最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
★コメントを歓迎しております。初めてコメントくださる方は、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。
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「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
記事索引「ブリキの文書箱

シャーロックとアーチー

ジョンの結婚式でページボーイを務めたのは、まるでシャーロックのミニチュア版のような、巻き毛が愛らしいアーチー君。

……しかし、残念なことに中身までそっくりでした……。

本人には気の毒ですが、ジョンはもう変人ホイホイと呼ぶしかありません。もし変人率が計測できたら、とっくにゲージ振り切れてます、この結婚式。

ところで、ページボーイについて少し詳しく。

ペイジ (page) は西洋における小姓をいう。

ヨーロッパの中世におけるペイジは、騎士の城や屋敷に仕える、7,8歳から十代半ばくらいまでの少年のことをさす。 大部分は貴族や荘園主の子弟で、王の宮廷をはじめ、生家より家柄が上の貴族に奉公して、使い走りを務めたり、家庭内の仕事をまかされたりしながら、将来の騎士にふさわしく、馬及び武器の扱い方やテーブルマナー、また、チェスの遊び方などを教えられた。14歳くらいになると、今度は従騎士となって銀の拍車を付け、主人の身の回りの世話を担当するようになり、戦場でも補佐役を務めた。
(中略)
結婚式で、ウェディングドレスの裾を持つ少年もまたペイジと呼ばれる。 英国には「ペイジ・オブ・オナー」(Page of Honour)という制度がある。貴族やジェントリの子弟が選任され、式典などで、女王または王妃の式服の裾を持つ役目にあたる。(Wikipedia:ペイジ)



おそらく、現代の「ページボーイ」はここから来ているのではないでしょうか。こちらは日本語版がないので英語版を載せます。訳が間違っていたら、教えていただければ幸いです。

A page boy is a young male attendant at a wedding or cotillion. This type of wedding attendant is less common than it used to be, but is still a way of including young relatives or the children of relatives and friends in a wedding. A page is often seen at British royal weddings. There may be many pages for effect at cotillions.

ページボーイとは、結婚式または舞踏会 における若い男性の付添人である。結婚式でのこの種の付添人は、以前に比べ少なくなっているが、幼い親戚、または親戚や友人の子どもたちを 活躍させる手段 として、今日も存在する。
英国のロイヤル・ウェディングでよく見かける。舞踏会には、雰囲気を出すため、たくさんのペイジがいることもある。

Traditionally, page boys carry the bride's train, especially if she is wearing a dress with a long train. Because of the difficulty of managing the train, page boys are generally no younger than age seven, with older boys being preferred for more complicated duties.
伝統的に、ペイジボーイは花嫁のベールやドレスの裾を持つ(ことに、花嫁が長いベールやドレスを着用している場合)。裾を支えるのは簡単ではないので、一般的に7歳以上が適している。後述のように複雑な役割がある場合は、さらに年上の少年が好ましい。
A ringbearer holding a wedding ring on a cushion.
In a formal wedding, the ring bearer is a special page who carries the wedding rings for the bridal party. This is almost always symbolic, with the ring bearer carrying a large white satin pillow on which imitation rings are sewn, while the real wedding bands are kept in the safekeeping of the best man. If the real rings are used, they are tacked on with thread to prevent their accidental loss.
クッションに載せた指輪を持った「リング・ベアラー」。
正式な結婚式において、パーティー会場に指輪を運ぶ特別なペイジである。
リングベアラーは大きな白いサテンのリングピローに縫い付けられた指輪を運ぶが、これはイミテーションで、本物はベストマンが保管するのが慣例となっている。本物の指輪が使われる場合は、うっかり紛失しないように糸で留められる。
The ring bearer as a separate role is a relatively modern innovation. In today's common wedding ceremony, the best man carries the rings.
独立した役割としてのリングベアラーを置くのは、比較的新しい試みである。昨今の一般的な結婚式では、ベストマンが指輪を運ぶ。(Wikipedia:Page boy)(拙訳)



シャーロックは指輪の話をしていたようなので、アーチー君はリングベアラーとしてのペイジになりますね。
また、「聖書を運ぶ役割」のページボーイもネット上で見かけたので付記します。

