最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
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記事索引「ブリキの文書箱

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メイドとワトスン

ちょっと(?)生意気なメイドとワトスンのやりとりが可愛らしい……

ベルを鳴らしてもなかなかやってこないメイドにしびれを切らして、懐中時計を取り出して時間をチェックするワトスン。
この懐中時計は、『四つの署名』に出てきた、ワトスンのお父さん→お兄さん→ワトスン、と譲られてきた品ではないでしょうか。

「ちがったら訂正してもらうとして、この時計は君のお父さんから兄さんに伝わっていたものだと思う」
「裏にH.Wと彫ってあるからだろう?」
「そうさ。Wは君の姓だ。制作日付は五十年ばかりまえで、彫り込んだ頭文字もおなじくらい古くなっている。つまりこれは、われわれの親の代の代物なんだ。貴重品というものは親から長男にゆずられるのが普通で、その長男は父親とおなじ名をあたえられていることが多い。君のお父さんはたしか、だいぶ前に亡くなったとか聞いている。だからこの時計は、君のいちばん上の兄さんが持っていたのだ」



『ピンク色の研究』では、妹※・ハリエットからジョンがもらったスマートフォンになっていました。(※上記のような経緯があったので私は『姉』と思い込んでいましたが、SHERLOCK CONでハリーは妹と判明したようです)

さて、ワトスンに叱られてしまうメイドさん。

"The fires are rarely lit, there is dust everywhere and you almost destroyed my boots scraping the mud off them. If it wasn't my wife's business to deal with the staff, I would talk to you myself."
「暖炉にはめったに火を入れてないし、そこら中ほこりだらけ。靴の泥を掻き落とそうとして傷だらけにした。
もしこれが妻の領分じゃなければ、僕が直接言ってやりたいくらいだ」(拙訳)


このメイドさん、ちゃんと原作に出てきます。

"(前略)As to Mary Jane, she is incorrigible, and my wife has given her notice; but there, again, I fail to see how you work it out.”
「女中のメアリー・ジェーンなら、こいつは何とも始末に終えない女でね、たまりかねて家内が、お払い箱の予告を申し渡したが、それにしてもどうしてそんなことまでわかるんだろう?」


ホームズがワトスンの靴にキズがついているのを見て、「靴底の縁にこびりついたどろをかきおとそうとして、そそっかしい者がつけた疵」と推理したわけです。
家事一切を取り仕切るのは女主人の仕事で、いかにメイドが生意気でも、ワトスンはクビを言い渡す立場にはないのですね。
原作を読んだ時は「ワトスン同様、メアリも彼女に手を焼いている」と思い込んでいましたが、本当に、この後すぐクビになったのかしら。
このお話を観て、実はこのメイドさん、意外にメアリと仲良しだったのかもしれないなあ、なんて想像してしまいました。
家庭教師時代にフォレスタ夫人に可愛がられていたメアリのことですもの、たとえ家事の腕前に問題があっても、彼女(メアリー・ジェーン)が賢い子で話が面白かったりしたら……
もっとも家庭教師と雑役女中では違いますから、原作ではその可能性は低いですけれど、このドラマなら、ひょっとしたらそういうこともあるような気がします。

また、ワトスンに"Are you incapable of boiling an egg?!(君は卵をゆでることもできないのか)"と言われてしまったり、電報を渡し忘れた言い訳として「本を読んでいた」と返すくだりもありますが、本に夢中で仕事を疎かにしてしまうのは、実は221Bのコックさんです。

「君を煩わすほどのこともないが、まあ新しいコックがわれわれのために作ってくれた二個の固ゆで卵を君が平げたら、ディスカッションをやってもいい。どうもこのゆで加減ときたら、きのうホールのテーブルで見た”家庭雑誌”と関係がないでもないらしい。卵をゆでるというだけのささいなことでも、時間の経過に気をくばるという注意力を必要とするんだね。あの結構な雑誌の恋愛小説を読みふけっていては成立しないわけだ」(『ソア橋』)



ちなみに、原文にあたると「結構な家庭雑誌」とは"The Family Herald"。 よくこの頃の小説の脚注に出てくる。大衆的な週刊誌って感じなんだと思います。The Strand Magazine との違いはどんな感じなんでしょう。メイドさんがストランド誌を読んでるのって意外なのかな?文藝春秋をギャルが読んでるみたいな……?わ、私でもわかるようなご教示、お待ちしております!

