最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
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ジム・モリアーティーとジョン・クレー

『忌まわしき~』どころか"His Last Vow"も1周めが終わってないのに、何で今さら第2シリーズ!?って話ですよね、ホントすみません!
でもたぶん第1シリーズにも戻ると思う……ザルもいいとこの元ネタ探しブログ・21世紀探偵です。
別件で原作を読み返していて、あれ、これ書いてたっけ?書いてなかったっけ?と思って一応このカテゴリを見直したらなかったので……(どこかの記事に書いてたらすみません!ジムはまだ『キャラクター』カテゴリでも記事がないので、たぶん書いてないと思うですが!)

ロンドン塔で、ジムが展示されているクラウン・ジュエルを身に着けて、玉座に座っている場面。
この後逮捕されるわけですが、この「高貴な罪人」ぶり、赤髪組合のこの場面を思い出しませんでしたか?

「そんなけがれた手でさわるのはよしてもらいたいね」ジョン・クレーは手錠をはめられながらいった。「君は知るまいが、僕はこれで王室の血をうけている身だからね。僕に何かいうときは、『あなた』とか『どうぞ』とかいうきれいな言葉を使うようにしてもらいたい」
「よろしい」ジョーンズが眼を丸くし、苦笑をうかべていった。「では、恐れいりますが、どうぞ上へおあがりください。馬車を求めて、殿下を警察へご案内申しあげたいと存じます」
「それならよかろう」ジョン・クレーは静かにそういって、われわれ三人に頭をさげておき、ジョーンズに護られてしずしずと歩みさった。



"No rush."(急ぐことはない)と落ち着き払って逮捕されるジムと、よく似てる気がします。

この時ジムはロンドン塔だけでなく、イングランド銀行、ペントンヴィル刑務所のセキュリティも破っています。
現代ではコンピューター管理なのでハッキングという形ですが、銀行破りを開始するための携帯のアイコンに、ジムは「豚さん貯金箱」の絵を使っています(貯金箱が豚さんって、どこの国由来なんだろ)。タップすると金貨が溢れ出すのですが、これはきっと、シティ・エンド・サバーバン銀行の地下にあった3万枚のナポレオン金貨。
それにしてもこの場面、皆が皆お茶してるのが可笑しくてたまらない私。お茶の時間律儀に守りすぎだよ、英国人!
クレーは逃亡の時間を稼ぐために、銀行が休みの週末を狙うのですが、ジムも「泥棒カササギ」ぴったりの時間で犯行を終えるために、ちょっと皆の初動が遅れる時間を狙ったのだったりして。

また、ジムはさまざまな機関に内通者を作っていましたが、『赤髪組合』では依頼人の質屋さんに入り込んだ店員が、地下道を掘っていたわけです。銀行の情報が漏れていることから、銀行上層部にも内通者がいたと考えられます。
前代未聞の大胆な手口で「金庫破り」をやってのけたジョン・クレーとジム、似てないでしょうか。

私は、モリアーティにはどうしても「教授」のイメージがあります。『恐怖の谷』で若いマクドナルド警部が「息子を見守る父親」になぞらえたように、ホームズよりだいぶ歳上な印象。
現代版ジムは、どちらかというとこのジョン・クレーに似ている気がずっとしてたんですが、この場面で決定的になりました。
「小柄ですが肉付きがよくて、万事に抜け目のない」「もう三十はすぎていますのに、髭というものが一本もありません」「つるつる顔」「クッキリした子供っぽい顔」「女のような白い手」を持っているというクレーの容姿もジムっぽい。耳にピアスホールがあるのもクレーの特徴なんですが、ジムはどうだったかしら。

ホームズによると、犯罪者としてのクレーの人物像はこんな感じ。

「ジョン・クレーは殺人犯で窃盗犯で、偽金使いでかつ偽造犯人ですよ、メリーウェザーさん。まだ若い男ですが、悪事にかけては怖るべき腕をもったやつです。ロンドンに悪人は多いですが、たとえ他のやつは全部取り逃がしても、あいつだけはぜひ押えてやりたいと思っているくらいなんです。それほどこのジョン・クレーというやつは若くてすごいのです。
祖父は王族公爵で、彼自身もイートンの貴族学校やオックスフォード大学に学んだ男です。手先もよく動けば、頭も鋭くて、いたるところで痕跡は見うけるけれど、なかなか所在を知らせません。たとえば、今週スコットランドでどろぼうを働いたと思うと、来週はもうコーンウォールに現われて、孤児院建設をたねに金を集めているというやつです。私は多年、どうかしてこの男を捕えてやりたいとねらってきましたが、まだその正体を見たこともないという有様なのです」


