最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
★コメントを歓迎しております。初めてコメントくださる方は、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。
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「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
記事索引「ブリキの文書箱

最先端の男

Portable Appledore. How does it work? Built-in flash drive? 4G wireless?
「ポータブル・アプルドア。どういう仕掛けだ?フラッシュドライブ内臓か?4Gワイヤレス?」(拙訳)



マグヌッセンが眼鏡から脅迫相手の情報を得ている、と読んだシャーロック。しかし、眼鏡は普通のものでした。

「あんまり時代おくれになるまいとしすぎると、かえって損するよ。いつも時代に先行しているので、僕たちが罰をうけたんだ。」(恐怖の谷)



フレームが細くいかにも華奢で、そんな細工はできなそうな眼鏡なので、シャーロックの推理にはちょっと無理がある気がしました。(私が知らないだけで、技術的には可能なのかもしれませんが……)
でも、そういう発想が出てくるというのは、シャーロックが最先端機器に興味を持っている証拠ですよね。

スマートフォンで情報を検索したり、IP電話で現場のジョンに指示を出したりと、現代のガジェットを使いこなしているシャーロックですが、ホームズも、蓄音機(『マザリンの宝石』)や電話(『隠居絵具師』)など、当時の新しい機器を活用しています。
参照:過去記事『演奏の録音』『遠隔捜査

上記の引用は、『恐怖の谷』から。
この時、ホームズとワトスンは年鑑を利用した暗号を解いていました("The Blind Banker"の元ネタですね)。
この日は一月七日で、二人は前年末に出版されたばかりの新しい年鑑を見ていました。暗号を送った人物は前年版を使っていたことが、引用したセリフにつながるわけです。
「年鑑」とは、

ある特定の地域や分野について、最新のできごと、動向や統計などを内容とし、毎年あるいは1、2年おきに刊行される出版物。
「コトバンク」日本大百科全書(ニッポニカ)の解説より


ホームズが参照したのはホイッティカー年鑑
英国の出版業者ジョゼフ・ホイッティカーが1868年に創刊した、政治・経済・文化関係を扱う年鑑です。「普遍的に使用されている」というホームズの口ぶりからすると、かなりポピュラーなものだったようです。
この時は暗号の材料として使用されましたが、年鑑はホームズにとって、ちょうどシャーロックのスマートフォンのようなものだったのでしょう。
もちろん、新聞も活用しています。

といって彼は、ロンドン中のいろんな新聞から切りぬいて日付けの順にはりこんだ大きなファイルをとりおろして、ページを繰った。
「どうだい、まるでうめき声と哀訴と嘆願のコーラスだね。それぞれ事情のある事件でごったがえしている。異常事の研究者にとっては、見のがしがたい格好の猟場だよ。(後略・『赤い輪』)



情報を求める時は、自ら広告を出すことも。

「この広告を読んでみたまえ。あのあとですぐに、全市の新聞に僕が送ったものだがね」
そういって彼が夕刊を投げてよこしたので、示されたところを見ると、拾得物広告欄の最初につぎのような広告が出ていた。

 今朝ブリクストン通りのホワイト・ハート酒場とホランド・グローヴの中間の路上にて、金製カマボコ型結婚指輪一個拾得す。今夕八時より九時までにベーカー街二二一番Bワトスン博士まで申し出られたし。 (『緋色の研究』)



アプルドアの元ネタは別項に譲りますが、ミルヴァートンが恐喝に使う証拠の手紙などは、金庫に保管されていました。
原作のホームズは、自作のアーカイブで情報を整理しています。

シャーロック・ホームズは暖炉の片側に陣どって、むっつりと、例の犯罪記録に索引をつけているし、(後略・『オレンジの種五つ』)


「(前略)ちょっとその本だなから、僕編集の伝記便覧をとってくれたまえ」
彼はいすの背によりかかって、葉巻の煙を盛んにはきながら、のらくらとページをくって、
「 Mの部は秀逸ぞろいだな。モリアティは全巻を通じての大ものだが、そのほか毒殺業者のモルガンがあるし、ここには思い出しても胸の悪くなるメリデューがあるし、マシューズがいる。こいつはチャリング・クロス駅の待合室で、僕の左の犬歯をたたき折った奴だ。それから、ああ、ここに今夜の先生がいた」(『空き家の冒険』)



電報や電話、年鑑、新聞、索引帳など、原作のホームズが活用していたものがインターネットで賄えてしまうのが21世紀版の大きな特徴ですね。インターネットの普及以前でも、それなりに「現代版」は作れたはずですが、少なくとも捜査の場面は、原作とそれほど変わらない印象だったんじゃないでしょうか。
ネットにおける情報収集や拡散の速さが、シャーロックの失墜や復活と密接に関わっているのもうまいなあ、と思います。

その一方で、シャーロックを演じているベネディクト・カンバーバッチが、新聞の社交欄に広告を出すという「昔ながらの」形で結婚の報告を行ったというニュースはとても興味深かったです。
原作の時代と変わらない伝統や風景と、現代ならではの技術。
その対比をくっきりと描けるロンドンという舞台が、『SHERLOCK』という作品の成功要因のひとつなのでしょうね。

(原作からの引用はすべて延原謙訳から。『アプルドア』『ホイッティカー』の表記も延原訳を参考にしました)
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この記事へのコメント

通信の最先端、科学の最先端 - ak - 2015年07月16日 21:12:19

ナツミ様

こんばんは、こちらにも。
探偵という職業は、いわば「通信」「情報収集」において最先端にいなければならない存在ともいえますね。でも、時たま裏をかきすぎて、それが失敗の元となるわけですが。原作やグラナダ版の場合は、その時々で最新とされるものがどのようなものであったのか、それを知るのもまた一興であるかと思います。
日本もそうですが、ある程度歴史のある国では、新旧渾然一体というのは結構ありがちで、その両者の不思議な融和、またはギャップを楽しむのも面白いですね。

ところで「最先端」という言葉を見て、ガリレオシリーズの2007年放送分で、先端をキーワードにした放送回があったのを思い出しました。シリコンウェハーを使ったブローチが出てくる回で、これにヒントを得た湯川が超音波を使った殺人という結論にたどり着くわけですが、これもまたある意味最先端といえるかもしれません。この中では、学生たちが総動員されて検索するシーンが登場します。

湯川イレギュラーズ…… - ナツミ - 2015年07月19日 15:22:39

ak様

> 日本もそうですが、ある程度歴史のある国では、新旧渾然一体というのは結構ありがちで、その両者の不思議な融和、またはギャップを楽しむのも面白いですね。

日本の京都などが舞台でも面白いかも!
でも、明治時代の小説の現代版を作るとしたら、少なくとも屋外の絵ヅラはほぼ100パーセント現代のものになってしまうんじゃないかしら。あれだけ動き回らせてもそこかしこに原作と同じ風景が残っているのは、ヨーロッパならではじゃないかと思います。

> ところで「最先端」という言葉を見て、ガリレオシリーズの2007年放送分で、先端をキーワードにした放送回があったのを思い出しました。シリコンウェハーを使ったブローチが出てくる回で、これにヒントを得た湯川が超音波を使った殺人という結論にたどり着くわけですが、これもまたある意味最先端といえるかもしれません。この中では、学生たちが総動員されて検索するシーンが登場します。

そうなのですね。最先端の知識を犯罪に使われたら、恐ろしいですよね。ホームズも「医者が犯罪者になったら恐ろしい、学識も度胸もあるから」というようなことを言っていたと思います。科学者だってそれにあたるのかも。
それにしても湯川さんはゼミの学生を使うのか!まさか単位をエサにしてるんじゃ……いや、人望ですよね⁉

『ガリレオ』そして『相棒』 - ak - 2015年07月20日 13:15:02

ナツミ様

こんにちは。
暑中お見舞い申し上げます。
リプありがとうございます。

>でも、明治時代の小説の現代版を作るとしたら、少なくとも屋外の絵ヅラはほぼ100パーセント現代のものになってしまうんじゃないかしら。あれだけ動き回らせてもそこかしこに原作と同じ風景が残っているのは、ヨーロッパならではじゃないかと思います。

古い建物をうまくドラマに使うという方法もあるかとは思うのですけどね。もちろん経費が掛かることだとは思いますが、特に制作側がドラマを海外展開したいのであれば、そういうのも検討してほしいです。独自色を出すのも大事でしょうね。その意味で、このガリレオシリーズの京大の煉瓦の建物、これはなかなかいいなと思っています。

