最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
★コメントを歓迎しております。初めてコメントくださる方は、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。
→「コメントをくださる方へ
「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
記事索引「ブリキの文書箱

ホームズ兄弟の奇癖

"He's straightened the knocker. He always corrects it, it's OCD, doesn't even know he's doing it.
"Why do you do that?"
"Do what?"
"Nothing."
「兄はノッカーをまっすぐに直す。いつもそうするんだ。強迫性障害だな、やってる自覚すらない」
「君はどうして曲げるんだ」
「何を?」
「なんでもない」(拙訳)



玄関ドアのノッカーがまっすぐになっていることから、マイクロフトの来訪を知るシャーロック。
昔から、「シャーロックが曲げ、マイクロフトが直す」のイタチごっこを延々とやってるんでしょうな……
OCD(Obsessive Compulsive Disorder)は「強迫神経症」と記憶している方も多いと思いますが、今は「強迫性障害」というのですね。
OCD研究会主催の「小さなことが気になるあなたへ」というサイトが、とてもわかりやすかったです。直リンクは控えますが、OCDとはどんな状態か気になる方は、検索の上ご参照ください(そして、可愛らしいキャラクターたちとホームズ兄弟のギャップによるビミョーな気持ちを味わってください……)

強迫観念によるものかどうかはわからないのですが、原作のマイクロフトにも、変わったところがあります。

「おや、おや。何なのだろう?兄のマイクロフトが来るというよ」
「かまわないじゃないか?」
「かまわないじゃないかって、それはまるで田舎みちで市電に会ったようなものなんだ。マイクロフトにはちゃんと軌道があって、それからはずれたことがない。ペルメルの家からディオゲネス・クラブ、それからホワイトホールの役所、これを循環するだけなんだ。一度、たった一度だけここへ来たことがある。どういう風の吹きまわしで脱線することになったのかな?」(『ブルース・パティントン設計書』)



「一度だけここへ来た」というのは、ディオゲネス・クラブでワトスンと初めて会った日のことですね。

話しながら歩くうちに、ベーカー街の家までたどりついた。さきにたって階段をのぼっていったホームズは、私たちの部屋のドアをあけてみて、ぎくりとした。その肩ごしにのぞいてみると、おどろいたことに、兄さんのマイクロフトがひじ掛けいすにおさまって、タバコをふかしているのである。
「さあお入り、シャーロック。ワトスンさんお帰りなさい」おどろく私たちの顔を見あげて、にこにこしながら穏やかに言葉をかける。「僕にこんな気力があろうとは思わなかったろう、シャーロック?だが妙にこの事件には心をひかれるもんだからね」(ギリシャ語通訳)



原作のマイクロフトは運動嫌いで肥満体。ホームズの言う「家と職場とクラブの循環」以外のことはめったにしません。
221Bにもしょっちゅう顔を出し、休日もトレーニングに励む現代版マイクロフトとはだいぶ違いますね。

弟に「強迫性障害」と診断されたことを知ってか知らずか、中で麻薬捜索中だったマイクロフトはこんなことを言います。

"The siren call of old habits.How very like Uncle Rudy.Though in many ways, cross-dressing would have
been a wiser path for you. "
「悪癖の再発か。ルディおじさんそっくりだな。色々な意味で、悪癖なら服装倒錯のほうがまだましだが」(拙訳)


誰、ルディおじさんって。調べたらそういう俳優さんはいらっしゃるようなんですが……

有名人の名前でないとしたら、文字通り兄弟の親戚で、異性装の習慣がある方ということでしょうか。
だとしたら、これはシャーロックの変装のことを揶揄してるんでしょうね。捜査のためだと思いますが、"A Scandal of Belgravia"でちらりと見えた彼のクローゼットには、さまざまな服がありました。"The Great Game"では、実際に警備員に変装していましたね。

原作でもホームズはさまざまな変装をします。聖職者、老人、労働者などバラエティ豊かなのですが、老婆に変装したこともビリーの口から語られています。

「誰かを追いまわしているんです。きのうは職さがしの労働者になって外出なさいました。今日はお婆さんでした。私まですっかり担がれてしまいましたよ。先生の手はよく知っているはずなんですがねえ」といってビリーはソファにもたせかけてあるぶくぶくのパラソルを指さした。
「あれがお婆さんの小道具の一つです」(『マザリンの宝石』)



一方アイリーン・アドラーには、男装して散歩する習慣があったようです。

でも、ご存じのとおりお芝居には慣れていますし、男装をいたすのなど造作もございません。これまでにもよく、そのおかげで気ままにふるまったものでございます。私は御者のジョンにあなたさまの見はりをさせておき、二階へ駆けあがって、散歩服と呼んでおりますが、急いでそれを身につけて降りてみますと、ちょうどあなたさまはお帰りになるところでございました。(『ボヘミアの醜聞』)


異性装にはさまざまな理由があり、苦しみが伴うこともあると思いますが、ホームズやアイリーンのように必要に応じて異性の服装も選べるというのは、とても自由な感じがします。特にアイリーンは、世間の目や窮屈なドレスから解放されて、伸び伸びしていたのでしょうね。
「散歩服」( my walking-clothes)という呼び名に彼女の柔軟な感性と茶目っ気が感じられて、そういう女性を肯定的に描いたドイルの筆致もいいなあと思います。

どこまで本気かはわかりませんが、シャーロックとマイクロフトはお互いを「精神的な疾患がある」と見なすことで、自分と切り離して考えようとしていると思えます。それは、仲の悪さの表れにも見えますが、相手をよく観察して、客観的に理解しようとしているとも言えます。
愛の反対は無関心、と言ったのはマザー・テレサでしたっけ。この兄弟は、少なくともお互いへの関心は尽きないようです。
(原作からの引用はすべて延原謙訳)
関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

メールはこちらへ

Twitter
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
索引
このブログで考察した「元ネタ」を、ドラマの時系列に沿って探すための索引サイトです。 順次更新致します。 「21世紀探偵・ブリキの文書箱」
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
blog mura