最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
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記事索引「ブリキの文書箱

ジョンの発見

ものすごく久しぶりに第1シーズンの記事を書くので、以前書いたことをすっかり忘れて同じネタを書いてないか、若干心配ですが……

先日、別記事を書くために、これまた久しぶりに「白銀号事件」を読み返しました。
私だけかもしれませんが、「名作はかえってあまり読み返さない法則」があるのです。もう展開が頭に入っている、と思い込んでいるせいかもしれませんが、私の頭でそんなにしっかり覚えているはずもなく、「これ、ひょっとして元ネタかも……」と思える場面がぽろぽろと出てきたので、書き留めておこうと思います。

シャーロックよりも早く、ジョンが壁に書かれた暗号を発見する場面。
ワトスンは観察力不足をホームズに責められている場面が多いので、「ぼんやりした人」という印象を持たれがちですが、意外と目ざとい一面もあり、ホームズより早く真実に到達することもあります。「恐怖の谷」冒頭で、暗号に使われた本を特定するのも速かったですね。「隠居絵具師」では、自分の学生時代の番号と同じだったという理由で、大事な情報を逃さず覚えていたこともありました。
「白銀号事件」では、「足跡」を見つけます。

そして彼はじっと足跡ばかり見て歩いていたが、私はふと横のほうへ目をやってみると、驚いたことには、少しはなれたところに同じ足跡が、再びケープルトンのほうへ向かっているのを発見した。ホームズにそのことを注意してやると、
「ワトスン君、お手柄だ!おかげでうんとむだ足をふまされるのが助かった。さ、その足跡について進もう」



現代版シャーロックも原作のホームズも観察力に溢れていますが、前に進もうとするあまり、ちょっとしたことを見落とすこともあります。それを相棒のジョンやワトスンがしっかりフォローしているわけですが、原作はワトスン自身の手で書かれているので、自分の「手柄」をあまり書きとめていないのではないかと思います。そういえばジョンも、自分が暗号を見つけたことをブログに書いていませんでしたね。(彼の場合は、暗闇でシャーロックに肩を掴まれたことに触れて、誤解を招きたくなかっただけかもしれませんが……)

ワトスンの話が出たから、この機会に述べておくが、私が今日まで多くのつまらない事件にこの古い友人であり伝記作者でもある男と行動をともにしてきたのは、感傷や気まぐれからではない。ワトスンにはワトスンなりに著しい美点があるからであって、彼は謙譲な性格から、私の実績を誇張して評価するのあまり、自分のことにはあまり思い至らないのである。(『白面の兵士』)



この後ホームズが挙げる「美点」はちょっと変な方向に流れていきますが、「謙譲な性格から、私の実績を誇張して評価するのあまり、自分のことにはあまり思い至らない」という評価は本気なのではないかと思います。ご存知のように、ジョンは何度もシャーロックを助け、シャーロックはそのことについての感謝をジョンの結婚式のスピーチで述べます。(関連記事::『救うということ』)
同じようにワトスンも、彼自身の記録に書かれていないところで今回取り上げたような「お手柄」を立てていることが、十分考えられます。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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(事件の重要なネタバレ)殺人リハーサル

ジョンのブログでは"The Bloody Guardsman "というタイトルだった、衛兵さんが襲われた事件。これは、「白面の兵士("The Adventure of the Blanched Soldier")」から発想されたのかもしれません。
字面も似ていますが、それだけではなく、この事件はワトスンに代わってホームズが書いた設定になっています。ドラマの中でも、ジョンではなくシャーロックによって語られました。
若い兵士絡みの事件というところも同じですね。原作は友人の行方を案じて、現代版は自身のストーカー被害を訴えて、と依頼の内容は異なっているものの、「窓から覗かれる」依頼人、という原作の印象深い場面が再現されています。
また、「白面の兵士」で田舎に引っ込んだきり連絡がとれなくなったエムズオースと、ひたむきに戦友を救おうとするドッドは、どこかショルトーとジョンの関係を思わせます。

ジョンとメアリの結婚式というシチュエーションや、ショルトー、スモールなどのゲストキャラクターの命名、何よりタイトルからして、第3シリーズ2話のメインになる元ネタは「四つの署名」に間違いないはずです。
でも、「白面の兵士」が元ネタの一つに採用されているとすると、シャーロックが一人で会場を去るシーンにじわじわ効いてくるんです、このくだりが……

当時、ワトスンは私を置きざりに結婚していたが、知りあってから後にもさきにも、これがただ一度の自分本位な行動であった。私は一人ぼっちだったのである。



シャーロック!!(号泣)

