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最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探しをしております。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
ブリキの文書箱

SHERLOCK10周年

金魚の皆様おはようございます!ミジンコです!!
なかなか終わらないコロナ禍の中、いかがお過ごしでしょうか。
このブログ始めた頃(9年前!)は思いもよらなかったのですが、私はだんだんアウトドアに興味が向いてきて、これが加齢か……としみじみしております。

いや、若い頃から、または幼い頃から自然に親しんでいる人もいっぱいいらっしゃるんですけど、私は体育の成績は壊滅的だわ、興味はサブカル寄りだわで庭や山や森に見向きもしない若者だったもので……親世代がガーデニングやら畑作りやら登山やら、休日にわざわざ体力を消費して喜んでいるのが全く理解できなかったんです。つい去年までは!

それが今はどうでしょう、リモートワーク化をきっかけに近所に畑を借り、頼まれもしないのに山にせっせと通う日々。私は定年過ぎても仕事したいワトスンタイプだと思っていたのに、早期退職して田舎暮らししたがるホームズタイプだったとは……(もともと田舎住みなので引っ越す手間はないけど……)おい、そこで「ないわ~」って顔してる若者!予告させてもらうぞ!養蜂に興味を持つのは時間の問題だぞ!

ご挨拶のつもりが、話が260度くらい逸れました。
そう!2020年7月25日はSHERLOCK放映10周年記念日!
もちろん皆さん気づいてましたよね!私ですか?マスクして尾瀬をザクザク歩いてました!
春先仕事が忙しいんで、水芭蕉って異常に葉のでかいバナナみたいな状態しか見たことないな……あっ芭蕉の実ってバナナのことだっけか!じゃあ松尾芭蕉は松尾バナナなの?吉本ばななは芭蕉リスペクトなの?やべえ検索してえ…あっ圏外……(※インドア派卒業できてない)みたいな愚考にかまけてるうちに、しれっとそのようなアニバーサリーが……
Twitterやってなかったら絶対気づかないまま終わった……

ミズバショウ
↑私のアニバーサリーを持ってったバナ……ミズバショウ
篠田真由美先生が教えてくださったのですが、これはミズバショウでないそうです!
ミズバショウ 果実の検索結果 ←そこそこバナナではあるものの、そんなバナナではなかった……

2010年春、本国から3ヶ月遅れで上映されたガイ・リッチーの映画『シャーロック・ホームズ』にときめきまくっていた私。
公開日、「『アバター』も見たいね!3Dなんだって~!どんなのかな?(←時代感)」と、友人とわざわざ大きめのシネコンに行ったのに、朝イチで観た『シャーロック・ホームズ』のキャラ解釈と洒脱な世界観に心奪われてしまった我々。こんなホームズ&ワトスンもいるんだ!
午後にもう一回観て(そういえばそれ以来『アバター』観そびれてる……一周回って今すごく観たい)、次の日も観に行き、とっくに手放していた原作本も揃え直し、飽き足らず海外のfan ficに手を出し(この時覚えたアレな用語は、その後生涯に渡って役立つことになるのだった)……そんな折に聞こえてきた、現代版ホームズの噂。

当時の私はたぶん一生分の情報収集能力を使い果たしたと思います(いや、総量でも大したことなかったですけど)。検索でひっかかる記事を読み、インタビューを視聴し、ちょこちょこ更新され始めたジョンブログをリロードしまくり(日本時間だと朝更新されるので、出勤するなりトイレに隠れてチェックしてた)、7月25日はそわそわドキドキで、職場の先輩とランチしたり、たまたま家族の誕生日なのでちょっと素敵なケーキを買い求めてお祝いしたりしたけど、どこか上の空だったことを覚えている……
そんな甘ずっぱい青春が詰まった日に、バナナで頭をいっぱいにしてる場合じゃないですよ!
今でもこのブログ読んでくれる人が、まあアクセス数から仮定して日本に20人くらいいたとして!まさかバナナの画像見せられるとは思ってないでしょうよ!(※バナナじゃない)

バナナバナナ言ってるうちに、なんとマイクロフト兄さんからのメッセージが。
ですよね~~!ロックダウンといえば、政府の偉い人の会見!私ったら、一体どうしてマイクロフトの会見を期待しなかったのかしら?(答:しなそうだから)
どうやら、中国の「优酷」(動画配信サイト)でSHERLOCK十周年のイベントがあった模様。そこに寄せられた動画、ということのようです(間違ってたらすみません)。
知った時点でも、マーク・ゲイティス氏の高名なファンアカウント様のプレミアムな和訳が拝めたのですが(ありがてぇ……)初心を思い出すため自分でも訳してみることにします。

Good evening Gold fish
Or indeed, good morning.
It has fallen to me to say some few words during this unprecedented global crisis.
With all of us had to make sacrifices, we've all had to get used to Zoom calls and to step off the pavement to avoid strangers and totally to avoid friends and family.
This has become known as social distancing, or as I prefer to call it, ”paradise”.
(自らカメラを操作する様子のマイクロフト。リモートワーク風?)

