最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
★コメントを歓迎しております。初めてコメントくださる方は、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。
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「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
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アヘン窟のリコレッティ

エミリア・リコレッティがトーマス・リコレッティを待ち伏せるために向かったのが、イーストエンドあたり、貧困な地域にあるライムハウス。ここはドックの近くで、水夫たちが持ち込むアヘンが蔓延してたようですね。コレラの発病が最初に報告されたのも、ここだそうです。

原作でアヘン窟が登場するのは、『唇の捩れた男』。
メアリの友人に頼まれて、ワトスンがアイザ・ホイットニー を迎えに行きました。現代版アレンジされたこのエピソードは"His Last Vow"に登場します。→過去記事『ケイト・ホイットニーの来訪』

アイザ・ホイットニー(他、友人約一名)がいたのは、上スワンダム小路にある『金の棒(the Bar of Gold, in Upper Swandam Lane) 』というアヘン窟。

上スワンダム小路というのは、ロンドン橋の下手の北岸にならぶ荷揚場の裏にあるきたならしい町で、既製服屋と居酒屋のあいだの急な段々を、洞穴の入口みたいな暗いところに降りてゆくと、そこへ目的のアヘン窟があった。(『唇の捩れた男』 延原謙訳)


ライムハウスとの位置関係は?……と知りたい時に、Google mapの"Sherlock Holmes's London"というサービスがあって本当によかったよ……!このサービス、私はつい最近まで知らなかったです。Thomas Bruce Wheelerの地図が元になってるのか、ご本人が作成したのか釈然としないのですが、書籍がアップデートされる度に新刊を買う余裕のない私にとっては、まさに希望の星!ありがたく使い倒させていただきやす!



青いマーカーがついているのが、ホームズ物語に出てきた場所。
3回ほどズームしていただくとわかるんですけど、ほんとにロンドン橋のすぐ近くに『上スワンダム小路』があります。
始めに表示される大きな地図で言うと、画面右手、テムズ川が大きくUの字を描いている、左肩からすこし横くらいですね。このUの字付近の川沿いが、1970年代から再開発されたドックランズ地域で、"The Blind Banker"のヴァン・クーンのフラットはここにありました。今やオシャレエリアなんですね。

「ライムハウス」はUの字の左肩辺りの地域のようです。当時と場所がずれていなければ、アヘン窟の場所もほぼ同じと言っていいですよね。すっきりした!

それにしてもこのマーカーの密集ぶり……「イーストエンドは犯罪の温床だった」という知識は一応あるものの、こう視覚で再確認させられると圧倒されてしまいます。切り裂きジャックのホワイトチャペルもすぐそこだな~。
『唇が捩れた男』には、セントクレア夫人がアヘン窟の三階(原文はsecond-floor。英国では一階がground-floorなので)の窓に夫を見つける場面もありますが、エミリア演じる「忌まわしき花嫁」が窓辺で偽装自殺してみせる場面とつながっている気がします。裏に協力者がいて、こっそり着替えてるのが同じだから、そう感じるのかもしれません。

さて、気になるのはアヘン窟の名前。他の記事のコメント欄に既に色々書き込んでいただいているのですが、あらためてまとめさせていただきます。

リコレッティがアヘン窟から出てくる場面。看板には「马蹄内翻足」の文字。

どうにか読める「蹄内翻足」でGoogle検索をかけると(今回Google先生大活躍!)、「馬蹄内翻足」が出てきました。
これは、日本語では「内反足」。足の形態異常のひとつなのですが、昔は「蟹足」って言われてたのかもしれません。「馬蹄内翻足」とは、タイトルの元ネタである『蟹足のリコレッティとその恐るべき妻の記録(a full account of Ricoletti of the club-foot, and his abominable wife)』の、club footの中国語訳のようです。

つまり、看板と本人を合わせて「蟹足のリコレッティ」完成、なんでしょうか。しかし「金の棒」はまあまあわかる(なんか景気のいい感じする)として、店名がそれってアリなの?という疑問が残ります。「馬蹄」自体はラッキーモチーフなんでしょうが……

そこで、中国語にご堪能なYOKOさんにお伺いしてみました(『そこで』とか嘘です、1月から頼る気満々でした、すみません……)以下、YOKOさんのメールから引用させていただきます。

少しぱらぱらと検索していましたら、こういう記事を見つけました。

 ttp://toutiao.com/i6236973102488617474/(※ニュースサイトだと思うのですが、いかんせん読めないのでリンクポリシーとかよくわからず、念のため直リンを避けました。コピペして頭にhつけて飛んでくださいね。ナツミ)

