最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
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221Bの言い方は?

バーツでホームズとワトスンが出会う場面では、原作とも現代版ともちょっと違って、「死体をたたいてる」現場をワトスンが目撃してしまいます。(現代版では、見てるのはモリー。原作ではバーツに向かいながら、スタンフォードがワトスンにその様子を話します)

“Yes, but it may be pushed to excess. When it comes to beating the subjects in the dissecting-rooms with a stick, it is certainly taking rather a bizarre shape.”
“Beating the subjects!”
“Yes, to verify how far bruises may be produced after death. I saw him at it with my own eyes.”「(前略)たとえば解剖室の死体を棒でたたいてまわるといったようなことにでもなると、おだやかじゃありませんよ」
「死体をたたく?」
「たたくんです。死後どの程度に打撲傷がつくか、確かめるのだといってね。こいつは現に私がその現場を見ましたよ」



そう!今回は鞭じゃない!ちゃんとステッキ(stick)を使ってる!!
ここは興奮しましたね!まあ現代版だって「乗馬鞭から始める」って言ってたんで、比較検証用にそのうち杖も使ったんでしょうけど、原作通りに戻った!となるとアドレナリン半端ないです!

このとき私たちは、ほそい路地をとおって、小さな裏口をくぐったのだった。なかは大きな病院のとある一棟である。私にははじめての場所でないから、殺風景な階段をのぼって、白壁のところどころに焦げ茶色のドアの並んでいる廊下を奥へはいってゆくには、案内もいらなかった。廊下のつきあたり近くから、ひくいアーチ型の天井をもつ別の廊下がわかれて、化学研究室へ通じているのである。研究室はりっぱな部屋で 、 数しれぬ多くのガラス瓶が、あるものはきちんと並べて、またあるものはとり散らかされていた。脚のひくい大型のテーブルがあちこちに散在して、その上には、 レトルト、ピペット。青い炎のちろちろするブンゼン灯などが、ところ狭く並んでいた。



今回の行き先はモルグだったので「研究室」じゃないと思うんですけど、アーチ型の天井や瓶の並んだテーブルは同じで、ちょっと感激しちゃいます。私はバーツに行ったことがないんですが、一生に一度は行ってみたいものだ……

ホームズがペラペラ喋るのも原作通りなんですが、原作は実験の話に夢中になったり、ワトスンに気に入ってもらえるか急に不安げになったり、と無邪気な少年のようで、高圧的な感じはしないように思います。こっちバージョンのカンバーバッチホームズも見たかったなあ……今回はちょっと「巻きで行った」感じですね。

ホームズがステッキを投げて、とっさにワトスンが受け取る描写は、"The Blind Banker"でジョンが放ったペンを、シャーロックが一瞥もせずに受け取るところから、でしょうか。確か、一発で成功したんですよね。ベネディクトとマーティンの反射神経もすばらしい!

YOKOさんもブログに書かれているのですが、私もホームズの「住所の言い方」が気になりました!
このお話の冒頭にも出てくるのですが、現代版シャーロックの言い方は"Two-two-one B Baker street"。
でも、今回ホームズは"Two hundred and twenty-one B~”と発音したんです。(ちなみに、現代版マイクロフトもこう発音していました)。
これはどういうことなのかな?と、たまたま近くにいたネイティブの方に聞いてみたところ、う~んと頭をひねって、
「おそらく、昔は住所も少なかったし、普通に数字で言ってたんじゃないだろうか。でも、住所が増えてくるにつれて、言いにくくなってくる。特に電話が発明された後は、音声で説明しづらくなるので、一桁の数字を並べて言うようになった。ホームズは昔の言い方、シャーロックは今風の言い方をしているのでは?」と「推理」してくれました。
実際、彼のお祖母様の住所が、「4桁(1024)で、上2桁はOne thousand、下2桁はtwo-fourと発音する」そうなのです(数字は今私が適当に当て直したものですが)。この「謎」を、彼は「電話普及後に住所が急増した道で、言いやすくするためにそう呼ばれたんじゃないか」と考えていたそうです。ただ、彼はアメリカ人なので、自信はあまりないそうなのですが……

