと思います。不具合があるようでしたら、あらためてご連絡致します。

>はしごの下をくぐると、縁起が悪いのですね。

そのようです。
そういえば、濡れた傘を乾かそうとして「部屋の中で傘を開いてはいけない」と言われたこともあります。
これが日本だったら、夜に爪を切るのをやめたら結果として親が死んでしまったようなものでしょうか。

> 「書くとなるとやはりできるだけ読者に興味を与えるようにしなければならないということに、いまさら気のついたことを告白せざるを得ないのである。」(延原訳)なんて、殊勝なことを書いていますね。私にはジェレミーの顔で、この言葉が浮かんできます。(カンバーバッチのシャーロックは、まだこういうことは書きそうにないように思えますから。あ、でもそろそろかもしれません。)

「そうだろう?」とばかりににやりとするハードウィック氏の顔も浮かびますね~!

現代版では、ホームズの子どもっぽいというか、独善的だったりやわがままな部分が特に強調されている気がしませんか?
「紳士である」ということを重んじなくてもよい現代では、こういう資質と性格を持った人間はこんな風になるだろう、という考察のもとに描かれているのだと思いますが、社会のどの階層にも(少なくとも表面的には)すっと馴染めたホームズが、現代では「ソシオパス」と呼ばれるのはとても興味深いです。この先の「成長」も見守りながら、あらためて「紳士」なホームズ像と比較してみたいです。
シャーロックがジョンにこんな殊勝な言葉を言える日は…まだ遠いような気がしますねえ。


朝日新聞の「シャーロック」評、探して読んでみますね!
自分の好きなものを他の人も好きになってくれるって、良いものですね。
自分になにか得があるわけでもないのですが、たとえばホームズの性格を、ジェレミーも、シャーロックのサイトを執筆された方も、RMさんも私も、そしてずっともっと多くの方が受け止めて、考えて、何らかの形で問いかけている。そんな繋がりの中のどこかにいられるのは、とても贅沢なことだ、と思います。

(この場を借りて私信)先月末、カンバーバッチがジェレミーについて語っている記事に関するメールを差し上げたのですが、貼ったリンクが原因で届かない可能性があることが最近わかりました。もし届いていなくて、ご興味があるようでしたらご一報ください!)

Re2: こんな記録が書かれていたのですね - RM - 2011年09月04日 07:18:05

ナツミさん、リンクの件、ありがとうございます。それでは記事へのリンクもさせていただきますね。

それから、ここにおいでの皆様、私の長文の(しかも必ずグラナダとジェレミー・ブレットにふれる)コメントに閉口せずに、どうぞ書いてくださいませね。

> そういえば、濡れた傘を乾かそうとして「部屋の中で傘を開いてはいけない」と言われたこともあります。

おお、これも知りませんでした。

> これが日本だったら、夜に爪を切るのをやめたら結果として親が死んでしまったようなものでしょうか。

ここはくすくす笑ってしまいました。

> 現代版では、ホームズの子どもっぽいというか、独善的だったりやわがままな部分が特に強調されている気がしませんか?
「紳士である」ということを重んじなくてもよい現代では、こういう資質と性格を持った人間はこんな風になるだろう、という考察のもとに描かれているのだと思いますが、社会のどの階層にも(少なくとも表面的には)すっと馴染めたホームズが、現代では「ソシオパス」と呼ばれるのはとても興味深いです。この先の「成長」も見守りながら、あらためて「紳士」なホームズ像と比較してみたいです。

実は、以前ナツミさんが書かれるまで、シャーロックがレストレードなど、まわりの人から子どもあつかいされているところがある、ということに気づいていなかったのです。それは私の英語のききとりが、「ざる」のようだ、ということ以外に、私がシャーロックを、変わっているとは思っても、子どもだとか、わがままだとは思っていないからだと思います。

