最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
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マイクロフトの傘

シャーロックがソシオパス、ジョンがPTSD持ちなら、私はファッションセンスというものに何らかの病名がつくと確信しているナツミです。
そんな私ですが、衣装に関する記事「シャーロックのガウン」をアップしてみたところ、興味深いコメントをいただいたり、ほかのブログでも同じ題材でより深い記事を書いていただいたり、大変嬉しく面白いお話に発展していきました.

調子に乗ってもうひとつ「ファッション関係」の記事を(正直、『ファッション関係』とかタイプするだけで緊張しております)。帽子、ガウンときて、今回は「傘」です。

るあるあさんの記事「シャーロックはガウン、ジョンはバスローブ」では、シャーロックの服装を「ハイソ・緊張・正典の踏襲」、ジョンの服装を「カジュアル・緩和・現代の若者」というキーワードで紹介されていて、なるほど!と思いました。二人の服装の対比によって、常に画面上に正典の雰囲気と現代の雰囲気が共存しているわけですね。

そういえば、原作の時代の雰囲気を現代版に持ち込んでいる人がもう一人いますね。
弟に輪をかけて、上流の空気と緊張感たっぷり、そして時代が止まってるっぽい(失礼)、マイクロフト・ホームズ。

彼とジョンが一緒にいる場面でも、るあるあさんの挙げられたような対照が感じられます。
それが一番わかりやすく出ていたのは、第二シーズン第一話、A Scandal of Belgraviaのラスト近く、カフェの前でマイクロフトがジョンを待っていた場面ではないでしょうか。

駆けてくるジョンはかなり濡れているのに、傘をさしていませんね。
対するマイクロフトは、愛用の大きな傘をさしています。

ロンドンのように雨が断続的に降る土地の場合、住民は常に傘を持ち歩くか、逆に全く持たないかになるようです。
参考記事:eikokutabi.com イギリス面白ニュース「イギリス人と傘」

私はロンドンに住んだことはないのですが、やはり雨の多い、カナダ西部のバンクーバー(冬季)に何ヶ月か滞在したことがあります。バンクーバーでは、傘を持ち歩かない人が圧倒的多数派でした。
空気が乾燥していると、濡れてもちょっとしのげばすぐに乾いちゃうんですね。また、日本の夕立のように強い雨になることはめったにないので、ナイロン地のジャケットでもあれば、フードをかぶってなんとかなってしまいます。そういった対策すらせず、濡れるがままになっている人もたくさんいました。
ロンドンとは意識が違うかもしれませんが、バンクーバーの人々だったら、ジョンのように帰宅途中なら傘を買うよりも走る、無理なら雨宿りするとと思います。

ただし、これは服装がカジュアルな場合に限られるのかも。マイクロフトの見るからにお高そうなスーツは、ジョンのジャケットのようにびしょぬれにしてはまずいんじゃないでしょうか。

ここら辺の事情を考慮すると、常に傘を備えているのは、性格の面からいっても万事周到な「マイクロフトらしい」。
対して濡れても平気なジョンは、平均的な庶民の感覚と平均的なお値段のワードローブを備えているといえるかもしれません(衣装の実際の値段はともかくとして)。
そこまで言っといて、演出家さんがジョンを濡らした理由が「視聴者サービス」だったらいたたまれないですけど……

しかし、主に車で移動しているマイクロフトに、防水のための傘はそんなに必要ないはず。彼の傘はやはり、「英国紳士」アイテムのひとつなんじゃないかと思います。

「英国紳士」とは何か。これが意外と雲を掴むような存在で、検索してみても服装に関してのはっきりとした定義がみつかりませんでしたが(階級や教育などに関する定義は一応wikiにありました)、画像検索をかけてみると、スーツと傘またはステッキ、帽子が典型的な「英国紳士スタイル」のようです。
マイクロフトは帽子はかぶっていませんが、懐中時計を持っていますね。個人的にはこれも英国紳士っぽい気がします。

マイクロフトが「いかにも英国紳士」というスタイルなのは、「兄は英国政府そのもの(『ブルース・パティントン計画書』)」というホームズの台詞からでしょうね。
面白いほどに類型化された「英国人」である必要があったのかもしれません。
原作のマイクロフトは肥満体ですが、キャスティングの際、そこにはこだわらなかったのですね。
21世紀の今、「肥満体」というと別の国を連想してしまうという理由もあるかもしれませんね(あくまで憶測です)。