>。ホームズも「医者が犯罪者になったら恐ろしい、学識も度胸もあるから」というようなことを言っていたと思います。科学者だってそれにあたるのかも。

最新鋭の技術を使って悪いことをしてしまうわけですから、相当怖いですね。それを考えれば、なぜモリアーティが普通のワルでなく数学者であったか、十分に察知できます。

>それにしても湯川さんはゼミの学生を使うのか!まさか単位をエサにしてるんじゃ……いや、人望ですよね⁉

「湯川研究室イレギュラーズ」でしょうか(笑)。栗林さんはちょっと例外ですが。

あと、ちょっと話が逸れますが、『相棒』シリーズを観られたことありますか。私も直近のシリーズいくつか観ているところですが、2013年お正月放送回で、イギリス色がかなり強いものがあります。元々このシリーズの主人公である杉下右京が、イギリス繋がりという設定ですが、地方の旧家が舞台で、ミス・マープルとホームズの雰囲気がかなり伝わってきます。ちなみに、ミス・マープル役のジュリア・マッケンジーさんの吹替えの藤田弓子さんも出演していますね。そのうち記事にする予定です。

『相棒』みてますよ~ - ナツミ - 2015年07月21日 03:30:02

ak様

私からも、暑中お見舞い申し上げます!

> 古い建物をうまくドラマに使うという方法もあるかとは思うのですけどね。もちろん経費が掛かることだとは思いますが、特に制作側がドラマを海外展開したいのであれば、そういうのも検討してほしいです。独自色を出すのも大事でしょうね。その意味で、このガリレオシリーズの京大の煉瓦の建物、これはなかなかいいなと思っています。

日本の古いものと今のものを生かしたドラマ、私も見てみたいです!

> あと、ちょっと話が逸れますが、『相棒』シリーズを観られたことありますか。私も直近のシリーズいくつか観ているところですが、2013年お正月放送回で、イギリス色がかなり強いものがあります。元々このシリーズの主人公である杉下右京が、イギリス繋がりという設定ですが、地方の旧家が舞台で、ミス・マープルとホームズの雰囲気がかなり伝わってきます。ちなみに、ミス・マープル役のジュリア・マッケンジーさんの吹替えの藤田弓子さんも出演していますね。そのうち記事にする予定です。

初期の『相棒』はわりと観ているのですが、亀山さんが卒業してしまったあたりから毎回きっちりは観なくなってしまいました。でも相変わらず好きですよ観始めると最後まで観ずにはいられないです。!熱心なファンの友人もいますし、両親は毎週きっちり観ているので、大まかな流れは知っている、という感じでしょうか(カイトくんシリーズのあの最終回とか……)。
次の相棒役は反町隆史さんだそうですね!「右京さんの相棒の名は『か』で始まって『る』で終わる→次の相棒は刑事犬カールだ!」という説をわりと本気で信じていたのですが、ふたを開けてみたら人間でよかったです!

相棒はカール - ak - 2015年07月25日 12:05:13

ナツミ様

リプありがとうございます。

>初期の『相棒』はわりと観ているのですが、亀山さんが卒業してしまったあたりから毎回きっちりは観なくなってしまいました。でも相変わらず好きですよ観始めると最後まで観ずにはいられないです。!熱心なファンの友人もいますし、両親は毎週きっちり観ているので、大まかな流れは知っている、という感じでしょうか(カイトくんシリーズのあの最終回とか……)。

あの逮捕される?最終回は結構衝撃的だったようですね。
ベテラン杉下右京と、その時々の相手の呼吸もまた見どころの一つですし、推理・捕物関係は、互いに異なる2人が協力し合うと改めて面白いなと感じる次第です。

>次の相棒役は反町隆史さんだそうですね!「右京さんの相棒の名は『か』で始まって『る』で終わる→次の相棒は刑事犬カールだ!」という説をわりと本気で信じていたのですが、ふたを開けてみたら人間でよかったです!

「刑事犬カール」懐かしい…!
犬のホームズもいることですからね、あながち無理な話ではないかと。ちなみに私は子供の頃アルセーヌ・ルパン、その後ホームズの本を読んで育ち、ある程度成長してからテリア版、同時進行でグラナダ版、そしてスピルバーグ製作の『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』を観ました。
しかし今回も「か」で始まり「る」で終わる、杉下右京のこだわりが活かされた名前になるのでしょうね。それを予想するのも番組ファンの楽しみの1つなのかも。

ところで『エレメンタリー』が放送されているのは関東地方のみなのですね。
実は先日たまたまお昼頃のテレ東系列を観る機会があって、番組表もチェックせずに電源入れたら、全く違ったのをやっていてがっかりでした…。

かで始まってるで終わる - ナツミ - 2015年07月26日 13:48:54

ak様

> あの逮捕される?最終回は結構衝撃的だったようですね。
> ベテラン杉下右京と、その時々の相手の呼吸もまた見どころの一つですし、推理・捕物関係は、互いに異なる2人が協力し合うと改めて面白いなと感じる次第です。

逆に言うと、ホームズとワトスンがそのパターンを確立したのかもしれませんね。
私はひょっとしたら『ホームズ』も、推理物というよりバディものというくくりで好きなのかもしれません……
シャーロックが、推理じゃなくてたとえば引っ越しの天才とかでも、それはそれで観るような気がします。


> ちなみに私は子供の頃アルセーヌ・ルパン、その後ホームズの本を読んで育ち、ある程度成長してからテリア版、同時進行でグラナダ版、そしてスピルバーグ製作の『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』を観ました。

ルパンが先なのですね。
私が一番最初に出会ったシャーロック・ホームズはたぶん「ドラえもん」だと思います。(『シャーロック・ホームズセット』という秘密道具のお話があって、導入部にのび太がホームズに憧れるくだりがあったような気がします。藤子不二雄が描いたホームズはかっこよかった!)

> しかし今回も「か」で始まり「る」で終わる、杉下右京のこだわりが活かされた名前になるのでしょうね。それを予想するのも番組ファンの楽しみの1つなのかも。

反町さんがどんなキャラなのか妄想するのも、近頃の楽しみです。
友人の予想はちょい悪で、私はデータ重視派を推しています。
「か」で始まって「る」で終わる名前、外国籍の可能性も考えると無限にありますよね~。

> ところで『エレメンタリー』が放送されているのは関東地方のみなのですね。
> 実は先日たまたまお昼頃のテレ東系列を観る機会があって、番組表もチェックせずに電源入れたら、全く違ったのをやっていてがっかりでした…。

そうなのですね。残念です。
私も平日昼間は仕事なのでテレ東は観ていません……でも今まで興味を持っていなかった友人が観ているようなので、同じペースでDVDを観てはこまめに話しかけるようにしています。彼女はマイクロフト派なので、ランナーに水やバナナを差し出すようにつきまとって、無理くりシーズン1を完走させる所存です(我ながらうっとおしい友人)。

ホームズと明智小五郎 - ak - 2015年07月26日 21:16:11

ナツミ様

こんばんは。いつもありがとうございます。

>私はひょっとしたら『ホームズ』も、推理物というよりバディものというくくりで好きなのかもしれません……
シャーロックが、推理じゃなくてたとえば引っ越しの天才とかでも、それはそれで観るような気がします。

ドラマというのが、主人公とその周囲の人物を中心に展開する以上、推理がテーマでなくても人間関係は成立しますからね。逆に、犯人とその仲間でもドラマはあり、その逃避行を助けるためのドラマが成り立つわけですから。しかし「引越しの天才」とは言い得て妙ですね。

>ルパンが先なのですね。
私が一番最初に出会ったシャーロック・ホームズはたぶん「ドラえもん」だと思います。(『シャーロック・ホームズセット』という秘密道具のお話があって、導入部にのび太がホームズに憧れるくだりがあったような気がします。藤子不二雄が描いたホームズはかっこよかった!)