やっぱり中国のファンの間ではすぐに話題になっていたようですね。

見出しは、強引に訳すなら、「笑わないで。シャーロックに隠されたメッセージの馬蹄内翻足はフットマッサージ店の意味じゃないですよ。」


中国ではどういうわけか「馬蹄内翻足」を「フットマッサージ店」の意味に受け取った人が多かったようで、この記事は「それはちがうよ、原作を見てね。これは制作陣の正典に対するオマージュなんだ」と言ってる内容のようです。

この記事は筆者の主観で書かれたもののようでまったくオフィシャルではありませんが、私たちの感想に近いです。(コメント欄に寄せられてる意見の半分はこの記事を評価していないみたいですが、多分正典読んでない人たちかな)

この記事内にあるのですが、中国語の「マスグレーブ家の儀式」でのclubfootの訳は「跛足」らしいです。「馬蹄内翻足」ではないようですね。やはり医学用語を書く必要はないですからね。PCなら「障碍の残った足」という感じでしょうか。


その後YOKOさんがくださったコメントより。

SHERLOCKは、中国での人気がすごいので、今回の忌まわしき花嫁の公開は中国ではほとんど英国と同時位ではありませんでしたっけ?で、マークゲイティスさんたちが公開前に中国人ファンに向かって「今度のスペシャルには、中国人に向けてのサービスがありますよ。中国人にだけわかる小ネタ仕込んであるよ」とアナウンスしてたらしいのです。

そのため、放映時、中国のファンたちは、どれだ?どれだ?と大騒ぎして見たようなんですよ。

で、結果、リコレッティの寄ったアヘン窟の看板だということは分かったのですが、いったいどういう意味が隠されてるの?ということで、大まかに2通りの解釈があるようです。

マスグレーブ家の儀式の中にある「蟹足のリコレッティ」のCLUBFOOTをグーグル翻訳したらで、「馬蹄内翻足」になった。というシンプルなものと、「馬蹄内翻足」=CLUBFOOT=洗脚城(フットマッサージ=風俗店)まで深読みして、風俗に出入りするリコレッティの奥さんへの不実(浮気)を暗示するものだとする意見と。

どこのファンたちも、同様にあーでもないこーでもないと楽しく議論しているんですね。モファティスさんたちに翻弄されるのはいずこも同じですね~。



な、なるほど~!同じ記事のコメント欄でも「crab-footだと思ってた」とおっしゃってた方が複数いらっしゃいましたが、この場合、clubがナイトクラブとかのクラブと受け取られてた!? 
私も「"club-foot"のclubはこん棒じゃないか」とかよく調べずに言い出して、足の骨の名称を言いながら足を揉めるbillylabさんを「聞いたことありませんが……」と困惑させてますが、なんかね、そういうね、非英語圏視聴者ならではの迷走が、みっちょんさんの

深読み説を深読みすると、不実な夫と肺結核の妻の組み合わせはコナン・ドイルと最初の妻に当てはまりますね。

殺されたのは、、、コナン・ドイルだったのか、、、、



という素晴らしいまとめに着地するまでの流れが、無駄に美しい……
と、惚れ惚れする私です。無駄が美しい、というべきか。
英語圏の人ならいちいち立ち止まらないところで、私たちは遠回りしたり深読みしたりするわけですが(いや、ネイティブじゃなくても英語が堪能な方はたくさんいらっしゃるので、『私たちは』って一括りにしちゃ申し訳ないんですが、少なくとも私は)、そのジタバタが導線になってみっちょんさんの「リコレッティはドイル」という考察に結びつくって、すごいことですよ。
「正解」はゲイティスさんたちが、もっと言うとドイルが持ってるのかもしれないですが、「どこのファンたちも、同様にあーでもないこーでもないと楽しく議論している(by YOKOさん)。この「過程」の楽しさに比べれば、「正解」かどうかなんてもはやどうでもいいじゃないっすか。オラ達、熱いよね!

……と、見知らぬ中国人ファンの皆さんまで北三陸訛りで巻き込んでしまいましたが(あと『どうでもいい』は流石に言いすぎですが)、楽しかったです。みっちょんさん、れすとらさんをはじめ、コメント欄でお話くださった皆様、ありがとうございました!

