最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
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記事索引「ブリキの文書箱

一番素晴らしい人

秋の大型連休、久々に録画を観返してみて、鑑賞メモから記事にするのを忘れているネタをいくつか見つけました。
(他の話題のついでに出したり、コメント欄でご指摘いただいて『それでよし』としてしまっているものもあるので、かぶっていたら申し訳ありません。)

"Look, I find it difficult. I find it difficult, this sort of stuff."
"I know."
"You were the best and the wisest man that I have ever known.Yes, of course I forgive you."
「苦手なんだよ、こういうのは」
「わかってる」
「君は、誰よりも素晴らしくて賢い人間だ。許すに決まってる」(拙訳)



爆弾を詰め込まれた地下鉄車両で、狼狽したジョンが思わず本音を吐露してしまう場面。
これは、「最後の事件」の結びから。

Of their terrible chief few details came out during the proceedings, and if I have now been compelled to make a clear statement of his career, it is due to those injudicious champions who have endeavoured to clear his memory by attacks upon him whom I shall ever regard as the best and the wisest man whom I have ever known.
首領モリアティのことは、裁判にもほとんど出てこなかったが、ここにその経歴をはっきり書きしるさざるを得なかったゆえんは、私が生涯にもっとも愛しかつ尊敬した一人物にたいして不当の攻撃を加え、もってモリアティへの記憶を新たにせんとつとめる浅薄な輩に報いんがためである。



「最後の事件」の結びが怒ってる感じなのは、この短編が、モリアティ教授を弁護する文書を発表したモリアティ大佐(教授の兄弟)への反論として世に出されたものだからです。その一件がなければ、ホームズの死の経緯はワトスン一人の胸にしまわれているはずでした。
時系列で言うと、「冒険」「思い出」所収の短編群と長編「バスカヴィル家の犬」は、ホームズがライヘンバッハの滝で「死んで」から続々と発表されたことになります。
開業医であり、一家の長でもあったワトスンはとんでもなくハードな生活を送ってたことになりますが、ホームズの活躍を作品にして、発表することがワトスンの追悼であり、復讐であったのだと思います。ホームズに次いでメアリも亡くした後は、絶望を遠ざける唯一の手段でもあったのでしょう。
その流れに沿うためなのか、延原訳では「最も良い、賢い男」ではなく、「私がもっとも愛しかつ尊敬した一人物」とワトスンの主観が強調されています。

現代版では、ジョンの結婚式のスピーチでシャーロックが似た言葉をジョンに返すのが、いいなあと思います。

過去記事:「シャーロックのスピーチ

同時に、ジョンがベストマン(結婚式の付き添い役)を頼むが、シャーロックは意味を取り違えてよくわからない男を推薦する、というくだりにもつながるはずなのですが(過去記事:『最高の男とは』)、何でもマインドパレスに入れるシャーロックが、この言葉は忘れてるということになる。
撮影順とか、いわゆる大人の事情のせいかもしれないのですが、褒められることに敏感なシャーロックがジョンのこの言葉を忘れているのだとしたら、自己評価に偏りがあるんだなあ、と思ってしまう。第3シリーズを通して描写される、マイクロフトの「お前は馬鹿な子だ」という刷り込みと無関係ではないのでしょうね。第3シリーズでは、徹底してシャーロックの内面を掘り下げてるんですね。

ところで、モリアティに兄弟がいたという話は、「恐怖の谷」にも出てきます。

(前略)弟はこの国の西部地方のどこかで駅長をしている始末、(後略)



名前がかぶってたりするので、多少捻じ曲げてる(実在の人物に配慮して、名前などを変えてる?)印象もあるのですが、ワトスンの書いたことを素直に受け取れば、モリアティ兄弟は数学の教授、軍人、駅長の3人がいることになります。(グールド説ではホームズ兄弟も3人で、対称になってる!)