私が「子ども」だからかもしれません。もちろん誰でも子どもの部分を持っているし、失ってしまった自分の中の子どもを懐かしむところがあるのでしょうが。(ジェレミーは、だから大人はホームズにひかれるのだ、と言っています。)

シャーロックが今後成長してジョンとこころをかよわせる、という感じではなく、二人の間で静かにゆっくりと変化がおきていくのをみたいなあ、という気持ちがあります。それはグラナダ版ではとばされてしまったところですよね。出会いの場面からは描けませんでしたから。もっともグラナダ版でも、時がたつにつれて二人の関係が少しづつ変わって行くのを感じることができますが。

今読み返したら、ナツミさんも
> 現代版は「子ども」で「ソシオパス」のシャーロックがジョンとの出会いを経て、人間的に変わっていく過程(それを『成長』と呼ぶべきなのか、私は適切な答えを持ちませんが)に重点を置いているようです。
http://sherlock221b.blog.fc2.com/blog-entry-66.html
と書いていらっしゃいましたね!

「さびしい感じがする」という、ナツミさんのお友達の感想も興味深かったです。私は、ジョン、シャーロック、よい出会いがあって、よかったですね、という感じです。特に私が「ジョン、よかったですね」と思うのは、私がジョンのファンだからでしょうか。

> 朝日新聞の「シャーロック」評、探して読んでみますね!

私の地方では、9月2日に載りました。最後の部分は、
「小説のような種明かしによる納得ではなく、推理のスピード感や、情報の組み合わせ方の斬新さで名探偵ぶりを堪能できた。主人公のベネティクト・カンバーバッチの好演も光る。演技の随所にちりばめられた『ホームズ印』も見事だった。」「ホームズ印」に、にこっとしました。

> たとえばホームズの性格を、ジェレミーも、シャーロックのサイトを執筆された方も、RMさんも私も、そしてずっともっと多くの方が受け止めて、考えて、何らかの形で問いかけている。そんな繋がりの中のどこかにいられるのは、とても贅沢なことだ、と思います。

繋がりのなかにいる、というナツミさんの感覚は、私にはとても新鮮です。でも思い出してみると、ジェレミーは(うふふ、こればっかり)とても強く感じていたみたいです。過去からの繋がりも、未来への繋がりも。そして、グラナダ以降ホームズが未来へと繋がった大きな結果の一つが、BBCの「SHERLOCK」なのですね。

メールの件、教えてくださってありがとうございました。昨日メールいたしました。

ホームズの中の「子ども」 - ナツミ - 2011年09月04日 22:12:01

シャーロックの「子どもっぽさ」について、ご考察をありがとうございました!

そういえば、どうして私はジェレミー・ホームズに比べてカンバーバッチ・ホームズが人から軽んじられている印象を持ったのでしょうか。台詞から、というより、ヤードや学生時代の友人・セバスチャンの態度から感じたような気がします。
だとしたら、シャーロックだけのせいというより、周りの人々も失礼だという見方もあるかもしれません。
原作でもグラナダ版でも、警察や事件の関係者に慇懃無礼な扱いを受けていることも、ホームズが反撃することもよくありましたが、お互いに紳士淑女として「慇懃」の部分は崩さなかったですよね。
(『まだらの紐』のロイロット博士なんかは、まあ特殊枠として)

ジョンも、ブログでシャーロックを「12歳の子どものようだ」と評していますが、大人になる、ということがソーシャルスキルを身につける、色々オブラートにくるんで周りとうまくやっていく、ということなら、確かにカンバーバッチホームズは子どもなのだろうな、と思います。同時に、シャーロックに対する冷笑を隠さない社会というものも、そういう意味では幼児化しているのかもしれません。

