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最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探しをしております。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
ブリキの文書箱

襲われる221B

秋はなんとなくホームズが似合う気がするのはどうしてなんでしょうね。読書の季節だからか、秋の装いにイングランドやスコットランドを思わせるものが多いからか。都会のデパートで「英国展」が行われるのも秋ですよね。

そして今秋、日本のテレビでホームズものが熱い!

かつて「トレンディドラマ枠」として洒脱な恋愛ものをよく放送していた(つまり私には縁遠かった)フジテレビ月曜9時で、ドイル正典を原作としたシャーロック アントールド・ストーリーズが始まりました。


発表当初は、キービジュアルがあまりにもBBC SHERLOCKにかぶっていた(タイトルロゴや、主人公たちの服装など)のでちょっと心配だったのですが(ロゴとタイトルは後に変更)、いざ始まってみると
・「語られざる事件」を絡めてくる
・毎回テーマカラーを設けて視聴者に関連を見つけさせる
などなど、大いにシャーロッキアン心をくすぐる作品。

リアルタイム視聴しながらSNSで気づきを共有して楽しんでいる方も多いようです。
そういう「メディアミックスの巧さ」は、ドラマと並行して登場人物のブログをアップしていたSHERLOCK初期を思い出させます。視聴者が参加して楽しめるのはいいですよね。

主人公の誉 獅子雄(ほまれ・ししお)を演じるおディーン様ことディーン・フジオカもかっこいい。
上記の流れからどうしても過去作と比べてしまって申し訳ないのですが、ベネディクト・カンバーバッチやロバート・ダウニーJr.に比べると、顔立ちが端正すぎて「変人探偵」としてはいまいちフックに欠けるかなあ、と思ってたんです。
でも、3話あたりで気がつきました。このホームズ、潜入捜査が巧い!
近年のホームズ役者さんたちはみんな個性的で素敵なんですが、癖が強い故に変装の場面になると「イヤイヤイヤ!ホームズ滲み出てるだろ!」という感じで、ギャグっぽい場面に落とし込まれることが多かったように思います(まして現代物の場合、19世紀に比べて服装・髪型にバリエーションが少ないのも難しいところ)。その点ディーン・フジオカ・ホームズは、どんな役にも自然に溶け込めてる感じ。役者さんの天性の雰囲気はもちろん、演技の巧さも地道に発揮されてるんじゃないかな。

アメリカやロシアのホームズと比べると、人種、文化や言語の「原作からの遠さ」に違和感を持ってしまうのはしかたないのですが、様々な国でホームズが再解釈されている流れの中で、既存の名作たちに肩を並べる物語に育つといいなあ。

個人的には、ワトスンが甘い顔立ちに反して「善良な人」ではないことが面白いと思う(ある過ちを犯したことが語られています。日本を舞台にした現代版では『従軍』という過去を背負わせられない分、良心に呵責のない医師として設定されるのかなあと思ってたので、意外な切り口だった)。佐々木蔵之介のレストレードや山田真歩のグレグスンも、奥行きを感じられるキャラクターで好きです。

このドラマへの考察を、Tomoさんが様々な方のツイートも含めまとめてくださっています。
【シャーロック】新月9ドラマ「シャーロック」第一話をシャーロッキアン的に見てみる
いまのところ毎話更新してくださっていますよ~(そして更新が速い!)ドラマ視聴と併せて、とても楽しみにしています。

それから、アニメ「歌舞伎町シャーロック」。
こちらは正典をベースにした事件を絡めつつ、様々な探偵たち、2丁目のママ?ハドソン夫人、推理を落語っぽく語るホームズや少年モリアーティなど、さまざまなキャラを惜しみなく出してくる楽しい作品。
シリーズを貫く事件として「切り裂きジャック事件」を用いるという王道パスティーシュ感と、現代の新宿に19世紀のロンドンを持ち込んだような軽いSF感。正道と混沌のバランスが良くて興味深い。
私は「おそ松さん」以来の深夜アニメ視聴なんですが、ほんとに昨今のアニメはセンスがいいというか、絵も綺麗でセリフまわしも面白くて、いい大人が夜中に一人で吹き出してしまうことしばしばです。

