最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
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ホームズと恋愛

ホームズは恋愛対象として女性に興味を寄せたという記述はないものの、必要とあれば感じよくふるまうことができたようです。おびえている女性に優しい気遣いを見せて慰めたり(まだらの紐・他)、子供にお小遣いを上げて母親に取り入ったり(四つの署名)なんてお手のものです。

「犯人は二人」では、捜査のためにアガサという女中を誘惑して婚約にまで漕ぎつけているくらいですから、その気になればかなりモテたことでしょう。

「止むをえない措置だったんだ。まず景気のいい鉛管工になったのさ。名まえはエスコットというんだ。毎晩彼女を散歩につれだしてね。のべつおしゃべりをしたものさ。うっふ、ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃだ!(後略・延原謙訳)」

最後の一文に若干「やけっぱち感」がある気がしますが……

しかしこれがワトスンと二人だけになると、女性に対する悪口が出てくる出てくる!
特に「四つの署名」ではワトスンがメアリ・モースタンに非常にわかりやすく惹かれているので、からかってるのか、目を覚まさせようとしてるのか、ちょっと必死です。

「僕ならあの人たちにはあんまり喋らないね。女はとかく安心ができない。よほど立派な女でもねえ」(延原謙訳)


シャーロックも、結構普通に女性に感じよくしてますよね。
いや、そもそも彼は今のところ、原作のホームズほど女性の悪口を言ってません。サラには心を閉ざしまくってましたが(でも救出場面ではちゃんと気遣って慰めてあげるところに、『身についた』レディファーストを感じます。床を転がりながらジョークを飛ばすジョンにも)、スー・リンやヴァン・クーンの秘書のアマンダとは自然にコミュニケーションがとれてました。モリーの協力が必要な時はそれなりにお世辞を言うこともできます。ヴァン・クーンと同じビルに住む女性とインターホンで話すところ、3話の「ジェイナス・カーズ」のエピソードで被害者の妻に話しかけるところなんて、結構陽気な男性も演じられるんだな、と意外な感じでした。女性たちには変な人と思われたでしょうが、いずれも目的は達しています。別に好かれたいとも思ってないシャーロックにしてみれば、結果オーライですよね。(むしろ隣で見てるジョンが、実にいたたまれなそうな表情…)
男性・女性関係なく、必要なら愛想よくするし不必要ならしない、という感じですね。

そんなシャーロックに恋している女性、モリー・フーパー。
ブログによると友達には「リトル・ミス・パーフェクト」と呼ばれていたそうです。まじめにコツコツ努力して、バーツ(聖バーソロミュー病院)に職を得たようです。その一方で恋愛経験は乏しいらしく、シャーロックに一目惚れして以来、彼の前に出ると「まるでマウスみたい」になってしまいます。

立派な職を持ち、しっかりと自立しているのに恋愛には不器用で、そのことをすごく気にしている30代女性というと「ブリジット・ジョーンズの日記」を思い出します。
モリーやブリジットのような女性はこの作品の中では「シングルトン」(日本で言うと『おひとりさま』みたいな言い方でしょうか。『負け犬』みたいな否定的なニュアンスはあまりない感じです)という造語で表現され、社会現象を巻き起こしたそうですが、原作の時代はどうだったのでしょう。

主人公が女性に興味なしと言って憚らないせいで、男の世界のように思われがちなホームズ・シリーズですが、さまざまな女性が登場します。
貴族階級に属する女性(『第二の汚点」のヒルダ・トリローニ・ホープ夫人など)から最下層の女性(『高名な依頼人』のキティ・ウィンター)まで、その立場の多彩さは当時の社会を反映しているといってよいと思います。