もう一つ、シャーロックがこれまでのホームズと明らかに違うのは「正義」に対する考え方です。
原作のホームズは、法とは異なったところで自分なりの正義を持ち、それに基づいて行動していました。
その強固な「正義」の観念は、時代に求められた紳士像とも無関係ではないような気がします。
それに比べ、シャーロックは私たちの目の前で、大義とか、道徳とか、そういったことに無自覚なところから始まって、人質の老女を死なせてしまった自分や、子どもを救おうと必死になった自分の感情の揺れと向き合い、さらにジョンを失うかもしれない、という恐怖を経て、「人は皆死ぬ(だから多少早まってもかまわない)」と言うジムをはっきり否定するところまで変容しています。
この流れから、自分の世界に生きていた子どもが、他人との関わりを経て社会的な存在に「成長」していくイメージを得たのかもしれないなあ、と思います。

ジョンも、シャーロックから多くの贈り物を受け取っていますよね。
あの出会いに本当に救われたのは、ジョンの方かもしれません。RMさんのおっしゃるように、どちらか完璧な存在が劣った方を成長させるのではなく、お互いの存在がお互いを導いていく、というのがホームズとワトスンの関係なのですよね。

これからも、シャーロックもジョンも「子ども」の部分を持ちつつ、現代の社会に折り合ったり刃向かったりしながら生きていくのでしょう。それをジェレミーやハードウィック氏もどこかで見てくれているのだろうな、と思います。

朝日新聞の「シャーロック」の記事を書いてくださってありがとうございました!
「ホームズ印」って表現、面白いですね!
RMさんのサイトでだいさんがコメントなさっていましたが、ジェレミーもやっていた両手を組む形、あれなんかまさに「ホームズ印」なんでしょうか。その「ホームズ印」も歴代のホームズ役者さんが培ってきたものと思うと、なんだか感動してしまいます。

>それから、ここにおいでの皆様、私の長文の(しかも必ずグラナダとジェレミー・ブレットにふれる)コメントに閉口せずに、どうぞ書いてくださいませね。

や、アクセス解析を活用してわかったのですが、どうやら「ここにおいでの皆様」があんまりいないんですよ…どうぞ、今後もコメントしてやってください!


Re: ホームズの中の「子ども」 - RM - 2011年09月06日 23:45:56

>もう一つ、シャーロックがこれまでのホームズと明らかに違うのは「正義」に対する考え方です。
原作のホームズは、法とは異なったところで自分なりの正義を持ち、それに基づいて行動していました。

ああ、私はシャーロックと今までのホームズとで、「正義」に対する考え方が違うことを意識していませんでした。本当にそうですね!ホームズが子どもの味方だということを、私のブログのコメント欄で、この前ナツミさんとお話したのでしたね。子どもにとって「正義の味方」のホームズ。そしてその話題になったのは、インタビューの時のジェレミーの言葉からでした。シャーロックには、「正義」に基づいて行動するというところは(まだ)感じませんね。


>それに比べ、シャーロックは私たちの目の前で、大義とか、道徳とか、そういったことに無自覚なところから始まって、人質の老女を死なせてしまった自分や、子どもを救おうと必死になった自分の感情の揺れと向き合い、さらにジョンを失うかもしれない、という恐怖を経て、「人は皆死ぬ(だから多少早まってもかまわない)」と言うジムをはっきり否定するところまで変容しています。
この流れから、自分の世界に生きていた子どもが、他人との関わりを経て社会的な存在に「成長」していくイメージを得たのかもしれないなあ、と思います。

なるほど!ナツミさんがシャーロックに持つ「成長」のイメージがわかってきました。「大義とか、道徳とか、そういったことに無自覚」と書かれたその、「無自覚」というところ、これも私が意識していなかった点です。無自覚なのは、知っていて無視するのとも、自分なりの代替物を持つのとも、違いますよね。

>これからも、シャーロックもジョンも「子ども」の部分を持ちつつ、現代の社会に折り合ったり刃向かったりしながら生きていくのでしょう。それをジェレミーやハードウィック氏もどこかで見てくれているのだろうな、と思います。

ああ、本当に!

>朝日新聞の「シャーロック」の記事を書いてくださってありがとうございました! 「ホームズ印」って表現、面白いですね!

