最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
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ホームズと宇宙

『忌まわしき花嫁』の中で、ホームズは「黄道傾斜角」にずいぶんこだわってましたね。

ホームズも現代版のシャーロックも、知識量はすごいのに、本人が必要ないと判断した分野にはまったく興味を示しません。
"The Great Game"で、シャーロックは「太陽系のことを知らない」件でジョンにドン引きされてました。

「だって太陽系の知識ぐらい!」
「くそ!それが何だっていうんだ! 僕らが太陽の周りを廻ろうと、月の周りを廻ろうと、テディベアみたいに庭を廻ろうと、何の違いもない!」(拙訳)


原作でも、『緋色の研究』でワトスンドン引き。

だがそんなのはまだよいとして、偶然のことから、彼が地動説や太陽系組織をまったく知っていないのを発見したとき、私の驚きは頂点に達した。いやしくもこの十九世紀の教養ある人物で、地球が太陽の周囲を公転しているという事実を知らぬものがあろうとは、あまりの異常さに私はほとんど信じがたくさえあった。
(中略)
「だって太陽系の知識くらい……」と私は抗議した。
「僕にとってそんなものがなんになるものか!」彼はせきこんで私の言葉をおさえた。「君は地球が太陽の周囲を回っているというが、たとえ地球が月の周囲を回転しているとしても、そんなことで僕の生活や僕の仕事に、なんの変化もおこらないんだからね」



あまりにホームズの知識が偏っているので、ワトスンはリストまで作っちゃってます。

一、文学の知識---ゼロ
二、哲学の知識---ゼロ
三、天文学の知識---ゼロ
四、政治学の知識---きわめて薄弱
(以下略)


ここに「天文学の知識ゼロ」とあるのに、『ギリシャ語通訳』では、太陽黄道傾斜角についてワトスンと話す場面があるのです。

ある夏のこと、午後のお茶のあとで、話はゴルフ・クラブのことから、黄道の傾斜度変化の原因におよび、ついには隔世遺伝と遺伝的特性の問題にとぶといった具合で、いたってとりとめないものだった。
ある人物に与えられた特別の才能というものが、どの程度その祖先によるものか、またその人の少年時代のしつけによるものかというのが、論点となった。



ここから兄のマイクロフトの話になり、二人はディオゲネス・クラブに向かいます。記念すべき、マイクロフト初登場の場面ですね。
それにしても、『緋色の研究』の時点でホームズの天文学の知識は本当にゼロだったのか。

1.ホームズには天体の知識があったが、そのことをワトスンに隠していた
2.この時点でのホームズは、本当に天文学のことを知らなかった(あるいは、SHERLOCK風に言うと『ディスクの容量を空けるためにデータを消去していた』)。その後、必要に応じて勉強しなおした


この2つのうちのどちらかだとしたら、私は1じゃないかと思っていました。中学生くらいにはよくいますからね、殊更常識はずれなところを見せつけて、友達を驚かせようとする子が……。それに、「文学の知識ゼロ」とワトスンに断じられてますが、後にホームズはさまざまな文学作品の引用をします。(過去記事:『引用と矛盾』)

しかし、『SHERLOCK』では一貫して2のスタンスを取るようです。
"The Great Game"では、シャーロックが「知らない」と言っていたはずの天体の知識を使って人質の子どもを救うので、私は「ギリシャ語通訳だ!」と思ったのですが、よく考えれば直前のプラネタリウムの場面で「インプット」が行われているんですよね。
(原作同様、もともと知っていたのか、プラネタリウムで学んだから事件解決できたのか、はっきりさせないところが作り手の巧さで、シャーロックというキャラクターに奥行きを与えているんだとも思うのですが)

そして、『忌まわしき花嫁』。(前から謝ろうと思ってたのですが、サブタイトルが日英混ざっててすみません!『忌まわしき花嫁』だけは日本語での公開が早かったから、日本語でインプットされちゃってるもので……)
こちらでは、冒頭で話題に登った「マナーハウスの事件」が、実は天文学絡みだったということになってます。
この「マナーハウスの事件」も『ギリシャ語通訳』から。原作とほとんど同じ会話が繰り返されます。

"By the way, Sherlock, I expected to see you round last week to consult me over that Manor House case. I thought you might be a little out of your depth."
“No, I solved it,” said my friend, smiling.
“It was Adams, of course.”
“Yes, it was Adams.”