ホームズの時代には、221Bという住所は実在しなかったそうですね。

ベーカー街は、ロンドン中で最も有名な通りである。ウエスト・エンドの中心を南北に走る街路であり、ハイド・パークの東北隅から北に向かってリージェンツ・パークの西南端に至る。
ホームズが活躍していた時代にはベーカー街の東側が1から42まで、西側が44から85まで(43は欠番)となっていて、221Bは存在しない住所だった。後にベーカー街に含まれる北のヨークプレイスは1–40、さらに北のアッパー・ベーカー街も1–54であり、221Bはどこにもなかった。(Wikipedia『ベーカー街221B』より



リンク先のwikiによると、この後ある会社が221の住所を手にし、専門の「ホームズ秘書」を設けて世界中から寄せられるホームズ宛ての手紙に対応するようになるのですが、2000年代になって会社が立ち退き、建物も取り壊され、高級賃貸マンションが建っていたらしいです。
世知辛い話だ……「ホームズ秘書」って、いい時代だったんですね……(ちなみに私はギリギリその時代に訪問しました。バブリーな大人になれなかった今は、世知辛い時代をがんばって生きてます……)

(原作からの引用は『緋色の研究』延原謙訳から)
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クライテリオンとホルボーン

原作と同じように、そして現代版と同じように(ややこしい!)退役してロンドン砂漠をさまよう家なき子・ワトスン。

Under such circumstances I naturally gravitated to London, that great cesspool into which all the loungers and idlers of the Empire are irresistibly drained.

そういう状況のもとにおかれた私が、全国の無為怠惰のやからたちが滔々としておし流されていく、あの下水溜めのような大都会、ロンドンへとひきつけられたのは、すこしの無理もないことだった。(『緋色の研究』)


この描写は、現代版では第3シリーズ1話"The Empty Hearse"でシャーロックが使ってますね。
関連記事:『This is London

そこに現れたスタンフォード君が声をかけます。(※追記1)

Good Lord! Where have you been?You're as thin as a rake!
「なんてことだ!いったいどこにいたんです?熊手みたいに痩せてる」 (拙訳)



ちなみに原作では

“Whatever have you been doing with yourself, Watson?” (中略) “You are as thin as a lath and as brown as a nut.”
「ワトスンさん、あなたいったいなにをやっているんです?」(中略)「からだは針金みたいにやせてるくせに、顔や手はくるみのように日にやけてるじゃありませんか」(『緋色の研究』)


さらに"A Study in Pink"ではジョンの体重増減への言及はなく、マイク・スタンフォードが太っちゃったことになってます。
日焼けに関しては後にシャーロックが言及してました。マーティン・フリーマンって、あんまり体重の変化がなさそうですよね。顔色はまあ、メイクでどうにでもなるか。
lathからrakeへの変更理由がよくわからないとこに、己の英語力の限界が……そもそも今日の今日までlathの意味をよくわかってなかったですよ。壁の中に入ってる、木とか金属でできた網みたいなヤツね。上から塗ったもの(モルタルとか)が削げちゃってて、木摺が露出してる……要するにワトスンは骨と皮ばかりだったのね。今でもこの表現はよく使うのでしょうか。rakeなら、たまに聞く気がします(私以外に使われるのを)。

思わぬところで(熊手に)ひっかかりましたが、問題はその後。
現代版"A Study in Pink"では、屋外のベンチでコーヒーを飲んでいた二人。手の中の紙コップにはしっかり"The Criterion"の文字。

クライテリオン酒場のまえにつっ立っていると、肩をたたくものがある。ふりかえってみると、聖バーソロミュー病院時代私の下で助手をつとめていたスタンフォード青年である。(『緋色の研究』)



現代版ではいかにも21世紀の若者らしく「外でコーヒー立ち飲み」でしたが、今回はちゃんとクライテリオンで飲めたね!原作通り!(※追記2)


……と思いきや、原作ではもう一軒出てくるのです。

In old days Stamford had never been a particular crony of mine, but now I hailed him with enthusiasm, and he, in his turn, appeared to be delighted to see me. In the exuberance of my joy, I asked him to lunch with me at the Holborn, and we started off together in a hansom.