はい、まずルパンでした。と言うか、ルパンとは別にホームズも知ってはいたのですが、ルパンシリーズのホームズが、如何にもフランス人目線で描かれたホームズで、その辺が所謂ホームズシリーズとはまた違った描かれ方なので、記憶に残っていると言うべきでしょう。ちなみに江戸川乱歩なども読んでいたので、ホームズには明智時小五郎のイメージもいくらかダブっています。あの明智小五郎と少年探偵団は、やはりホームズとベイカーストリートイレギュラーズの変形かなと思います。
残念ながらドラえもんのホームズは記憶にありません…手塚治虫さんのホームズはある作品で見たことがありますが、如何にもな雰囲気でした。

>反町さんがどんなキャラなのか妄想するのも、近頃の楽しみです。
友人の予想はちょい悪で、私はデータ重視派を推しています。

私もナツミさんに一票です。ちょい悪も格好いいですけどね。結構杉下と似たような路線になるかなとも思います。

>彼女はマイクロフト派なので、ランナーに水やバナナを差し出すようにつきまとって、無理くりシーズン1を完走させる所存です(我ながらうっとおしい友人)。

いえいえ、私も全く別の分野で似たようなことやってまずまず成功したことあります。結構手取り足取りしてくれる人も大事だと思いますよ☆




結局人に興味が…… - ナツミ - 2015年08月03日 06:24:25

ak様

こちらこそ、いつもありがとうございます。

> ドラマというのが、主人公とその周囲の人物を中心に展開する以上、推理がテーマでなくても人間関係は成立しますからね。逆に、犯人とその仲間でもドラマはあり、その逃避行を助けるためのドラマが成り立つわけですから。

結局のところ、人間関係に興味があるのかもしれないですね。一人しか出てこないとしても、その人の人間関係に思いを馳せてしまうのかもしれません。

> はい、まずルパンでした。と言うか、ルパンとは別にホームズも知ってはいたのですが、ルパンシリーズのホームズが、如何にもフランス人目線で描かれたホームズで、その辺が所謂ホームズシリーズとはまた違った描かれ方なので、記憶に残っていると言うべきでしょう。ちなみに江戸川乱歩なども読んでいたので、ホームズには明智時小五郎のイメージもいくらかダブっています。あの明智小五郎と少年探偵団は、やはりホームズとベイカーストリートイレギュラーズの変形かなと思います。

『ルパン対ホームズ』、子どもは誰しもわくわくしながら手に取るタイトルですよね。
内容以上に、図書館で見つけた時の「何この豪華な本!」という衝撃をよく覚えています。いまでこそ「できるワトスン」ブームがきてますけど、あの時子どもたちは「ワトスン使えん」という印象を持ってしまった気がする……(今考えると『ルパン対ホームズ』なんだからしょうがないよな~)
そんなこんなでワトスン派の私は子供向けの訳を読んだきり、読み返さずにきてしまったんですが、今度よく読み返してみたいと思います。
明智小五郎と少年探偵団のお話は、テレビや漫画でも無数のパロディを観てきました。私のイレギュラーズのイメージも、きっとだいぶ少年探偵団が入ってると思います。

> 残念ながらドラえもんのホームズは記憶にありません…手塚治虫さんのホームズはある作品で見たことがありますが、如何にもな雰囲気でした。

如何にもな雰囲気!なんだか想像つきます!どの作品に出てくるのでしょう。

> 私もナツミさんに一票です。ちょい悪も格好いいですけどね。結構杉下と似たような路線になるかなとも思います。

そう、右京さんが頭脳派な分、相棒たちは結局熱い男になってしまうパターンでしたよね。反町さんもそういうイメージなんで(結局のところ右京さんが一番熱いんですけど)、頭脳派どうしの競演を見たいんです。ジョン不在でモリアーティとシャーロックが組む『SHERLOCK』みたいなの。でもこれイタミンの苦労が三倍だな……

> いえいえ、私も全く別の分野で似たようなことやってまずまず成功したことあります。結構手取り足取りしてくれる人も大事だと思いますよ☆

ありがとうごさいます!akさんのご賛同に力を得て、マイクロフト兄さん参戦まで無理やり応援しようと思います!
とりあえず今は、無駄に凝ったS2人間相関図を模造紙とマッキーで作成中です(バラエティ番組で出てくるみたいな、ネタバレ部分に紙で隠れてるやつ)。
こと人間関係に関しては、ワトスンが女性になるだけですごく変わるな!と新鮮な気分を味わってます。

ルパンとイレギュラーズと相棒と - ak - 2015年08月07日 20:49:08

ナツミ様

こんばんは。

>結局のところ、人間関係に興味があるのかもしれないですね。一人しか出てこないとしても、その人の人間関係に思いを馳せてしまうのかもしれません。

その人が背負っている人生、交友関係がありますからね。むしろあまり大勢の人間が大挙して出て来る作品よりは、登場人数を絞った方がそれが探りやすく、観ていて、あるいは読んでいて楽しいともいえるでしょう。

>『ルパン対ホームズ』、子どもは誰しもわくわくしながら手に取るタイトルですよね。
内容以上に、図書館で見つけた時の「何この豪華な本!」という衝撃をよく覚えています。いまでこそ「できるワトスン」ブームがきてますけど、あの時子どもたちは「ワトスン使えん」という印象を持ってしまった気がする……(今考えると『ルパン対ホームズ』なんだからしょうがないよな~)

考えてみれば、ルパン対ホームズはの場合はワトソンが空気になっていた感がありますね。森田崇さんの『アバンチュリエ』ではウィルソンという名で登場していましたが。

>私のイレギュラーズのイメージも、きっとだいぶ少年探偵団が入ってると思います。

結構個性派ぞろいなのですよね、あの探偵団も。それとチンピラ別働隊というのもいますが、こちらの方が、あるいはイレギュラーズに近いかもしれません。

>如何にもな雰囲気!なんだか想像つきます!どの作品に出てくるのでしょう。

『化石島』という、かなり昔の、しかも手塚氏自身と思しき人物が登場する作品です。ホームズもルパンもシルクハット姿で、ちょっと大仰でもったいぶった雰囲気ですね。しかし結局ルパンに先を越されて、ちょっと気の毒な終わり方でした…。元々この主人公が、ホームズに影響されたロック・ホームというキャラですが。

>そう、右京さんが頭脳派な分、相棒たちは結局熱い男になってしまうパターンでしたよね。反町さんもそういうイメージなんで(結局のところ右京さんが一番熱いんですけど)、頭脳派どうしの競演を見たいんです。

神戸尊がちょっとクールな感じでしたが、後の2人はとにかく熱いですね。

>ジョン不在でモリアーティとシャーロックが組む『SHERLOCK』みたいなの。でもこれイタミンの苦労が三倍だな……

お察しします、てかイタミンの毒舌に更に磨きがかかりそうです…でも私結構イタミン好きなのですけどね。何というか、ちょっと見かけに似合わず的なところがあるというか(なんて言っていいのかな)。『相棒』のトリビア本も今読んでいます。

>とりあえず今は、無駄に凝ったS2人間相関図を模造紙とマッキーで作成中です(バラエティ番組で出てくるみたいな、ネタバレ部分に紙で隠れてるやつ)。

お、それはすごい!実は私は、パペット版のビートン校と洞窟や底なし沼の位置関係を示す図を作成中ですが、結構取り掛かってみると難しいです。

ロック・ホーム!!! - ゆい - 2015年08月08日 01:57:33

ak様 ナツミ様

こんばんは。
唐突に横からすみません。

>『化石島』という、かなり昔の、しかも手塚氏自身と思しき人物が登場する作品です。ホームズもルパンもシルクハット姿で、ちょっと大仰でもったいぶった雰囲気ですね。しかし結局ルパンに先を越されて、ちょっと気の毒な終わり方でした…。元々この主人公が、ホームズに影響されたロック・ホームというキャラですが。

数年前、いやもう十数年前頃ですが、私は手塚治虫のスターシステムの「ロック・ホーム(間久部緑郎)」にちょっとはまってたことがありました。6~7歳の時に、話の意味ほとんどわかってなかったのになぜかすごく気に入って、近所の児童センターに行くたびに繰り返し読んでいた『バンパイヤ』、それを大人になってふと再読して、子どもの頃は存在の認識すら危うかった(動物に変身する主役たちのことしか記憶にありませんでした(笑))この作品の悪役ロックが妙に心に引っかかり、勢いで他の「出演」作品も次々読んで、しまいには『華麗なるロック・ホーム』という、彼の「出演」作品を集めた本まで買ってしまったという……。

「ロック・ホーム」という名前がシャーロック・ホームズからとられた、ということは知っていたのに、SHERLOCKにはまった後もホームズを読んだ後も彼とホームズ(シャーロック)を結びつけたことがなくて……!ちょっと今、一人でびっくりしています。(だからどうした……)