「ところでシャーロック、先週は例のメーナ事件で僕のところに相談にくるかと思っていたが、何しろあれは、お前にはすこし荷がかちすぎているからな」
「いや、あれはもう解決をつけましたよ」ホームズはにこにこしている。
「あれはやっぱりアダムズだったろうね」
「ええ、アダムズでした」



原作では、アダムズについてはこれ以上は語られません。
『忌まわしき花嫁』では、このアダムズが王立天文学会に黄道傾斜角についての論文を書いたところ、もっと優れた論文を読んでしまい、嫉妬に駆られて殺してしまったということになってます。

(『忌まわしき花嫁』の)ホームズが黄道傾斜角の論文を読んでいるのは事件解決後、レストレードが来ていた時でしたから、『マナーハウスの事件』では、シャーロックやホームズの言うとおり、天体の知識は「仕事」自体には必要なかったのかもしれません。
しかし、ホームズは「もっと賢い男(ワトスン談)」であるマイクロフトに「理解できた」と言いたいがために、論文を読みふけります。そんなホームズに、マイクロフトは

"It is no easy thing for a great mind to contemplate a still greater one."
「偉大な頭脳にとって、さらに偉大な頭脳に向き合うのは簡単なことじゃない(拙訳)」


と突きつけます。

オチがわかってから見れば、このマイクロフトもまた、シャーロックの頭のなかのマイクロフトです(『英国政府そのもの』だから、英国が肥え太ってる時代はマイクロフトも巨大なんでしょうか)。
シャーロックが取っ組み合わなければならない、「自分よりも優れたもの」って何なのでしょうね。
本人が死んでいるにしても、胸に巣食う「ジム・モリアーティの亡霊」が正解といえば正解なのかもしれない。
でも、この場面でのマイクロフトの文脈から言うと、それはシャーロックが深く理解し得ない「女性」かもしれないし、あるいは自分より優れたものに「殺人的な嫉妬」を抱かなければならない、業のようなものが真の敵なのかもしれない。
作品が深いのか、私が勝手に庭をぐるぐる回っているだけなのかわからないのですけど、これだけ視聴者の妄想を掻き立てるような台詞を畳み掛けてくる『SHERLOCK』って、やっぱり「偉大」だな~、と思わずにいられません。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)


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この記事へのコメント

- みっちょん - 2016年09月06日 11:33:00

シャーロックの天文学の知識なのですが、初期の事件で「星を描いた絵画」を見て、描かれたという年代にはなかった「星(超新星でしょうか)」が描かれているから、この絵画は贋作だ、、、って言うシーンが頭に残っています。

シャーロックの天文学の知識って凄いんだな、と思ったのですが。

もしかしたら私の頭の中だけのシーンかも知れません、、、、

それと、シャーロック(及び原作のホームズ)って天動説派ということはないでしょうか。

知らないの(興味がないの)は「地球が太陽の周りをまわっている」かどうかですから。

ほんとは知ってた? - ナツミ - 2016年09月06日 22:28:02

みっちょん様

> シャーロックの天文学の知識なのですが、初期の事件で「星を描いた絵画」を見て、描かれたという年代にはなかった「星(超新星でしょうか)」が描かれているから、この絵画は贋作だ、、、って言うシーンが頭に残っています。
>
> シャーロックの天文学の知識って凄いんだな、と思ったのですが。
> もしかしたら私の頭の中だけのシーンかも知れません、、、、

その場面、(ちゃんと)ありましたよ!第一シリーズ第3話の"The Great Game"、NHK版タイトルは『大いなるゲーム』です。
シャーロックとジョンが太陽系云々で喧嘩するのはこのお話の冒頭なのですが、シャーロックは「どうでもいい」と言っていたはずの天文学の知識で,人質の子どもを救います。それが、みっちょん様のおっしゃっている「贋作を見抜く」場面ですね。
ただしこの知識は、直前の場面でシャーロックとジョンが「ゴーレム」と戦っている時、プラネタリウムのアナウンスとして繰り返し流れています。後のジョンのコメントから言っても、シャーロックはたまたまインプットしたばかりの知識を使ってかろうじてその場を切り抜けた、と考えるのが(少なくとも脚本を読み取る上では)妥当ではないでしょうか。
そう言いつつ、実は私もみっちょん様と同じく「実は最初から知ってたんじゃないか派」なのですが……
その疑いについてはこちらに書いております。
http://sherlock221b.blog.fc2.com/blog-entry-224.html

> それと、シャーロック(及び原作のホームズ)って天動説派ということはないでしょうか。
>
> 知らないの(興味がないの)は「地球が太陽の周りをまわっている」かどうかですから。

面白いことに、シャーロックについては、上にリンクした記事のコメント欄でゆいさんも同じようなことをおっしゃっていました。「天動説派」ではなく、「疑うことなく地動説を受け入れる周りの人間の姿勢を、つまらないと感じている」というニュアンスでしたが……
もし、シャーロックやホームズが文字通り「興味がない」のでなければ、私もゆいさんに近い意見を持っております。

