最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
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シャーロックの隠れ家

★この記事は、「ユリイカ」掲載用に書かせていただいたものを加筆修正しました。

劇中に登場したレンスター・ガーデンズ以外にも、ロンドンにかなりの数の隠れ家を持っているシャーロック。周りの人たちの証言によると……

パーラメント・ヒル
カムデン・ロック
ダグマー・コート
キューガーデンの温室
ハムステッド墓地の傾いた墓
モリ―のベッドルーム
ビッグ・ベンの時計の後ろ



どんな場所なのかお伝えするために、できるだけリンクを貼ってみました。
Wikipediaで日本語のものがあればそこに、なければ英語版に、英語もなければGoogle Mapにしてみたのですが、旅行案内のサイトでも紹介されているところが多いので、ご興味のある方は検索してご覧になってみてください。
シャーロックの隠れ家巡りだけで、数日間のロンドン観光ができそう。
あらためて、このドラマは英国大使としての役割を負っているのだなあ、と思います。
(関連記事: 『 5月の結婚式』)

何げに、モリ―の情報が衝撃的だったんですが……(いつから!? まさかシャーロックへの告白前から!? だとしたらそりゃ、モリーも期待しますよ!)ここ、ユリイカで「スペアのベッドルーム」と書いちゃいましたが(ほんとすみません)、ドラマを見直したらシャーロックの予備の寝室=モリーの寝室ということですよね?

原作でも、ホームズにはたくさんの「隠れ家」があったようです。

この年七月の第一週に、ホームズはしばしば長時間単独で外出したから、また何か事件を手がけているのだなとわかった。留守のあいだに人相のよくない連中が幾人も、ベージル船長はいるかと訪ねてきたので、ホームズはまた例のいくつもある変名と変装の一つに身をやつして、仕事をしているなと思わせた。彼はロンドン市内の各所に少なくとも五カ所の小さな隠れ家を持っていて、自由に姿を変えられるのである。(『黒ピーター』)



マイクロフトの情報「傾いた墓」は、「バスカヴィル家の犬」で古代人の遺跡に潜伏していたホームズを思い起こさせます。

しかしともかくも私は見当を誤ってはいなかった。そこには人間の住んでいることを証するにたる材料がいろいろあった。確実にこれは怪人物の巣である。新石器時代の人類が寝台に用いたといわれる石板のうえに、防水布でまいた毛布がころがっているし、そのほか粗末な炉には火を燃やしたあとの灰がのこっている。そばにはこまごました台所道具のほか、半分ばかり水の入ったバケツもある。缶詰のあき缶の散乱しているところからみると、相当前からここにいるのだろう。なお、とぼしい光線に目がなれてくるにつれて、小皿や半分ばかり残った酒のびんがすみのほうにあるのも見えてきた。中央にはもうひとつ平たい石があって、食卓の用をなしているらしかった。



ワトスンによる貴重な「隠れ家目撃情報」ですが、これは長期滞在用なのでちょっと特別かも。ロンドンの隠れ家は、用途に応じてさまざまなものが用意してあったのでしょうね。ガイ・リッチー版では、その中の一つをワトスンも把握していて、訪ねてくる場面があったと思います。

キューガーデンの温室、というのもありますが、この"His Last Vow"のもとになったお話、「犯人は二人」では、ホームズとワトスンはミルヴァートンの温室から侵入しますね。

「あれがミルヴァートンの温室なんだよ」ホームズがささやいた。「このドアのなかがすぐ書斎なんだから、ここからはいるのがいちばんよいけれど、かぎをかけたうえボルトまで差しこんであるから、開けようとすると相当の音をたてることになる。こっちへきたまえ。ここに温室があって、客間につづいているのだ」
温室の入口にも鍵がかかっていたが、ホームズはガラスを丸く切りとって、手をさし入れて簡単にあけてしまった。そしてなかへはいると、急いでドアを閉めたが、これで私たちは法律的にはりっぱに罪人になったわけである。むっとする温かい空気の中に、エキゾチックな植物のむせぶような芳香がまじって、息づまりそうだった。暗いなかでホームズは私の手をとって、ぐいぐいと進んでゆく。私は木の小枝に顔をなでられたが、ホームズは暗中で物が見えるという特殊の能力を、長年の注意深い鍛錬によって作りあげていた。



はじめにあった恐怖感はきえて、法の反逆者ではなく守護者であったときに味わったよりも、はるかに大きな歓喜にぞくぞくする思いだった。私たちの使命のけだかさ、己れを空しゅうする騎士精神のあらわれであるという自覚、相手の性格の下劣さなどがあるから、その夜の冒険のスポーツ的なおもむきはひとしおである。よからぬことをしているという観念などは少しもなく、その危険のなかにあって胸もときめくばかり興じたものである。私は感嘆の眼をもって、細密な手術をする外科医の沈着さと科学的正確さで、道具箱をあけて工具を選んでいるホームズを見まもった。