この『華麗なるロック・ホーム』(河出文庫)という本に、『化石島』(抄録とのことですが)も入ってました。シルクハットにマントでステッキ持ってるおじさん、読み返したら確かにシャーロック・ホームズと紹介されているけれど、私の持つイメージとは違いすぎて……。(一般的なイメージや、ステレオタイプなイメージのホームズとも違う気がするのですが。「ルパン」作品の中でのホームズはこんな感じなのでしょうか?ルパンは読んだことがなくてすみません。)一方、手塚先生いわく「探偵役でデビューだったのでロック・ホームと名付けた」ロックも、私の中ではかけらもホームズに結びつくものがなくて。(「悪役をやるようになった」ロックは、当時「アラン・ドロンみたい」と言われたりしたそうです。なので逆にアラン・ドロンが演じるホームズを想像してみたのですが……うまく想像できませんでした……)

ホームズ初心者として、ホームズの奥深さ(幅広さ?)のようなものを改めて感じた次第です……(勢いだけのコメントですみません)

ジョンとチンピラ別動隊 - ナツミ - 2015年08月08日 18:36:30

ak様


> その人が背負っている人生、交友関係がありますからね。むしろあまり大勢の人間が大挙して出て来る作品よりは、登場人数を絞った方がそれが探りやすく、観ていて、あるいは読んでいて楽しいともいえるでしょう。

確かに!「ホームズ」も、メインの登場人物はすごく少ないですものね。
そういえば三谷幸喜さんの作品にも、基本的に3人しか出てこない『やっぱり猫が好き』でハマりました。
舞台『バイ・マイセルフ』や『笑の大学』も好きでしたが、今三谷さんのwikiを観て、登場人物の少ない作品ばかり観に行ってた自分に驚いてます。単に脳の処理速度が大人数に適応してないだけかもしれません。


> 考えてみれば、ルパン対ホームズはの場合はワトソンが空気になっていた感がありますね。森田崇さんの『アバンチュリエ』ではウィルソンという名で登場していましたが。

もともと、「エルロック・ショルメとウィルソン」で、シャーロック・ホームズとは別人という設定だったのを、翻訳時に「シャーロック・ホームズとワトソン」に変更したそうですね。ワトソンだけウィルソンになっているバージョンもあるようです。

> 結構個性派ぞろいなのですよね、あの探偵団も。それとチンピラ別働隊というのもいますが、こちらの方が、あるいはイレギュラーズに近いかもしれません。

チンピラ別動隊……ホームズはともかくシャーロック、言うこと聞かせられなそうだな……
ドラッグ・デンにいる連中がなぜかジョンを慕ってきて、なんとなく付き合ってるうちに最強チンピラ部隊ができるという安いスピンオフが頭に浮かびました。

> 神戸尊がちょっとクールな感じでしたが、後の2人はとにかく熱いですね。

神戸くん、出てきたときは「右京さんとキャラかぶるんじゃ」と心配でしたが、意外に熱いところもありましたよね。
イタミンもそうですが、相棒のキャラはみんな意外性があっていいですよね。4人目の相棒はどんな人か楽しみですね。

> お、それはすごい!実は私は、パペット版のビートン校と洞窟や底なし沼の位置関係を示す図を作成中ですが、結構取り掛かってみると難しいです。

おお、すごい!学校の周り、どうなってるか気になりますね。湖もあるし。

つながることってありますね - ナツミ - 2015年08月08日 19:46:41

ゆい様

「ロック・ホーム」の解説をありがとうございます!

> 「ロック・ホーム」という名前がシャーロック・ホームズからとられた、ということは知っていたのに、SHERLOCKにはまった後もホームズを読んだ後も彼とホームズ(シャーロック)を結びつけたことがなくて……!ちょっと今、一人でびっくりしています。(だからどうした……)

私も三谷幸喜さんとホームズ、ぜんぜん別々に好きだったものが、マーティンとか人形劇で結びついて、そういうのってなんかいいなあ、と思います。ゆいさんのお気持ちすこしわかるような気がします!

> 一方、手塚先生いわく「探偵役でデビューだったのでロック・ホームと名付けた」ロックも、私の中ではかけらもホームズに結びつくものがなくて。(「悪役をやるようになった」ロックは、当時「アラン・ドロンみたい」と言われたりしたそうです。なので逆にアラン・ドロンが演じるホームズを想像してみたのですが……うまく想像できませんでした……)

画像検索してみたら、確かに知っている顔でした!
でも、このキャラがホームズ由来とは全然知りませんでした。漫画音痴の私にとって、手塚作品でホームズといえば『三つ目がとおる』の写楽くんと和登さんくらいで。

私こそホームズ初心者として勉強になりました。手塚作品のスターシステムも、奥深いのですね……
ゆいさんとお話したり、ブログを拝見していると読みたいものが増えすぎて困ってしまいます。7月分の「最近読んだ本と読んでいる本」では沙村広明「波よ聞いてくれ」が気になりました。ネットでちょっと立ち読みしましたが、すごい迫力ですね……!ゆいさんのご指摘なさってる「言語感覚とか妙に細かくて生々しい小ネタ」もそうそう!と思いました。って、ちゃんと買って読んでからゆいさんのブログにコメントに行け、って話ですみません。

シャーロック・ホームズからロック・ホームへ - 篠田真由美 - 2015年08月09日 09:09:16

お話盛り上がっているところを、横入り失礼します。

手塚世界の二枚目ヒーロー、ハンチングにネクタイの粋な少年探偵ロック・ホームが、サングラスの悪役になって登場した『バンパイヤ』は、ロートルマンガ読者の自分にとっても大いに衝撃でした。
若い皆さんが「アラン・ドロン」といって、どんなイメージを持たれるのかわからないのですが、『バンパイヤ』の間久部緑朗、マクベスを重ねたアンチ・ヒーローは、おそらく映画『太陽がいっぱい』の主人公、自らの上昇志向に殉ずる色悪青年との響き合いで「アラン・ドロン」といわれたんだと思います。
『バンパイヤ』の彼も、昼間はお嬢様に忠実な書生の青年で、裏では女装して暗躍するようなところがありました。巧みな変装はルパンもホームズも、怪人二十面相も明智小五郎もしてみせる、いわば超人のしるしのひとつです。いまとなってはなかなかに、リアリティを持ちにくい設定なのですが、シャーロック・ホームズ→ロック・ホームの繋がりは、「変装者の系譜」でも関連しているといえましょうか。

変装は超人のしるし - ナツミ - 2015年08月10日 04:37:22

篠田真由美様

篠田先生はリアルタイムで「バンパイヤ」を楽しまれていたのでしょうか。
ホームズが元ネタの正義の味方キャラがマクベスになったら、それはびっくりしそうです……
スターシステムとは、正義の味方を演じていた俳優が別の作品では悪役を演じるようなものかと思ってましたが、やっぱりちょっと違うかもしれませんね。俳優さんは色々な役を演じて当たり前ですけど、漫画の登場人物へのイメージはもう少し固まっている気がします。

アラン・ドロンは気障な美形の代表みたいなものと思っていましたが、『太陽がいっぱい』のイメージなんですね。ギラギラした野心に溢れた若者という感じでしょうか。

> 巧みな変装はルパンもホームズも、怪人二十面相も明智小五郎もしてみせる、いわば超人のしるしのひとつです。いまとなってはなかなかに、リアリティを持ちにくい設定なのですが、シャーロック・ホームズ→ロック・ホームの繋がりは、「変装者の系譜」でも関連しているといえましょうか。

変装は超人のしるし!
だとしたら、アイリーンの「どんな変装も結局は自画像」は、変装して彼女を騙そうとしたシャーロックへの皮肉でもあるけれど、シャーロックの「ヒーローなんていない、そうなりたくもない」に呼応する台詞なのですね。

彼女はヒーローの存在を信じていなかった。だから、時には力づくで奪いながら、自分で自分を守って生きてきた。
そういう風にとらえると、「アイリーン・アドラー」の項での疑問がひとつ氷解した気がします。
原作のアイリーンがあくまで自衛のためにパワープレイを行ったのに対して、なぜ現代版の彼女は常に危ない橋を渡らねばならないような職業を選んだのか。
現代版ホームズは正義感よりも好奇心が、モリアーティは野心よりも絶望が行動の動機となりましたが、彼女も21世紀のこの世界に倦んでいたのかもしれません。
彼らの行動の根っこには、同じ種類の諦念がある。それが、私が『SHERLOCK』の特徴と考えている「さびしい感じ」の正体なのかもしれません。

