最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
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クリスマススペシャルのトレーラー

『SHERLOCK』ファンの皆さんはとうにご存知かと思いますが、第4シリーズの前にスペシャル版が放映されるそうです。
英国で放映されるだけではなく、世界の劇場で上映されるとか!

「SHERLOCK(シャーロック)」新作、劇場公開へ!雪舞う初映像も公開(シネマトゥデイ)

リンク先は映画情報サイト「シネマトゥデイ」なんですが、アップされたのが関東初の真夏日だったせいか、カンバーバッチさん浴衣特集へのリンクを載せてくれてるところに限りない優しさを感じます……(せっかくのヴィクトリアン衣装に『くそ暑い格好しやがって』と八つ当たりしてしまうところでした……)

「限定された」劇場というところが気になるのですが、日本はどうなるんでしょうね。
クリスマス視聴が無理でも、お正月休みまでにDVDが届いたら嬉しいなあ。

スペシャルの舞台は原作と同じ、ヴィクトリア朝ロンドン。
BBCが公開したトレイラーがこちらです。



最初の、"BAKER STREET"の看板から路上の風景に移動するところと音楽、わかりやす~くグラナダ版に似せてる!
ファンとしては、これだけで嬉しくなってしまいます。
【追記2 2016.1.30】早川書房「カフェ・クリスティ」でのトークイベントで、日暮雅通先生が「ビリー・ワイルダー監督の映画のオープニングに似ている」とおっしゃっていました。

そして、これまたわかりやすいホームズ・ルックで馬車から降りてくるシャーロック。吸い口の曲がったキャラバッシュ・パイプはウィリアム・ジレットの舞台から使われているそうです。
御者にお礼を言っています。英語力に不安があって断定できないのですが、喋り方をちょっとジェレミー・ブレットに寄せてる?なんか、いつもより声に張りがある気がする……

【追記:2015.7.20】RMさんによると、ハドスンさんに向ける一瞬の笑みが、ブレットホームズの表情の動きによく似ているそうです。ベネディクト・カンバーバッチは、かねてからジェレミー・ブレットの表情の動きに注目していたとのこと。
RMさんの記事はこちらです!→Jeremyのことが知りたくて~「ホームズの瞬間的な笑み」


ヴィクトリアン風ドレスに身を包んだハドスン夫人が出迎えます。(221Bのドアがまだピカピカなの、芸が細かいなあ)

"Mr Holmes! I do wish you’d let me know when you are planning to come home."
" I hardly knew myself, Mrs Hudson. That’s the trouble with dismembered country squires – they’re notoriously difficult to schedule."
「ホームズ先生!お帰りになるなら、前もって知らせていただきたいわ」
「私にもわからなかったのですよ、ハドスンさん。バラバラにされた地方の大地主というのは、予定通りに事を運んでくれないものでね。」



事件の元ネタは「ライゲートの大地主(The Reigate Squires)」かしら。
この時代のハドスンさんはホームズとワトスンの食事の支度も仕事だったと思います(何だかんだで現代版でも結構やってあげてますが)。部屋にお湯を運んだり、掃除をしたり、こまごまとした世話もしていたはず。
当時の家事は、かまどに火を入れたり、お湯を沸かす段階から大変だったので、「帰ってくるのかこないのか」「家で食事をとるのかとらないのか」はハドスンさんにとって切実な問題だったと思います。メイドさんの存在も確認されてますが(『緋色の研究』)、一人一人の労働負担は今とは大違い。
不規則な生活を送るホームズと家主・ハドスンさんのバトルは、原作でも垣間見ることができます。

シャーロック・ホームズの下宿のおかみハドスン夫人は、辛抱づよい女である。二階には時をえらばず妙な人たちが、時には好ましからざる人物が押しかけるばかりでなく、この平凡でない下宿人がまた変わり者で、日常がおそろしく不規則ときているのだから、まったくたまったもんじゃないだろう。
話にならないほどだらしがないうえに、とんでもない時刻に音楽に熱中するし、時には室内でピストルの射撃練習をしたり、気味のわるいだけならいいが、どうかするとたまらない悪臭をはなつ実験はやるし、彼のまわりには乱暴で危険な空気がつきものなのだから、これはロンドンでも最悪の下宿人というべきだろう。(『瀕死の探偵』)



「はい、いま事件で一生懸命なんです。お体が心配ですよ。顔いろはだんだん悪くなるし、やつれてくるばかりで、何も召しあがりません。『お食事はいつなさいます?』ってハドスン夫人が尋いたら、『あさっての七時半に』とこうなんですよ。ワトスン先生は事件に熱中している時の先生のやり方はごぞんじですね」(『マザリンの宝石』)



出張帰りらしいシャーロックとジョン(今回は『ホームズとワトスン』と書くべきなんでしょうが、混乱するのでそのままで……)の荷物を運ぶのは、ジョンの結婚式で「ページボーイ 」を務めたアーチーくん。
今回はまんまペイジですね!可愛い!さすがにここでビリー・ウィギンズが出てきたらドン引きですよね!
この少年給仕の役は、ジレットの舞台では子役時代のチャールズ・チャップリンが演じていたそうですよ。