YOKOさんが教えてくださった発見をもうひとつ。

ドラマ中では「马蹄内×足」とみえました。
「馬」の字が中華人民共和国で使われている「簡体字」で書かれているんです。
これが初見時非常に違和感でした。
簡体字は1950年ごろにつくられましたので、19世紀倫敦に簡体字があるはずがないからです。
(もしかすると筆記するときの略字ではあったのかもしれませんけど)

でも、最後までみて全部21世紀のシャーロックのマインドパレスの中での出来事と考えると、まぁ仕方ないか…と思えてきました。シャーロックがいかに博識でも、簡体字の知識まではなかったのかもしれません。(S1-E2で中国と日本の区別もついてなかったことも思い起こされますね…)



簡体字と繁体字の違いが理解できていればオチが早めに読めたかもと思うと、中国語を理解できる方がうらやましい!
あっ、でも、そういえばわからないなりに「19世紀にあのフォントはないよな~」と思ってました。
オチに気づくには至らなかったのですが(基本、台詞を聴きとるだけでいっぱいいっぱいです!)、これだって漢字を日頃から使ってるからこそ気づくことだったのかもしれませんね。

YOKOさん、本当にありがとうございました!中国のファンの方たちの息遣いを感じることができたのが、何よりも嬉しかったです。いつか、彼ら彼女たちとお話してみたいなあ、と思います。

ところで、この時トーマス・リコレッティは白いタイに白いウェストコートを着けています。オシャレというか、これって礼装なのでは。
ここで、アヘン窟のドレスコードが気になりました。こんな素敵な格好で行くようなところなの?
(リコレッティがアヘン窟の運営側って可能性もありますが、そういう説明はないので、まあ遊びに行ったとして。また、ホームズとレストレードの会話の流れから、『ライムハウスにいるところに、妻の死の報せを受けて、モルグに向かった』と仮定します。)

『犯人は二人』で、ホームズとワトスンは、芝居帰りを装うために正装しましたよね。
思うに、トーマスは夜の外出を周囲の人に怪しまれないよう、お芝居や音楽会に行くふりをしてた(エミリアにはバレてた、または隠しもしなかった)。または、晩餐会や音楽会などへの出席の帰りに立ち寄るくらい、この区域での夜遊びに溺れてた。
もしくは、直後ワトスンが「モルグにツイードでいいかな?」と気にしてたように、死者に敬意を払うために着替えた。

通い詰めてるにしろ、着替えが置いてあるにしろ、馴染みの女(もしくは男)がいる感じしないですか……?リコレッティがアヘン窟から出てくる場面で、男たちに取り囲まれている、艶やかな中国服の女性が映りますよね。公式が否定したとしても、中国のファンの皆さんの想像は、当たらずとも遠からず、ではないかしら。第一、アイザ・ホイットニーの描写に比べても、アヘン窟から出てきたリコレッティは酩酊してないように見える(報せにびっくりして覚めたのかもしれないけど)。
いずれにしても、結婚記念日にそんなところに入り浸ってた、と新聞には書きたてられたろうし、正装してる「もと花婿」に花嫁姿の幽霊が訪れて「ショットガン・ウェディング」を行う、というのは、いかにも大衆が喜びそうな話です。後ろめたいところのある夫たちは震え上がりそう。
そういう世間の反応も、エミリアたちの計画のうちだったのでしょう。殺してなお飽きたらず、相手の名誉までも地に堕とす、巧妙な復讐。
その記録が残ってて、シャーロックの中で"The Reichenbach Fall"の経験とつながったんでしょうね。ジムと花嫁を重ねて推理している、というオチのヒントが、ここでも既に表れてるんだなあ……

【追記:2016.6.9. みっちょん様にご教示いただいたのですが、リコレッティが着ているのは夜会服。当時の結婚式は午前中から午後3時までしか挙げることができず、よって夜のための正装である夜会服は、結婚衣装には成り得ないそうです。当時のの服装については、みっちょん様のサイト『シャーロック・ホームズの世界』で、水野雅士さんが詳しく分類と説明をしていらっしゃいます。】
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水車小屋の娘

花嫁がバルコニーからばんばん銃を撃つ場面、怖いですね……
なんか英国の怖いものの定番に狂女モチーフがあるみたいで、若い頃「ロンドン・ダンジョン」に行った時も、土産物売り場でこういう感じのおねえさんがひらひら歌い踊りながら棚の整理をしていたのを思い出してしまいました。怖かった。買い物したくて声をかけたら、とたんに普通になって応対してくれたのも含めて、怖かった……