私も「ホームズ印」が気に入ったのです。でも引用した最初の部分、「小説のような種明かしによる納得ではなく、推理のスピード感や、情報の組み合わせ方の斬新さで名探偵ぶりを堪能できた。」には、「ん?」と思いました。「筋や二人の性格よりも?」と。でも多分、ホームズに思い入れのない人にとっては、斬新さはそこにあるのだろう、と思い直しました。(あの記事の筆者に思い入れがないのだろう、という意味ではありません。)あの作品の本当の斬新さは、二人が私たちと同じ時代に生きているという、そのことだと思います。

Re: Re: ホームズの中の「子ども」 - ナツミ - 2011年09月08日 21:51:55

ああっ、考えていた「成長」や「子供」の定義をうまくご説明できないまま唐突にお話してしまいまして、すみませんでした。(自分でも、うまく整理できていないのかもしれません。)
ジェレミーが表現したホームズの「子供の部分」というのは、未成熟とか社会性がないというようなネガティブな意味でなくて、率直さとか純粋さとか、私たち大人が磨耗させてしまいがちな感覚のことですよね。

> 「大義とか、道徳とか、そういったことに無自覚」と書かれたその、「無自覚」というところ、これも私が意識していなかった点です。無自覚なのは、知っていて無視するのとも、自分なりの代替物を持つのとも、違いますよね。

そうですよね!
本人に自覚があろうとなかろうと、と、カール・パワーズ事件で自然に犯人を暴く側の視点を持った時から、シャーロックは本質的に「正義」の人なんだと思います。でも私たちが「正義」という時、それはしばしば「体制側の視点」と重なりますよね。自覚的に「正義の味方」をやっているのがマイクロフトで、シャーロックが「ヒーローなんかになりたくない」というのは、兄への反発もあってのことかなあと思ってしまいます。

面白いことに、原作のシャーロックもそういう意味では兄に反発しているんですよね。弟に仕事を引き受けさせるために「次の叙勲にお前の名を出して欲しかったら…」と言う兄に対して、「私は仕事のために仕事をするのです」と、兄の価値観をきっぱり否定しています。
行動の理由が常に自分の中にあって、「世間一般」の基準に惑わされない、という点は原作から現代版までしっかり筋が通っているのだなあ、と思います。

> 「小説のような種明かしによる納得ではなく、推理のスピード感や、情報の組み合わせ方の斬新さで名探偵ぶりを堪能できた。」には、「ん?」と思いました。「筋や二人の性格よりも?」と。でも多分、ホームズに思い入れのない人にとっては、斬新さはそこにあるのだろう、と思い直しました。(あの記事の筆者に思い入れがないのだろう、という意味ではありません。)あの作品の本当の斬新さは、二人が私たちと同じ時代に生きているという、そのことだと思います。

そうか、このブログではごっそり抜け落ちていますが、映像表現の面白さや、今時のガジェットを使いこなすシャーロックの格好良さは、このドラマの大きなポイントなのですよね。(と今更言ってみる)
「あの作品の本当の斬新さは、二人が私たちと同じ時代に生きているというそのことだと思います」というお言葉に大きくうなずきました!私にとっての最大の贈り物を言葉で表していただいたなあ、と。
それに加えて、「名作を現代版で」というアイデアだけでも評価は得られたでしょうに、それだけにとどまらず「作品」としての完成度でドラマファンを注目させた製作スタッフの方々に、あらためて拍手を贈りたいと思いました。


- YOKO - 2012年08月23日 17:46:09

このシャーロックのサイトの記事、「緑の梯子」って何のことだろうと思って、私も読んでみました。そうしたら、あまりに完結で読みやすい文章だったので、自分の英語力も省みず、訳して自分のブログに載せてしまいました。
英語はよくわからないのですが、でも私にも訳せると言うことは、いかにすっきりとした文章であるかの証左のような。