ワトスンの描写は、どことなく背徳的というか、陶酔気味というか……
不法侵入という違法行為に高揚しているせいでしょうか。ホームズも、いつもの二割増しくらいかっこいい気がします(※個人による感想です)。
温室という場の持つ、エキゾチックな雰囲気が効いてますよね。原作のワトスンには、穏やかな常識人という印象を抱いている方も多いのではないかと思うのですが、こういうの読むと、危険中毒者・ジョンの「元の人」なんだよな~、と思い知らされます。
マグヌッセンの邸宅・アップルドアについては別に記事を書きたいと思いますが、この温室がモチーフのひとつになっているようですね。ガラスを多用した作りですし、マグヌッセンのソファの後ろには熱帯の植物が見えます。

それにしても、「ビッグベンの時計の裏」は眉唾ものという気が……(何のためにそんなとこに……?)
シャーロック本人がハドスンさんにそう語ったのだとしたら、本当に隠れ家があるのかな?高いとこ好きだし(関連記事: 『高いところに…』)……ビッグベンをお訪ねになる方は、マインドパレスに入れておいてください。

しかし、過剰に映画的、という感もあります。
果たしてシャーロックは、ハドスンさんに本当のことを言ったんでしょうか。

これまでに書かれてきた多くのパスティーシュと同じように、"SHERLOCK"は、原作の記述を疑い、「本当に起こったこと」を想像することから作られています。
そして、「ジョンのブログ(表向きに発表されていること)」と「ドラマ(実際に起こったこと)」の対比が、ホームズシリーズという作品の中だけでなく、原作とそれを取り巻く現実世界のパロディーを成立させています。
アンダースン率いる「空の霊柩車」は、原作に対してのBSIの位置を占めているのでしょう。
もちろん、現実のファンが作品の中の名探偵にインタビューをするのは不可能で、だからこそ自分で調べ考える、という知的遊戯が成り立つわけですが、アンダースンたちもシャーロックに直接聞かずに尾行で確かめてるのが偉い。シャーロックに気づかれてるかどうかはおいといて、その姿勢が非常にシャーロッキアン的だな、と思います。
まあ、主催者がアンダースンなだけに、シャーロックの言葉は全然信用してないんでしょうけど……

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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この記事へのコメント

明けましておめでとうございます。 - へしこ - 2015年01月06日 22:22:58

12月は先生でもないのに走り回っておりまして、ようやくのご挨拶です。何とかホームズさんのお誕生日(推定)に間に合いました~!
本日はSHERLOCKのコンプリートBOXが(年が明けてから注文したにも関わらず)無事届いたり、英国では#setlockが発動したりと、お誕生日(推定)にふさわしい日となりました。週末はクロニクルと合わせてSHERLOCKを堪能しまくる三連休になりそうです。…別名「引き篭り」とも言いますが。

映像での「隠れ家」描写としては、やはりグラナダ版のバスカヴィルを思い出しますね。ホームズさん、結構隠れ家生活をエンジョイなさっていた痕跡が見られて微笑ましかった覚えが…(笑)。
シャーロックの場合の「隠れ家」って、どんな感じなんでしょう?S3E3でシェザになってたときの格好から、カムデン・ロックあたりでパンクな扮装をしているシャーロックをちょっと想像してみたりしました(笑)。パーラメント・ヒルは犬のお散歩コースで、わんこがたくさん!な場所だそうなので、犬好きっぽいシャーロックには趣味と実益を兼ねた場所なのかもしれません。意外とモりーの寝室も、彼女の愛猫トビーくんと遊ぶためだけに確保してたりしないかしら、とか。
…つくづく、私のシャーロック像は歪んでると思います。

毎度こんな感じで、他愛ない書込みしかしない輩ですが、本年もよろしくお願いいたします。
(…あ、クリスマス・プディングの感想を是非お聞かせください!甘いものは大好きですが、量をこなせない私には縁遠い食べ物な気がします!)

明けましておめでとうございます。本年もよろしく! - 篠田真由美 - 2015年01月07日 08:32:46

私も買ってしまいましたコンプリートBOX。これまで買った3シーズンのブルーレイは売り払うにしても、ああ、どんだけお金吸い取られているのやら。

隠れ家で行ったことがあるのはキューガーデンの温室だけです。パームハウストとほんとに住めそうなほど広いですが、水やりのためにときどき全体にシャワーが降りました。どんなところに隠れてるんだろ、シャーロック・・・

ご存じの水晶宮もあり、ヴィクトリア朝は温室が大流行した時代でもありました。鉄骨と板ガラスの発明という技術の側面に、博物学趣味、大英帝国の世界支配的なニュアンス、そしてレディ・トラベラーの活躍がイギリス人の視野を拡大していく。このへんも掘り出すとすごく面白くて興味は尽きません。

趣味なら納得です - ナツミ - 2015年01月10日 02:35:06

へしこ様

おめでとうございます!そしてお疲れ様です。1月はすこしゆっくりする時間がおありになるといいのですが。
せっかくホームズさんのお誕生日に間に合うように書き込んでくださったのに、私、急性胃腸炎にかかってしまいまして……ご返信が遅くなって申し訳ありません。あ、プディングのせいではなく、夕食を済ませて(なんか疲れてるな~)と横になったら次の朝にはもう(略)になってました。
暮れの疲れが休み明けに出たらしいです。へしこさんもどうぞお気をつけて!

