FC2ブログ
最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探しをしております。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
ブリキの文書箱

レストレードは嫉妬する?

学生の頃、新本格ミステリにハマって、ありとあらゆるアクロバティックな死に方を右から左に読み流してた私ですが、すっかり普通のおばちゃんになった今、ひしひしと思います。
ウェルズバラさんちのご子息の件、ほんといたたまれない……

だってだってこの件、誰も何も悪くないじゃないですか、いいご両親にいい息子さんで!
発作が旅先で起こったとしても悲しいですけど、誕生日にお父さんを喜ばせようと帰ってきた息子が目の前で息を引き取ったのに気づかなかったなんて、もう親御さんは悔やんでも悔やみきれないですよ……(どっぷり親目線)!
しかもやってきた探偵は別件に親指疼かせてやがるし!これが原作ホームズだったらもうちょっと……こう……えっと…興味があるふうに装ってくれたぞ!
シャーロックのおかげで「息子さんの思い」がご両親に伝わったこと、長い目で見ればきっと良かったんだと思うんですけれど、あああもう、本当いたたまれない……

で、シャーロックの親指disっといてアレなんですけれども、この記事も別件です。(ウェルズバラ夫妻、本当にお気の毒でした……)
レストレードがウェルズバラさんの事件を221Bに持ってきたときの、シャーロック・ジョンとの会話。

"One condition.Take all the credit. It gets boring if I just solve them all."
"Yeah, you say that, but then John blogs about it,and you get all the credit anyway."
"He's got a point."
"Which makes me look like some kind of prima donna who insists on getting credit for something he didn't do!"
"Well, I think you've hit a sore spot, Sherlock."
"Like I'm some kind of credit junkie."
"Definitely a sore spot."
"So you take all the glory, thanks all the same."

シャーロック「条件がある。手柄はもらってくれ。いつも僕が解くんじゃつまらない」
レストレード「そう言うがな、ジョンがブログに書いたら結局君の手柄だろ」
ジョン「そりゃそうだな」
レストレード「俺が、何もしてないのに手柄だけ持ってく目立ちたがり屋みたいじゃないか」
ジョン「何か、痛いとこ突いちゃったみたいだぞ、シャーロック」
レストレード「手柄の……亡者!って感じだ」
ジョン「そんなに気にしてたんだ」
レストレード「全ての栄光はお前のものだ。気持ちだけもらっとく」



原作でホームズがレストレードに手柄を譲る描写は、全編に渡ってホームズとレストレードの対決が描かれる『ノーウッドの建築士』にあります。

「部下の前じゃいうにもいえなかったんですが、ワトスンさんならかまいません。実に今までにない素晴らしい腕ですなア。どうしてわかったんですか?あなたは無実の人物の命をたすけたうえ、怖るべき恥さらしを喰いとめてくださった。すんでのところで私は警察界における名声を失なうところでしたよ」
ホームズはにこにこして、レストレードの肩をぽんと叩いた。
「名声を失なうどころか、君の評判はおそろしく高くなりますよ。いま書いている報告書に、ちょっと訂正を加えたまえ。そしてレストレード警部の眼をごまかすのが、いかに困難であるかを知らせてやるんですな」
「で、あなたはどうなんです?名前を出さなくてもいいんですか?」
「そんなものはちっとも。僕には仕事そのものが報酬ですよ。それにね、いつかは僕の熱心な伝記作者がまた原稿用紙をひろげることになるだろうから、その時信用はいくらも獲得できますよ。ねえ、ワトスン君?(以下略)」



いや、だからグレッグ言ってるじゃん!あとでワトスンがバラしたら同じじゃん……!と思っちゃいますが……
このお話の冒頭で、当時(ホームズがロンドンに戻ってからの数カ月)「前大統領ムリロの書類事件」「オランダ汽船フリスランド号の事件」など、かなり大きな事件に二人が関わってたことが示された後にこんなことが書いてあります。

しかしながらホームズは、その冷やかな自負心の強い性情から、大衆の喝采に類することが大きらいで、彼の言動、方法、成功などについて私が筆にするのを堅く止めていたのである。その禁止のとけたのが、前にも述べたように、ほんの最近のことなのである。



ってことは、「ワトスンが真実を発表する」ということが、まだレストレードにとって現実的ではなかった、のかな……?
現代版のジョンは起こったことをすぐブログにアップしてるので、刑事さんたちに手柄を渡す暇はありませんでしたよね。
ちなみに「大衆の喝采に類することが嫌いなのでワトスンに記録の発表を許さないホームズ」は、ジョンが『幽霊ドライバー』っていうタイトルをつけようとする場面に出てくる ”People are stupid.”というシャーロックのセリフにつながらないこともないですね。現代版ホームズ兄弟、何回かそんなこと言ってるような気もするけど……

