最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
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シャーロックの家族

"A Study in Pink"でマイクロフトが言っていた、「ホームズ家のクリスマスディナー」をまさか観ることができるとは!(実際にディナーが始まる前にあんなことになってしまいましたが……お母さんがお料理してましたね。クリームのついたケーキと、焼き菓子らしきものと、あと何だろう。マイクロフトのパソコンの上に置かれてたジャガイモは何になったのかな?)

現代版ホームズ家は、郊外にある大きなおうち。凹凸のない箱のようなシンプルな形ですが、何というスタイルの建築なのか、調べたけれどイマイチ自信がないので、ご教示いただけたらありがたいです……

赤い壁が印象的ですね。余談ですが、赤いおうちというと、ミルンの「赤い館の秘密」を思い出します。ミルンもホームズのパスティーシュを書いていますね。

シャーロック・ホームズの栄冠 (論創海外ミステリ)シャーロック・ホームズの栄冠 (論創海外ミステリ)
(2007/01)
A.A.ミルン

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原作のホームズがどんな家で育ったかはわからないのですが、「ギリシャ語通訳」で「僕の先祖というのは代々いなかの大地主だったのだが、みなその階級にふさわしい大同小異の生活をしていたらしい」と語っていますから、シャーロックと同じように郊外の大きなおうちで育った可能性は高いでしょう。ホームズの時代から現代に至るまでの間、多くの家が土地を売却したり、使用人を減らしたりとスリム化しているようですから、原作のホームズ家はもっと大きかったんでしょうね。お父さん自ら薪を運んだりしているので、現代版では夫婦ふたりで暮らしているのかな。管理が大変そう。

「田舎の邸宅」について、ホームズは、「椈屋敷」でこんな意見を述べています。

「君はこういうことに気がついているかい。僕のような傾向をもつ男には、何を見ても自分の専門にむすびつけて考えないじゃいられないという精神的苦痛のあることを?君はこうした農家の点々としている景色を見て、美しいと感嘆している。だが僕にとっては、こういう景色を見ておこる感じは、家のちりぢりにはなれていることと、したがって人知れず罪悪が行われるだろうということだけなんだ」
「驚いたな。このふるい農家が点在するのを見て犯罪を連想するやつがあるもんか!」
「ところが僕にはいつでも一種の恐怖なんだ。僕は自分の経験に照らして信じているが、美しく平和そうな田園というやつは、ロンドンのどんなに卑しい裏町にもまして、怖るべき悪の秘密をひめているものだよ」



ですから、ホームズの子ども時代にはなんとなく暗いイメージがつきまといます。パスティーシュのネタバレはあまりしたくないのですが、「シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険」なんてすごく説得力がある。

シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険―ワトスン博士の未発表手記による (扶桑社ミステリー)シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険―ワトスン博士の未発表手記による (扶桑社ミステリー)
(1988/05)
ニコラス・メイヤー

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"SHERLOCK"ではそんな不穏なムードを逆手にとって、温かい家庭を見せてくれましたが、まだ油断できない……と思ってしまいます。少なくとも、"The Sign of Three"でマイクロフトがその存在を匂わせ、"His Last Vow"でシャーロック幼少期の愛犬と判明した「赤ひげ(Redbeard)」に関しては、つらい思い出があるようです。
原作のホームズもたいへん犬が好きなようです。「赤ひげ」の元ネタについては、また別に項を立てたいと思います。

ホームズの、マイクロフト以外の家族についてはあまり原作で語られないので、どうしてもパスティーシュのお話が多くなってしまいます。私の拙い筆でご紹介するよりも直接お読みいただきたい名作ばかりですが、シャーロックのフルネームはグールド版からとられているので(関連記事:『ウィリアムとヘイミッシュ』)、仮にグールド版をモデルにしているとして、未読の方にちらっとご紹介します。


シャーロック・ホームズ―ガス燈に浮かぶその生涯 (河出文庫)シャーロック・ホームズ―ガス燈に浮かぶその生涯 (河出文庫)
(1987/06)
小林 司、W・S・ベアリング=グールド 他

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この作品は、ホームズ研究家であるグールドによる「伝記」の体裁をとっています。
物語は、若き騎兵隊中尉サイガー・ホームズが、怪我のため帰国して「マイクロフト農場」を相続するところから始まります。彼はヴァイオレット・シェリンフォードと結婚。ヴァイオレットは、高名な軍人、博物学者、探検家である父と、フランス人画家ヴェルネの血をひく母を持っていました。