このことから、"His Last Vow"ラストで蘇ったジムの正体は彼の兄弟ではないか、という説も出ているそうですね。
そっくりの姿で蘇ったといっても、今のところテレビジャックの映像だけなので全くの他人の犯行である可能性もありますが、"The Empty Hearse"を介して鉄道というモチーフで繋がってるとしたら、駅長さんのモリアティが黒幕のモデルなのかもしれません。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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『パブ・シャーロック・ホームズの帰還』トークショー

kanban

今夏も行ってまいりました。早川書房「カフェ・クリスティ」の名物イベント、『パブ・シャーロック・ホームズ』!
2年目の今年は、装いも新たに『パブ・シャーロック・ホームズの帰還』となってます。(来年はどんなタイトルになるんでしょう。続いてほしい!)

昨年もお邪魔してとても楽しい時間を過ごしたのですが、日暮雅通先生、北原尚彦先生のトークイベントには参加できず涙を飲みました。今年は公式サイトを執拗にチェックして、どうにか滑り込みましたよ……!
同じく申し込まれていた「キカクブ日誌」YOKOさんとご一緒でき、今年はついてる私です!

マーティン・フリーマンの来日」から進歩がなくて恐縮ですが、例によってろくな写真がないのでYOKOさんのブログで素敵な店内写真をご覧ください。
「いざとなるとお前本当図々しいよな……」と友人の間で物議を醸した、ホームズコスの堺先生とのツーショット写真は私だけの潮騒のメモリーですから!載せないよ!(←友人たちへの私信)

さて、既にさまざまな方がご紹介されているとは思いますが、来店を検討されている方の背中を押すために
『パブ・シャーロック・ホームズの帰還・ここが凄い!』ポイントをいくつか。

★(BBC現代版)シャーロック、ジョン、マイクロフト、ジムがいる!
等身大(?)パネルがあります。ショーウィンドーの中などさまざまな場所に配置されてますが、スタッフの皆さんはとても気さくで優しいので、あまりお忙しくない時なら撮影もさせてくれると思います。YOKOさんと私も、カンバーバッチさんを囲んでの記念写真を撮っていただきました。わーい!

★歴代映像化・舞台化作品のポスター特集がすごい!
壁一面にびっちり貼られてます。先生方が作品に言及されるたびに、その場にいる全員がそちらに顔を向けて該当作品を探すんですが、ホームズ通の皆さんの眼力をもってしてもすぐには見つからないほどの充実ぶり。("The Seven-Per-Cent Solution"、最後までみつからなかった……) 最近ファンになられた方からかなり知識のある方まで楽しめるのではないでしょうか。これを見るためだけでも、訪れる価値があると思いますよ~!

★ホームズにちなんだカクテルや料理が楽しめる!
昨年よりも更にメニューが充実しているようです。
皆の妄想実現メニュー「エッグ・ベネディクト・カンバーバッチ風」、ニンジンを使った「赤毛連盟サラダ」、そう来たか~!の「オレンジの種五つ」、ジョン結婚前夜の思い出「メスシリンダービール」などなど、BBC現代版ファンにも正典ファンにも嬉しいメニューばかり。お味にも定評があります!
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これは多分、この夜の特別メニュー!トークに夢中でもぱくっと食べられるフィンガーフード中心なのがうれしい。真ん中の特製クッキーは二種類ありました。

他にも、ホームズ関連の書籍の販売や、特製コースターが当たるホームズ・クイズ(難しい…)など、シャーロキアンを幸せにする企画満載。
その一環として行われたのが日暮雅通先生、堺三保先生のトークショーです。テーマは「映像化作品に見るシャーロック・ホームズ」。

両先生は昨年の「ユリイカ・ホームズ特集号」にも寄稿なさっていました。個人的なことを書かせていただきますと、日暮先生の訳されたホームズパスティーシュはいくつも読んでおり、堺先生の訳されたアメコミの本も持っております。
自宅の本棚の中にある本を書かれた先生方が、手の届く場所で話している!しかも(北原先生も含めて)すごく仲良しそうに(←ここ、ときめきポイント)!私にとっては、SHERLOCK CONみたいにいちいち追加料金払ってもいいくらいの非常事態ですよ!!