ページボーイ(page boy)とは、キリスト教式結婚式にて、挙式で使用する聖書を祭壇まで運ぶ役割の男の子のこと。フラワーガールやリングボーイなどと同様に新婦を先導して入場する。親類の10才以下の男の子に頼む場合が多い。教会式だけでなく人前式において、結婚証明書や二人の宣誓文などを運んでもらうのもいい演出になる。バイブルボーイ(bible boy)ともいう。(『ウェディング用語辞典』より)



ところで、原作でのpageといえばビリー少年ですね!
(関連記事:『ありがとう、ビリー』『ビリーは二人いる』)
第3シリーズ3話に登場したビリーやスカルのビリーには、後ほど触れたいと思います。

前略)それからその眼を最後にビリー少年の元気な笑顔に落ち着けた。この利口で気転のきく給仕は、あのむっつりと陰気な大探偵の孤独と寂しさを慰めるのにいくらか役だってきたのである。(マザリンの宝石・延原謙訳)


シャーロックの補佐役という意味でも、アーチー君はホームズにとってのビリーの役割を務めていると思います。
ビリーはホームズを尊敬していて、なかなか有能なんです。

アーチーも有能で、シャーロックが大好きなようですが、エサにつられてもいるようです……
シャーロックが、アーチーの推理へのご褒美としてHeadless Nun(首なし尼)の話を出します。
首のない尼僧のお話は、カナダのFrench Fort Coveという土地に伝わる、いわゆる幽霊譚のようです。マリーなにがしという尼僧が首を切られ(切られた理由や経緯には諸説ある)、その霊魂が失われた首を探してさまよっている、というお話です。

このHeadless Nunという言葉、どこかで聞いたと思ったら、SHERLOCK第1シリーズのDVDに収録されていた「パイロット版」でした。アンジェロとシャーロックの間の暗号として使われてましたね。ちょうど「ヴァチカンのカメオ」のように。
あの時はおそらく、「(酔っぱらいのふりをしたシャーロックを))レストランの外に叩き出してくれ」という意味だったと思います。アンジェロも、ビリーと同じくシャーロックの協力者ですね。

ところで、シャーロックとアーチー君の関係について、jnxさんが面白いご考察をお寄せくださいました。
シャーロックがリングベアラーの役割を説明すると、アーチーは"No." (いやだ)"What for?"(何で?)"Why?"(どうして?)を連発します。これ、シャーロックが良く使うセリフなんですね。jnxさんはマイクロフトとのこの場面を引用してくださってます。

"Sherlock Holmes, put your trousers on!"
" What for?"
「シャーロック・ホームズ、ズボンを履け!」
「何のために?」



マイクロフトに対して子どものような態度を取り続けるジョンシャーロックが、本物の子どもに対して大人側の立場に立たされているのは面白いですね。jnxさんのご考察は、さらに続きます。

アーチー君が“What for?”と言ったとき、シャーロックは自分の過去のこのマイクロフトに対する切り返しを思い出して、「うわつまり子供・・」と思い(再々々々・・・・自覚し)、これが結婚式の日最後の「僕という子供で予習済み」という台詞の伏線になっている、と視聴者に思わせる、とか。



自分のミニチュア版のようなアーチー君との出会いによって、子どもっぽさを自覚したというわけですね。
確かに、シャーロックが急に自分が子どもだと言い出すのは、ちょっと違和感がありました。

前回ベストマンの役割を調べてみて、かなり責任の重い仕事だということがわかったのですが、ひょっとしたら、シャーロックが「大人らしく」振る舞おうとし始めたのは、ジョンにベストマンを頼まれた時からかもしれません。
前話"The Empty Hearse"でジョンの前に姿を現したシャーロックの振る舞いは、明らかに子どものそれだと思います。

シャーロックがジョンを一人の人間として尊敬していることは、彼のスピーチからよくわかります。ジョンが自分を好きなことも知っていると思いますが、そのジョンがベストマンを頼む人間が自分だとは、露ほども思っていなかった。
でも、ジョンはシャーロックを親友だとはっきり言った上で、ベストマンを任せました。おそらく全英の視聴者が「ジョン、なんて無茶な」と思ったはずなんですが……
シャーロックにとってそれは、初めて完全に(頭脳以外も含めて)社会的な存在になれたというか、大人の男として認められた瞬間だったではないでしょうか。