スタンフォードとはそのころ、なにも特別に親しくしていたというわけでもないのだが、私は狂喜した。むこうも私に会ったのを喜んでいるらしい。私はうれしさのあまり、ホウボーン料理店で昼食をおごるからというわけで、辻馬車に乗って出かけた。(『緋色の研究』)



原作では、クライテリオン酒場→ホルボーン料理店→聖バーソロミュー病院(バーツ)、と移動してたんですね。
辻馬車を使っているので、そこそこ離れているのでしょう。
どれも実在のお店や病院ですが、ホルボーンはすでに閉店しているようです。

クライテリオン(ピカデリーサーカス)


今でも、ちゃんとプラークが!


1881年1月1日、ここクライテリオン・ロング・バーにて、バーツの手術助手スタンフォードがジョン・H・ワトスン博士に出会い、彼を導いた——不朽の名声、そしてシャーロック・ホームズへと (拙訳)


スタンフォード君の偉業、ここにあり!

聖バーソロミュー病院


ホルボーンが閉店しているから省略して、二人が話り合う場所をクライテリオンに変更した、というのもあるでしょうが、原作を読むと「本人も言ってるけど、ワトスンってお金ない割に金離れがいいなあ」って思うんですよね。

There I stayed for some time at a private hotel in the Strand, leading a comfortless, meaningless existence, and spending such money as I had, considerably more freely than I ought.

ロンドンで私は初めしばらくのあいだ、ストランドのあるホテルに滞在して、つまらない無意義な生活をただ漫然とおくり、持っていた金をかなり不相応に使い荒していた。



クライテリオンでも立ってたからには飲んだんだろうし、ホルボーンでもスタンフォード君とワイン飲んでる描写がある。
ここで”A Study in Pink"の紙コップコーヒーを思い出すと、21世紀のワーキングプアなめんなよって気持ちになります(ジョンじゃなくて私が)。

【追記:2016.2.27】こちらは、「シャーロック・ホームズの世界」主宰、みっちょん様こと関矢悦子様にいただいた19世紀当時の写真です。

ホウボーンの鉄道陸橋

こちらは、劇中の背景。BDを再生したものを携帯で撮ったので、画像が見えづらくてすみません。
でも、同じ風景ですよね!
ホウボーン

みっちょん様によると、ここは既に「ホルボーン(ホウボーン)」と呼ばれる地区だそうです。
すると、ワトスンとスタンフォードはホルボーン地区で出会って、わざわざピカデリーサーカスまで移動したことになる!
この日のワトスンとスタンフォードの足どりについて、詳しくはみっちょん様の記事をごらんください。地図つきでとってもわかりやすいです。
『忌まわしき花嫁』との関連についても、追記してくださっています!

【追記:2016.2.27】ワトスンとスタンフォード、また左手の男性二人連れの背景の窓ガラスに店名のロゴが見えています。
このことをみっちょん様にお話したところ、「同じように窓ガラスに書かれた文字+ワトスン、という構図の挿絵がある、と教えていただきました。


シドニー・パジェットによる挿絵(『白銀号事件』)ですが、ワトスンの背後に(おそらく喫煙車両を示す)”SMOKING"の文字が見えます。
それにしても、メールで教えていただいた画像を観るだけで「あ、ワトスンだ」とわかってしまったことで、この後出てくる「挿絵画家のせいで、読者に僕だと認識してもらうためだけにヒゲをのばす羽目になった」というワトスンの嘆きに納得しました。刷り込まれた『特徴』のアピール力ってすごい!)
「列車」も「ガラス」も、この後登場しますね。また別項を立てたいと思います。

(原作からの引用は延原謙訳から)
プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

『高名の依頼人』のこと書きましたが、6月24日までグラナダ版がGYAOで無料で観られるそうです。
こちら

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