最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
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大いなるオレンジの種

トランプ氏が新大統領になってアメリカの話題が気になる今日この頃、「正典」を読んでいても、アメリカ絡みのお話を目で追ってしまいます。
『オレンジの種五つ』は南北戦争の後遺症や当時の船舶、郵便事情がわかって興味深いお話なのですが、唐突に第1シリーズ3話(The Great Game)との関連に気づきました(たぶん皆気づいてた)。

『オレンジの種五つ』は、この話でシャーロックに送られてきた携帯電話の「五つの警告音」の元ネタでもありますが(過去記事『五つの警告音』、それだけではないようです。

1.シャーロック(ホームズ)の失敗

今思うと、第1・第2シリーズは主にジョンの目を通してシャーロックを描いていて、シャーロック視点を中心に描かれる第3・第4シリーズと対になっているような気がします。
"The Great Game"では、[シャーロックはゲームに夢中になるあまり人命を軽んじているのではないか」というジョンの疑念がストーリーの柱のひとつになっています。実際、シャーロックは「勝ちにこだわるあまり被害者の一人を助けられなかった」格好になってしまいますが、『オレンジの種五つ』には「ホームズが完全に解決できなかった事件ではあるけれど、ぜひ紹介したい」というワトスンの前置きがあります。
ホームズやシャーロックの予想よりも事態は逼迫していたのに出足が遅れ、結果として彼らを頼ってきた人を死なせてしまう、という展開が似ています。

待っているあいだにと、卓上に置いたままの新聞を手にとって、ひろげてみた私は、ふと目についた見出しにたちまち心がひやりとした。
「おいホームズ君、もう間にあわないぜ!」
「えッ!」ホームズは静かにコーヒー茶碗をおいて、「そんなことではないかと思っていたんだ。どんなふうにやられている?」と言葉はおちついているが、内心はかなり動揺しているらしい。
「オープンショウという名と『ウォータールー橋の惨劇』という見出しが目についたばかりだが、ひとつ記事を読んでみよう」


2、小道具と地名

シャーロックの言動に傷ついたジョンは、それでも彼の指示通り新聞を調べだしますが、いち早く「ウエスト青年の事故死」を見つけます。これは、ワトスンが朝食の席で何気なく手に取った新聞でオープンショウ青年の死を見つける場面に通じていたのかもしれません。
オープンショウはウォータールー駅付近で誤ってテムズ河に転落したと見なされます。(ジョンが見つけた記事" Archway suicide"はつながってる?)
アレックス・ウッドブリッジの死体が見つかったのはテムズ側南岸、サウスワーク橋とウォータールー橋の間。ほぼ一致してますね。

昨夜九時から十時までのあいだに、H署のクック巡査はウォータールー橋付近で服務中、救いを求める悲鳴と水音を耳にしたが、何しろ真の暗夜のうえあの嵐のなかとて、ニ、三通行人の協力もあったけれど救助はとうてい不可能なので、ただちに警報を発し水上署の助力を得て結局死体は発見した。ポケットから出た封筒によりホーシャム付近のジョン・オープンショウという青年紳士と判明したが、たぶんウォータールー駅発終列車に乗るつもりで急ぐうち、あまりの暗さに道にまよい、河蒸気乗り場から墜落したものと推定される。死体になんら膀胱の痕跡が残っていないところからみて、過失死であるのは間違いないであろうが、それにつけてもこのような危険な乗船場の存在することに関して当局の一考をうながさざるをえない。



3、ジョン(ワトスン)によるシャーロック(ホームズ)像の見直し

「(前略)僕の記憶に誤りがなければ、君はいつか、僕たちの知り合った当初だったか、僕の知識の限界をうまくいい現わしたことがあるね」
「そうそう、あれは珍記録だったっけ」私は笑って答えた。
「たしか哲学、天文学、政治の知識は皆無で、植物学は不定、地質学はロンドンを中心として五十マイル以内の土地ならば、服についたどろを見てその地域を指摘しうるほど該博、化学は偏倚、解剖学は系統的でなく、扇情文学と犯罪記録には特異の知識を有し、ヴァイオリンに巧みで拳闘をよくし、剣客にして法律に通じ、コカインとタバコの中毒者というのがだいたいの内容だったと思う」


二人はワトスンの処女作『緋色の研究』について話しています。冒頭でシャーロックとジョンも、ジョンのブログ中のシャーロックの描写について喧嘩していましたよね。
ここでワトスンは、ホームズに対する認識に誤りがあったと認めているわけですが、ジョンも"The Great Game"事件を通してシャーロックをより深く理解することになります(過去記事:『The Great Gameの構造』)。

あと、根拠のない妄想として読んでいただくとして、個人的に『オレンジの種五つ』には『最後の事件』同様、水のイメージが付きまとうんですね。嵐の夜、海洋小説、河蒸気乗り場、船着き場。それが、"The Great Game"のテムズ河岸やプールの場面に結びつくのかも。まあ他のエピソードにだって河もプールも水族館も出てくるんで、ほんとに妄想なんですけど。

『オレンジの種五つ』が思ってたよりも大きな「元ネタ」だったとすると、もともと『海軍条約文書事件』と『ブルース・パティントン~』が絡み合ってる"The Great Game"はほんとにグレートだ……もう詰め込めるだけ詰め込んだな~!!って感じですね。
さらに"The Abominable Bride"、略して『忌嫁』にも絡んでくるとなると、ほんとに『オレンジの種五つ』は使い勝手がいい原作……SHERLOCKに置けるコストパフォーマンスの高さでは『花婿失踪事件』に次ぐかもしれない。(まず『原作コスパ』って何なんだよ、って話ですが、フィーリングでわかってやってくださいますか……)

(原作からの引用は延原謙訳)
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プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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