……個人的には、ジョンはあんまり結婚式準備の大変さをわかってなかったんじゃないかという気もするんですが(小声)。結婚式準備に関しては、どう見ても「使えないダンナ」でしたよね……
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「ユリイカ」シャーロック・ホームズ特集号で、このブログの記事をいくつかご紹介いただきました。
遅々とした更新状況のこのブログでは、まだ全然手をつけていない第3シリーズ3話に関する記事も、先行してひとつ書かせていただいています。
書店でお見かけになったら、ぜひお手にとっていただきたいです。そして、表紙裏から口絵、目次と順番に開くことをお勧めします。
まず、装丁が美しい!手元に置きたくなる、ほんとうに素敵な佇まいです。

そして、内容がどんなに凄いか、私のようなえせシャーロッキアンが言葉を尽くして語っても、たぶんこのリンクから「目次」を見ていただいた時の衝撃にはかなわないと思います……

クリックして驚け!

ね!?

すごいでしょ、私の「お前そこでなにやってんだよ」感!この、博士論文に中学生の作文が混ざっちゃった感!フォローしようにもなかなかできないでしょ!?
……それはもう少し立ち直るまでそっとしておいていただくとして、これだけの豪華な顔ぶれが揃う「場」が作られたのが既に奇跡的なことですよ!そこにお一人お一人の「情熱」が加わった時の化学反応といったら!

良い作品とはすべてそういうものかもしれないのですが、「SHERLOCK」というドラマにはさまざまな楽しみ方があります。シャーロックとジョンの複雑な関係に、演じている俳優さんの魅力に、斬新かつ繊細な演出に。私も、さまざまな惹かれ方をしています。
でももし、「ひとつだけこのドラマの魅力を挙げてください」と言われたら、私としてはこのドラマの「在り方」を挙げたいです。
私にとっては、大好きなホームズとワトスンを蘇らせてくれたドラマ。
そして、ホームズとワトスンを愛する人々はドイルの時代からずっといて、そのつながりの片隅に自分もいるのだ、と気づかせてくれたドラマ。
マイクロフトがジョンに"Welcome back"と囁いた時、並んで歩くシャーロックとジョンを見送りながら"Sherlock Holmes and Dr.Watson"と呟いた時、私も体中の血が騒いで、「ゲーム」が始まったことを知ったのです。いいえ、私が勝手にやめていただけで、「ゲーム」はずっとずっと、続いていたんです。

この本では、珠玉の「プレイヤー」たちが、さまざまなやり方で、それぞれの「ゲーム」を見せてくれます。
その格好よさときたら!
SHERLOCKというドラマに心が騒いだ人、このドラマのどこかに、自らの「ゲーム」の始まりを見出した人すべてにお勧めしたい、達人たちのお言葉がこれでもかと詰め込まれた一冊です。

……ひとりだけド素人が紛れ込んでいること、心からお詫び致します。

5月の結婚式

第3シリーズ2話"The Sign of Three"は、ジョンとメアリの結婚式の一日に密着した話になっていて、英国の結婚式やパーティーの様子がよくわかるというところも魅力的です。
世界的な人気シリーズになった今、"SHERLOCK"というドラマには、イギリスという国を世界に紹介するという役割もあるのかもしれません。

お話は、回想シーンを絡めながら進行します。
ドラマに出てきた「結婚式準備」を時系列順に並べてみます(もちろん出てこなかった『準備』がかなりあるでしょうが……)

日取りを決める

アッシャー、ブライズメイド、ページボーイなどを決める

招待状作成

席を決める
アッシャーやブライズメイドの衣装決め
ワインを決める(おそらく他の飲み物や料理も)
ナプキンの折り方を決める(!)



結構細かい準備がたくさんあるんだなあ、とびっくりしてます。
ソラマメさんに教えていただいた「英国フラワースクール」さんのサイトには、イギリスの結婚式についてとても詳しい説明があるのですが、新郎新婦の友人がパーティーの準備にすごく深く関わるんですね。
こちらのサイトに、ベストマンの仕事一覧があります。そしてこちらが、式の進行例。正直、何年も観ていて初めて心から「シャーロックすごい」「シャーロックえらい」「シャーロック、アメイジング」と思いました。あとジャニーン、仕事なんだからちゃんと踊ってやれよ!