高名なシャーロッキアンでパブ全体の監修もなさっている日暮先生が、映画やドラマにお詳しい堺先生に話題をふる、という形式で、さまざまな「ホームズ」映像化作品に関するお話がありました。心に残った話題をいくつか挙げると、

★アメリカではイギリスの番組はほとんど知られていなかった。タイミング良く『SHERLOCK』放映前にBBCアメリカができ、ブームに火をつけた。

そういえば、第1シリーズがアメリカで放送された時のファンの熱狂ぶりはすごかった!(カンバーバッチやモファットさん、ゲイティスさんがファンとチャットとかやってた!)作品への人気はもともとあったのでしょうが、「英国ドラマファンの夜明けじゃ!」みたいな空気もあったのかもしれません。

★ホームズとワトスンの描かれ方の変遷。
ドイルが描かなかった部分をどう描くか。
70~80年代にはさまざまな「ひねった」キャラクターが描かれた。変化球の氾濫を経て、「正統派決定版」グラナダ版の登場。
「新御三家」(ガイ・リッチー版、BBC現代版、『エレメンタリー』)では、互いの欠点を補い依存しあう「バディもの」として描かれている。これには、現代のドラマ制作のセオリーが反映されている。

『SHERLOCK』に比べると日本ではちょっと地味な印象のある『エレメンタリー』についてもたくさんお話くださったのが嬉しかったです(ネタバレもあったけど……)。
堺先生は、『エレメンタリー』のホームズとワトスンはいわば男女のブロマンスで、くっつくことはないでしょう、と予想されていました。「現代の問題をいち早く扱っていて、ミステリというよりSFになりつつある」ともおっしゃってました。
私は、「ホームズとワトスン」という名づけがミスリーディングで、このドラマはひねった恋愛ものなんじゃないかな~、と思ってました。
『SHERLOCK』もそうだけど、表向きにはミステリでありつつ、製作者の描きたいものは別にあるのかな。


★最大の敵、モリアーティの描かれ方にも時代の求める要素が反映されている。(原作ではあまりにも後付けキャラで、脚色が必要)
大戦前夜のリッチー版では「武器商人」として描かれる。BBC現代版では、シャーロックの鏡像のような存在。『エレメンタリー』は……

★『The Private Life of Sherlock Holmes』で置き去りにされたセットが、あの怪物の目撃譚に一役買ってる⁉という衝撃的なお話。


うんうん!と皆が熱く頷くお話からえー!?と悲鳴が上がるようなお話までみっちりと語られ、あっという間の二時間でした。
新旧ホームズファン、老若男女の静かな熱気が凄かったです。あっという間過ぎてかないませんでしたが、同席した方々とももっとお話したかったです。
音楽やスポーツなど、他のジャンルにも言えることでしょうが、好きなことをどこまでも聞いたり語ったりできる機会って、ネット上ではともかく、実生活ではそんなにないですよね。マニアックだという自覚がある人ほど、自制してしまうのではないでしょうか。
YOKOさんも、ブログで「ホームズ愛をぶつける相手がいなかった」とおっしゃっていましたが、私も「東京にシャーロック・ホームズの話聞きに行くんで、この日夏休みください」とは言いづらい。全然悪いことではないですが、「東京ドーム戦観に行くんで……」という理由に比べ、いまいち世間の共感を得にくい気がします。
読書って一人でやる趣味なので、他人様が本を読もうが読むまいが私にはまったく関係ないんですが、こういう時「マイナーな趣味なんだな……」と痛感します。

