最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
★コメントを歓迎しております。初めてコメントくださる方は、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。
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ジョンとワトスンとドイル

“John, you are addicted to a certain lifestyle. You are abnormally attracted to
dangerous situations and people.”
「ジョン、君はこういう生活の中毒なんだ。君は異常なほど危険な状況や人間に魅了されてる」(拙訳)



シャーロックに、根っからの危険好きを看破されるジョン。
もちろん、原作のホームズもその点には気づいていました。

ホームズは私にソファをすすめ、自分も肘掛椅子にもどって、批判的な気持のときいつもやる癖で、両手の指をかるくつき合せた。
「ねえ、ワトスン君、何かしら奇異なこととか、紋切型な日常生活の退屈きわまる常軌を逸したことを愛する点では、君もあえて僕に劣らないようだね。その点は、僕の数多くのつまらない事件を、すすんで記述してくれた熱意が、十分証明していると思う。しかもこういってよければ、ちょっぴりと文飾をさえほどこした記述でね」(『赤髪連盟』)



こういう「スリルを好んでしまう性格」を、フランク・ファーレイ博士は「T型人格(Type T personality)」と定義しています。
博士によれば、「T型人格」は「知的T型人格」「身体的T型人格」に分かれます。科学者や画家は知的、身体の限界に挑戦するスポーツマンなどは身体的T型人格に分類されるようです。
単純に分けられるものでもなく、両方の要素がある人もいるかもしれませんが、ホームズは主に前者、ワトスンは主に後者に分類されるかもしれませんね。
ちなみにファーレイ博士、ワトスンが学んだロンドン大学でも学位をとっていますが、ワトスンの卒業した大学は、「外典」にあたる「競技場バザー」ではエディンバラ大学となっています。現代版ジョンは、キングス・カレッジ ロンドン校で医学士などの資格を得たようです。"The Blind Banker"で履歴書が大写しになる場面があります。

どうして「競技場バザー」でワトスンがエディンバラ大学出身になったのかというと、これは原作者のアーサー・コナン・ドイルがエディンバラ大学出身で、母校のバザーのために寄稿した作品だから、ということのようです。
エディンバラ大学は、ドイルがホームズのモデルとしたジョゼフ・ベル博士に出会った場所でもあります(私が世界で一番行きたい場所です)。ベル博士がホームズなら、その推理に驚かされる生徒であったドイルは、ワトスンの原型と言ってもよさそうです。

さて、ドイルと言うと、シャーロック・ホームズシリーズの作者であり、今日の探偵小説の基礎を築いた人として知られているわけですが、ホームズファン=ドイルのファンとは言い切れないと思います。「実はホームズを書きたくなかったんだけど、歴史小説で成功できなかったんだよね」とか、「コティングリー妖精事件に踊らされてやらかしちゃったんだよね」などと、ネガティブな認識をされてることが多い。でもドイルが好きな皆さん、そんな風に言われるたびに言い返したいですよね。「他にやりたいことがあった」という意味でも、「やらかしちゃった」という意味でも、そんなもんじゃねえぞ!と。

波乱万丈なドイルの人生をジョンのような「冒険野郎」という切り口でまとめてくれたのが、先日(2015年1月21日)放送されたNHKの番組 「ザ・プロファイラー ~コナン・ドイル 名探偵ホームズを生んだ挑戦人生」。
この番組では、ドイルの自伝「わが思い出と冒険」が何度か引用されてました。

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自伝とはいえ、小説に劣らぬ面白さです。波乱万丈過ぎて。番組で割愛された登場人物やエピソードも相当面白いです。(変人というか、癖の強い人に出会う確率と、あしらいスキルの高さも何気にすごい。さすがワトスンの生みの親)
波乱万丈と一口に言っても、人や状況に人生をかき乱される人もいます。でも、ドイルは違う。NHKの番組をご覧になった方はお分かりかと思いますが、波乱に自分から飛び込んで行くんですね。学生時代はお金を稼ぐために捕鯨船に乗っちゃうし(一分で決めて次の週には乗船しちゃうんですよ……)、旅先のエジプトでイギリスが戦争を始めたことを知ると、その場で前線に送ってもらっちゃったり(ちなみに奥さんの療養のための旅行ですよ!外出先でホームズに合流するワトスンなんか可愛いもんだわ!)。負け戦とわかっても自分の正義を訴えるために選挙に出ちゃうわ、とにかく、ひとつのステージに安住しない。人権問題、植民地問題、スポーツ……新たな世界に、自分の頭と体でどんどん挑戦していく。