日本での挙式にはさまざまな形がありますが、「友人の衣装決め」はあまり聞いたことがないように思います。
ジョンとシャーロックがほぼお揃いの衣装を着ていたのは、 「どちらが新郎だかわからないようにして、悪魔に連れていかれるのを防ぐ」という風習のためだそうです。中世のヨーロッパでは、結婚するカップルを妬んで悪魔がやって来るといわれ、悪魔の目を混乱させる目的で同年代の若者に同じような服装で付き添わせたとのこと。おかげで二人のお揃い正装が見られたので、風習グッジョブ!と言わせていただきたい。
ブライズメイドの衣装にも同じ理由があるのかしら。白いドレスを着る花嫁と衣装の色は違うけど、このサイトを見ると、なんとなく雰囲気を合わせているようですね。
指輪を運ぶページボーイ(リングボーイ/リングベアラー)の存在は、初めて知りました。日本では、花束贈呈を親戚や友人の小さいお子さんに頼んだりしますよね。アーチー君のことはまた別記事で書きたいな、と思います。

私は気付かなかったのですが、ソラマメさんのコメントで結婚式の日取りへのご指摘がありました。
招待状には、「5月18日(土曜日)」の文字が。ソラマメさんが調べてくださったところ、(現実世界で)この日が土曜になるのは2013年。ジョンとメアリの結婚式は、2013年5月18日と断定してよさそうです。
さらに、ソラマメさんはイギリスでの結婚に関する言い伝えも教えてくださいました。英国フラワースクールさんに各月、各曜日に結婚を行うとどうなるか、という言い伝え一覧があるのですが、すごく興味深かったので5月と土曜日を引用します。

5月 5月という月に結婚するとすれば、その日を後悔する事となる
土曜日 最悪の結末



こ、これは……!
どの程度知られている迷信なのかはわかりませんが、もし制作者側が「わかっていてやった」のなら、「メアリに贈る暗号」に通ずる悪意を感じるなあ……
ちなみに、ソラマメさんにお返ししたコメントで、ハドスンさんが「5月のお式」と言ってたと書いてしまいましたが、私の記憶違いで実際は「春のお式」でした。「式は5月にする」と言うメアリに対するハドスンさんの反応を見る限り、一般的には5月の挙式は問題ないようですね。
それにしても、私の感覚では5月の土曜日って気候的にも次の日休みという意味でもいい選択だと思うんですが、どういう経緯でこんな風に言われるようになったのか、気になります。

結婚式前夜の、男同士のパーティ「スタグ・ナイト」。これ、ガイ・リッチー版でもやってた!メンバーが著しく偏ってるのも一緒でした。
ジョンとシャーロックは「思い出の殺人現場めぐり 」というろくでもないテーマでパブクロールを。これは、マーティン・フリーマンの出ていた映画「ワールズ・エンド」を意識しているのかな。映画つながりといえば、事件現場でジョンが"I'm a doctor"と名乗るのは「スタートレック」、ダンスパーティでシャーロックが"Don't be shy"と列席者たちに声をかけるのは、「ホビット」のスマウグを思わせます。同じ場面での"Don't panic"は「銀河ヒッチハイクガイド」だ!いずれも、ベネディクト・カンバーバッチやマーティン・フリーマンに縁のある作品です。"The Sign of Three"は、遊びの多いエピソードでもありますね。

何だかんだでぐでんぐでんになってしまったシャーロックとジョンが、"Who am I ?"というゲームをしてました。
ここは、笑うべき場面だったんでしょうか。なんだかしんみりしませんでしたか……?
この場面での二人の会話の意味って、何だったのでしょう。私は、なんというか二人のズレを感じ、どうあってもこの二人の人生は、お互い大好きでも同じ道にはならないんだなあ、そこが恋愛と友情の違うところなんだろうか……みたいに、妙に考えさせられてしまいました。