金魚の諸君、こんばんは。もしくは、おはよう。この世界的な未曾有の危機に際し、二言三言、話をさせてもらう機にあずかった。
我々はみな強いられている……Zoomを使って話すことを。見知らぬ者との接触を厭い、舗道を外れて歩くことを。そして友人や家族さえ、避けることを。
そうした行為は「ソーシャル・ディスタンシング」の名で誰もが知るところになったが、私はこう呼びたい…「楽園」と。(いい笑顔)

It's long been a maxim of mine that not engaging with any other human beings in anyway, whatever is bound to lead to the maximum of……What is that word? Oh, yes. "Happiness".
これは私の長きに亘る信条なのだが、どんな人間とも、どんな絆であれ、結ばないことこそが最大の「アレ」につながるのだ……何だったかな?そう、「幸福」。

This is a lesson I am afraid my younger brother Sherlock has yet to heed.
In fact, rather than using his considerable powers for the right purpose, he continues to get involved in all sorts of strange adventures and to form alliances and friendships and to, well, mingle.

残念ながら、我が弟シャーロックはその辺りのことがまだ学べていない。
彼の力は注目に値するものだが、正しい目的に使われていないのが事実だ。
未だに「巻き込まれること」にかまけているよ、ありとあらゆるおかしな冒険やら、絆やら友情やら……そうだな、「交わる」ことに。

Now it's come to my attention that it is ten years since a highly fictionalised account of my brothers' adventures were brought to the screen.
This was a mistake.
Detection is or should be an exact science.and should be treated with the same cold and unemotional manner.
These programmes have attempted to tinge it with romanticism which has rather the same effects as if one were to work a love story or an elopement into the fifth proposition of Euclid.
However, in their defence, the one who plays me is very handsome.

さて、そろそろ言及せねばなるまい。あの番組~弟の冒険をやたらと脚色した代物~が10周年を迎える。
あの番組を放映したのは大きな間違いだ。
推理とは、厳正な科学であるべきで、冷静に、感情抜きで扱われなければならない。この番組はロマンチックな味付けをされているから、まるでユークリッド幾何学の第五定理に恋物語を持ちこんだようになってしまっている。
しかしながら、長所を挙げるとすれば……私を演じる俳優は非常にハンサムだ(めっちゃいい笑顔)

So, if you want to see these programmes again and if you do, there must be something wrong with you then tune into……Youku.
Some of us have re-read Proust during lockdown or learn another three languages, but if you chose to vegetate on the sofa watching the television, that is entirely your concern. Goodbye.
Or indeed, go away.

もしこの番組を見直そうとしているなら君は正常とは言い難いが、あれを利用するといい(眼鏡をかけて画面外の何かを凝視しながら)……ヨウク。
このロックダウン期間中にプルーストを読み直す人間もいれば、新たに3カ国語をマスターする者もいる。しかし、ソファに寝そべってテレビを見ることを選択しても、それは全く君の自由だ。
さようなら。というか……さっさと立ち去れ。


もう~、マイクロフト節健在!
私の拙い訳で、あの溜めに溜めて最後の単語を吐き出しにんまりする話し方が伝わるかどうか……(たぶん伝わらないので元の動画をごらんください!)

さすがゲイティスさんというか、2分弱のこのスピーチの中にもちゃんと「原作ネタ」がちりばめられてます!
まず、マイクロフトが「長きに亘る信条」を述べますが、『緑柱石の宝冠』でホームズが例の信条を述べた時と言い回しがほぼ同じ。

"It is an old maxim of mine that when you have excluded the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth."

「(前略)あり得べからざることを除去していけば、あとに残ったのがいかに信じがたいものであっても、それが事実に相違ないというのを、昔から私は公理としております。」(後略・『緑柱石の宝冠』)


「すべてのありえないことをとり捨ててゆけば~」というこの「消去法」、ホームズが特によく口にする信条で、「四つの署名」「ブルース・パーティントン計画書」「白面の兵士」などでも言及されています。
マイクロフトがシャーロックの持つ「力」が正しく使われていない、と嘆くのは、『ギリシャ語通訳』や『ブルース・パティントン設計書』でホームズがマイクロフトの「力の使い途」について語ることの裏返しになってます。

“You wonder,” said my companion, “why it is that Mycroft does not use his powers for detective work. He is incapable of it.”
“But I thought you said– –”
“I said that he was my superior in observation and deduction. If the art of the detective began and ended in reasoning from an armchair, my brother would be the greatest criminal agent that ever lived. But he has no ambition and no energy. 