『緋色の研究』の頃は、ハドスンさんともう一人のメイドさんの描写しかないので、ペイジのビリー少年やコックさんは後年雇い入れられたのでしょう。ホームズの家賃払いが良くなったのと、ハドスンさんがお歳を召していったのと、両方の理由からなのでしょうね。

メイドさん側の事情も考慮すると、この頃は大変な人手不足だったようなんです。
この頃、使用人を雇うのはステイタスシンボルのひとつでした。上流階級はもちろんですが、中産階級の家庭に「一人でも使用人を置いていれば、我が家もひとかどの家である」という意識があって、メイドの需要は大変大きかったようです。
ドラマ『ダウントン・アビー』や篠田真由美先生の『レディ・ヴィクトリア』を鑑賞するとよくわかるのですが、大きなお屋敷ではメイドの仕事は細分化されているのに対して、それほどでもない家庭では、膨大な家事をすべて一人のメイドがやらなくてはなりません。
最近の表現で言えば「ブラック」もいいところ。産業革命が進んだことによって、工場などでも働き手の需要はある。
要するに、売り手市場だったのですね。こうした背景を考え合わせれば、彼女のワトスンへの態度にも納得がいきます。

……まあ、マーティンワトスンにもちょっと隙があるというか、単に「上司として言いやすそう」なのも、2世紀後とはいえ同じ労働者として、共感できるんですけどね。

ホームズからワトスンへの電報は、『ピンク色の研究』でのメールと同じ。おなじみのアレ、ですね。

DR. JOHN WATSON 
COME AT ONCE IF CONVENIENT.
IF INCONVENIENT, COME ALL THE SAME.
HOLMES

「都合ヨケレバコイ、ワルクテモコイ(『這う男』)」


原作では差出人がS.H.となってます。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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「花嫁」に続く事件

馬車の中で「もういくつか考えがあるんだろ?」と尋ねるワトスン、「もっと深く潜らなければ」と独りごちるホームズ。
初見の際は、これは『緋色の研究』の馬車での会話から、と思い込んでいました。

「データがない。証拠材料がすっかり集まらないうちから、推理を始めるのはたいへんな間違いだよ。判断がかたよるからね」(『緋色の研究』)



この「データが足りない」という言い回しは原作に複数回出てきますが(過去記事『データ、データ、データ!』)、今回はシャーロック自身の呟きでもあったんですね。2度めの鑑賞からは、違う意味に感じられるのが面白い。

エミリア・リコレッティ事件後の数ヶ月間に、この事件を模倣したというか、エミリアの仕業にみせかけた犯罪が起こったようです。ホームズの顔の上に、いくつかの新聞記事が浮かび上がります。

STATEMENT FROM CAB DRIVER “IT WAS MRS RICOLETTI”「御者が証言『犯人はリコレッティ夫人』」
GHASTLY MURDER IN THE WEST END DREADFUL END OF PEER. 「怪奇殺人 ウェスト・エンドで」
ALARMING DISCOVERY IN ISLINGTON 「船長 変死体で発見」
MANCHESTER SHIP CANAL AT EASTHAM ’GHOST’ IDENTIFIED? 「亡霊の身元判明?」
WHO WILL BE NEXT? In the notorious ‘Bride’Murders.「次は誰だ?」
SCOTLAND YARD BAFFLED MYSTERIOUS DEATH OF VISCOUNT HUMMERSKNOT「スコットランド・ヤードお手上げ 子爵謎の死」 (訳はNHK版から)



新聞の切り抜きは、ホームズお手製の犯罪記録帳からでしょうか。シャーロックはスマホで何でも検索しちゃいますけど、原作では新聞記事を地道にアーカイヴしてましたものね。

シャーロック・ホームズは暖炉の片側に陣どって、むっつりと、例の犯罪記録に索引をつけているし、(後略・『オレンジの種五つ』)



科学捜査にしても、犯罪記録作成にしても、ホームズはほぼ「創始者」で、現代に生きるシャーロックは「先人の作ったものを活用する人」なんですよね。だからシャーロックはただホームズを現代に連れてきたというキャラクターではなく、すこし性格が違う。
ベネディクト・カンバーバッチの演じ方も(この場合同一人物であるにも関わらず)、ちゃんと変わってると思います。19世紀ホームズの方が落ち着いていて、ワトスンとのパワーバランスもまた違いますよね。物語の上では、シャーロックの自己像があんな感じだということなんでしょうが……