変装したシャーロックがかっこよく彼女を救出するのは、あまりにも物語然としていて滑稽にすら見えてしまいますが、象徴的な意味を見出すことができますね。命を拾ってくれたこととヒーローの存在を信じさせてくれたこと、二重の意味で彼女はシャーロックに救われたのですね。

スターシステム - 篠田真由美 - 2015年08月10日 10:00:52

 そうですね。「バンパイヤ」リアルタイムで読んでいて、手塚治虫当人がシリアスに活躍するのが新鮮だなあ、なんて思っていました。昔は少年マガジンとかも普通に本屋で立ち読みが出来たので、買わなくとも気になるマンガはそうしてチェックしていたものです。
 私はそんなに手塚ファンではなかったので、ロックの悪役というのも「へえ」というくらいでしたが、手塚のスターシステムというのは、やはり通常役柄と性格がある程度は固定しているものなんですね。ヒゲオヤジは、江戸っ子のおっちょこちょいで正義感が強い探偵ぽい役柄、とか、アセチレン・ランプは渋い悪役とか。
 手塚マンガは「リボンの騎士」時代から、性別の越境というのが頻繁に登場したので、それが子供心に妙に刺激的で、ロックの女装もやはりどきどきいたしましたよ。

補足です - 篠田真由美 - 2015年08月10日 11:33:21

 たびたびすいません。補足です。手塚は映画ファンだったので、やはりハリウッドの映画スターたちに、自分の持ちキャラを重ねてみる、というのを楽しんでいたようです。またディズニーアニメの、ミッキーマウスやドナルドダックが、いろんなお話に登場するようなのも、念頭にあったと思います。
 そして、映画でも特定のスターに「お得意の役柄」があるように、手塚マンガでも「このキャラはこういう役が持ち味」というのがあって、それを前提として逆に、映画でもあるような「意外なキャスティング」もある。でもロック・ホームのような主役級を悪役に起用して、かつ健全が建前の少年マンガに悪のキャラとして活躍させ、ラストでは敗れるにせよ悪の魅力を振りまくというのは、やはり相当目新しい冒険だったと思います。
 いまとなっては魅力的な悪役当たり前というか、悪役こそ魅力的でなくちゃ、というのが定番ですが、あのロックは「バンパイヤ」の時代の少年マンガだからこその、強い意外性と、タブーを侵犯するような強烈なエロス性を放っていた、ということをつらつら考えて思い出しました。

悪の華ロック・ホーム - ak - 2015年08月10日 20:58:18

ナツミ様
ゆい様
篠田真由美様

こんばんは。
皆様にサポートしていただき、また色々教えていただきありがとうございます。
ロック・ホームに関して言えば、ゆいさんの仰るように探偵デビューで、その後様々なキャラを演じています。また、これは拙ブログの関連記事にリンクを貼っていますが、手塚作品ファンの方で、『バンパイヤ』までのロック・ホームはまだ不安定なキャラで、大人と子供の間を行き来しており、同じ作品の中でも、長ズボンの大人だったり、半ズボンの少年だったりしているという指摘もあります。
http://29613621.at.webry.info/201506/article_32.html
間久部緑郎となってからは悪役が定着し、『ブラックジャック』では暗黒街の皇太子と呼ばれるまでに至るわけですが、この人物には「悪の華」という印象が濃厚に漂います。そして篠田先生のコメントにあるように、女装がまたひどく板についていて、男性が女装した時に特有の色気を醸し出していますね。

それから篠田先生とナツミさんの仰る「変装は超人のしるし」ですが、言い得て妙だと思います。19世紀から20世紀に掛けて、犯罪者は変装によって捜査の目を潜り抜けて来たわけです。その後鑑識の技術も進み、犯罪者はヒーローとなるような環境も段々影をひそめて行ったと思います-その代わり、よりスケールの大きな犯罪が登場するようになったわけですが。シャーロックの変装は、ある意味、追う側も追われる側も正体を隠すことが日常だった、原作の時代のホームズへのオマージュなのかもしれません。

それとアラン・ドロンの『太陽がいっぱい』ですが、これはテレビで観たことがあります。この時は「きれいな悪役」のイメージが濃厚でしたが、その後二枚目役が増えたように思います。当時、あのサングラスは正に伊達男の印だったのでしょうね。『ボルサリーノ』や『冒険者たち』は結構好きでした。

シャーロックとロック・ホーム - ゆい - 2015年08月11日 13:34:05

ナツミ様
篠田真由美様
ak様

まさかこんな風にロック・ホームのお話ができるとは(笑)(毎度のごとく、ナツミさん、なんというかすみません)

それにしても、篠田先生、「バンパイヤ」をリアルタイムで読んでいたら、どれだけ衝撃的だったか、と思います。逆に今読むからこそショッキングすぎると思える部分もある気がしますが……

そしてakさん、リンク先と、そちらで紹介された手塚作品ファンの方の論考を、とてもとても興味深く読ませていただきました。
「(前略)シャーロック・ホームズの複雑さを、このキャラは持ち合わせているなあということです。手塚氏がロック・ホームと名付けたのは、かなり深い意味があったのかもしれません。」とakさんが書かれている部分を読み、はっとしました。前のコメントで「(私の中でのロック・ホームは)ホームズとは結びつかない」と書きましたが、そう言われてみると、なんだか私の中でも、じわじわと繋がってまいりました。

前のコメントでも書いた『華麗なるロック・ホーム』という本で米沢嘉博さんが「(ロックは)人間と人間ならぬ者の間に立つ」「彼は大人と子供、悪と善さらには男と女に至るまで、二つの種の間を行き来する『存在』である」といったことを書かれているのですが、この「二つの世界の間を揺れ動く不安定さ」というのは、私が以前から強くシャーロックに感じていたことでもありました。「シャーロック・ホームズ」の本質にそういうものがある、と考えると、て、手塚先生はやっぱり凄い……(何を今さら)とか思ってしまいましたが。

けど、じゃあ、(akさんも記事で触れられているように)ロック・ホームにとってのワトソンは、と考えると……。『バンパイヤ』の西郷や、BJ「刻印」のブラックジャック、BJ「ナダレ」の鹿ナダレ……なんかが浮かびまして。西郷についても、ナダレについても、ロックは彼らを「殺さなくてはいけない」ことになり、苦悩の挙句最終的に自ら決断し、自らの手で彼らを殺す。ナダレを銃で撃つロック(大江戸博士)は、子供みたいに無防備な顔で泣いている。西郷を殺したロックも、倒れた彼に取りすがって泣く。(「刻印」は、殺そうとしたのがロックなのかどうか、読者の解釈に委ねる形になってますが。元になった作品「指」では明確にロックが殺せと命じた形になってるそうで←文庫で読んだので私は未読です)

……シャーロックがジョンを(ホームズがワトソンを)殺す、という展開を、思わず想像してしまいました。それはあんまり辛すぎる……。それでふと、手塚先生が採用した「スターシステム」が生み出すフィクション性=物語世界への距離感、は、強烈な悲劇を描くのにちょうどよかったのかなあ、と考えたりもしました。とはいえ、はっきりいってシャーロックは、たぶん何があっても絶対に、たとえどんな事情が発生しようと、そのせいで世界が滅ぼうとも(笑)ジョンを殺すことだけはしなさそうな気もしますが。ある意味でロックはまじめすぎるのかもしれない。(……などと考えているうちに「2つの世界に惹かれながらどちらにも安住できない」と話す「はみだしっ子」の後期グレアムが浮かんできたりしまして、私の頭の中の収拾もつかなくなってきましたので、まとまりないまま失礼いたします……)

おお、この流れは! - ナツミ - 2015年08月12日 06:45:10

篠田真由美様
ak様
ゆい様

(スレッドが伸びてきたので、あとで見返しやすいようにお返事をまとめさせていただきますね。)

わ~い、昨年の三原順さん話に続く、夏休み恒例「21世紀探偵マンガ夜話」だ!
今年のテーマは手塚治虫先生ですね!
例によって無学な私は生徒役をさせていただきますので、よろしければ皆様いろいろ教えてくださいませ。(起立、礼、着席!)