探偵の仕事に興味津々のアーチー(ビリー?)くん。

"What's in there?"
"Never mind."
「それ、何が入っているんですか?」
「気にするな」



ジョンの荷物に何が入っているかは、まあだいたい察しが……

"Did you catch a murderer, Mr Holmes?"
" Caught the murderer; still looking for the legs. Think we’ll call it a draw."
「殺人犯を捕まえましたか、ホームズ先生?」
「捕まえた。脚はまだだがね。引き分けというところかな」



二人の顔にも注目してみましょう。
NEWS:シャーロック、タカ派(←まだ言ってる)。
個人的に、ベネディクト・カンバーバッチはオールバックが一番色っぽいと思います……もう今からどっきどきです。
ジョンのひげは「カイゼル髭」で、両端を跳ね上げて固めてあります。第3シリーズ冒頭のひげとはちょっと違いますね。

玄関に入ってからは、ジョンの出版した小説が総攻撃に……

"Well, I never say anything, do I? According to you, I just show people up the stairs and serve you breakfasts."
「私は一言も喋ってないじゃありませんか?あなたが書く私は、お客様を案内したり朝食を出したりするだけ!」
" I’m your landlady, not a plot device."
「私は大家よ。小道具じゃありません!」



決め台詞出ちゃった……原作のハドスンさんがこんな風に考えてたなんて、思わなかったなあ。でも、よく考えればあり得る話ですよね。ハドスン夫人が「空家の冒険」でいきなりあの役を任されたと考えるほうが無理がある。普段から、家事だけでなく捜査においてもさまざまな活躍があったのかもしれません。
そして、どさくさに紛れてシャーロックまで

" Don’t feel singled out, Mrs Hudson. I’m hardly in the dog one."
「あなただけじゃないですよ、ハドスンさん。僕だって犬のやつにはほとんど出てない」


お前は自業自得だろ!(犬のやつ=『バスカヴィル家の犬』で、ホームズは身を隠してワトスンに単独捜査をさせます)

口喧嘩、シドニー・パジェットにまで飛び火。

"You make the room so drab and dingy."
" Oh, blame it on the illustrator. He’s out of control. I’ve had to grow this moustache just so people’ll recognize me."
「部屋も暗くて汚くて……」
「それは挿絵画家のせいですよ!あいつ、ほんとに勝手だ。あの絵のせいで、僕は髭をのばす羽目になったんですから!」




確かに部屋は若干黴臭そうな感じがしますが、まあ白黒だから……映画化を、映画化を待ってあげてハドスンさん……!
先にリンクを貼ったシドニー・パジェットのwikiに、彼の絵の「暗さ」への言及がありますね。

ホームズものの人気が上がるにつれ、パジェットのイラストはより大きく、より精緻になって行った。「最後の事件」が1983年に始まった時には、「ストランド」誌は一ページ全面を使ったイラストを呼び物とするようになっていた(同誌の他の作品では、イラストはもっと小さいのが普通だった)。その頃では物語の厳しいムードを受けてパジェットの単彩画法を使ったイラストも暗い調子を帯びるようになっていた。パジェットによる深い、翳のあるイラストは後のアメリカの探偵映画やフィルム・ノワールにおそらく影響を与えた。また数々のホームズ映画には大きな影響を与えた。



それにしてもワトスンの口髭が挿絵先行だったとは、ちょっとした新説じゃないですか。

「君は口ひげをのばしたので、ちょっとわかりませんでしたよ。といってもどうか悪くとらないでください。」(『海軍条約文書事件』)


という幼馴染の「ビミョーな」リアクションが心にひっかかっていた私ですが、口髭は軍人時代の名残かと思ってました。
(関連記事:『ジョンのひげ』)
でも、考えてみればホームズのイメージはパジェットによって決められてしまったわけで(ドイル自身はとがった鼻のインディアンの様な風貌を想像していたし、鹿撃ち帽にインヴァネスというスタイルもパジェットが考えたものだそうです)、もしホームズやワトスン、ハドスンさんがパジェットの絵を見たら、こんな反応をしたのかもしれませんね。

ドタバタのオープニングですが、たった1分弱の動画でもこんなに楽しいとは!
本当に、12月が楽しみです。
群馬の映画館が「世界の限定された劇場」に入りますように……(入りません)


(原作からの引用は延原謙訳。トレイラーからの引用は拙訳です。表記や訳の間違いがありましたら、教えていただければ幸いです)
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最先端の男

Portable Appledore. How does it work? Built-in flash drive? 4G wireless?
「ポータブル・アプルドア。どういう仕掛けだ?フラッシュドライブ内臓か?4Gワイヤレス?」(拙訳)



