最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
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酔っ払いの捜査

ちょっと体調を崩して、ご無沙汰してしまいました。
リハビリを兼ねて、というわけでもないのですが、シャーロックとジョンが史上最悪のコンディションにあった捜査のことを書こうと思います。

シャーロック演出による、色々と間違ったスタグ・ナイトに舞い込んできた事件。
酔っぱらった二人が依頼人を迎えて調査に行くまでの場面は、いわゆる「ホームズもの」の典型的な展開をうまくなぞっているように思えます。

まず、入ってきたテッサが「どちらがシャーロック・ホームズさん?」と尋ねる場面。
「まだらの紐」「三破風館」などにありますね。
(関連記事:「人違いの話」)
酔っぱらったシャーロックは、いつになく穏やかな顔で依頼人の話に耳を傾けています。
テッサの話が悲しい場面にさしかかると、同情したような表情まで浮かべてる!
いつものソシオパスっぷりはどこへ……!

原作のホームズは、依頼人の話をじっくり聞いて、励ましたりなだめたりできる包容力を持っているんですよね。

シャーロック・ホームズは理解のはやい一瞥を投げて、「けっしてご心配はありません」と前かがみになって彼女の前腕を軽く叩きながら慰めた。「大丈夫、じきに万事解決してあげます。今朝汽車でお着きになったんですね?」(『まだらの紐』)


シャーロックには10年早いと思ってましたが、酔っぱらうと優しくなるんだ……
ジャイアンもそうです。(Wikipedia『ホンワカキャップ』)

眉間に皺を寄せてる印象が強いジョンも、にこにこ笑ってるのが「ワトスン」っぽいんですよね。
眠ってしまうジョンをシャーロックが

"I apologise about my……you know... him."
「すみません、私の……ええと、こいつが」
"Rude. Rude!"
「失礼だぞ!」


とフォローするのも、ラスボーン&ブルース版に代表される「探偵とダメ助手」のイメージ。
酔っぱらったほうが、ステレオタイプな「ホームズとワトスン」に近くなる、というのは笑えます。
既に「シャーロックとジョン」というキャラクターが安定して、視聴者に受け容れられたからこそできるギャグですよね。

ジョンが"Yeah, I'm there if you want it..."(君が来てほしいのなら行くよ)と言うのも、穏やかで素直な(のように、描かれている)原作ワトスンがよく使うセリフ。

"You’ll come with me to-night?"
"When you like and where you like."
「じゃ、今晩やってくれるかい?」
「やるとも!時と処のいかんを問わず、君のいうとおりにするよ」(『空家の冒険』)


“You’ll come with me, won’t you?”
“If I can be of use.”
「いっしょに行ってくれるだろうね?」
「何か役にたつようならば」(『唇の捩れた男』)



"The game is on"も、原作由来のシャーロックの決め台詞ですが(関連記事:『タイトルについて(3)』、こちらはもう"SHERLOCK"の世界では浸透しているのか、聞いたテッサが喜んでますね。ただし、彼女も含め皆がシャーロックの顔を知っているようにも見えないので、決め台詞までは知られてない可能性のほうが高いかな。ただ「引き受けてもらえる」と思ってうれしかっただけかも。

現場についたはいいけれど、いつもの観察眼が発揮できません。
椅子を卵と間違えたりする字幕がでるのは、このドラマをきっかけに爆発的に流行った映像表現のセルフパロディーですね。以前らいかみんぐさんに教えていただいたBBC3制作のスケッチ のように茶化されもしたと思いますが、それらへの返句みたいなものかもしれません。

虫眼鏡を出してくるのも、いかにも「ホームズ」。
虫眼鏡を持って這いまわるのは、「緋色の研究」でホームズとワトスンが初めて一緒に現場にいく場面から。

こういったかと思うとホームズは、ポケットから巻尺と大きな丸い凸レンズをとりだし、この二つの道具によって足音も立てずに部屋の中を歩きまわり、ときどき立ちどまったりあるいは膝をついたり、一度などは腹ばいになってまで調べた。


犯罪現場の状態維持をしろ、とシャーロックが言います。(言えてないし、自分で台無しにしてたけど……)
今は常識になっているので、警察官にシャーロックが言う必要はありませんが、ホームズの時代では科学捜査が普及しておらず、警察官が証拠を踏み荒らしてしまうこともしばしば。こういう現状を、ホームズは嘆いていました。だから、これはとても「ホームズっぽい」台詞なんですね。これも「緋色の研究」にあります。

「いや、よく来てくれましたね、まだなにも手をつけさせずにお待ちしていたんですよ」
「あれだけは例外ですね?」ホームズは小道のほうを指さして皮肉にいった。「水牛の群れが通ったとしても、ああまで踏み荒らされることはあるまい。もっとも君のことだからちゃんと見きわめがついたからこそ、あそこの通行を自由に許したのでしょうがね、グレグスン君?」



一見何をしているかわからないホームズに不安を感じる依頼人を、ワトスンがなだめるお約束エピソード(『バスカヴィル家の犬』や『海軍条約文書事件』など)も、ジョンが再現。

"He's clueing for looks."(彼は探しを証拠てる)


お前が不安だよ!って話ですが……

一連の捜査の後で、ホームズはヤードの刑事さんに手柄を譲ってあげて、僕には仕事が報酬とかなんとか、かっこいい台詞を吐いて終わるのがひとつのパターンなんですが、まったく逆にレストレードに世話を焼いてもらうという綺麗なオチ。
だいたい物語の頭にくるはずの、「面白い事件がどうのこうの」というホームズとワトスンの会話もしっかりおまけについてます。

"Well, thanks for a...You know... an evening."
"It was awful."
"Yeah. I was going to pretend, but...it was, truly."
「えーと、ありがとう、まあ、ほら……一夜を」
「最悪だった」
「ああ 楽しんでるふりをしようとしたけど……ホント最悪だったよ」
(中略)
"Dated a ghost, most interesting case for months. What a wasted opportunity!"
"OK."
「幽霊とのデート、ここ数ヶ月で一番面白い事件だ。もったいない!」
「そっちか」 (拙訳)


過去記事「逃してなるものか!」もご参照ください。
それにしても、ここまで「原作パロ」「ホームズものテンプレパロ」「セルフパロ」と、お楽しみネタをたっぷり盛り込んだ「最後の一夜」エピソードが、本筋のオチにきちんとつながることに拍手を贈りたいです。
このお話は回想シーンがたくさんあって、時系列はわりと複雑なんですが、無駄なエピソードがないのですごくわかりやすいんですよね。脚本が見事なのだと思います。

ミステリであり、ホームズものであり、友情ものであり……とさまざまな切り口から評価される作品を作り続けるのって、大変なことだと思うんです。正直、ミステリとしてはちょっとなあ、と思ってましたし、長期シリーズになれば上記の要素のうちどれかを切り捨てていくんじゃないかと予想してました。
私にきちんとした鑑賞眼があるかはわかりませんが、このドラマがそのすべてをきちんとやろうとしてるのはわかります。その誠意、テンションの持続がすごいなあと思う。
制作者の素晴らしさは今更言うまでもないですが、二次創作ならではの、原作のファンだからこそ出せるパワー(こういうのを『萌え』というんでしょうか)も、きっとありますよね。
さらに、幾多のシャーロッキアンたちが積み重ね、洗練させ、引き継いできた何かが、力を与えていることは間違いないでしょう。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

『高名の依頼人』のこと書きましたが、6月24日までグラナダ版がGYAOで無料で観られるそうです。
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