ホームズと、ヤードの刑事たちを巡る「手柄」問題は、第一作『緋色の研究』でさっそく取り沙汰されていました。

「グレグスンは警視庁でもちゃきちゃきの腕ききの一人なんだ。この男とレストレードとは、ボンクラ刑事の中では優秀なほうだ。ふたりとも敏捷で精力家なんだが、ただ型にはまりすぎていてね、まったくあきれるほどね。そしてお互いに対抗意識が強くて、嫉妬しあうところなんか、まるで商売女みたいだな。この事件にふたりとも関係するのだったら、きっとおもしろいことになるだろうよ」
(略)
「だってこいつは君が待ち望んでいたおあつらえ向きのチャンスじゃないか」
「そんなことをいうけれどワトスン君、この事件が僕にどれだけ関係があると思うんだ?かりに僕がこの事件を解決したとしてみたって、グレグスンやレストレード以下の刑事の功績になってしまうのはわかりきっているんだからね。というが(※原文ママ)、僕は役人でもなんでもないからだがね」



ホームズによれば、グレグスンはホームズが彼自身より優れている事をわかっていて、ホームズ本人に対してはそれを認めている。しかし別の人間にはそのことを知られたくないのだ、ということ。
この直後「まあいいか」とばかりに事件に飛び込んでいくので、単にワトスンに対してもったいぶってたというか、そういえばうちの犬も散歩の時リードをつけようとすると嬉しすぎていったん逃げ回ったなっていうか、ホームズが自分への評価を本気で気に病んでいたという印象は受けません。でもラストシーンを読むと、やっぱりちょっとは気にしてたのかも、と思えてきます。

(グレグスンやレストレードの功績を褒め称える記事を見て)

「どうだい、僕が初めからいっているとおりだろう」シャーロック・ホームズは笑いながらいった。「僕らの緋色の研究の成果は、ただ彼らの表彰ってことになるだけさ」
「いいじゃないか」と私は答えた。「僕は事件をみんな日記につけているから、やがて世間の人に発表してやるよ。それまではまあ、成功したんだという意識だけで満足しておきたまえ。--世間の奴らは我を非難する。だが我はわが家に秘した多くの財宝を眺めつつ自らを讃えようといったローマの守銭奴みたいにね」



これが第一作の締めなのだから、シリーズ全体が「ホームズの名誉のために」存在している、という見方もできる。
「刑事たちは手柄ジャンキーでホームズは無欲」という単純な構図があるわけではなく、どちらにとっても、名誉というものは大事なんですよね。モリアーティとの対決を描いた"The Reichenbach Fall"でも、肉体の死以上に「名声が地に堕ちる」ということが重く描かれていたと思います。

原作に出てくる刑事でも特に出番が多いレストレードは、書かれた時期によってホームズに対する態度も違うんですが、長い年月を通して彼の言動を見ていると(過去記事:『レストレードについて』)、単に名声が欲しいというより、まず事件の解決と関係者の救済を願い、そのために能力を競い合っていたという側面が見えてきます。『緋色の研究』の時点ではホームズもまだ若く、刑事たちとの関わりも浅く、見えていなかったものもたくさんあったのでしょう。
「商売女みたい※」とまで言われてしまった原作のレストレードですが、現代版の懐深く大らかなレストレードと案外似ているのかも。部下をはけさせてホームズ、ワトスンと3人になると本音を漏らすとことなんて、人間臭くていいなあと思います。

それにしても現代版レストレード、「現役閣僚の息子の事件だからすごい圧力」「(誰の手柄かなんて)どうでもいいから早く解決して欲しい」って……生々しいな!!
彼には、捜査官としてライバルたちとしのぎを削る前に戦わなければならないものがある……のかもしれません。がんばれグレッグ!

(原作からの引用部分はすべて延原謙訳)

※延原謙役では「まるで商売女みたい」となっていますが、原文(a pair of professional beauties)は「社交界で活躍している美女」という意味だと教えていただいたことがあるので、付記しておきます。
スポンサーサイト



プロフィール

ナツミ

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

私の口ずさむ"Searching For The Ghost"がどれくらいひどいかと言うと
「♪君の名はミステリー(←唯一聞き取れてる?部分) にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ ぼいん!ぼいん!ぼいん!」という感じです。恐ろしくてツイッターには書けません。

メールはこちらへ

カテゴリ
最新記事
最新コメント
Twitter
月別アーカイブ
索引
このブログで考察した「元ネタ」を、ドラマの時系列に沿って探すための索引サイトです。 順次更新致します。 「21世紀探偵・ブリキの文書箱」
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
blog mura