篠田真由美様

私が子どもの頃も、本屋さんの本はすべて立ち読みできたと思います。マンガだけフィルムカバーされるようになったのは、いつからだったかしら。
今、田舎では路面店がほとんどなくなってしまい、ショッピングモールに入った本屋さんばかりになりましたが、昔は書店(兼・文具店)が子どもたちの憩いの場で、特に今のような夏休みシーズンは、漫画雑誌を立ち読みしにくる子、涼みながらぶらぶらしている子、宿題に必要なものを買いにくる子でいっぱいでした。
もちろん、きれいな本を買えるようになったのは嬉しいですが、子どもの姿を本屋さんで見かけなくなったなあ、と思います。
万引き対策などで本屋さんは大変だったでしょうし、amazonプライム会員の私が言うのもナニですが、地域に一軒、車に乗らなくても行ける距離に本屋さんがあったのはありがたかった。今でも本屋さんが大好きなのは、近所にあった○○堂のおっちゃんのおかげです(クレーマー社会の今では信じられないくらい感じ悪かったけど、選択肢もないから子どももめげないんだよなあ……)。

脱線してしまいましたが、手塚漫画には「キャスティング」という感覚があったのですね。私が小さかった頃は藤子不二雄が大人気でしたが、一人のキャラクターが色々な作品に登場するというよりは、『ドラえもん』でいうところのドラえもん、のび太、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんといった「役どころ」がさまざまな作品に共通しているな、と思っていました(藤子不二雄というよりもアニメのスタッフがそうした、またはアニメ化を見越してそうしていたのかもしれませんが)。これもまた、映画の作り手のような感覚ですね。

そして、「タブーを侵犯するような強烈なエロス」
………わかります!!
それこそファンの方に語り尽くされていることかとは思うのですが、手塚漫画の描くエロスには何だか後ろめたさが付きまとうような気がします。隠すべきものとして描かれた性だからこそ、余計に強烈に感じたのかもしれません。

ak様

リンクをありがとうございます。
こちらの記事も、とても興味深かったので貼らせていただいてよいでしょうか。
http://29613621.at.webry.info/201506/article_30.html

水野雅士さんの本も読んでみたく思いました。

ロック・ホームは純粋な正義の味方である(未読なので、的外れだったらごめんなさい。初めからもっと深みのあるキャラクターなのかもしれません)役柄から、二面性のある時代を経て悪役に「進化」していくということですね。

『SHERLOCK』はホームズ・モリアーティ同一人物説をうまく取り入れた上で、第3シリーズの現在ではむしろ無垢な少年のような、(ゆいさんのお言葉を借りれば『ジョンを殺すことだけはしなさそうな)キャラクターとして描いていると思います。シャーロックにもまた「行き来」があるのですね。

>シャーロックの変装は、ある意味、追う側も追われる側も正体を隠すことが日常だった、原作の時代のホームズへのオマージュなのかもしれません。

警備員やら牧師やらギャルソンやら、あまりうまく機能してない(自らばらしたりバレバレだったり、気づいてほしいのに気づかれなかったり)と思うんですが、オマージュということであれば納得です。変装の要素はむしろ、ネットやマスコミを利用した相手の姿が見えない戦いにあるのでしょうね。

ゆい様

残念ながら、篠田様もak様もコメントを受け付けていらっしゃらないようなので、うちでよければどうぞごゆっくりお話なさっていってください。
お返事まとめさせていただいていますが、これは読まれる方が素人な私のコメントをスキップしやすいようにです(笑)!FC2さん的にはコメント数は結構増えても大丈夫だったと思います。

ワトスンの話題に食いついてしまいますが、ジョンも結構ワトスンの中ではダークヒーローっぽいところがあるような気がします。S1E3のラスト、ジョンがジムのコートで出てきた時、私は勝手に騙されましたもん!てっきり正体は手下のMさんかと思いました(S1E1のラストがアレだったから余計に……)。ホームズとワトスン、二人ともに善と悪を行き来する複雑さを持たせたところが面白いのかもしれませんね。
(それ言うと『SHERLOCK』に複雑じゃないキャラクターなんていないかもしれませんが……)

>手塚先生が採用した「スターシステム」が生み出すフィクション性=物語世界への距離感、は、強烈な悲劇を描くのにちょうどよかった

お子様向けの予定調和にさんざん甘やかされた子どもだった私は、どうしてこんなに悲惨な話が描けるのだろう、とショックでした。
先ほどのお話ともちょっと重なるのですが、いい人がひどい目に遭ったり、100パーセントの善人や悪人がいなかったり。それは、手塚先生の作品への距離感ゆえだったのですね。創造主としての自覚とでもいうのか……
頑張れば必ず報われるほど、人生は単純じゃない。完全な安住の地なんて、どこにもない。手塚作品に、これから生きていく世界の残酷さを突き付けられたような気がしています。

殺し屋ジョン - ゆい - 2015年08月14日 00:30:04

こんばんは。そうでした、去年「三原順」の名前に思わず食いついたのも、夏の頃でしたね。その節もどうも……。

ここでお話したことで、思わずブラックジャックを読み返したくなり、押入れの奥からひっぱりだして数巻を読んだりしてしまいました。それと同時に中学生の頃、半日終わりの土曜の放課後、ご飯も食べずに友だちと2人で図書室にこもって3時とか4時までブラックジャックを読みふけったことなんかも思い出したりして。……私たちはブラックジャックのことを「黒男」呼ばわりしていて、その言動にしょっちゅうツッコミを入れたりしていましたが(まさに中2の頃……)、その頃の私たちにとっては、「ヒューマニズム」とか「命の大切さ」みたいなものよりも、彼がムダに偉そうで、ムダに偽悪的なせいでまわりを混乱させ、矛盾だらけでしょっちゅう自分を棚に上げている、でも「人ってそんなものかな」と思わせてくれる、なんだかその部分がすごく大事で。それでも「いくらなんでもこの黒男は酷い」と思っていた話がいくつかあったのですが、今読んだらそうでもなく、昔の私の潔癖さにちょっと愕然としたりしつつ。

それはさておき。

>ジョンも結構ワトスンの中ではダークヒーローっぽいところがあるような気がします。

ナツミさんのコメントを読んで思わず考えてしまったのですが、(物騒な話題を引きずってすみません)「シャーロックがジョンを殺す」はありえないことだと思うのに、なぜか「ジョンがシャーロックを殺す」はありえないことではない、と思って……。(いえ、もちろんそんな展開は「ありえない」んですけど。)

S2の後でもS3の後でもいいんですが、たとえば

(A)数年後、なぜか暗黒街のボスになったシャーロック。マイクロフトに言われて彼を捜しに行くジョン。はじめは説得しようとするも、なんだかんだで悪に染まり過ぎ・罪を犯し過ぎのシャーロックに、ジョンはついに決意を固めて彼を撃つ。
(B)数年後、なぜか暗黒街のボスになったジョン。マイクロフトに言われて彼を捜しに行くシャーロック。ひととき再会を喜びつつ、次第にシャーロックを邪魔に感じ始めるジョン。考えた末、シャーロックを殺すことにする。
(C)なんだかんだあって、目の前で囚われているシャーロックを撃ち殺さなければ何百人もの人が殺される、という状況に追い込まれたジョン。首謀者(?)に促され、ジョンはシャーロックに銃口を向ける。

とか、なんか普通に妄想が湧いてしまいまして。
3パターンとも、シャーロックとジョンを逆にしたバージョンだと、少なくとも私はうまく想像ができなくて。(私だけのイメージかもしれませんが。というかそもそも上の想像自体「無理」と思われるかもしれませんが。それにしてもこのイメージだと、「サイコパス度」高いのは明らかにシャーロックではなくジョン……)

まあそれは、ジョンは「銃で物事を解決することがある」人間として(ドラマで)描かれていて、一方のシャーロックは「暴力ではなく、知性や機転で(時に奇跡のようなものを起こして)物事を解決する」人間であるはずだから、というのもあると思うのですが。(……だからS3E3のシャーロックは「物語上あってはならないこと」をしたことになる、というようなことを、そういえば以前自分のブログに書きましたが)

なんだかでも、それ以外に、人それぞれの行動原理の中での「~すべき」と「~したい」のバランスのようなものが関わっているような、そんな気がします。「バンパイヤ(第一部)」の間久部緑郎は、「自分のしたいようにやるんだ!」と口では言いつつも、その「悪いこと」を本当に愉しんでいるというよりも、どこかに強迫観念(~すべき)があるような、そんな感じがして。(たとえばジムとかマグヌッセンだと、「心から愉しんでいる(~したい、で行動している)」ように見えるのですが。)ブラックジャックも、基本的には「~したい」で行動している人だと思うけど、復讐絡みの話になると「~すべき」に傾く、ような。ともかく、あくまでも私のイメージですが、ジョンは「~すべき」を行動原理にしがちな人なので、親友を殺すことも「ありえる」と思えるけれど、シャーロックは「~したい」が勝った人に思えるから、ジョンを殺すことは絶対にしないような気がするというか。