シャーロックの文体まで、作りこんでいる制作陣に頭が下がりますね。

ところで、冒頭の「A PC..」というのがどうしてもわからなかったのですが、「クライアント候補」と訳されていますね?何と言う言葉の略なんでしょうか?
よかったら、ご教授いただけるとうれしいです。

ナツミさんとRMさんのやりとり、とても興味深く読ませていただきました。
なんというか、コメント欄まで充実したブログですね。

- ナツミ - 2012年08月24日 08:59:10

YOKOさま

まずA PCですが、私はa potential client と考えて訳しました。はじめの段階では、シャーロックはまだこの事件を引き受けると決めていなかったため、「顧客」ではなく「顧客になる可能性のある人」という感じでしょうか。

ただし、他の記事からもお分かりと思いますが、私はあまり英語に自信がないので、お教えするなどとんでもないです。YOKOさんがしてくださったように、今はネット上に素敵な和訳がたくさんあると思いますので、いくつか比較参照していただくのが良いかもしれません。そして、間違いなどありましたら、こちらこそご教授いただけたら幸いです!

>なんというか、コメント欄まで充実したブログですね。

ありがとうございます!ひそかにコメント欄は読みごたえがあると思っていますので、そこを褒めていただけるのが一番嬉しいです。
YOKOさんもお気づきのことなどありましたらぜひご参加くださいね。

- らいかみんぐ - 2012年08月24日 09:55:39

YOKOさん、はじめまして!YOKOさんのブログも大変な充実ぶりですね。口をあけて感嘆してしまいました。中国語方面にもご堪能とはうらやましい限り!! TTSSもお好きなんですね。うれしいなあ。

ナツミさん、ミニ旅行記、楽しく拝見しています。先日はドイツ夫人の豪腕ぶりにびっくりあんぐり。ベルリン旅日記もまた拝見できたらうれしいです。
しかし定期更新から事件(?)を嗅ぎつけたRMさんもさすが。実在偽装トリックとくればまず浮かぶのが「空家の冒険」の窓辺のホームズ人形ですが、モラン大佐もだまされたのに、RMさんはスゴイなあ。こちらも口をあけて感嘆。おかげで顎の骨がはずれそうです。

ところでA PCについてですが、Police Constableではないでしょうか?
パソコンかpolitically correctの略が標準的なようですが
  http://www.urbandictionary.com/define.php?term=PC

Oxford先生によると、イギリス英語らしいです。
  http://oald8.oxfordlearnersdictionaries.com/dictionary/PC

またシャーロックが無名時代の事件ゆえ、警察関係者がもっとも身近な依頼者だったんじゃないかと思うんですが、そうなるとジェーンは大したセレブと結婚したことに。どうかなあ......?

英語は私の暗黒大陸なので、とにかくひたすらブックマークした辞書先生様だのみです。

- ナツミ - 2012年08月24日 12:00:23

らいかみんぐ様

未だに携帯の操作に慣れず、投稿しようとしたら「ららら・らいかみんぐ様」になっていることに気づき、久保田利伸かよ!と独り己にツっこむベルリンの夜です。

おお、こんな英語もあるんですね。勉強になります。ありがとうございます!
辞書をひくと巡査、が適訳でしょうか。セレブと女性警官の結婚が悲しい結末に…!なんだかいい感じになってきました。

ホームズ人形を窓辺に毎日出してアリバイ工作したものの、本人より規則正しく生活させ過ぎてばれたって感じでしょうか(しょんぼり)。

- YOKO - 2012年08月24日 13:16:13

ホームズ人形のアリバイ作りが裏目に・・・
ひゃ。おもしろいですね^^

らいかみんぐさま
PCの解説をありがとうございます。
私のブログもごらんいただいたとのコト、お恥ずかしいです。
ところで、TTSSがわかりません(T_T)。何のことでしょうか??