ボートはすでに燃やされたのだ。前進するしかない。

という表現が複数回出てきたと思うのですが、燃やしすぎです……

人から見ると「なんで!?」とつっこみたくなることも多いですが、ドイル自らの言葉で綴られた回想録を読むと、彼にとっては切実な理由があることがわかります。いまだ叩かれている心霊学への傾倒も、宗教では納得できないこと、科学では説明できないことへの探求心ゆえ。ドイルの行動原理は、挑戦精神、冒険心、使命感といったものであり、結果は二の次。成果を求めての冒険じゃなく、冒険自体が目的なんだと思います。富でも名誉でもなく「仕事が報酬」と言ってのけるホームズの言葉は、この人が書くからこそ説得力があるんですよね……
もちろんシャーロックもそうでしょうけど、ジョンのキャラクター像を作る上でドイルの人生が参考にされていたとしたら、シャーロックに「ジョンを頼む」と言われたメアリが

" Don't worry. I'll keep him.in trouble."
「心配しないで。絶えず面倒に巻き込むから(拙訳)」


なんて答えちゃうのも、むべなるかな、という感じです。

そして、ドイルはそんな自分の行動を美化しようとしない。だからこそ「ホームズ」で成功をおさめたにも関わらず、「実を結ばなかった部分」を嘲笑されたりもするわけですが、ドイルは成功も失敗も同じ温度で、情熱的に、率直に語る。そこには冷徹に物事を診断するホームズの目も、ロマンチストのワトスンの目も、確かに生きています。

まったくの余談なんですが、翻訳者・延原謙の「解説」で、ドイルが有名人との邂逅をやたら記録したがるのを「どうかと思う」と評しているのにいつもクスッとさせられます。
後の世代からみれば、歴史のパズルのピースがはまっていくようで大変面白く、ありがたいのですが。
ドイルが騎士なら、延原謙は侍の精神を受け継いでるんですよね、きっと。

(ホームズ原作、ドイル自伝からの引用はすべて延原謙訳)
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この記事へのコメント

大槻ケンヂさんも相当なドイラーでした - billylab - 2015年02月03日 20:12:18

こんにちは ナツミさん
『ザ・プロファイラー ~コナン・ドイル 名探偵ホームズを生んだ挑戦人生』、
見ました〜。
非常に見応えがありましたねー。
おっしゃる通り、そんなもんじゃあ ありませんでした。(◎-◎;)!!
まさに「冒険野郎コナン・ドイル/世界をひとまたぎ!」という感じで。
(しかし 原作の文章だと、ホームズがワトスンを「この〜お茶目さんめ〜(σ・∀・)σ」と
 茶化している印象なのに、
 『Sherlock』のセリフになると、「ア、アブノーマリィ… ( ̄ロ ̄;)」と、
 キワモノ扱いされているのは、気のせいでしょうか??? (^^;))
あれで、まだ 割愛されたくせ者がいたなんて、サー・アーサー・コナンたら、
どんだけ変人ホイホイなんでしょう。マンガのコナンくんもビックリですね。
あの飛んで火に入るなんとやらが スコッティ魂というものなのかしらん。( ̄◇ ̄ i)
しかしなんでも自分で試してからでないと納得しない という所と、
成功と同じ数だけの、むしろそれ以上の失敗を経験している、というのが、
やはり 天才というか、後生に名前が残るほどの人なんだな〜、と 大いに
合点が行くところでした。
番組でも、まじめな人なんですね〜と、パネラーさんが口を揃えていましたよね。
死ぬ間際に「人生で成した100のこと」みたいなイラスト(というか、文言)を
残しておられたのが、とても印象的でした。