「~すべき」タイプ:間久部緑郎、ジョン
「~したい」タイプ:(BJ)、シャーロック

の分類が何となく頭にできてしまい、なんだかそうすると間久部とシャーロックは別のグループになってしまったのですが、でもこの4人全員が「善と悪の二面性」を持っていると思うのに、妙に「不安定」に見えるのは確実に(私のイメージでは)間久部とシャーロックで……何でしょう、自分のことがちゃんと見えてない、無自覚というか、危ういというか……。そういえば、篠田先生の仰った「変装は超人のしるし」、をこの4人について考えると、BJとジョンは「変装苦手」グループに入るなあ、とか考えたり。(要は、間久部とシャーロックは「子ども」で、BJとジョンは「大人」ってことなんでしょうか……変装得意で「大人」なヒーローも思い浮かぶけれど……)

……なんだか妄想率高過ぎの訳のわからないコメントになってしまいましたが(最近は比較的ましなつもりだったのに……)、ナツミさんは許してくださりそうな気がするので(いえほんとすみません)収拾ついておりませんがとりあえずえいやで送信ボタンを押させていただきます……。

ホームズ殺し - ナツミ - 2015年08月14日 14:10:41

ゆい様

ブラックジャックを「黒男」呼ばわり(笑)
そういうの、やりました!中二の私は「舞姫」の豊太郎が相当許せなかったです。他にもうじうじした男主人公(森鴎外先生、すみません)はいっぱいいたろうに、なぜに豊太郎のみが槍玉にあがっていたのか……
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いってやつで、攻撃するところなんてその気になればいくらでも見つかりますから、人に対する疑問や不満を全部全部ぶつけちゃってたんだろうなあ。ごめんな、豊太郎(←未だに若干上から目線)。
もちろんそれは私の場合の話で、ゆいさんやお友達はそうではないかもしれません。

「ジョンのシャーロック殺し」説、興味深く(そしてちょっと背徳的なときめきを感じながら)読ませていただきました。


> まあそれは、ジョンは「銃で物事を解決することがある」人間として(ドラマで)描かれていて、一方のシャーロックは「暴力ではなく、知性や機転で(時に奇跡のようなものを起こして)物事を解決する」人間であるはずだから、というのもあると思うのですが。(……だからS3E3のシャーロックは「物語上あってはならないこと」をしたことになる、というようなことを、そういえば以前自分のブログに書きましたが)

シャーロックが役割を超えて、ジョンに感化されちゃったというわけですよね。
結婚式のスピーチあたりから、「ちょっとジョンに心酔し過ぎじゃないか」という感じがしましたよね。
自分と違うジョンの能力を認めるだけじゃなく、ジョンのやり方の方が正しい!みたいな。しまいには自分をジョンとメアリの「子ども」に位置付けちゃって。それってある意味「ワトスンによるホームズ殺し」が成立したということなんですね。

ゆいさんのお話、ちゃんと読み取れているか自信がないのですが、座標軸を設定して、y軸が「すべきーしたい」、x軸に「大人-子ども」とすると、4人が別々の4か所にきれいに収まる感じかな。
いろんな見方があるとは思いますが、動機を自分の中に見出さず、いざとなったら葛藤なしにさくっと殺っちゃう「すべき/大人」タイプのジョンが一番冷酷といえるのかもしれませんね……

私は論理的に話を組み立てるのが苦手なので、ゆいさんの分析、いつも新鮮な驚きの気持ちを持って楽しませていただいてます!
許すどころか、わくわくしながらお待ちしております。(もちろん、ご自身のブログの更新も!)

緑郎と黒男 - ak - 2015年08月15日 20:21:03

ナツミ様
ゆい様

こんばんは。
ロック・ホームは元から子供らしくない複雑なキャラ、しかもナルシストであるため、最終的に、高度な知性を求められる悪役を演じることになったのも納得です。それゆえに、『ブッキラによろしく』のくたびれた中年男の彼が、ちょっとわびしく切なく、人間とはとどのつまりこうなるのかと思えてしまったのも事実です。

ブラックジャック=黒男とは、ちょっとうなずけるものがありますね。実際、彼にピノコがいなければ、どういうキャラになっていただろうと思います。ピノコという何とも破天荒なキャラがいることで、彼が一応は人間として、医師としての立ち位置を失わないでいるのではないか、もしあの子がいなければ、悪の帝王と手を組んで、彼らの意に沿う人間改造なんてことまでやらかしているのではないかとも考えてしまいます。実際、間久部緑郎に対しては似たようなことをやっているわけですが。元々ブラックジャックそのものが、手塚キャラの「かかりつけの医者」的な存在ではありますから、敢えてはみ出し者的な役割を背負わされたともいえますね。

そしてジョンがシャーロックを殺すというのも、あながち否定はできません。私はドラマをそこまで徹底的に観込んではいないのですが(汗)、語り手としてのジョンと、そのジョンが語る主人公のシャーロックであることを考えれば、語り手という冷静さを求められる立場で、登場人物を自在に操ることもまた可能かなと思います。また、この辺ブラックジャックとかぶるかもしれませんが、医師としての知識を活かした計画的かつ冷静な殺人で、相手を嵌める可能性もあるかと…。

それからナツミさんが書いておられる『舞姫』の主人公豊太郎について、同感です。私は夏目漱石の、『こころ』の先生にも似たようなものを感じます。抜け駆けして結婚、友達は自殺、そして奥さんが実家に帰っている隙にあれはないだろうと。

ようやく今になってですが、篠田先生の『誰がカインを殺したか』を読んでおります。あと、Ocicatさんが別のコメで書いておられる『刑事フォイル』、期待です。




ヒーローの条件 - 篠田真由美 - 2015年08月16日 09:09:12

皆様へ

私は手塚マンガの、それも後になるほど読んでないものが多くて、それについては語れないのですが、彼のスターシステムが「物語への距離感」になっている、というゆいさんのご指摘には、おおっ、と膝を打ちました。確かにスターならば彼が演ずる世界は虚構であり、悲劇は回復可能なドラマにすぎない。死んだ役者は次作でよみがえる。読者にも安心感がある。後期になるほどシリアス度を高めた彼の作品で、次第にスターシステムが薄れていったのもその反証でしょう。

ロック・ホームについても、私の記憶は「バンパイヤ」以後だと「火の鳥未来編」あたりで止まってしまうので、勉強不足を痛感しています。彼の出演作を追いかけてみたい気がしますが、うーむ、読むべきものが多すぎて。

太田豊太郎に腹が立ったのは大同感です、ナツミさん。鴎外の流麗な文体には心惹かれながら、末尾の繰り言に「んじゃ、こいつはあ!」とシャウトした若かりし日。谷口ジロー作のまんが「坊ちゃんの時代」はお読みですか? リアル鴎外と、彼を日本まで追いかけてきたリアルエリスが登場します。彼女は哀れに心狂う作中ヒロインより強かったです。

そして、ジョンがシャーロックを殺す展開。我ながら、なんでそんなヤバイシーンに胸がときめくのでしょうね。たとえば犯人に「殺し合え」と命じられてふたりが銃を構えて向かい合ったとしたら、シャーロックは絶対引き金を引けない。ジョンは冷静に死なない位置に弾を当てられる気がします。彼は大人で、「すべき」で動ける人で、だからこそヒーローではない。

変装は超人のしるしだと、前に書きましたが、それが似合うのは子供だと思います。子供、超人、ヒーロー、変装者は、私の脳内では等号で結ばれるみたい。バットマンもスパイダーマンも子供。スーパーマンはあんまりよく知らないけど、あれは宇宙人だから別枠かも・笑。

極私的見解ですが、ヒーローは基本子供であり、「受け」です。したいことだけを見ている子供には、客観的な自分が見えない。彼はヒーローならざる他者から求められ、欲望され、ほしいままに奪われる。それを引き受けさせられるのが、ヒーローであり続けるということ。ヒーロー受け論は、長くなるのでこのへんで割愛いたしますが、自覚的に敢えて引き受けるヒーローも、天然のヒーローもいて、シャーロックは天然の方だと思います。