- みっちょん - 2016年09月07日 16:51:34

ナツミさま

ご説明とリンク有り難うございます。

シャーロックのように『ディスクの容量を空けるためにデータを消去』をしたり入力するってどうすればできるんでしょう、、、
私の記憶は取り留めのない断片が無秩序に散らばっている感じで、シャーロックの天文学って何かあったかなと思ったら「シャーロックが星を描いた絵画の前にいる」という静止画像がぱっと浮かんだだけです。

これだけでは何ですので、調べてみると

『緋色の研究』 発生年は 1881年3月  

『ギリシア語通訳』発生年 物語の中には「夏」の「水曜日」のみ記載有りで、

1882年:ブレンド
1884年:デイキン
1888年:ベアリング・グールド、リスト、フォルソム、ザイスラー
1890年:ベル、ホール

と言う説がありました。

私は穏健派的なフォルソムの説が好きなので、『ギリシア語通訳』は1888年に発生したと考えました。『四つの署名』も1888年発生説が多くて、1887年説は少数です。

1881年の『緋色の研究』から7年経ったシャーロック・ホームズはコカインに耽溺(『四つの署名』)、天文学に精通、カーライル(『四つの署名』)にも詳しくなっている。

ワトスンと暮らした7年間に何があったのか! 

ますます判らなくなってしまい、結論のでないレスになってしまいました。

七年間 - ナツミ - 2016年09月10日 13:50:27

みっちょん様

> シャーロックのように『ディスクの容量を空けるためにデータを消去』をしたり入力するってどうすればできるんでしょう、、、

「容量を空けるためにデータ消去」って、できる人は実際にいるんでしょうか?
私は、失敗した後「よし、十分反省したし、もう忘れよう!」と思って、他のことに夢中になると実際忘れてることがよくあるのですが、それは単に容量が小さいだけですよね……

シャーロックは谷崎潤一郎や山下清のような「映像記憶」の持ち主なのかな?と考察してみたこともあります。
あの時は、コメントを寄せてくださった方々とお話して「おそらくそうではないだろう」という結論に至ったのですが、何らかの特殊な覚え方をしているのかもしれませんね。

そして、『緋色の研究』と『ギリシャ語通訳』の間の年数をお教えくださってありがとうございました。

> ワトスンと暮らした7年間に何があったのか! 

『緋色の研究』のホームズは、『四つの署名』以降よりもだいぶ品行方正?な気がします。早寝早起きですし……
コカインに関しては、ワトスンと暮らす前から嗜んでいたけれど、しばらくは遠慮していて、のちに大っぴらになったのかな?
その後、ワトスンによって徐々にコカインの悪癖を捨てさせられているのですよね。ホームズが強烈な分、ワトスンは無力な人のように誤解されがちでしたが、同居人兼親友の影響とはやはり大きいのだなあ、と思います。
ジョンによるシャーロックの変化も色々ありますね。007の存在を知ったり、テレビのショーを観るようになったり。

※谷崎潤一郎と間違えて他の作家名を書いてしまいました。ご指摘を受けて(ありがとうございました)修正再投稿しました。申し訳ありません!

書籍『シャーロック・ホームズ 完全ナビ』発売予定 - カミーノ - 2016年09月13日 19:26:12

毎度、記事に関係ないコメント、お許しを。
ご存知かもしれませんが、25日に書籍『シャーロック・ホームズ完全ナビ』が発売予定だそうです。
翻訳が日暮雅通先生。
書店で座り読みするのが待ち遠しいです。(書店の椅子に座って読むのは「立ち読み」ではないですよね。)
http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336060563/

Re: 書籍『シャーロック・ホームズ 完全ナビ』発売予定 - ナツミ - 2016年09月13日 21:48:35

カミーノ様

> 毎度、記事に関係ないコメント、お許しを。

いえいえ、情報ありがとうございます。
ご興味を持っていただけるような面白い記事を書けるよう、精進致します!

> ご存知かもしれませんが、25日に書籍『シャーロック・ホームズ完全ナビ』が発売予定だそうです。

ここ数年、この手の本が何冊も出るので、金欠の私は本当に「座り読み」してじっくり選びたいくらいのですが、これは「買い」の匂いがすごくする……楽しみにしております。

- みっちょん - 2016年09月15日 09:16:47

「シャーロック・ホームズ 完全ナビ」の出版元は「国書刊行会」ですが、ここはマニアックでディープな読者層をターゲットにしている本を出す出版社ってイメージです。

おまけに(失礼)、翻訳が日暮さん!!!

これは「買い」と思って、アマゾンで予約してしまいました。

刊行日はもうすぐですね。楽しみです。

期待はずれでも、良いんです。「愛」の力でむりやり納得します。

Re: タイトルなし - ナツミ - 2016年09月15日 21:20:16

みっちょん様

楽しみですね~!

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Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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