マグヌッセンが眼鏡から脅迫相手の情報を得ている、と読んだシャーロック。しかし、眼鏡は普通のものでした。

「あんまり時代おくれになるまいとしすぎると、かえって損するよ。いつも時代に先行しているので、僕たちが罰をうけたんだ。」(恐怖の谷)



フレームが細くいかにも華奢で、そんな細工はできなそうな眼鏡なので、シャーロックの推理にはちょっと無理がある気がしました。(私が知らないだけで、技術的には可能なのかもしれませんが……)
でも、そういう発想が出てくるというのは、シャーロックが最先端機器に興味を持っている証拠ですよね。

スマートフォンで情報を検索したり、IP電話で現場のジョンに指示を出したりと、現代のガジェットを使いこなしているシャーロックですが、ホームズも、蓄音機(『マザリンの宝石』)や電話(『隠居絵具師』)など、当時の新しい機器を活用しています。
参照:過去記事『演奏の録音』『遠隔捜査

上記の引用は、『恐怖の谷』から。
この時、ホームズとワトスンは年鑑を利用した暗号を解いていました("The Blind Banker"の元ネタですね)。
この日は一月七日で、二人は前年末に出版されたばかりの新しい年鑑を見ていました。暗号を送った人物は前年版を使っていたことが、引用したセリフにつながるわけです。
「年鑑」とは、

ある特定の地域や分野について、最新のできごと、動向や統計などを内容とし、毎年あるいは1、2年おきに刊行される出版物。
「コトバンク」日本大百科全書(ニッポニカ)の解説より


ホームズが参照したのはホイッティカー年鑑
英国の出版業者ジョゼフ・ホイッティカーが1868年に創刊した、政治・経済・文化関係を扱う年鑑です。「普遍的に使用されている」というホームズの口ぶりからすると、かなりポピュラーなものだったようです。
この時は暗号の材料として使用されましたが、年鑑はホームズにとって、ちょうどシャーロックのスマートフォンのようなものだったのでしょう。
もちろん、新聞も活用しています。

といって彼は、ロンドン中のいろんな新聞から切りぬいて日付けの順にはりこんだ大きなファイルをとりおろして、ページを繰った。
「どうだい、まるでうめき声と哀訴と嘆願のコーラスだね。それぞれ事情のある事件でごったがえしている。異常事の研究者にとっては、見のがしがたい格好の猟場だよ。(後略・『赤い輪』)



情報を求める時は、自ら広告を出すことも。

「この広告を読んでみたまえ。あのあとですぐに、全市の新聞に僕が送ったものだがね」
そういって彼が夕刊を投げてよこしたので、示されたところを見ると、拾得物広告欄の最初につぎのような広告が出ていた。

 今朝ブリクストン通りのホワイト・ハート酒場とホランド・グローヴの中間の路上にて、金製カマボコ型結婚指輪一個拾得す。今夕八時より九時までにベーカー街二二一番Bワトスン博士まで申し出られたし。 (『緋色の研究』)



アプルドアの元ネタは別項に譲りますが、ミルヴァートンが恐喝に使う証拠の手紙などは、金庫に保管されていました。
原作のホームズは、自作のアーカイブで情報を整理しています。

シャーロック・ホームズは暖炉の片側に陣どって、むっつりと、例の犯罪記録に索引をつけているし、(後略・『オレンジの種五つ』)


「(前略)ちょっとその本だなから、僕編集の伝記便覧をとってくれたまえ」
彼はいすの背によりかかって、葉巻の煙を盛んにはきながら、のらくらとページをくって、
「 Mの部は秀逸ぞろいだな。モリアティは全巻を通じての大ものだが、そのほか毒殺業者のモルガンがあるし、ここには思い出しても胸の悪くなるメリデューがあるし、マシューズがいる。こいつはチャリング・クロス駅の待合室で、僕の左の犬歯をたたき折った奴だ。それから、ああ、ここに今夜の先生がいた」(『空き家の冒険』)



電報や電話、年鑑、新聞、索引帳など、原作のホームズが活用していたものがインターネットで賄えてしまうのが21世紀版の大きな特徴ですね。インターネットの普及以前でも、それなりに「現代版」は作れたはずですが、少なくとも捜査の場面は、原作とそれほど変わらない印象だったんじゃないでしょうか。
ネットにおける情報収集や拡散の速さが、シャーロックの失墜や復活と密接に関わっているのもうまいなあ、と思います。

その一方で、シャーロックを演じているベネディクト・カンバーバッチが、新聞の社交欄に広告を出すという「昔ながらの」形で結婚の報告を行ったというニュースはとても興味深かったです。
原作の時代と変わらない伝統や風景と、現代ならではの技術。
その対比をくっきりと描けるロンドンという舞台が、『SHERLOCK』という作品の成功要因のひとつなのでしょうね。

(原作からの引用はすべて延原謙訳から。『アプルドア』『ホイッティカー』の表記も延原訳を参考にしました)
プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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