大絶賛じゃないですか!……と言ったら語弊がありますが、ホームズにここまで言わせる犯罪者もなかなかいないんじゃないでしょうか。
あと、ジムにしてはちょっとフットワーク良すぎか。ジムが自ら動いたのって、この時が初めてですもんね。モリアーティが犯罪界のナポレオンなら、この人は犯罪のデパートっていう感じ。

『赤髪組合』でホームズは見事にクレーを捕らえますが、その前に「二、三回小ぜりあいをやったことがある」らしい。礼を言うメリーウェザー頭取に「私はこのジョン・クレーには、返してやらなければならないちょっとした借りがあったのです。きょうこそその借りをかえしてやったわけです。(後略)」と答えています。これは、ジムがシャーロックに対して繰り返す"I owe you"(君には借りがある)という台詞に呼応しているのではないでしょうか。

それにしてもジョン・クレーがこれっきり出てこないの、もったいないですよね。いいキャラなのに。
どうにか刑務所から出て、暗躍してたりしたら面白いんですが。
クレーがトンネルを掘る肉体労働なんてやらなそうなこと、赤髪組合のトリックには協力者が必要なことから、この事件は組織的な犯罪だと見る研究者もいるそうです(Wiki『赤毛組合』
逮捕されたクレイが余裕綽々なのにも、何か裏がありそうですよね。
グラナダ版ではこの事件、モリアーティーが裏で糸を引いてたことになってました。やっぱり『赤髪組合』は、犯罪王にふさわしいお話なんだと思います。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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この記事へのコメント

なっ、なるほどっっっ - 篠田真由美 - 2016年10月03日 08:38:21

 おおっ、と膝を打ってしまいました。従来のモリアーティ像をくつがえすドラマの斬新さに目を奪われて、原作との相違ばかり見てしまっていましたが、確かに『赤毛連盟』の真犯人にはドラマのジムを思わせるところがあります。公爵の孫、なんて、血統の良さが強調されているのも、ホームズものの犯人の中では異色の感があるし、うむうむです。
 耳にピアス。ヴィクトリア朝の頃って、ピアスはどの程度用いられていたのでしょうか。特に男性には。日本人的には男性のピアスって、長らく特殊イメージがつきまといましたよね?

マイクロフトが鍵かも…… - ナツミ - 2016年10月03日 21:24:17

篠田真由美様

ご賛同ありがとうございます!容姿はとても似ている気がしますよね。
「耳輪の穴」について、クレーは雇い主のウィルスンさんに「昔、ジプシーに空けてもらった」と説明していました。
検索すると、ピアスには「悪魔をよせつけない」など呪術的な意味合いがあり、その歴史はずいぶん古いようです。ヨーロッパでは貴族がピアスをつけていた、とか男性が女性に忠誠を誓うためにつけた、なんていう情報も出てきます。シェイクスピアも肖像画を見るとピアスをしています。
ただ、ヴィクトリア朝の男性の服装にはそぐわないような気がします。雇用者にわざわざ説明するくらいですから、そんなに一般的ではなさそう。

ジムには従来のモリアーティ像をくつがえす斬新さがあるのですが、「自分の手は汚さない」という点はしっかりモリアーティなんですよね。そんなモリアーティが『最後の事件』だけはシャーロックと直接対決する、というのは原作通りなんですが、「権力者で、自分ではlegworkはやらない」というなら、よく考えると対になっているのはマイクロフト、という気もするんです。実際、現代版マイクロフトの登場のしかたはモリアーティか?と視聴者をミスリードするような感じでしたし、ジムが"Dear me, Mr. Holmes. Dear me!"というメールを送るのは、シャーロックじゃなくてマイクロフトでした。