- らいかみんぐ - 2012年08月24日 18:48:11

うわあ、ごめんなさい! YOKOさん。
TTSS(Tinker Tailor Soldier Spy)は違う方のブログでした。
まことにもってすみません。
ネットをめぐっているうちに脳内キャッシュが混線しておりました。
数分前の記憶も保持できないとは、なんたるダメ人間ぶり。
YOKOさんのブログには中華世界でのタブー話とか英国ご旅行の記憶話とか、
とても面白い話がたくさんありましたのに、そちらに触れればよかった。

そしてこの墓穴コメント承認のために、ナツミさんの御手をわずらわすとは...
しょんぼり穴にもぐって参ります。申し訳ない!

わあ、楽しいです。 - RM - 2012年08月24日 23:17:15

YOKOさん、読んで下さってうれしいです。ほぼ1年前のやりとりですね!それにしても、我が身の記憶力のなさに驚きます。もし今、日付を隠してナツミさんのコメントを読んだとしても、1年前と同じように新鮮におどろいて、こころ動かされて、はりきってお返事を書き始めそうです。

らいかみんぐさん、ほめていただいて、ありがとうございます。モラン大佐よりも上との評価をいただき、身に余る光栄です。(でもまさか海外とは思いませんでした。)

ナツミさん>ホームズ人形を窓辺に毎日出してアリバイ工作したものの、本人より規則正しく生活させ過ぎてばれたって感じでしょうか(しょんぼり)。

わはは、今調べたら、ハドスン夫人は十五分に一回の割で人形を動かしているんですね。ナツミさんはハドスン夫人に倣った、ということで。

- YOKO - 2012年08月25日 12:04:03

調子に乗って、1年前のコメントにさらにコメントしちゃいます^^

>あの作品の本当の斬新さは、二人が私たちと同じ時代に生きているという、そのことだと思います。

ナツミさん、RMさん、ほんとにここ重要なポイントですよね!
今年の夏、初めてこのBBCのシャーロックを見たのですが、ある日仕事帰りにきれいな夕焼けを見ながら「ああ、この夕日の向こうに、ジョンとシャーロックが生きてるロンドンがあるんだな~」と思ったら、嬉しくて嬉しくて仕方ありませんでした。
「飛行機に乗ってロンドンに行ったら、会えなくても少なくとも同じ空気はすえるんだ!」とか。

これまでどんなにホームズ世界が好きでも、やっぱりそれは100年前のお話で、実在したかどうかは別として「今はいない」人たちの話だったんですよね。それはそれで、もちろん物語の魅力をなんら損なうものではないのですが、同時代を生きてるって、斬新でした。

らいかみんぐさん
お気になさらずに~~^^


そういえば、私、原作の空家の冒険読んでいるときに、子供心に「15分おきに向きを変える」って規則的過ぎてかえって怪しまれんじゃないのかな?と思っていたのを思い出しました。

- ナツミ - 2012年08月27日 02:04:21

ベルリンにはTTSSも持参しましたが、よく考えたらチェックポイント・チャーリーとか出てくるのは「寒い国から帰ってきたスパイ」だったような気が今さらしてるナツミです。記憶の保持、全くできてません。

グラナダ版のハドスンさんは、すごく楽しそうに人形を動かしてましたよね!
あの茶目っ気と冒険心は現代版ハドスン夫人にも健在ですね。シャーロックが帰ってくる時にも大活躍して欲しいなあ。

>ある日仕事帰りにきれいな夕焼けを見ながら「ああ、この夕日の向こうに、ジョンとシャーロックが生きてるロンドンがあるんだな~」と思ったら、嬉しくて嬉しくて仕方ありませんでした。
「飛行機に乗ってロンドンに行ったら、会えなくても少なくとも同じ空気はすえるんだ!」とか。

YOKOさん、本当ですね!S2放映後はシャーロックとジョンを心配している方も少なくないと思いますが、リアルタイムで心配できるということさえも贅沢!
ロンドンはもちろん、この日本にだってシャーロックがひょいと姿を現すかもしれない。それがどんなにわくわくすることか!

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