でも、野球好きが球場帰りに居酒屋で一杯やるように、ゲーム好きがアキバでオフ会やるように、本好きだって「好き」を誰かと共有する場が欲しい人もいるわけですよ!
本好きだって、動機があれば外出するし外食しますよ!経済回しますよ!
だから「本を作る会社」でこういうイベントをやってくださるのって、すごくすごく意義があることなんじゃないでしょうか。
子どもの本離れを憂える大人は多いですが、まず大人が本を楽しみきっているのか。野球好きの父ちゃんが、娘や息子を茶の間で、庭で、球場で巻き込むように、大人が読書を楽しむ姿を子どもに見せられているのか。
ひとりで密かに楽しむのも、もちろんいい。でも、本の世界は、それだけで終わるものじゃない。
酔狂でちょっとおバカで、でも最高にかっこいい大人たちの空間で、そんな風に胸を熱くした夜でした。

これは書き留めておきたいんですが、シャーロッキアンの先生方やハヤカワ書房の方々、とっても優しいんですよ……
「サービスがいい」じゃなくて、「優しい」。
「商売だからお客さんには感じよく」ではなく、私たちも楽しむからこの場を楽しんでいってね~、というような、肩の力の抜けた、文化祭っぽい親しみを感じたのは、私が調子に乗りすぎてたせいでしょうか……
そういう意味で敷居高く感じていらっしゃる方は、ぜひ次の機会には参加してみて欲しいです。チキンの私も、帰る頃にはテンション最高潮でしたから!

日暮先生・堺先生の談話の内容は「ミステリマガジン」に掲載されるそうですよ!当日足を運べなかった皆様も、ぜひ。
この先もまだまだ、北原尚彦先生がご著書にサインしてくださる日や、ルパン対ホームズに特化したイベントもあるようですよ!私は日暮先生の映像解説イベントにエントリーしました。何とかうまいこと仕事をサボるべく、完全犯罪に向けて日々工作に勤しんでます……北原先生ナイトにも行きたかった……イベントは平日開催ばかりで、地方民はツライ。

さて、日暮先生の貴重なホームズコレクションが展示やモニター映像で楽しめるのもこのパブの嬉しいところです。
遠方にお住まいだったり御多忙だったりと、早川書房に足を運べない方もいらっしゃると思いますので、
ここで私めの「細か過ぎて伝わらないSHERLOCKグッズコレクション」を御紹介致します。

1 ジョン愛用(?)のエコバッグ
bag

"The Blind Banker"冒頭でジョンがセルフレジと戦っていた、スーパーマーケットTESCO(脚本で確認済み)のエコバッグ。
ジョンが同じものを使っているという証拠は皆無ですが、以前の検証の結果、当時221Bから一番近いスーパーはTESCOだったので、可能性はなきにしもあらず。
丈夫で便利すぎて普通に買い物に使っちゃってるもので、リアルな感じに汚れてて申し訳ないです……

2.ベネディクトとマーティンのマグ
mugs

第2シリーズ撮影中のオフショットとして公開された、ベネディクトとマーティンの名前が貼られた色違いマグ。
(Benedict Martin Mugsで検索するとまだ出てきますぜ。tumblrとかで……)
上の写真はもちろん捏造です。実際はベネディクト→黒 、マーティン→紺のボーダーのマグです。私のはグレーと紺。
引っ越しにあたり、似たものを探して雑貨屋をさまよっていたら、見かねた友人がお祝いにくれました。名前は今貼りました。

3.ボーイズ似の観葉植物
plants

なんか似てる、という理由だけで購入。
旅行から帰ってきたら、葉がボーボーに伸びた上で枯れていて、「大きい内田裕也と小さい内田裕也」に進化してた。

……というわけで、パブ21世紀探偵のグッズコレクション、楽しんでいただけましたでしょうか。
今年の『パブ・シャーロック・ホームズの帰還』は9月30日まで。意地でも本物観るぞと思われた方は、神田にGO!です。
プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

『高名の依頼人』のこと書きましたが、6月24日までグラナダ版がGYAOで無料で観られるそうです。
こちら

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