ジョンはヒーロー・シャーロックにいいように引き回されていると見えて、実は覚めた目で彼を見ている部分がきっとある。だから人間的になりすぎたシャーロック、自分に敬愛の情を隠さず、なついてくるシャーロックは、実はジョンにとって少しまずいものではなかったか。彼の「3人では踊れない」発言は、なんと無神経な、と思いましたが、無意識のシャーロック突き放し、ヒーローは基本孤独なもんだよ、君なつきすぎ、という心の現れだったかも知れない。なのにシャーロックはジョンとメアリとベビーのために、したいことに邁進するヒーローの立ち位置を踏み外して自分の手を汚した。もしかして彼は「したい」ことではなく「せねばならぬ」ことをしてしまったのかも知れません。すると、やはり、彼は堕ちたヒーローになってしまうのですよね・・・

堕ちたヒーロー - Ocicat - 2015年08月16日 11:42:55

ナツミ様、篠田先生

こちらにお邪魔させて頂きました。
皆さまのコメント拝見していて 私が心の隅に引っかかっていた点に触れていらっしゃるのを読ませて頂き 改めて腑に落ちると言うか、少し安心したと言う感じを持ちました。

篠田先生のシャーロック解釈論、

>ジョンはヒーロー・シャーロックにいいように引き回されていると見えて、実は覚めた目で彼を見ている部分がきっとある。だから人間的になりすぎたシャーロック、自分に敬愛の情を隠さず、なついてくるシャーロックは、実はジョンにとって少しまずいものではなかったか。彼の「3人では踊れない」発言は、なんと無神経な、と思いましたが、無意識のシャーロック突き放し、ヒーローは基本孤独なもんだよ、君なつきすぎ、という心の現れだったかも知れない。なのにシャーロックはジョンとメアリとベビーのために、したいことに邁進するヒーローの立ち位置を踏み外して自分の手を汚した。もしかして彼は「したい」ことではなく「せねばならぬ」ことをしてしまったのかも知れません。すると、やは、彼は堕ちたヒーローになってしまうのですよ・・・

私が感じていた事をそのまま書いて頂いた様な気がして 凄く感動しました。
S3を見た後ずっとモヤモヤしていた点の1つでした。
Moffattisさん達がシャーロックをより人間的にする方向に転じていた点は賛否両論あったと思うのですが、私個人的な気持ちとしては方向が違って来たのではないかと危惧していたのです。
「僕はヒーローではないし、なりたくもない」と言うセリフにもあった様に シャーロックは本来孤独であることを自覚していた筈なのに、思いもよらない ジョンの”best friend” 発言やらベストマンに任命された事等により混乱をきたしてきた様な気がしていました。
人間的な情を持っていない訳では無く、敢えて情を表だって表さない点がシャーロックである筈、あるべきだと考えていたので次第に人格が変わってしまっている様な気がします。 勿論大人になってきたとも言えるのかも知れませんが、やはり余りにもhumanは如何なものかと・・・・

シャーロックは(と言うかシャーロック・ホームズは)本来法の基準でなく 自分の基準で犯罪に立ち向かい、解決していた 一歩間違えば自分が犯罪者となり得る 悪と表裏一体の性格で モリアーティーに言った ”I'm at the side of the angeles, but don't think I'm one of them” (正確なセリフだったかどうかあやふやです)の様にそれを自覚していた危うさが有った事は確かだと思いますが、何度考えても S3E3の結末は好きではありません(全くの個人的見解で申し訳ありません)。

あ、すみません、書き出すと留まる事を知りません。

話が飛びますが(何時もなんで・・・)、ナツミ様に「刑事フォイル」BS放映の件教えて頂きチョット覗いて見たのですが、吹き替え版なんですねぇ。 私はずっと字幕版で観ているので、どんな雰囲気になるのか気になりますが、ak様も興味を持って下さった様で嬉しいです。
好みは分かれるかもしれませんが、ジックリ観られる深い内容で レヴューも良い評価が多い様です。

又長くなり申し訳ありません。


的外れでごめんなさい - ナツミ - 2015年08月16日 22:23:00

篠田真由美様
ak様
Ocicat様

(一応ブログ主なのに、まとめてのご返信申し訳ありません)

ホームズ叩き(アガサを騙した件)の前科があるのに、懲りもせず豊太郎をdisってしまってすみません。
私はこの「舞姫気持ち悪い問題」、本当は卒業したいんですよ!皆が「いい」というものの良さがわからないのが悔しいんです。説得されたい一心で、東に市民講座あれば出向き、西にワークショップあれば駆けつけ、とあがいていた時期もありますが、もうこの際一度恋人を捨ててみないとわかんないみたいです(落ち着け!)。篠田先生、実践に走る前に『坊っちゃんの時代』読んでみます……ありがとうございました。
ak様、私はなぜか「先生」にはいたく共感するんです。追い込まれる過程に納得がいくというか、被害者感があるというか……豊太郎も先生も、どっちもある意味被害者だとは思うのですが。もう単純に好みの問題かもしれませんね……

そんな「読書感想文を課せられた中学生」レベルの葛藤を抱えている私ですから、高度なお話についていけてる自信がないのですが(すみません)、本人たちの言動の流れをまとめると、ジョンは時に冷淡な表情を見せるシャーロックに「もっと人間的になって欲しい」と願い続けていたんですよね(S1E3の激昂するシーン、S2E3でハドスン夫人のもとに戻る場面より)。でも、それはジョンの誤解で、シャーロックははじめから人間的だった(S2E3ラストシーン)。目的のためには自分の身を顧みないような「馬鹿な」ところも、もともとあった(S1E1ラストより)。
ただ、シャーロックの行動原理は「他人を救う」より「自分の好奇心を満たす」ことにあった(おそらく家族の影響から、自然と犯罪者でなく警察の味方をする『天使の側』に属してはいたけれど、本人の自覚としては、そこは重要じゃなかった)。
ジョンに命を救われ、彼に感化されることで、人を救うために働くということを、自覚的に行うようになった。(S3E2スピーチより)。
ジョンに飼い慣らされたシャーロックをマグヌッセンは揶揄し、情に縛られた彼の無力さを嘲笑するが、シャーロックは自分をも犠牲にすることで、マグヌッセンの予想を超えてみせた(今ここ)。

視聴者も、ジムも、マグヌッセンも、それぞれシャーロックに望むヒーロー像は違う。でもこのシリーズは、一貫してシャーロックとジョンの物語、なんですよね。
自分は、ジョンを救うヒーローであればいい。ジョンの望むようなシャーロック・ホームズであればいい。ものっっすごく情けなくて視野の狭い結論ではありますが、それが現時点での彼が出した結論なんですよね。

しかし、です。「ジョンの望む自分」もなにも、シャーロックとジョンのお互いへの友情はすれ違いまくってます。
シャーロックは馬鹿なので(←言いきった)、犠牲を払うことで物理的にジョンを救うことはできても、残されたジョンの苦しみまでは考えられない。
ジョンはジョンで、「結婚しても何も変わらない」なんて悪気なく言っちゃう無神経馬鹿。実際は、シャーロックが薬漬けになってるのを偶然見つけるまで放置ですもんね。めちゃめちゃ変わっとるわ!マグヌッセンおらんでも遅かれ早かれシャーロック死んどったわ!と襟首つかんで恫喝したくなってしまいます。

二人とも、肝心なとこで想像力に欠けてるアンポンタンなんですけど、これ、原作でもまったく同じことやってるんですよね。120年経っても変わらないアンポンタン。でも、私はホームズとワトスンのそういうところが好きだったりします。
少なくとも、私という読者にとっては、ホームズが孤高の天才だったり完璧なヒーローであったことは一度もありません。ワトスンがいたらいたで放っとくくせに去られるたびに拗ねまくり、機嫌が悪ければ周りの人間に八つ当たりし、おだてられれば大喜びする。それが、私にとってのホームズです。
私は、推理の達人でも射撃の達人でもないけど、親友が結婚しちゃって寂しかったり、大切な人を傷つけてしまったことを心苦しく思ったり、そういう部分で彼らに共感することはできる。

もちろん、読者であり視聴者であるからには「神の視点」をもって物語そのものを俯瞰することはあって、いま皆さんがそういうお話をしているのだということはわかります。でも、「民の視点」とでも言いましょうか、人として共感できるというレベルでは、このシリーズには一貫性があると思う、ということも申し添えておきたいと思います。

孤高の名探偵を描いた話としては、破綻したのかもしれない。でも、完全じゃない男二人の不器用な交流を描いた話を、シャーロックのお馬鹿っぷりに頭を抱えつつ、ジョン、そのダサセーターの襟首ビロビロにしたろか!と拳を固めつつ、見守っていきたいです。

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Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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