この場面に出てくる通りに、『赤髪組合』のジェイベス・ウィルスンさんのお店がある、と以前マーク・ゲイティスさんがツイートなさってたそうなんですが、私の動態視力ではわかりませんでした……

"Do not forget me……の繰り返しが印象的な、「花嫁」の歌う歌はこちらで聴けます。

タイミング的に、SHERLOCKの放映を観た方が、動画をアップしてくださったんでしょうね。
長い歌でもないので、歌詞も添えておきますが、間違っていたらご指摘いただければありがたいです。

Golden years ago in a mill beside the sea
There dwelt a little maiden, who plighted her faith to me
The mill wheel now is silent, the maid's eyes closed be
And all that now remains of her are the words she sang to me

Do not forget me Do not forget me
Think sometimes of me still
When the morn breaks and throstle awakes
Remember the maid of the mill
Do not forget me do not forget me
Remember the maid, the maid of the mill

昔の恋人を懐かしむ歌、って感じですね。
新婦友人枠なら結婚式の玄人、の私としては、結婚式に歌う歌でもない気がするのですが、そこらへんは感覚が違うのかな……?
もっともシャーロックの意識下の話として観るなら、ジム=花嫁、が強く意識されてるからこの歌詞なんだし、「人を撃つ花嫁」にはメアリの記憶も密接に絡んでるんですよね。「女性が抑圧された社会で、メアリの行動が制限されてる」この設定を、製作者の都合じゃなくてシャーロックの意識の問題、と考えると、結構深い……
兄弟揃って「女性」を語る場面もありますが、このタイミング(ジョンの結婚、メアリの一件、二人との決別)でシャーロックの脳内に起こっていること、としてこの物語を読み解く必要がありそうです。タイミング的にDo not forget meって言いたいのはシャーロック自身でもあり、ジムとシャーロックが表裏一体、というのもここで裏付けられる。

舞台は変わって阿片窟。阿片窟は『唇のねじれた男』冒頭に出てきます。
考えてみれば、旦那さんが自分を置いてアヘンに溺れている、という意味ではケート・ホイットニーも「打ち捨てられた花嫁」の一人だし、セントクレア夫人もご主人が何に夢中になってるかは知らされない。(二組とも愛し合っている夫婦だと思うのですが)
このお話の中でメアリはワトスンと和解できたけど、そんなのレアケースかもな~って思います。これは別に、19世紀だけの問題でもないかもしれない。シャーロックの「結婚」への考え方も、ここに少し垣間見える気がする。

ショットガン・ウェディング」を目撃させられるのはランス巡査(エンド・クレジットより)。『緋色の研究』で目撃者になった巡査と同じ名前で、ちょっと『緋色の研究』ベース説に自信がついた私です。



ワイルダー版あれこれ

お久しぶりです。『忌まわしき花嫁』に関してはエイプリルフールでやりきった気がしていたのですが、実際は何もやっていないという恐ろしい事実に気づいた、21世紀探偵です。
とりあえずやっとワイルダー版の『シャーロック・ホームズの冒険(The Private life of Sherlock Holmes)』を観ました!
以下、映画のネタバレがありますので、未見の方はお気をつけください。

中学生くらいの時、深夜の放映で観て以来です。子ども特有の妙な潔癖さで「ワトスンがアホみたいだった」のが辛くて(思春期の女の子にとっては、ゲイネタの扱われ方もイヤだったんでしょう。制作当時に比べて、同性愛に対する社会の認識は多少変わってたと思います)、大人になってからもなんとな~く観てなかったんです。
ワトソニアンに優しいグラナダ版が当時既にあったので、依存に近い形で満足しちゃってたんですね。

現代版の直接の元ネタという知識はあったので「いつか観なくては」と思ってたのですが、向上心、というか良い意味でのオタク気質が全く無い私は「勉強のために観る」のはなんとなく気が進まず、のらりくらりと先延ばしにしておりました。
他のワイルダー作品は何本も見ていて、とても好きなのですが(『ホームズ』に前後して『失われた週末』が放映されて、そちらは子どもなりに楽しく観られたのをよく覚えてます)。

しかし、今更ですがこの映画、面白い!ワトスンはギャーギャーうるさいし、長回しのギャグは時にくどいんですが、登場人物全員が、どことなくチャーミング。
『SHERLOCK』に馴染んだ後で観ると、ホームズ&ワトスンの喋り方とか間の取り方がそっくりだし、何より『原作の小ネタをえげつないほど詰める」という手法が同じ。