(リンク先にもあるように、ヴェルネは実在の人物です。『ギリシャ語通訳』でホームズは『祖母がヴェルネの姉妹』と言っていますが、著名な画家を複数輩出したヴェルネ家の、どのヴェルネかは書かれていません。
ヴァイオレットの母はエミール・ジャン・オラス・ヴェルネの妹、ということになっています。史実ではエミール・ヴェルネの娘の一人ルイーズは画家のポール・ドラローシュと結婚しているのですが、ドラローシュはルイーズにぞっこんで、彼女の頭部をもとにした作品「天使の頭部」を出展したとのこと。年をとっても妻に夢中な現代版ホームズ父を思い出します。)

1845年、長男のシェリンフォード・ホームズが誕生。続いて1847年に次男のマイクロフト、その7年後に三男のシャーロックが生まれます。シャーロックは母親似だったとのこと。ここも現代版に引用されてますね。
"His Last Vow"でスモールウッド議員たちがシャーロックの処遇を話し合っていた時、マイクロフトがこんなことを口にしました。

"If this is some expression of familial sentiment..."
"Don't be absurd..I am not given to outbursts of brotherly compassion. You know what happened to the other one."
「もしそれが、家族愛からくる感傷の発露だとしたら……」
「馬鹿なことを。兄弟愛で言っているのではありません。もう一人に何が起きたか知っているでしょう」(拙訳)



The other one は「もう一人の兄弟」とも受け取れますが、それ以外の別の何かとも取れる表現です。
だからまだ確定はできないのですが、グールドの伝記を頭において観ているファンはどうしても「もう一人の兄弟」である長男シェリンフォードを思い出してしまいます。

シャーロックが4歳の時、一家は馬車で放浪の旅に出ます。大地主におさまったサイガーですが、冒険心がうずくのを止められなかったようです。これはちょっと、ジョンみたいですね。
ヨーロッパのさまざまな地に居を構えながらの気ままな暮らしは4年も続きます。ホームズ兄弟の広い見識の素地はここで培われた、ということになっています。このくだりは、「最後の事件」や"Many Happy Returns"でのヨーロッパ大移動につながっているかもしれません。
家族がモンペリエで住んだ家には、「シャーロック兄弟が大喜びをした金魚のいる小さな池があった」(小林司・東山あかね訳)という記述もあり、"The Empty Hearse"でのマイクロフトとシャーロックの会話を思い出します。

"I'm living in a world of goldfish."
「私は金魚たちの世界に住んでいる」
(中略)
"I thought perhaps you might have found yourself a......goldfish."
「君も気づくんじゃないかと思ってたよ、君もまた……金魚だと」(拙訳)



学校に入学した後、シャーロックの健康が思わしくなく、療養のため両親と末っ子だけでもう一度旅立つことになります。旅暮らしの中でシャーロックは、父からはフェンシングやボクシングを、母からは学問の基礎を学びます。
両親にとって手のかかる末っ子は可愛いものでしょうが、その雰囲気も"SHERLOCK"での描写に受け継がれているような気がします。グールドの伝記にはシャーロック命名の由来も出てきますが、長男・次男には先祖伝来の名前がつけられたのに対して、三男には父母それぞれの個人的な思い入れがある名がつけられてるんですね。

父の尊敬するウィリアム・シャーロック(神学者、作家)(リンク先は英語wiki)
母が愛した作家・ウォルター・スコット卿

"A Study in Pink"で「ママを怒らせた(悲しませた?)」なんて言ってたマイクロフトは、あんな態度でも実はお母さんが大好きなんじゃないかと私は思っているのですが、シャーロックの退院祝いの準備をするお母さんへのあの絡み方は、何かと特別扱いされがちな弟に嫉妬するお兄ちゃんが、自分への愛情を測っている姿がそのまま大人になったみたいですよね。

現実の話、原作の話、パスティーシュの話、そして"SHERLOCK"の話の4つが交錯してかなり読みにくい記事になってしまい、申し訳ありません。
今後もシャーロックの家族が登場するとしたら、これらの作品、または別のパスティーシュの影響が見られるかもしれませんね。できるだけ読んだり観たりして、準備しておきたいと思います。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

『高名の依頼人』のこと書きましたが、6月24日までグラナダ版がGYAOで無料で観られるそうです。
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