この2作品をチェックしているだけでも忙しいのに、D-Lifeで日本語吹替版のSHERLOCKが放送されてたりして、久々にホームズ度の高い日々を過ごしています。
原作やパスティーシュを紐解く機会も増え、今更ながら取りこぼしてたSHERLOCKの元ネタにはたと気づくことも多いです。

上述のTomoさんのブログで、誉の部屋が雨漏りで水浸しになったことの「元ではないか」と引用されていたこの場面。

「ワトスン君、けさの新聞みたかい?」
「いいや」
「じゃべーカー街でなにがあったか知らないんだね?」
「べーカー街でなにがあった?」
「ゆうべあの部屋へ火をつけられたよ。大したことにはならなかったがね」
「へえ! 怪しからんやつだ!」(『最後の事件』)


ということは、S1e3(第1シリーズ3話)"The Great Game"でシャーロックとジョンの部屋が爆発したり地下室に侵入されたり、S2e1”A Scandal in Belgravia”でハドスンさんが暴漢に襲われたり、全然元ネタ探し追いついてないけどS4e3”The Final Problem"でドローンに部屋が爆破されたりする場面の元ネタにもなり得るわけですよ!今更ですけど!!
こう列挙してみると、S3はハドスンさんにとっていい時代だったんですね。マグヌッセンに放尿される程度で済んで……(※『いい』の基準がおかしい)

S4の最後にシャーロックとジョンが221Bを片付けて、壁の落書きや銃痕まで再現している場面がありましたが、原作では『最後の事件』と『空き家の冒険』の間のどこかでハドスンさんかマイクロフト(の、よこした人たち。多分)があの作業をやったわけですよね。

私たちの昔いた部屋は、マイクロフト・ホームズの管理と、ハドスン夫人じきじきの注意とで、以前と少しも変わっていなかった。じっさいはいってみると、部屋の中は片づきすぎるくらいきれいになっていたが、調度にしても家具にしても、ちゃんとそれぞれの場所にそのままだった。一隅に科学実験の場所もあるし、酸で汚れた松板ばりの実験台もあるし、たなのうえには恐るべき切抜帳や参考書の類が並んでいる。これはロンドン市民のなかにも、焼きすてたがっている連中が少なくないのだ。それから図表類、ヴァイオリンのケース、パイプ架、ペルシャのスリッパまでが、そのなかに煙草がはいっているのだが、ひと目で見てとれた。(『空家の冒険』)


「大したことにならなかった(No great harm was done)」とホームズは言うけれど、ホームズ基準で言う「大したこと」とはどの程度の被害やら……
まああまり被害がなかったにしても、3年間の不在を感じないくらいに細かいところまで「元通り」というのはすごい。ワトスンのこの細やかな描写が、シャーロックとジョンの「えっそこまで戻すんだ……」とツッコみたくなるような「再現作業」の元ネタになっています。

19世紀末、『最後の事件』でのホームズの死を悲しんだ読者は、世紀をまたいで復活したホームズに狂喜しました。そんな彼らは「変わらない221B」の描写のひとつひとつがきっと嬉しかったはず。
現代版では「部屋の再現作業」が、一度は壊れかけたシャーロックとジョン、そしてホームズ一家の人間関係が新たな形で息を吹き返す過程にオーバーラップするかたちで描かれています。
そのようにして「冒険の存続」を願うメアリ、そしてドラマ視聴者の気持ちに応えているわけですね。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)


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プロフィール

ナツミ

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

私の口ずさむ"Searching For The Ghost"がどれくらいひどいかと言うと
「♪君の名はミステリー(←唯一聞き取れてる?部分) にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ ぼいん!ぼいん!ぼいん!」という感じです。恐ろしくてツイッターには書けません。

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