 ここで、わたしも彼の‘スピリチュアルへの傾倒’への擁護をひとつ。
やはりNHKBSでやっていた超常現象シリーズでも、ドイルのこれが取り上げられて
いましたが、これは時代背景というのもありますよね。
世の中が今より暗かったですし。(物理的に)
見えない部分の多かった昔は、幽霊の存在が信じられていましたし、その余白が
想像力を育みました。
科学的な視点を重んじる医者であったのに、なぜ 妖精の写真を信じた? と
いう疑問も、今のように なんでもインターネットで情報が得られる時代と
同列には考えられないですよね。
さらに、「病は気から」という言葉があるように、科学的には解らない理由で
病状が変わる事を何度も体験していたとすると、スピリチュアルに傾倒する
気持ちも理解できます。
戦場に出ると薬が足りずに生薬に頼ることも多かったようですし、そうなると
なぜ 治るのか、割り切れない部分があったり。
その部分でも、現代の医療従事者と同じではないかな〜と。
この右脳派でありながらも左脳派でもある、というのが、作品を生み出す
最大の理由なんだ〜と、 今では 思っています。(^^)

ドイラーって言い方かっこいい…… - ナツミ - 2015年02月04日 07:20:08

billylab様

こんにちは!
billylabさんもご覧になっていたのですね。
あの異様に気合の入った221Bのセットと大槻ケンヂさんのホームズコス、番組的には別にいらなかったんじゃ……と思うのですが、そんな疑問を軽く凌駕する、スタッフの「やりたいからやるんじゃ!文句あるかコラ!」オーラを感じました……

> (しかし 原作の文章だと、ホームズがワトスンを「この〜お茶目さんめ〜(σ・∀・)σ」と
>  茶化している印象なのに、
>  『Sherlock』のセリフになると、「ア、アブノーマリィ… ( ̄ロ ̄;)」と、
>  キワモノ扱いされているのは、気のせいでしょうか??? (^^;))

ホームズの顔文字が可愛い……!
そう、それは私も思うんです。
T型人格とか書いちゃいましたけど、それってある程度普遍的なものではないかと思います。原作では、ワトスンの冒険好きをドイルはそんなに特別視してない。まあドイル自身がアブノーマリィに冒険野郎だとして、それを差し引いても、番組で何度も言及されていた騎士道精神というか、その時代の正義を信じて従軍するような男性として、決して特異な性格ではないんじゃないでしょうか。
ジョンにしても、彼なりの倫理観を満足させるための手段として冒険があって、ジョンの本質は行動(冒険)より理由(正義感)を優先させるところにあるんじゃないのかな、と思うんですよね。冒険自体がないとエンジンが空転しちゃうシャーロック(たぶんドイルもこっちのタイプ)とはそこが違う。"A Study in Pink"でもそういう感じだったし、結婚式でのシャーロックのスピーチも、そういうことを言っていたと思うんです。
でもS3E3でのシャーロックやメアリの言い分だと、ジョンの本質が危険に飢えていて、ジョン自身がそれを理解し切れていない、という感じが……。私個人としては、「全部僕のせいかい!」とブチ切れたジョンに共感してしまいました。
まあ、鶏が先か卵が先かみたいな話で、どっちが正しいとも言えないんでしょうが。

> しかしなんでも自分で試してからでないと納得しない という所と、
> 成功と同じ数だけの、むしろそれ以上の失敗を経験している、というのが、
> やはり 天才というか、後生に名前が残るほどの人なんだな〜、と 大いに
> 合点が行くところでした。

もちろん能力も高いですけれど、物事への興味・関心と行動力が並外れていますよね。すごく高密度な人生。


> 死ぬ間際に「人生で成した100のこと」みたいなイラスト(というか、文言)を
> 残しておられたのが、とても印象的でした。

あの馬のイラスト、すごいですよね。
ホームズを嫌っていたというよりは、あまりにも多くの物事に力を注いだ人生で、ホームズはそのほんの一部で、自分の評価と他人の評価が噛み合っていないということなんでしょうね。(そしてまたそれをオブラートに包まず言っちゃうから……)