原作では、マイクロフトが英国政府そのものと呼ばれるほどの実力者、というのは後付け設定だったし、モリアーティーは若造のホームズにちょっかいを出されて仕方なく動いた、という感じでした。
現代版ではマイクロフトの強大さが初めからわかっているので、現実的にはそちらが狙われそうなんですが、モリアーティがシャーロックの宿命のライバルという構図は既に決まっている。だったらモリアーティ像はシャーロックの対になる「legworkを厭わない、若々しい人物」が良いだろう、ということになり、クレーに近いジム像が出来上がったのかもしれません。

似たとこ探し - 篠田真由美 - 2016年10月09日 18:14:28

ジム・モリアーティとジョン・クレーの似たところ、もう少し思いつきましたので追伸。どちらも一見好青年で、ふれあった周囲には好感を持たれていた。当人の側からすると、正体を隠して潜入し、被害者の近くから密かに犯行を、それもえらく大がかりで手間のかかる犯罪を企み決行した、というのも共通点ですね。原作ホームズでもこういうタイプの犯人像は珍しい気がするのですが、実際
正典60本を分類して分析すればいいんだけど、そこまでやる時間的余裕がないのでごめん。
ジムにはピアス・ホールはないみたいですが、日本人の偏見というか迷信というかで、ゲイは左耳にピアス、とかいいませんでしたっけ。だからジョン・クレーがピアスの穴あり、というのと、ジムがゲイだとシャーロックに指摘されるところに、通うものを感じたのは、正しくない連想かもしれませんが、それも自分的にはありました。

結局どっち? - ナツミ - 2016年10月10日 02:54:21

篠田真由美様>

>どちらも一見好青年で、ふれあった周囲には好感を持たれていた。当人の側からすると、正体を隠して潜入し、被害者の近くから密かに犯行を、それもえらく大がかりで手間のかかる犯罪を企み決行した、というのも共通点ですね。原作ホームズでもこういうタイプの犯人像は珍しい気がするのですが、

う~ん、ぱっと思いつくのは『バスカヴィル家の犬』の犯人でしょうか。わりとあからさまに変人でしたが……

> ジムにはピアス・ホールはないみたいですが、日本人の偏見というか迷信というかで、ゲイは左耳にピアス、とかいいませんでしたっけ。

前回のコメントを頂いた時ちょっとピアスの歴史を検索したのですが、こちらのサイトによると
http://matome.naver.jp/odai/2139774166680479401
ヨーロッパでは男女ペアで片耳ずつ分け合い、お守りのような使われ方をしてたそうです。その際、男性は左側に女性を歩かせ右側を歩き、守るための武器を右手に、ピアスを左耳につけた。女性は右耳に。だから右耳にピアスをつけた男性は女性側の立場でゲイ、ということになるらしいです。まあ左耳でも右耳でも、迷信に変わりはないのでしょうが……

>だからジョン・クレーがピアスの穴あり、というのと、ジムがゲイだとシャーロックに指摘されるところに、通うものを感じたのは、正しくない連想かもしれませんが、それも自分的にはありました。

ジムがゲイだというのは結局フェイクだという結論でしたが、本当のところどうなんでしょうね。
アイリーンにしろジムにしろ、シャーロックが性的なことに疎い(のを、わりとコンプレックスにしてる)とこを的確に突いてくるし、ジョンも「そこんとこどうなんだ」と思ってるのをシャーロックは感じ取ってて、『忌まわしき~』でワトスンが問い詰めて来る場面に表れてる気がします。
いずれにしてもシャーロックにはある意味で脅威だとして、ジョンがヘテロでアイリーンがバイセクシャルなら、ジムはゲイなのがバランスいい気がする。いや、バランスで決めることでもないんですが……

ジョン・クレーに関しては情報が少なくて何とも言い難いですが、どうなんでしょう。この場合、ピアスは性的な志向を暗示するものなんでしょうかね。そういう目を持って読むと、髭がないとか、女性のような手、という描写に引っかかるものを感じますね。

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Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスンがより好きです。

2017年エイプリル・フールお片付けしました。お付き合いありがとうございました!片付けきれてないところがあったらお知らせいただければありがたいです。

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