トラウマ克服した!これはこれで、イイ!
2回、3回と観て気づくことも多いと思うのですが、とりあえず初見で「これは!」と思った『SHERLOCK』との関連をランダムに挙げてみます。原作ネタは多すぎるのでカッツ・アイで!
先日BSプレミアムで放送があって、もう色々な方がやっていらっしゃるので、ネタがかぶってたら申し訳ありません……

早川書房のトークショーで日暮雅通先生がご指摘なさっていた通り、『忌まわしき花嫁』のオープニングは初めのカットこそグラナダ版ですが、残りはほぼほぼワイルダー版なんですね!
『ストランド・マガジン』も出てくるし(こちらは季節柄『青いガーネット』ではなく『赤髪組合』)、ハドスンさんとのやりとりやワトスンの作品批判は、まんまワイルダー版のパロなんですね。

・ホームズの煙草の灰研究に対して、ハドスン夫人が『泣くほど需要がある』と皮肉るところは『The Empty Hearse』でほとんど同じ台詞が使われてたと思います。

・事件がないとイライラしてしまうホームズ、自分の脳を「スピードを抑制されたレーシングエンジン」に例えますが、これは原作の『ウィステリア荘』と同じ。現代版(『The Hounds of Baskerville』)では、「発射台に括りつけられたロケットのエンジン」。ちょっと進化してる(技術的には)。

・ロシア人の若いバレリーナたちに囲まれて、鼻の下を伸ばすワトスン、言葉が通じないのをいいことに(どう観てもそこそこ通じてますが)セクハラ連発、からのゲイ疑惑。(ここらへんの同性愛者の扱いやら麻薬描写やらで、もう地上波で放映できないんだろうなあ……)
『忌まわしき花嫁』のワトスンの手話が通じないくだりで、この場面を思い出したのですが、関係ないにしてもよく覚えてたな、私!家庭用ビデオも無かった時代、ホームズ映画って、夜頑張って起きててテレビで観るしかなかったのですが、残ってるかすかな記憶がこの場面とネス湖とラメテブ教(←映画違う)。
バレエ団の団長さんがなかなかいいキャラなんですが、『The Hound of Baskervilles』というタイトルを"Big dog from Baskerville”と言い間違えるネタは、『忌まわしき花嫁』でホームズに踏襲されましたね。間違えたというよりどうでもいいんだろうけど、"The dog one"って、更にひどくなってるぞ。

・その後、ワトスンがホームズの恋愛遍歴を詰問する場面も、『忌まわしき花嫁』に引用されてるのですが、こればっかりはワイルダー版ワトスンに同情する、というかこっちの方が自然な流れ……(なのにホームズがキレるのが理不尽でイヤだったんだよな~、イタいわ~、自らの幼いトラウマをたぐる作業つらいわ~)

・マイクロフトの健康をワトスンが気遣うところも、『忌まわしき花嫁』にありますね。マイクロフトが一蹴する理由は真逆ですが……
クリストファー・リーのマイクロフト、かっこいい。ディオゲネスクラブが政府に絡んでいそうなところも、何かとつっかかる弟と高圧的な兄の関係性も、現代版とほぼ同じ。
二人共、首から下げてる鎖を指で弄ってるんですね。無意識レベルで似てる、という演出も似てます。『SHERLOCK』では、ドアノッカーをまっすぐにせずには/直さずにはいられない、という神経質さが兄弟に共通でした。ワインにこだわりがあるのも、『The Empty Hearse』に出てきましたね。

・『忌まわしき花嫁』の墓暴き場面も、この映画からかな?二重底疑惑は『フランシス・カーファックス姫の失踪』からですね。

・霧の中にいる怪物をワトスンだけが見てしまうのは、『The Hounds of Baskerville』のラボの場面に似てる。ホームズはワトスンの妄想だと言いますが、現代版ではまさに『想像力の産物』だったわけで、この場面がトリック発想のヒントだったのかもしれませんね。

・捜査とはいえ、スコットランドの古城を自転車で巡って、外でお弁当なんてうらやましい。
『The Hounds of Baskerville』でも庭での食事シーンがあり、ジョンの機嫌を取ろうとしたシャーロックが「ソースかける?」と聞く場面がありましたが、こちらでは主人夫婦と従者、という設定なので、ホームズが「ソースとってくれ」と言うのが可笑しい。(あ、本人たち以外はラブラブ旅行だと思ってるのも、ひょっとしたら同じなのか?だとしたら、ヘンリーの家に泊まる設定じゃなかったのは、この場面がやりたかったから、もある?)
ワトスンの体を足場にしてホームズが高いところに登る場面も、現代版のどこかになかったっけ……(なかったらすみません。ガイ・リッチー版の元ネタもこの映画にわりとある気がするので、ごっちゃになってるかも)