‘スピリチュアルへの傾倒’へのご意見についても、興味深く読ませていただきました。
「科学の人」がスピリチュアルな方面に目を向けるのは後退のように思われがちですが、今の時代でも、科学で説明しきれないことはありますよね。そういうことにまっすぐに目を向けるのは、むしろ先進的と呼ぶべきなのかもしれません。
私がこの方面に関するドイル自身の言葉を読んだのはこの自伝だけで、彼の行動や著作にきちんと向き合ったことがないので、しっかり勉強してみたいと思います。


> この右脳派でありながらも左脳派でもある、というのが、作品を生み出す
> 最大の理由なんだ〜と、 今では 思っています。(^^)

後年の心霊主義についても、以前から宗教に疑問を感じていた、という懐疑的な性格と、愛する人の死を経て死後の世界を信じるに至った、という感傷的な部分、両方が作用しているんですよね。ドイル本人が、何人もの考えを詰め込んだような豊かな人格の持ち主だった、ということが、さまざまな登場人物や物語の源泉なんでしょうね。

- みっちょん - 2015年02月12日 13:21:45

こんにちは! お久しぶりです m(_ _)m

「ザ・プロファイーラー」面白かったですねえ〜〜。

新潮文庫の「自伝」ですが、抄訳というより、カットされている部分があります。

そのカット部分は若いころのコナン・ドイルの心霊主義についての記述です。
そして、訳者は後書きで「長男のキングズリの死によって彼は心霊術に凝るようになった」と書いているので、私は(恐らく他の方も)息子を亡くした衝撃が強かったのね、、と長らく思っていました。

でも、120部刊行というミニミニ私版ではありますが、心霊学についての記述がカットされている第3章と第8章が収録されている本を読むことが出来た事、サイトに載せるために年表を作った事で、「息子の死」で心霊学にのめり込んだという、延原謙さんの後書きは「間違っている」という結論をだせました。

ヴィクトリア時代に「心霊学」が流行ったことについての詳しいことは『英国心霊主義の抬頭―ヴィクトリア・エドワード朝時代の社会精神史』を読むと納得できます。(コナン・ドイルについては半行しか記述はありませんが)
それと、『幽霊を捕まえようとした科学者たち』には、年表や霊媒たち、ゴーストハンターズそしてアンチ・ゴーストハンターズの表も判るので判りやすいです。(コナン・ドイルはゴーストハンターズですね)

分厚い本で説明されているくらいですから、なぜ「心霊学」に興味を持たれるようになったのかを一言では言えませんが、「科学の進化」が大きな要因のひとつでは、と思っています。

ダーウィンの進化論だけではなく地質学の発達で化石の研究が進歩した、つまり骨が化石になるためには聖書に書かれている年代では無理なことが判った事、聖書に対する高等批評が活発になった事等々があります。

この考えの元に科学的唯物論者であるハクスリーが「不可知論」という立場を表明しました。この考えは知識人のほとんどが賛同したのです。もちろん若きコナン・ドイルも不可知論者となりました。
でも、不可知論者は無神論者ではないので、どうしても宗教から離れられません。でも、古い宗教には戻れないので、「あちらの世界には何かがある」という確証をえるために「心霊学」の研究をするようになったようです。


コナン・ドイルはカトリック教徒として育ちましたが、カトリックのいう「厳格なる処罰」に対する疑問をもち、近代的な科学が示す証拠から形式的な古い宗教を拒絶したのだと思います。でも、無神論者ではないので確たる証拠を求め「心霊研究者」となり、長年研究した結果「心霊主義者」になったのです。コナン・ドイルにとっての「スピチュアリズム」はオカルト的な趣味ではなく「宗教問題」だったのでしょうね。
だから、向こうの世界を信じたコナン・ドイルは伝道者として世界各地を布教するために活動したです。コナン・ドイルにとって向こうの世界には「煉獄や地獄」などは存在せず、高い場所にたどり着くために修行をしている「霊」たちのいる世界だったようです。

うわあ!ありがとうございます! - ナツミ - 2015年02月14日 08:35:01

みっちょん様、いらっしゃいませ!