さて、レストレードによると、少なくとも5人の男が自宅で殺され、米を撒かれ、壁には『YOU』の血文字があったとか。

後に切り抜きがアップになる場面を参照しながら、記事をチェックしていきましょう。
まずイズリントンの事件から。ある月曜日、イズリントンのユニオン・チャペルで、清掃作業員のエリザ・バートンが、頭部を撃ちぬかれた海軍大佐レオ・マスターソンの死体を発見しました。(階級はwikiを参考にしたのですが、違ったらすみません。ご教示いただければありがたいです)
死体の上には「まるで結婚式のように」大量の米が撒かれていたようです。

元ネタとしては、『海軍条約文書事件』に出てくる、『疲労せる船長の事件(“The Adventure of the Tired Captain”)』しか思いつかないかなあ……Captainの一言しかつながりがないので、信憑性はないですが……

また、肉屋のフレデリック・ヴァ…ヴァニスタート?(よく見えない)さんが自宅の庭で喉を切られて殺され、やはり米が撒かれてたケースも。
「米を撒く」ってオリジナルではやってないのに、しっかり受け継がれてるのがちょっと可笑しいですね。結婚式っぽい演出なのね。

もう一つは、ハマーズノット(この読み方でいいんだろうか)子爵の事件。
SCOTLAND YARD BAFFLEDという見出しは、内容的にはそんな珍しい事じゃないですが(レストレードごめん)、今作は過去のホームズ映画へのオマージュが特に多いですから、ここで世界初のホームズ映画、"Sherlock Holmes Baffled"を挙げておくべきかもしれません。
1900年に作られたショートフィルムなのですが(私は日暮雅通先生のトークイベントで教えていただきました)、まさに「カツオホームズ大慌て」って感じです……



新聞記事に戻ると、この事件では高名な子爵が硫酸を浴びせられたらしいです。
まんま『高名の依頼人』じゃないですか!あの事件のグルーナー男爵、いつThe League of Furiesにやられてもおかしくない男ですからね!SHERLOCK世界のキティ・ウィンターはうまくやったね!!

「関係ない殺人をエミリアの仕業に見せかけようとする」人もいたでしょうが、、エミリアに共感したり、触発されて行動を起こした人たちもいたんじゃないかしら。
これらの新聞記事はきっと、シャーロックがマイパレにデータ保管してた「現実の」事件なんですよね。メアリのように参政権を求めて運動する女性たちもいた一方で、エミリアたちのように抑圧されたエネルギーを復讐に向けるひとも、少なくなかったと思うんです。

ところでホームズ、紺色ガウンを着てますね。このガウン、原作では『唇の捩れた男』に出てきます。
このガウン、友人は紫って言ってました。紺色に見えるのが私のモニターのせいで、紫色だとしたら『青いガーネット』ですかね……

過去記事:『シャーロックのガウン』

う~ん、どっちとも取れる色かな。
やたらファッション・チェックが細かいことに定評があるワトスンですが、「同じガウンを青って言ったり紫って言ったりしてる疑惑」が湧いてきたぞ!

レストレードに「無能なスコットランド・ヤードを代表して言わせてもらえばその椅子はからっぽ」と言われて、「ワトスンが進歩したと思った」と返すのも『唇の捩れた男』からですね。

「君はすばらしい天禀をもっているよ、寡黙というね。これがあるから君は相棒としてもってこいなんだ。(後略)」



次の場面の「メアリがいない椅子」に繋がる「ワトスンがいない椅子」は、『SHERLOCK』本編でも描写されてきましたが、原作でも何度か言及がありました。

「(前略)ロンドンに着くと、まずベーカー街の旧居に自身乗りこんで、おかみさんのハドスン夫人を気絶せんばかりに驚かしてしまった。旧居は兄のマイクロフトの骨折りで、書類などもそっくりそのまま、以前の通りに保存されていた。というわけで、きょうの午後二時には、昔なつかしいあの部屋の坐りなれた肘掛いすに僕は納まったわけだが、親友ワトスン君が昔どおり、おなじみのいすに掛けていないのだけが物足りなかった」(『空家の冒険』)



過去記事『ジョンの肘掛け椅子』

黄道傾斜角の話については、また別記事にまとめようと思います。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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