コンプリートBOX、いいですね~!
S1~S3のディスクも買ってしまった上にBOXを買うのは、私の経済状況では分不相応な気がして、今のところ購入予定はないのですが、amazonで日本語版の方をチェックしたところ"飛び降りのからくり"と書いてあって、ええ~ここで発表なの!?と軽く戦慄しております。
か…買わないとダメ!?ちゃんと全部追わなきゃ、頓珍漢なことを書いてしまうかしら。しかし、結局日本版も買ったクロニクルと合わせたら、家賃分くらい行っちゃうよ……!
貧乏人としては涙を飲んで、「なんか頓珍漢なこと書いてたら教えてください」と皆さんにお願いするしか……!ただテレビドラマが好きなだけなのに、「好き」ってお金がかかるんですね……

#setlockはちょっとだけ覗きました。な、何ですかあれ!!
夏も冬も寝込んでてめっきり体が弱い私ですが、放映まで頑張って元気でいたいです。S3のマイクロフトとジムの場面みたいにフェイクだったら、静かに世を恨んでしまいそうです。

> 映像での「隠れ家」描写としては、やはりグラナダ版のバスカヴィルを思い出しますね。ホームズさん、結構隠れ家生活をエンジョイなさっていた痕跡が見られて微笑ましかった覚えが…(笑)。

そ、そういえばそうですね。高いとこに登ったりして……(←すっかり趣味と決めつけてる)
あの隠れ家、確かに楽しそうでした。男子の憧れというか……
だいたい、ワトスンに隠し事してキレられてる時、ホームズは反省してみせながらも明らかに嬉しそうですよね。ドッキリの看板持ってそうですよね(古い)。

> シャーロックの場合の「隠れ家」って、どんな感じなんでしょう?S3E3でシェザになってたときの格好から、カムデン・ロックあたりでパンクな扮装をしているシャーロックをちょっと想像してみたりしました(笑)。パーラメント・ヒルは犬のお散歩コースで、わんこがたくさん!な場所だそうなので、犬好きっぽいシャーロックには趣味と実益を兼ねた場所なのかもしれません。意外とモりーの寝室も、彼女の愛猫トビーくんと遊ぶためだけに確保してたりしないかしら、とか。

シャーロック、ノリノリだ……趣味か!お前趣味で隠れてるんか!趣味で隠れてるなら「ビッグベンの時計の裏」はむしろすごくありそうです。
トビーもわりと本気で追跡猫に育てようとしてるかもしれません。

こちらこそ、なんだかピントのずれた記事ばかりになってしまいそうですが、本年もよろしくお願い致します。
何だかんだでプディングはまだ食べていないのですが、味見したらご報告しますね。

マグヌッセンの邸宅 - ナツミ - 2015年01月10日 03:53:38

篠田真由美様

明けましておめでとうございます。私事でご返信が遅くなってしまい、松が取れてしまった後のご挨拶で申し訳ありません。今年もお立ち寄りいただければ幸いです!

> 私も買ってしまいましたコンプリートBOX。これまで買った3シーズンのブルーレイは売り払うにしても、ああ、どんだけお金吸い取られているのやら。

あ、今までのを売る、という手もあるんですね。
しかし私の場合扱いが粗雑なのか、もうS1なんて人に貸すのもためらうほどの汚さなので無理っぽいです……

> 隠れ家で行ったことがあるのはキューガーデンの温室だけです。パームハウストとほんとに住めそうなほど広いですが、水やりのためにときどき全体にシャワーが降りました。どんなところに隠れてるんだろ、シャーロック・・・

そ、そんな過酷な隠れ場所だったんですね。シャーロック……
なんだか、ロバート・ダウニー・Jr.のホームズが全身タイツで潜伏してるほうが似合いそうですね。
でもアジアから行くと、温室の湿気はなんだか懐かしい感じがしますね。

> ご存じの水晶宮もあり、ヴィクトリア朝は温室が大流行した時代でもありました。鉄骨と板ガラスの発明という技術の側面に、博物学趣味、大英帝国の世界支配的なニュアンス、そしてレディ・トラベラーの活躍がイギリス人の視野を拡大していく。このへんも掘り出すとすごく面白くて興味は尽きません。

そうなんです、水晶宮!温室がモチーフの「ひとつ」と書いたのは、マグヌッセンの邸宅の造りからは水晶宮も連想したからなんです。
アップルドアについてもう少し調べてみたい、と思っていたのですが、やはり英国を手始めに世界を支配しようというマグヌッセンの野望と、この邸宅の形状は関係があるのでしょうか。とても興味深いです。

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Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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