最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
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たったひとりの

ジョンを怒らせてしまったシャーロック。翌朝冷静になってから、一生懸命謝ります。

"Listen, what I said before, John, I meant it. I don't have friends. …I've just got one."
「聞いてくれ、僕が言いたかったのはこういうことだ、ジョン。僕に友達はいない…ただ1人を除いては」(拙訳)


ホームズの「友達」については、「オレンジの種五つ」に似たような記述があります。
嵐の夜、奥さんが親戚を訪ねて留守のため、221Bに泊まっていたワトスン(ハドスンさんがごはん出してくれるし、友人宅と言うより実家みたいな感覚なんでしょうな…)とホームズの会話。

“Why,” said I, glancing up at my companion, “that was surely the bell. Who could come to-night? Some friend of yours, perhaps?”
“Except yourself I have none,” he answered. “I do not encourage visitors.”
「おや!」ふと私は顔をあげて、ホームズを見た。「呼び鈴が鳴ったようじゃないか。こんな晩に誰が来たのだろう?君の友人だろうね?」
「僕は君のほかに、友達は一人もないよ。話しに来いと人にすすめたこともない」(延原謙訳)


私がこのお話を初めて読んだのは、小学校の図書室でした。当時は「友達は多いほうがよい。誰とでも仲良くしよう」という教育を受けていたもので、「一人しか友達がいないなんて、ホームズ、かわいそう…」と思ったものですが、大人になると、友達は数じゃないということが身に沁みてわかります。
必要な時に、必要な人がそこにいてくれるということがどれだけ奇跡的な幸運か。この頃のホームズは既にわかっていたのでしょうね。
何の見栄も計算もなく、「君はたった一人の友達だ」と伝えられる相手がいる。なんと贅沢なことでしょう。

しかし、謝っているうちになんだかおかしなことに…

"You may not be the most luminous of people, but as a conductor of light, you are unbeatable."
"Cheers…what?"
"Some people who aren't geniuses have an ability to stimulate it in others."
"You were saying sorry."
「きみは輝いてはいないが、光の導線としては申し分ない」
「そりゃどうも…何だって?」
「天才でなくても、天才を刺激する能力のある人はいるものだ」
「謝ってたんじゃなかったのか」(拙訳)


まるで漫才のような会話ですが、これも原作から。

「(前略)今日までの僕の小さな業績は、みんな君の助力のおかげなんだが、しかし遠慮なくいわしてもらえば、君は習慣的に君自身の才能を見くびりすぎてきた傾きがあるよ。君は君自身で輝かないまでも、少なくとも光を伝える能力はあるんだ。ある種の人は、たとえ自身天才でないまでも、天才を刺激し発揮させる異常な力をそなえているものだ。僕は君に負うところの多いのを、ここに改めて感謝するよ」(『バスカヴィル家の犬』延原謙訳)


それ明らかに自分褒めだろ!と小学生もツッこみますよ!
なのにワトスンは、「白状するがひどくうれしかった(延原謙訳)」と、怒るどころか喜ぶ始末。
子どもながらに「この人たち変だ」と思ったものです…今回、ジョンがつっこんでくれて本当によかった!
100年越しの「ノリツッコミ」が成立したのを見届けた思いです。