話はそれてしまいますが、身体的なことをもう少し書くと、現代版マイクロフトは横幅はないけれど、身長はずいぶん高いですね。初登場の場面で、小柄なジョンと一緒にいると威圧的な感じがしました。
シーズン1では、一貫してジョンのいる場面に出てくるのですが、シーズン2では、シャーロックと二人だったり、自宅に一人でいる場面もあります。
マイクロフトの自宅では、テーブルもその周りに林立する置物もずいぶん大きくて、彼が小さく見えるんですね。
テーブルに向かって苦悩するマイクロフトはまるで、チェス盤の上に置かれた駒の一つのように見えます。
こんな描写も、彼が「英国政府」の一部としてゲームに参加している駒であることを視聴者に感じさせてくれます。そして、その英国政府が、決して強大なものではないということも。

スーツの本場・イギリスにも簡易化の波が押し寄せ、スーツ姿の男性が減っているそうです。マイクロフトのように上質なスーツをかっちりと着こなし、タイを締め、傘を持った紳士は、もはや絶滅危惧種なのかもしれません。

参考記事・日経Bizアカデミー「影が薄くなる英国紳士のスーツ姿」

さて、英国紳士と言えば原作のホームズですが、原作では、傘が武器扱いされていたのが印象に残っています。
「恐怖の谷」でのホームズとワトスンのやりとりですが、

「(前略)ときに君は例の大きなコウモリ傘を持っているだろうね?」
「あるよ」
「じゃあれを貸してほしいんだ」
「いいとも、でもあんなもの、武器にはどうかな。もし危険があるなら…」(延原謙訳)



この後ワトスンの傘が事件解決に重要な役割を果たすのですが、それは置いといて、非常時に傘を武器代わりに用いるのは、二人にとって不自然なことではないようです。
ヨーロッパにおいて、もともと傘はご婦人の日よけのための道具で、雨天時に傘を持つのは奇異なことと考えられていたとか。

参考記事 しばた洋傘店 傘物語~洋傘の歴史

男性がよく傘を持ち歩くようになったのは、男性のお洒落用品であるステッキに似せた柄の傘が考案されてからのようですね(今でも、ほとんどの傘の柄はステッキ風ですよね)。以来、紳士用の傘はしばしばステッキの代わりに用いられたようです。
そして、ステッキは身を守るためにも用いられました。
ステッキ術」(Stick fighting)で検索したところ、"The Art of Manliness"というサイト(すごいタイトルだ…)の中の、ウィリアム・バートン・ライトによって考案された格闘技「バーティツ」の紹介ページに行き当たりました。
リンク先にも紹介がありますが、ホームズがモリアーティを打ち倒したという「バリツ(baritsu)」は「バーティツ(bartitsu)」のミススペルであると考える方がいらっしゃるようです。日本では、ミュージシャンの大槻ケンヂ氏が「バリツ=バーティツ」説で有名ですね。どうやら、身近なものを使って戦う「ステッキ術」も「バーティツ」の一部のようです。
ホームズがステッキを使って戦うことができるのなら、危険な場所に赴くのに傘を「武器として」持っていくのだろうとワトスンが考えたのも、無理もないように思えます。

だいぶとりとめがなくなってきた、ていうかファッションはどこいったって感じですが、「傘」にまつわる話をあれこれ並べてみました。

ひょっとしたら、この先現代版マイクロフトが傘を武器として使うこともあるかもしれませんね。
マイクロフトはそれを「英国政府」として使うのか、個人として使うのか。
保守的なマイクロフトの象徴ともいえる傘が、誰かに振り下ろされるようなことがあるとしたら、国ではなくシャーロックやジョンのためかもしれない、とちょっとだけ思います。


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この記事へのコメント

- トビィ - 2012年12月04日 14:04:46

ナツミさん、こんにちは。

「マイクロフトの傘」の話は「おぉっ!!」トリビアだらけです。

SHERLOCKではマイクロフトのネクタイの柄が傘だったり、
221-Bの部屋でも持ち込んでいたので、フェチかと(^^;
ちゃんと理由があったのですね。

v-501英国紳士のスーツv-501スーツ好きにはたまりません!!

>スーツをかっちりと着こなし、タイを締め、傘を持った紳士は、もはや絶滅危惧種
なんとか絶滅から救いたいです!!

私の場合、雨が降っていても、折りたたみの傘だったら、使った後が面倒なので
ジョンと同じく全力疾走で帰りますね。


>この先現代版マイクロフトが傘を武器として使うこともあるかもしれませんね
傘の武器・・・マシンガンになってるとか?!