ガイ・リッチー監督の映画「シャーロック・ホームズ」を観るとよく表現されているのですが、ホームズやワトスンが活躍した時代は産業革命の時代でした。
産業革命によってタイピスト、電話交換手、工場勤務などの雇用が増加し、多くの女性に社会で働く機会をもたらしました。
それまでは女性の職業と言えば、裕福な家庭での使用人が圧倒的に多かったようです。家事労働の内容は本当に「ご主人様」次第で、24時間拘束されているようなもの(家庭教師だって住み込みの使用人)ですから、家の外の仕事につけるようになったのは、当時の女性たちにとっては画期的だったのではないでしょうか。始業時間から終業時間まで働けば(またはノルマをこなせば)自由な時間がある、という今の女性にとっては当たり前のことが、使用人として働く女性たちにはほとんど認められていなかったのです。

そんな自由な空気を感じさせる女性が、「花婿失踪事件」に登場するメアリー・サザーランドです。
彼女はタイピストの仕事で十分暮らしていけるくらいの収入を得ていて、さらに亡父から自分名義の財産を受け継いでいます。

彼女はこんな服装で221Bに現れます。

「(前略)石版いろで鍔のひろい麦藁帽子に、煉瓦いろの鳥の羽根を一本飾っていた。ジャケットは黒で、それに黒いビーズを縫いつけ、黒い玉の縁飾りがあった。衣装はコーヒーよりもすこし濃い目の茶いろで、襟と袖口に紫のビロードの飾りが小さくついていた。手袋は鼠いろで、右のひとさし指に穴があいていた。そのほか靴はみなかったが、小さな丸い金のイヤリングをつけていた。全体の様子は、下品で、無反省ではあるが、暮し向きは相当ゆたかだと思った」(延原謙訳)

ワトスンの目から見て、センスが良いわけではないようですが、これは、彼女が自分のお金で、つまり自分の意志で好きなものを買えるということを表しているんじゃないかと思います。たとえ下品なものを選んでいたり、コーディネイトがちぐはぐだとしても、その奇妙さは、誰からのお仕着せでもなく、彼女が自分で自分の着たいものを選んだ結果ではないでしょうか。

経済的には独立している彼女も恋愛には不器用で、ある時現れた男性にころっと参ってしまいます。
花婿は式当日に姿を消してしまうのですが、実はこの男性、彼女の財産を狙う男の変装。
彼女の心をいなくなった男に向けさせておくことで、独身を貫かせ、財産を自由にしようとしたわけです。

それを見抜いたホームズは男の卑劣さに怒りを見せたものの、処方箋は「放っておく」というなんとも消極的なもの。

彼女には、ほんとうのことを知らせても、おそらく信じまい。ペルシャの古語にあるじゃないか―――虎児を捕うる者には危険あり。女性より幻影を奪う者にもまた危険ありとね。(後略・延原謙訳)


この言い訳、彼女のためを思って、というよりは「自分が関わるのがイヤだから」ですよね。自分だってアガサに同じようなこと(婚約→失踪)して利用してますけど、特にアフターケアをした様子はないですしね。


シャーロックも、モリーの恋心を利用してモルグに便宜を図ってもらっています。
ホームズに一方的に利用される女、といえばアガサを思い出すんですが、
「ITのジム」に同じような目に遭わされることを考えると、どうもメアリー・サザーランドに近いようです。

・経済的に自立したキャリアウーマンである
・どこか垢抜けないところがある(モリーも口紅の塗り方をコニー・プリンスに相談したりしてます)
・恋愛には不器用で、思い込みが激しい
という共通点があります。

前述のブリジット・ジョーンズもこれに当てはまるんですが、一番大きな特徴は、恋愛への執着ですよね。自活できているので男性に養ってもらいたいという腹があるわけではないのですが、それと別の次元で「パートナーを持ちたい」という願望がとても大きい。そして、その願望を充足できない自分に不安や焦りを感じてしまう。
こういった感情というのは、理屈では説明しづらいものです。自分自身の本能や意志のようでもありますが、社会によってコントロールされている部分も大きいと思います。
いずれにしても、恋愛が大きな関心事である社会に暮らす人間にとっては、完全に無関心でいるのは難しいことです。ホームズだって、完全に恋愛に興味がないわけではなく、仕事のために自制していると見受けられます。