NHK人形劇も興味深く拝見しています。「シャーロッQ」なしで終わってしまう日は寂しいです……
第2シリーズが作られるようなら、「シャーロッQ」も一緒に帰還してくれますように!(まだ完結もしてないのに気が早すぎますが……)

> 新潮文庫の「自伝」ですが、抄訳というより、カットされている部分があります。

カットされている、と聞いてはいたのですが、2章分も!
ドイルが知ったら、さぞ不本意なことでしょうねえ……

> でも、120部刊行というミニミニ私版ではありますが、心霊学についての記述がカットされている第3章と第8章が収録されている本を読むことが出来た事、サイトに載せるために年表を作った事で、「息子の死」で心霊学にのめり込んだという、延原謙さんの後書きは「間違っている」という結論をだせました。

みっちょん様の作成された年表を拝見しました。ご興味のある方も多いと思いますので、以下にリンクを貼らせていただきます。問題があればすぐに削除致します!

http://homepage2.nifty.com/shworld/06_doyle/chronological/3/outline3.html

心霊学への言及は、長男が亡くなる前からありますね。延原氏はどうして「長男の死がきっかけでのめりこむようになった」と書かれたのでしょうか。何かそれを裏付けるような資料があったのか、延原氏の推測に過ぎないのか……?後者だとしたら、どうしてそういう推測をすることになったのでしょうか。延原氏自身のファンでもあるので、色々と気になることが増えました。

既存の宗教に対するドイルの考えは、カットされていない部分にも散見されますね。
もっと知りたい、と書いてすぐにたくさんのご教示をいただいて、本当にうれしいです!
ご紹介いただいた本を読んでみたいと思います。

「作品」は作家のすべてではなく、ほんの一部に過ぎないのですね。ホームズを深く知りたい、と思ったら、作者の考え、その考えに影響を及ぼした時代の文化に入り込んでいくことになりますね。
「ホームズ」を入り口に、知りたいことがたくさんあります。拙い歩みでも、その大きな世界に入り込んでいくことが私なりの「冒険」なんだと思います。みっちょん様に道を示していただくたびに、背筋が伸びる思いです。

- みっちょん - 2015年02月14日 16:52:31

ナツミさま
年表のご紹介有り難うございます m(_ _)m
「シャーロッQ」も何とか「判りません」という返事をしないで終了できてホッとしています。


>「作品」は作家のすべてではなく、ほんの一部に過ぎないのですね。ホームズを深く知りたい、と思ったら、作者の考え、その考えに影響を及ぼした時代の文化に入り込んでいくことになりますね。

と、ナツミさんが書かれているように、私もコナン・ドイルについて知りたい!!と思うようになりました。それで、『わが思い出と冒険』p40の最後の4行に具体的に当時の思想家の名前が載っていますが、入手が容易なミルやスペンサーの訳書を読んで、コナン・ドイルは若いころにはこういう思想に影響されていたのね、でも心霊学とは真反対の思想なのが不思議だな、と思っていたのです。

ところが、ノーカット版を読むと、ちょうどp40とp41の間の数ページがまるまるカット、その出だしは
「今は分かっているのだが、彼らの否定的な態度は、彼らが破壊的批評で攻撃した肯定的な態度よりも一層まちがっており、一層危険だった。(後略)笹野史隆訳」とあったので「!?!?エエェェ!?!?」というモードになってしまいました。
つまり、コナン・ドイルは不可知論という言葉を提唱したハクスリー、どちらかというと無神論者のミル、スペンサーの思想を全面的に否定しているではないですか!