・マイクロフトの計画が発覚するところは、アイリーンの絡み方や『あのお方』の存在も込みで、"A Scandal in Belgravia"の元ネタだったんだ……!こういうのは、粗筋を覚えていても実際に観ないとわからないものですね。
それにしても計画のこの顛末、子どもの頃ですら「何、これ……」って思った記憶があるんですが、1970年当時はイケてる展開だったんでしょうか……当時を知る方に、いつか聞いてみたいものです。

・これは余談ですが……
上の方にも書いた早川書房のイベントで、日暮先生が教えてくださった「このセットを製作者がネス湖に置いていってしまい、後に怪物に間違えられそうになった」というエピソードと、会場に溢れた「片付けろよ」という無言のツッコミを、私はきっと長く忘れない。
【追記:2016.5.7】「置いていった」というのは言葉足らずで、作品のwikiページによると、事故で落としてしまって回収不可能になったようです。(私の思い違いで、日暮先生は正確に教えてくださったと思います!申し訳ありません)

長くなると読みづらいので太字をやめますが、ここからも7日の追記です。
時系列通りに申し上げると、

1969年、制作チームが事故で怪物の模型を落としてしまった。

1975年、ネッシー探索の為にネス湖の調査を行ったボストンの応用科学アカデミー研究チームがネッシーを写したとする水中写真を公表し、世界的なニュースとなった。この写真の被写体が、撮影時に水没した模型だったのではないかとの説が唱えられ、大きな話題となった。(wikiより引用)

2016年、ネス湖の研究家たちとノルウェーの企業が、水中ロボットを用いてネス湖の動物の生態を調べていたところ、巨大な恐竜のような影を発見。形と大きさで、すぐにワイルダーの映画で使用された模型だとわかったそうです。(これは、以下にリンクした記事より。)みんな、1975年の件を覚えてたんでしょうね。(追記はここまでです)

BBC NEWS; Film's lost Nessie monster prop found in Loch Ness

多少時代を感じるところもあったのですが、とても楽しい映画でした。
前述したように、原作の小ネタが(『語られざる事件』も含めて)随所に詰め込まれているところ、クスッと笑えるエピソード満載の洒落たストーリー構成(Wikipediaによると、これでもコミカルな場面をだいぶ削ったんですね。The Private Life of~という原題は伊達じゃなかったのね)は、まさに『SHERLOCK』の前身だなあ。ホームズ、ワトスン、ハドスンさんのやりとりなんて、目をつぶって聞いたらSHERLOCKと間違えるかもしれないです(不注意な私なら)。

そんな素敵な作品を、私は長年「食わず嫌い」していたわけですが、多分子どもの私は、ワトスンが愚かに、ホームズが高圧的に描かれている、と思ってしまったからです(当時からワトスンのモンペだった)。
でも、いい歳になって鑑賞すると、いくらか行間が読めるというか、二人のちょっとした口調やしぐさに「何だかんだ言ってもお互いがいないとダメ」という空気が感じ取れるようになってるわけで。
本当にワトスンを軽視していたら、怒られそうな時隠れたりしないですよね。また、ホームズとイルゼも、心をゆるしあっていなければ、ああいう会話はしない。
本人たちにしかわからない友情や愛情の機微がしっかり描かれている、大人の映画なのだと思います。上手く言えないけど、そういう登場人物たちの呼吸みたいなものが、『SHERLOCK』に受け継がれている、最大のギフトじゃないでしょうか。

『SHERLOCK』のおかげでこの映画に再会できて、本当によかったと思います。自らの「子供の頃の視点」と「今の視点」を比べるのはくすぐったいものですが、「こんな風に考えてたんだ!」という驚きもありますね。
若い頃もっと映画観とけばよかったよ!若者のみんな、迷ったら観たほうがいいよ?脳内メモリに「ラメテブ教礼拝シーン」しかない大人になる前に!
それと私の場合、原作(聖典)はSHERLOCKより先に読んでいたわけですが、後発作品から過去に作られた作品に戻るのも楽しいものだなあ、という発見もありました。ソフトを貸してくださったお友達にも、御礼を言いたいです。
プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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