「どうしてマイクロフトが探偵の仕事に力をそそがないのかと君は不審に思うだろうが、じつはその力がないのだよ」
「だけどさっきの君の言葉では……」
「いや、兄は観察力や推理力では僕より優れているといったのさ。探偵術というものが、安楽いすに坐っていてするただの推理に終始するかぎり、僕の兄はまったく前代未聞の大探偵家といえるだろう。しかし兄にはそれを実行するだけの野心もなければ精力もない。(後略・『ギリシャ語通訳』)

The same great powers which I have turned to the detection of crime he has used for this particular business.

「同じ大きな能力を僕は犯罪の操作に向けているが、兄はこの特殊な仕事に注いでいるのだ。」(後略・『ブルース・パティントン設計書』)


そして、番組としてのSHERLOCKへの批評は『四つの署名』から。

He shook his head sadly.“I glanced over it,” said he. “Honestly, I cannot congratulate you upon it. Detection is, or ought to be, an exact science and should be treated in the same cold and unemotional manner. You have attempted to tinge it with romanticism, which produces much the same effect as if you worked a love-story or an elopement into the fifth proposition of Euclid.”

ホームズはかなしげに頭を振って、「僕もちょっと見たがね、正直なところ、あれはあんまり褒められた出来じゃない。探偵するということは、一つの厳正科学なんだ~~であるべきはずなんだ。したがって冷静に、無感情な態度でとり扱われなければならないところを、君はロマンチックな味つけをしているから、まるでユークリッド幾何学の第五定理に、恋愛物語か駆落ちの話を持ち込んだような結果になっている。(『四つの署名』)」


ちなみにこれとほとんど同じことを、ジョンのブログへのコメントとしてシャーロックが書き込んでたりします。メタ的に言えば「シャーロック・ホームズの人格をマイクロフトとシャーロックに振り分けている」わけですが、素直に見ればただの似たもの兄弟です。

まだまだ「元ネタ」あるかもしれませんが(コメント欄開けておくので、あったらご教示ください!)、何より面白いのは、『SHERLOCK』の作者の一人であるゲイティス氏がマイクロフト本人として内容をくさすという、セルフディスり芸!(あ、俳優としてのゲイティス氏は『顔が100点!』だったようですが……)
思えば、ホームズがワトスンの作品をけなす場面だって、けなされた作品を書いた本人のドイルが書いてるわけで、原作にも「セルフディスり芸」が成立してたわけですよね。やはりさすがのマイクロフト兄さんことゲイティスさん、的確にオタクのツボを突いてきます。

そして、シャーロックとジョンの冒険が続いていることをさりげなく仄めかしてくれたのが、やっぱりうれしい。こんな大変な時だからこそ、同じ空の下シャーロックとジョンが生きて活躍しているという「想像」が、何よりのプレゼントです。さすがマイクロフト兄さんことゲイティスさん!オタ(もういいか……)

人と人との「交わり」が否定されることになったこの数カ月間。
この異様な日々をマイクロフトに「楽園」と表現させ、シャーロックが選んだ「交わり」を視聴者に思い出させるこの作り。なんていうか、もう「外国のイベント向け映像」に要求される水準を軽く超えてますよね……たった2分19秒で笑わせ、想像させ、考えさせる。(ついでに元ネタももたらす……)やっぱりすごいよゲイティスさん。

本来東京オリンピックを観るためだった4連休がかなわず、悲しい思い、辛い思いをした方もたくさんいらっしゃると思いますが、この思わぬプレゼントに元気をもらった人もきっといっぱいいますよね。ありがとう、マイクロフト兄さん!ミジンコは明日からもがんばります!
(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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この記事へのコメント

- 篠田真由美 - 2020年07月26日 16:23:32

翻訳を有り難う。原典との対照も感謝。

ちなみにその植物は水芭蕉ではありません。コバケイソウじゃないかな。

なんですと…… - ナツミ - 2020年07月26日 16:33:43

篠田真由美様

マジですか!結構長い間ミズバショウだと信じて疑わなかった!!

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プロフィール
Author:ナツミ


シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

エイプリルフール記事を片付けました。

例年、背景画像を変えて違うサイトに擬態したり、ブログ名を変えたりと派手派手なネタが多かったのですが、すっかり過疎った状態で地味にひとつ記事を追加しただけの今年、多くの人の心にひっかき傷を残すことになろうとは……(追記参照)
マジすみませんでした……

ネットを見渡して思ったんですが、ウェブサイトがエイプリルフールに全力でウソをつく!という風習(?)自体が古びつつあるのかもしれませんね。
私は好きなんでやりたいですけど。

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