追記(2012.6.12)
DVDを見返していたところ、訳とジョンのツッコミの「間」が違ってた気がしたので修正しました。




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この記事へのコメント

ツッコメ、ジョン! - RM - 2012年06月22日 22:10:38

わーい、興味深い記事がたくさんで喜んでいます。そして次の記事で読みましたが、2期でもレストレードがちゃんと出てくれるのですね、うれしい。

>シャーロックは、長い付き合い(ジョンと知り合った時点ですでに5年)にも関わらず、レストレードのファーストネームを知らなかったようですが、

そうだったんですか。でもジョンは知っていたのですね?どうやって知ったんでしょうね。レストレードの部下はなんて呼んでいるのでしょう。

そして、この「たったひとりの」の記事もすごくよかったです。

>必要な時に、必要な人がそこにいてくれるということがどれだけ奇跡的な幸運か。この頃のホームズは既にわかっていたのでしょうね。

本当にそうですね。「僕は君のほかに、友達は一人もないよ」。私はここはやはり、ジェレミーのホームズをこころに思い浮かべながら読みました(うふふ)。

一方で、シャーロックとジョンのやりとりもいいですね!「謝ってたんじゃなかったのか」っていうナツミさんの絶妙な訳を、マーティンの口調を想像しながら読みました。

>100年越しの「ノリツッコミ」が成立したのを見届けた思いです。

時代をまたいだツッコミだったんですね。これを読まなかったら知らないままに通り過ぎていたでしょう。おかげさまで私も、それをしかと見届けることができそうです。

Re: ツッコメ、ジョン! - ナツミ - 2012年06月23日 06:26:25

レストレード、全てのお話にちゃんと出ていましたよ!
ジョンは、マイクロフトやレストレードなど、シャーロック以外の人々とも交流を深めていたようで、1期よりちょっと親しげなやりとりが楽しいです。
どういうきっかけでファーストネームで呼び合う仲になったのかはわからないのですが、レストレードのシャーロックに関する愚痴をジョンが聞いている様子は容易に想像がつきますよね。

レストレードの部下たちは"Sir"と呼んでいたような気がしますが、直接名前を呼んだことはあったかな?


> 「僕は君のほかに、友達は一人もないよ」。私はここはやはり、ジェレミーのホームズをこころに思い浮かべながら読みました(うふふ)。

ジェレミーが言うと、(シャーロック役のベネディクト・カンバーバッチもそうなんですが)こういうちょっと歯が浮くような台詞も、尊大そうな台詞もチャーミングに聞こえてしまうんですよねえ。きっとジェレミーのホームズは、ちょっといたずらっぽい笑みを浮かべていうのでしょう。もし私がワトスンでも、喜んでしまうかも。
小説に書かれていることだけだと意地悪な読み方もできてしまいますが、そこに役者さんの魅力をプラスしてホームズができあがるんですね。
原作のホームズも、不思議な魅力あふれる人だったのでしょうね。

それと、RMさんだけでなくDVD未見の方全てにお詫びしなければならないのですが、NHKでの放映前においしいところをここに書いてしまって申し訳ありません!
ご来訪はもちろん本当に嬉しいのですが、そのあたりはいつも気になっております。
ミステリとしての「ネタばれ」はなるべくしないように心がけていますが(その結果、第3話のことはほとんど書けません…)シャーロックとジョンのやりとりやちょっとしたエピソードを楽しみにしていらっしゃる方もいらっしゃると思いますので、以前からこのブログを読んでくださっている方もどうぞナツミとの「つきあい」よりもご自身の「楽しみ」を優先させてくださいますように…!
あ、でもここに書いていない「おいしいところ」も、もちろんいっぱいありますよ!!どうぞ、お楽しみになさってくださいね。(今から謝っておきますが、訳も見当違いなとこがきっとあると思います。すみません…)

- らいかみんぐ - 2012年06月25日 09:20:03

>100年越しの「ノリツッコミ」
まさに言い得て妙!RMさん同様、記事のおかげで楽しみ倍増しております。

原典のホームズは変人カテゴリーの現代人だと思いますが、ワトスンは古き良き時代の紳士で、理不尽な物言いも鷹揚に受け止めていますよね。
でも現代版のジョンは、とても現実的な現代人。シャーロックの自己中をしっかり指摘してくれたり、呆れたりしてくれるんで、ある意味胸がスッと致します。
ジョンの言動は、現代のファンから見たホームズ物語へのちょっとした違和感を解消してくれる「ノリツッコミ」なんですねえ。

でもどんなに破綻していようが、矛盾していようが、(たそれゆえに)やっぱり魅了されてしまうのがシャーロック・ホームズ。ジョンは現代のファン代表でもあるんだなあと、あらためて思います。

なるほど! - ナツミ - 2012年06月25日 23:44:14

膝をうちました!ジョン(現代版)とワトスン(原作)は、それぞれの時代の「良心」、それが言いすぎなら「平均的な感覚」を象徴しているわけですね!

物語をつくるテクニックとして、不朽の変人(←ものすごい悪口みたいな書き方になってしまいましたが…)シャーロック・ホームズを描写するには、常識人を隣に置いて対比するのが一番。その「常識」が現代とヴィクトリア朝時代では違うだけで、ワトスンが特別ぼんやりとかお人よしとかいうわけじゃないのですね。

そして読者や視聴者は、唯一の友であるジョンやワトスンの目を借りることで、そうすることでしか見られないシャーロックやホームズの愛すべき表情に触れることができる→ファンになる。
う~む、よくできているなあ。らいかみんぐさんのご明察に感謝いたします!

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シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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