この事件は、ジョンの結婚式で未遂に終わったショルトー少佐殺害の「リハーサル」となっています。原作でリハーサルが行われた事件といえば「白銀号事件」。
調教師のストレーカーが競走馬の足を傷つけようとしますが、その前に羊を使って「練習」を行います。凶器に使われたのが「非常に細くて鋭い、それでいて曲りにくい刃をもつ」ナイフである点も、現代版スモールの犯行に似ています。
また、シャーロックはスモールを評して"Brilliant, ruthless ,and almost certainly a monomaniac.(明晰で、冷酷で、ほとんど間違いなく偏執狂)"と形容を3つ並べますが、白銀号を拾ったブラウンを"A more perfect compound of the bully, coward, and sneak(あんな高慢で臆病でずるくて、三拍子そろった男 )とホームズが表現するのに、ちょっと似てます。
スモールは「もっと早く殺しておけばよかった」と悔やみますが、車で立ち去りかけていた彼にシャーロックは"You should have driven faster(もっと速く走っておくべきだった)"と繰り返します。この台詞からも、名馬・白銀号を連想しました。

ホームズやワトスンの活躍で、白銀号は無事にレースに出場できましたが、スモールも結局一人も殺さなかったことになりますね。シャーロックをあれだけ手こずらせた賢く周到な犯人ですから、再登場して欲しいなあ、なんて思います。写真も上手だし……

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
【追記:2014.12.20】読み返していたら、鑑賞メモからの書き移し漏れがあったので追記致します!

シャーロックが「写真に写っていない人」に目をつけたのも、やはり「白銀号事件」でのこの会話を思わせます。

「あの晩の、犬の不思議な行動に、ご注意なさるといいでしょう」
「犬は全然なにもしなかったはずですよ」
「そこが不思議な行動だと申すのです」(延原謙訳)

ケイト・ホイットニーの来訪

新婚生活を始めたジョンとメアリ。
ジョンはともかく、友人の多いメアリはご近所の方にも頼られているようで、朝から息子の問題を抱えたケイト・ホイットニーが訪ねてきます。
ほとんど同じ場面が「唇の捩れた男」の冒頭にありますね。

「たいへんおそくにうかがいまして……」といいかけてその婦人は急に自制力を失い、妻のところに駆けよってその首に両手をかけ、その首に両手をかけ、その肩に顔をふせながら、「私、私、困っていますのよ。お願いだから、どうぞ助けて……」とばかり、すすり泣きをはじめてしまった。



原作でケイトの夫・アイザ・ホイットニーが入り浸っていたアヘン窟は、麻薬中毒者の溜まり場になっている空き家に変更されています。ジョンが「旦那さんだっけ?」みたいなことを言うのは元ネタを暗示してるわけですね。
ご近所づきあいにそれほど興味のなさそうなジョンにとっては、アイザックがケイトの夫なのか息子なのかも曖昧なようですが、ジョンが冒険の匂いを嗅ぎつけたことに、メアリは敏感に気づいた様子。

というわけなのであるが、むろんこれにはたった一つしかとるべき手段はなかった。私が彼女について、そこへ行くべきか?しかし、彼女自身が行かなければならぬ理由がどこにあるのだ?アイザ・ホイットニーにとって、私は主治医ではないか。してみればホイットニーは私のいうことをきいてくれるはずだ。それにいざとなれば、私独りのほうが都合のよいことも多かろう。(『唇の捩れた男』)



原作を読んだ時は、「ワトスンは友人思いだなあ」としか思いませんでしたし、ワトスン自身にも自覚がなかったのでしょうが、現代版を観たら「主治医だからって夜中にアヘン窟に乗り込むか?」という気がしてきました。
原作のメアリも、「あなたって人はどうしてそう……(危険に飛び込んでいくの?)」と思っていたのかもしれませんね。

原作のメアリは家で待ちますが、現代版メアリは自ら車で夫を送っていきます。
タイヤレンチをズボンに忍ばせるジョン。原作のワトスンも、危険を悟ると手近なものを武器に使おうとすることがあります。

ホームズが平然として少しも動ずる色がないためか、それともそのとき私が火かき棒を手に取る微かな音が聞こえたためか、客のはでな態度はいくらかおさまった。(『三破風館』)



それを見て私は椅子に手をかけたが、ホームズが頭を横にふったので、その手をそっと放した。そのあいだにミルヴァートンのやつは、微笑をふくんで頭をさげ、眼をきらりと光らせて出て行ってしまった。(『犯人は二人』)