自伝の邦訳にはカットされている箇所がある、というのは知っていましたが、こういうコナン・ドイルの思想の遍歴に関するカットがあるとは、本当に本当にビックリでした。
それでも、スペンサーの『科学の起源』の一節にホームズシリーズの中に引用しているな、というのを見つけたので、無駄な読書とはならなかったと一人で慰めたものでした。

コナン・ドイルはカットされている箇所で、自分は「広い意味でのユニテリアン派」だと言っています。辞典で調べても判るような判らないような意味だったので、いろいろと読んだものです。
昨年は心霊学の本の他にW・ジェイムズの『宗教的経験の諸相』を読んだのですが、「婚式は神前、お葬式はお寺、そしてクリスマスイブにはケーキを食べる」、という生活習慣のある私には頭では理解出来ますが、心の奥でのコナン・ドイルを含むキリスト教での教育を受けた人たちの宗教の悩みについて理解するのは難しいな、と思っています。

ナツミさんが『英国心霊主義の抬頭』を読まれたあとのご感想が楽しみです。

心意気だけは! - ナツミ - 2015年02月14日 20:05:03

みっちょん様

シャーロッQの監修、お疲れさまでした。大人が観ても面白い切り口のクイズばかりでしたから、番組作成者の方からの質問も鋭いんでしょうね……!

こちらこそ、年表をご紹介させていただき、ありがとうございました。
みっちょん様のコメントを読んで気になった方も多いと思いますので、お許しいただけて幸いです。

> ところが、ノーカット版を読むと、ちょうどp40とp41の間の数ページがまるまるカット、その出だしは
> 「今は分かっているのだが、彼らの否定的な態度は、彼らが破壊的批評で攻撃した肯定的な態度よりも一層まちがっており、一層危険だった。(後略)笹野史隆訳」とあったので「!?!?エエェェ!?!?」というモードになってしまいました。
> つまり、コナン・ドイルは不可知論という言葉を提唱したハクスリー、どちらかというと無神論者のミル、スペンサーの思想を全面的に否定しているではないですか!

ど、どうしてそんな、大きな誤解を招くようなカットが行われたのでしょう?
つくづく、教えていただけてよかったです……その事実を知らなければ、他の資料を読み進めてもどこかで「?」となってしまいますよね。

> それでも、スペンサーの『科学の起源』の一節にホームズシリーズの中に引用しているな、というのを見つけたので、無駄な読書とはならなかったと一人で慰めたものでした。

わあ、私にもその箇所を見つけられるでしょうか。楽しみです!

> コナン・ドイルはカットされている箇所で、自分は「広い意味でのユニテリアン派」だと言っています。辞典で調べても判るような判らないような意味だったので、いろいろと読んだものです。
> 昨年は心霊学の本の他にW・ジェイムズの『宗教的経験の諸相』を読んだのですが、「婚式は神前、お葬式はお寺、そしてクリスマスイブにはケーキを食べる」、という生活習慣のある私には頭では理解出来ますが、心の奥でのコナン・ドイルを含むキリスト教での教育を受けた人たちの宗教の悩みについて理解するのは難しいな、と思っています。

わ、私など頭でも理解できるか怪しいものですが……(おそらく咀嚼するのが精一杯で、感想など書けるかどうか……)
私も現代の日本人らしく、ごちゃまぜの宗教の表面を渡り歩いていますが、それでも、自分の奥深くに仏教や神道がいつの間にか入り込んでいたのだな、と思わぬところで感じることがあります。
他の宗教に深く根ざした考えは、本当には理解しきれないものかもしれませんね。外側から見るからこそわかることももちろんあるでしょうから、「わかろう」とすることには大きな意味があると思いますが。
「わかろう」という心意気だけは忘れず、さまざまな考えに触れていけたらと思います。

- みっちょん - 2015年02月15日 11:43:36

ナツミさま

>「わかろう」という心意気だけは忘れず、さまざまな考えに触れていけたらと思います。

激しく同意いたします!!!


なんだか興奮した文章を書き込んでしまい申し訳有りませんが、、興奮ついでに自伝の「第9章」のカットですが、ここは冒頭から大幅にカットされています。

原著の冒頭の邦訳は
「わたしがあの心霊研究の最初の種をまいたのは結婚してからサウスシーを去るまでの間である(笹野史隆訳)」
です。
内容的にいうと「心霊研究、テレパシーの実験、心霊能力のある老人に薄謝で来てもらった交霊会の話(プロの霊媒師の代金は高いので頼めなかった)、神智学観(これには批判的です)」等です。

コナン・ドイルがテレパシーの実験ですよ!! 