映像読本1P目がジェレミーだったので瞬殺されました(//ω//)

「やっぱりマイクロフトが好き」を日を追うごとに自覚してます - YOKO - 2012年12月04日 17:22:46

>保守的なマイクロフトの象徴ともいえる傘が、誰かに振り下ろされるようなことがあるとしたら、国ではなくシャーロックやジョンのためかもしれない、とちょっとだけ思います。

ぐふふふ。
なんとも楽しい妄想をかきたててくれるお言葉です!
そんな夢のような展開。あったらいいな~。

- nikka - 2012年12月05日 02:55:37

ヴィクトリア期において、傘は実用品である前に「ステイタス・シンボル」として見られるコトの方が重要であったそうです。つまり「持つ上・中流」と「持たざる労働」層の目に見える差違…といいましょうか、これは元々紳士階級が持つものとされたステッキの地位に傘が入り込んだためらしいですが、その経緯(ステッキの代理)のため紳士が持つ傘はスッキリ細身に巻かれたスマートなものでないと野暮扱いされただとか、奇麗に巻いた傘をいざ荒天の時には広げるのを惜しむ始末だったとか…。
話が逸れましたが、厳然たるヴィクトリア期を背景とする正典から要素を抜く結果、その「階級象徴としての」傘の扱いが現実英国世界よりさらに強調されてあのマイクロフトに帰せられてるのかもしれない、と思いました。

初めまして。いつも興味深くblogを読ませていただいております。いろいろ気付いてないことに目を向けさせてもらったり原典との対比点を教えてもらったりと、大層助けられてます。ありがとうございます。傘のことは自分も気になっていたのでついでしゃばってしまい。お目汚し失礼しました。

英国スーツと機関銃 - ナツミ - 2012年12月05日 07:02:44

トビィ様

そうでした。忘れてましたが、タイの柄まで傘でした。いろいろ書いてみたものの、「フェチ説」が正解かもしれません・・・

そして、トビィさんはスーツがお好きですか!
英国紳士を絶滅から救う運動、ぜひお手伝いさせてください!!

折りたたみの傘は、使った後が面倒!確かに!
調べてみたところ、今ではさすがに折りたたみ傘を持っている方も多いとのことですが、濡れたくない私が傘をたたんで、袋に入れて・・・という作業を入るたびにしているのを見て、受付に座っていた女性が「あなたはいつもきちんとしているわねえ」と呆れ気味に呟いていたことがあります。この上のコメントでnikkaさんが傘を綺麗に巻く話をなさっていますが、傘を職人に巻かせる(つまり傘をたたむのは『仕事』!)人々と、確かに縁続きなのかもしれません。(バンクーバーは今では多民族都市ですが、英国系移民の方が多かったようです。)

それにしてもマシンガン傘には笑わせていただきました!
ジュード・ロウのワトスンのステッキみたい!いやあ、マシンガンをぶっぱなすマイクロフト、見てみたいものです!!

マイクロフト讃歌 - ナツミ - 2012年12月05日 07:09:39

YOKO様

YOKOさんは「マイクロフト派」でいらしたのですね!
私も現代版マイクロフト、好きです。シーズン2を観て、もう少しの間「敵か味方か」みたいな掴めない存在でいてほしかった気もしたのですが、気がつけば苦悩するマイクロフトや、兄としてシャーロックに語りかけるマイクロフト、ジョンに謝罪するマイクロフト(ここだけはマイクロフトが人に弱さを見せた瞬間だと思ってます!)を何度も繰り返して観ております。
さて、シーズン3ではマシンガンを撃ちまくるマイクロフトが観られるでしょうか!

なるほど! - ナツミ - 2012年12月05日 07:25:10

nikka様

そうか、傘は、階級の象徴、ステイタス・シンボルなのですね!すっきりしました!
傘はステッキ代わりなので、職人さんに綺麗に巻かせるという話を私も読んだのですが、荒天時にも広げないというのには笑ってしまいました。マイクロフトも広げずにジョンを待っていて欲しかった!(それじゃただのバカか・・・)
いやいや、いつでも職人に巻かせることができる経済力のある、「本物の」紳士が背景にあるのでしょうね。

ご教示ありがとうございました。大変参考になりました!
とりとめのない雑文ばかりのblogですが、ホームズにとってのワトスンのように、読んでくださった方の砥石になれたり、光を伝える役目を果たせればと思っております。もしよろしければ、今後も遊びにきていただければ嬉しいです。

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