1;「最も重要なことは個人の特質によって、事件の正しい判断をあやまらないようにすることだね。僕なんか、依頼者もまた単に、問題にたいする材料の一つであるにすぎぬと思っている。感情のうえの好悪というものは、明快なる推理とは相容れない。僕の見たうちでもっとも心をひかれた美人というのは、保険金ほしさに三人の子どもを毒殺して、死刑になった女だった。それから男でいちばんいやなやつだと思ったのは、ロンドンの貧民のために二十五万ポンド近くも使った慈善家だった」

2;「そんなことはけっしてない。あんな愛らしい婦人はないとさえ思っている。(中略)しかし恋愛は感情的なものだからね、すべて感情的なものは、何ものにもまして僕の尊重する冷静な理知とは相容れない。判断を狂わされると困るから、僕は一生結婚はしないよ」(延原謙訳)


いずれも「四つの署名」からの引用で、1はメアリの魅力に興味を示さなかったホームズをワトスンが「自動人間みたい」「まるで計算機」と評したことに対して、2はメアリと自分の結婚に不満があるのか、と聞くワトスンに対しての「反論」です。
ホームズは決して「自動人間」や「計算機」じゃなくて、美人に心を惹かれたり、メアリを愛らしいと感じたりはするんですよね。でも、仕事を優先するために、その感情を強い意志でもって封印している。

「とはいうものの、女の考えることばっかりはわからないものでねえ。(中略)女はほんの瑣末な動きの中に、大きな意味があったり、とんでもないことをやらかすから、調べてみたらヘヤピン一本のためだったり、カール鏝のためだったり、まったくわからないものだよ。(後略・『第二の汚点』延原謙訳)」


論理の信奉者である彼には、論理を超えた行動をするもの=理解できないもの。
理解できないということは、ホームズにとってひどく居心地の悪いことなのでしょう。

女性の行動の不可解さは、本人にだってコントロールしづらいもの。
ただ、女性だってそれを客観視できないわけではありません。ブリジットにもモリーにも、ジャーナリストや科学者としての顔があります。ブリジットの日記やモリーのブログを読むと、彼女たちは自身の行動の不可解さを自虐的に綴っていることがよくあります。異性である男も不可解だけど、自分たち女も不可解な存在だということを、彼女たちは自覚しているんです。

一方、メアリーのために怒ったにも関わらず、自分の目的のためならアガサに同じことをしても「止むをえない措置」と割り切ってしまうホームズも結構不可解です。
結局男も女も完璧ではなくて、アンビバレンツな部分がいっぱいある。

それを嘆いて愚痴りまくるブリジットの日記や、全てをわかりたいがゆえにわからないものには近づかないようにしよう、自らの感情すらもを理性でコントロールしようとする努力が垣間見れるホームズの物語には、なんだかいとおしさを感じます。それは、かっこいいキャリアウーマンや名探偵である彼らに対する憧れではなく、かっこわるい悪あがきをする人間としての彼らに対する共感だと思います。多くの人が共感できたからこそ、有名な作品になったのでしょうね。

さて、そんなホームズが唯一負けを認めた女性がアイリーン・アドラーです。
(『唯一愛した』と表現している方もたくさんいるんですが、私は『男性として心を動かされた』のじゃなくて『人間同士の頭脳戦で負けた』からこそ、彼にとって特別で、忘れられない女性なのだと思っています)
このアイリーンが出てくる「ボヘミアの醜聞」をベースにしたお話は、Sherlockのシーズン2に用意されているようです。
シャーロックは自分の上を行く女性に、どんな反応を示すんでしょうか。とっても楽しみです。
(ワトスンびいきの私としては、それをジョンがこてんぱんにいやいや、どんな風にブログに書いてくれるのかも、すごく楽しみ!)






