私は帽子をかぶって太いステッキを手にしたが、ホームズは引出しからピストルを取り出して、ポケットへ忍ばせた。彼は今晩の仕事をよほど重大視しているのにちがいない。
(『四つの署名』)



「四つの署名」では、いざとなったらステッキを武器にするつもりだったのでしょう。「恐怖の谷」では、ホームズに「こうもり傘を貸してくれ」と言われて「あんなもの、武器にはどうかな」と返していました。ワトスンにとって、傘やステッキは銃に準ずる武器の役目を果たしていたのですね。

ホームズに「バリツ」やボクシング、フェンシングの心得があることは有名ですが、自分のことはあまり書かないワトスンもまた、実践的な戦闘能力を備えていることをうかがわせる描写です。


……さて、実はこの記事、、『ユリイカ』シャーロック・ホームズ特集号のためにいくつか『His Last Vow』ネタを書きおろさせていただいたうちのボツになったやつです。
急いで書いたせいもあり、いつも以上にまとまりがないですね……

自らまとめるのを放棄したようでアレなんですが、この記事でぱらぱらとご紹介したジョンの「危険を好む」性格が同誌に収録された鷲谷花さんの『SHERLOCK』または「ジョン・ワトソンの物語」―暴力的欲望の〈サブテキスト〉という論考で、映像や演出の面から深く掘り下げられていて、ものすごく面白かったのです。ジョンというキャラクターについてよくわからないままもやもやしていた部分が、すっと腑に落ちました。
たまたま同じ本に載せていただいたからといって、私のような素人の考えと鷲谷さんのようなプロの研究者さんの論考を同列に語ってはいけないのですが……
映像作品を理解しようとする時、セリフや絵に分解して原作と比較するという、いわば二次元→二次元の作業では、気づけないことがたくさんあるのですね。作り手は三次元として表現しているのだから、切り刻む前に作品そのものを堪能しよう、映像や演出から伝わってくるものをしっかり受け取ろう、と、勝手に教えられて勝手に反省した夏でした。
まとまらなくなる一方ですが、寝かせておいたおかげで鷲谷花さんの記事のご紹介ができてよかったです。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)

ベーカー街へ

"We're going back into town. Turn around."
"Where are we going, ma'am?"
"Baker Street."
「市街地に戻ります。Uターンして]
「どちらに向かいますか?」
「ベーカー街よ」 (拙訳)



マグヌッセンの脅迫を受けたスモールウッド夫人。
彼女のモデルは「犯人は二人」で、恐喝者ミルヴァートンを殺害した「由緒ある貴族であり、大政治家でもある人の夫人」だと思います。
そうだとすると、脅迫のネタは「(おそらく)自らの過去の恋愛に関する手紙」から、「夫の、未成年者への手紙」に変更されています。時代によって、何が醜聞のネタになるかは違いますが、脅迫された妻が交渉に訪れているところと、夫が自ら命を絶つ結末が同じですね。

「(前略)それで良人は―たぐいなく気高い、私などはそのくつのひもをむすぶ資格もないほどの良人は、失望のあまりこの世を去りました。あの最後の晩に私があの戸口からはいってきて、あなたに嘆願し、お慈悲をとねがったのを、よもやお忘れではありますまい。あのときあなたは笑いとばしておしまいでした。(後略・延原謙訳)」



原作では、夫人は自らミルヴァートンに手を下すことを選びますが、現代版の彼女はヒーローの存在を思い出し、221Bに向かいます。
この「危機的な状況でホームズの名がひらめき、その足ですぐベーカー街へ」というパターン、原作にもあったような気がします。
「まだらの紐」では、寝室で口笛を聞いたヘレン・ストーナーが、そのまま一睡もせずに夜明けとともに屋敷を抜け出し、ホームズを頼ってロンドンに駆け込みます。
また、「ノーウッドの建築士」では、汽車の上で新聞を読んでいたマクファーレン青年が、自らに逮捕令状が出たことを知り、警察に尾行されながらもなんとかホームズのもとに駆け付けます。
ほかにもあるかもしれません。思い出したら追記したいと思いますが、ご教示いただければ幸いです。

しかしまあ、わくわくさせられるオープニングですよね。
オールドファンはもちろんのこと、『SHERLOCK』からのファンも既に「ベーカー街」やら「221B」やらのキーワードが「効く」カラダにされてしまっていることを、そうさせた犯人たちはよ~~く心得ている……それで、テーマ曲が明けたらドラッグ・デンの話ですもんねえ。悪い奴らだぜ。
プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

『高名の依頼人』のこと書きましたが、6月24日までグラナダ版がGYAOで無料で観られるそうです。
こちら

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