コナン・ドイルは早くからテレパシーについては信じていたようで、『唇のねじれた男』では依頼人のセントクレア夫人が「自分は夫の身に危険があると感じる」といった説明をするとホームズは「女性の勘」は認めています。

でも、「心霊学」の講演を始めたあとに発表された《サセックスの吸血鬼》では「わが探偵事務所はしっかり地に足をつけてやっているし、これからもずっとそうすべきなんだ。この世だって広くて、それの相手で手いっぱい。この世ならぬものなんかにまでかまっていられるもんか(日暮雅通訳)」とホームズに言わせています。

ホームズと「霊」は似合わないですよね。難問が起きた時に霊が真相を語りだしたらホームズの推理力はいらなくなりますもの。

そうだったのか! - ナツミ - 2015年02月15日 17:24:42

みっちょん様

カット部分について教えていただき、ありがとうございます。きちんと、自分で手に入れて本を読まなきゃ……と思うのですが、非常に入手しにくい本とのことで、本当に貴重な情報です。

> コナン・ドイルは早くからテレパシーについては信じていたようで、『唇のねじれた男』では依頼人のセントクレア夫人が「自分は夫の身に危険があると感じる」といった説明をするとホームズは「女性の勘」は認めています。

学生時代から、この部分は友人と「意外だよね」と言い合ってたんです!
その時は、夫人をリラックスさせてより多くの情報を引き出すための「方便」だという結論を出したのです。ワトスンが考えていることを当てて「精神感応がやれる」とからかったこともあって、「はったり」の効果を熟知していたことですし。ドイル自身が実験をするまでに本気だったとは!

> でも、「心霊学」の講演を始めたあとに発表された《サセックスの吸血鬼》では「わが探偵事務所はしっかり地に足をつけてやっているし、これからもずっとそうすべきなんだ。この世だって広くて、それの相手で手いっぱい。この世ならぬものなんかにまでかまっていられるもんか(日暮雅通訳)」とホームズに言わせています。

ホームズはホームズ、自分は自分、と割り切れるのもすごいですよね……
私は小説を書いたことはありませんが、もし書くとしたら、きっと登場人物に「持論」を語らせると思うんです。または、頑ななホームズが「この世ならぬもの」に翻弄されてしまう展開にすると思う。
いずれにしても、講演するまでに強く世に伝えたいことがあったら、きっと小説を武器として利用すると思います。ホームズに最後まで心霊学を持ち込まなかったのは、「プロファイラー」で強調されていた「騎士道」をホームズに対しても貫いた、ということでしょうか。
(この『騎士道』にもたいへん興味が湧いています。ちょっと前にこのブログのコメント欄で話題になった『ホームズ結婚詐欺事件』にも深く関わっていますし、シャーロックも、『竜退治の騎士』になぞらえられていました。英国の男性の精神世界における『騎士道』がどんなものなのか、もっと知りたいです)

> ホームズと「霊」は似合わないですよね。難問が起きた時に霊が真相を語りだしたらホームズの推理力はいらなくなりますもの。

「霊」とはちょっと違うかもしれないんですが、ホームズも、兄のマイクロフトも「本能」に重きをおいている節はありますよね。「アベ農園」ではホームズが、「ブルース・パティントン~」ではマイクロフトが、物証でなく直感による発言をしてます。
「直感」と言っても、豊かな経験や、まだ言語化に至らない分析が背景にあるのでしょうから、霊感と並べて語るのは乱暴かもしれませんが、彼らの日頃の言動と比べて、これらの発言はすこし浮いているような気がしていたんです。
作者の中で「地に足をつけてやっていく」ことと「この世ならぬもの」が同時点で地続きだったとしたら、納得がいきます。

「霊的なもの」が自分には理解しがたい、という理由だけで、そういうものに興味を持ったドイルを衝動的な人物と決めつけてしまっていたかもしれません。彼を知るにつれ、精力的、先進的で、しかし理性的な人物像が浮かびあがってきます。

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シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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