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この記事へのコメント

- RM - 2011年11月26日 13:41:45

今回の記事もおもしろかったです!「四つの署名」の原作では、ホームズはメアリのことをそんなふうに言っているのですね。「判断を狂わされると困るから、僕は一生結婚はしないよ」と言っているのも意外でした。理由があって結婚しないのではなく、はなから考えていないのかと思っていましたから。私もホームズのそういうところが、いとおしくなってきました。

>(でも救出場面ではちゃんと気遣って慰めてあげるところに、『身についた』レディファーストを感じます。床を転がりながらジョークを飛ばすジョンにも)

これはジョンのファンとしては確認しなきゃ、というわけで、観てきました。いいなあ、ジョン。シャーロックもいいなあ。サラの肩にでも手をおいてあげたら、もっといいけど。暗くてみえなかっただけでしょうか。

>(むしろ隣で見てるジョンが、実にいたたまれなそうな表情…)

これも再度観ました!

>(ワトスンびいきの私としては、それをジョンがこてんぱんに、いやいや、どんな風にブログに書いてくれるのかも、すごく楽しみ!)

賛成!

それで、前の記事のコメント欄に書いてくださったことですが、

>あくまで私見なんですが、今までの「ホームズもの」に比べて、BBC版は主人公だけでなくいろいろなキャラクターに人気が分散されている気がするんです。
放映と同じタイミングでネットがあるからそういったことが目に付きやすいだけで、グラナダ版もそうなのでしょうか?

うーん、これはむずかしいご質問ですが、やはりグラナダ版は圧倒的にホームズに人気があるように思います。ホームズがまず一番で、その次に、という感じで。BBC版も、私がへそまがりなだけで大部分の方はそうなのだと思っていましたが、ワトスンが一番、という人もそれではかなりいるのですね。

ナツミさんがワトソニアンだということは承知しておりますが、ここで質問です。BBC版ではナツミさんは、誰が「一番」なのですか?それともこれをうかがうのは、このブログを読み続けていく身としては、野暮でしょうか?

- ナツミ - 2011年11月27日 10:32:46

>BBC版ではナツミさんは、誰が「一番」なのですか?

ジョンです!(お気遣いいただいたのに、きっぱり言ってすみません・・・)

RMさんはやはりグラナダ版ではホームズでしょうか?でもBBC版はジョン、「人」を見て評価してらっしゃいますね。
私はどうも、ワトスンの「役割」(変人に振り回されつつも見捨てられない常識人、とでもいいましょうか)が好きみたいなのですが、ジョンは私にとって理想のワトスンなんです。放映前にスチールを見ただけでも「彼がワトスンだな」と直感しました。(それはシャーロックもそうなんですが)

でもホームズがいないとワトスンの「役割」は発生しないので、やっぱりシャーロックあってのジョンなのでしょうね。

グラナダ版の「人気のバランス」についても、ありがとうございました。
誰が人気かというのは、しっかりしたデータがあるわけではないので、はっきりとは答えづらい質問ですよね・・・すみません!
でも、実は私も同じような印象を抱いていたんです。
グラナダ版には「○○一座」というような、主人公(座長)を軸として他の役が周りを固めている、というスタイルがある気がします。
BBC現代版も「SHERLOCK」というタイトルである以上、そのスタイルをとっているはずなのですが、もう少し一つ一つの役がクローズアップされていて、たとえばもしシャーロックが出てこなかったとしても、ジョンが主役の話、レストレードが主役の話など、容易に想像がつくんです。最近日本で人気があるドラマの脚本家さんにも、こういう(主役と脇役の垣が低い)お話を書く方が増えてきたような印象を持っています。)

グラナダ版でも、ホームズはほとんど出てこないでマイクロフトとワトスンが活躍するお話がありましたね(ジェレミー・ブレットの体調が優れなかったという理由があったと記憶していますが)。
BBC現代版で誰に人気が集中しているか、にもはっきりしたデータがあるわけではなくて、Fanfictionの投稿サイトで漠然と傾向がわかるという程度なのですが、レストレードやマイクロフトもファンの支持を集めているようです。もちろんシャーロックとジョンの活躍もずっと見ていたいですが、彼らの「スピンオフ」作品も面白そうだなあと思います。

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Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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