話がそれてしまうので後ほど考えるとして、結婚式当日。ワーホリニュースという サイトさん によると、式は、レジスターオフィス(登記所)や結婚式場、マナーハウス、パブやレストラン、ホテルなど、ライセンスがある場所であればどこでもできるそうです。
原作でもいくつか結婚式の描写がありました。牧師と立会人が必要なようで、アイリーンとノートンの結婚式では、教会に行ったものの立会人が見つからず、その場にいたホームズが急遽指名されるというハプニングがありましたね。『美しき自転車乗り』の強制結婚式でも、一応必要なメンバーは揃ってました(後に牧師が偽だったと判明しましたが)。行政の場で行ういわゆるCivil marriageでも、その場でかんたんに挙式するようです。日本では、たぶん役所では婚姻届を提出するだけではないでしょうか。


挙式

ガーデンや別室でシャンパンやカナッペが振舞われ、歓談や写真撮影

ごちそう

スピーチ

ドリンク&ダンスパーティ



ワーホリニュースさんに載っていた流れを、律儀に再現している!ごちそうのメインはローストビーフでしたし、やっぱり英国プロモーションドラマだ……!それだけ、ジョンがオーソドックスな形式を愛する、保守的な英国人ということなのかもしれません。(ジョン、3人の中で一番準備に興味なさそうでしたけど……)
ダンスパーティの前にカメラマンが帰ってしまったのが疑問だったんですが(そこはシャッターチャンスじゃないのか?)、「ワーホリニュース」カムラさんの記事によるとダンスパーティはドリンク別料金の場合もあるようなので、日本でいうところの二次会にあたるのかな?

シャーロックがワトスン夫妻にバイオリン独奏曲を贈ったのは、原作のこのくだりからじゃないかと思います。

「(前略)ワトスン君、君は疲れたようだね。そのソファに横になりたまえ。僕が眠らせてあげるよ」
いわれたとおり横になると、ホームズはへやのすみから例のヴァイオリンをとりあげて、夢みるような自作のしらべを低く奏でだした。彼は即興楽にたいしてすぐれた天分があるのだ。私は彼のほっそりした手足や、まじめくさった顔つきや、弓のあげさげを眺めながら、その快いリズムに聞きいるうちに、うとうとと甘美な音楽の世界に引きいれられて、いつしか夢路をたどり、うえからのぞきこむメアリ・モースタン嬢のえもいわれぬ笑顔を眺めているのだった。



シャーロックの奏でる「ワトスン夫妻のためのワルツ」は、「夢見るような調べ」という描写にぴったりの曲ですね。この場面を読み返すたび、脳裏にメロディーが蘇りそうです。
ところで、ワルツは二人で踊るもの、独奏は一人でするもの。
このお話では、結婚式の華やかさが描かれる一方で、伴奏のようにシャーロックの孤独感も描かれています。
シャーロックは、ジョンとメアリの結婚を祝福してみせますが、一人会場を去っていく場面では、一言も台詞がないのに、原作「四つの署名」のラストシーンのこのセリフが聞こえてきます。

「それはいささか不公平のようだな。この事件はみんな君がやりあげたんだ。僕はおかげで妻まで得るし、ジョーンズは名声を博する。それで君自身はいったい何を得るんだい?」
「僕か、僕にはコカインがあるさ」といってその瓶をとるべく、シャーロック・ホームズはほっそりした白い手をのばした。



実際、式から1か月後の"His Last Vow"では、シャーロックに麻薬依存の悪癖が復活してしまっている描写があります。
祝福と孤独、希望と不安、嘘と真実。一つの結婚式にまつわるさまざまな人々の思惑が重層的に描かれているのが面白いです。
「結婚式」って、強制的ハッピーエンドの日とでも言いましょうか、「祝福」を目的に行われる行事である以上、そこに関わる人たちは皆ちょっと過剰に「祝福する人・される人」を演じてるところがあると思うんです。使ってはいけない言葉があったり、そこにいる人々に役割が与えられていたり。まるで、脚本通りに動かなくてはいけない舞台のようです。
でも、実際にはその日ですべてが終わるわけではなく、どの人の物語も続いていく。
ほんとうは、新郎新婦も友人たちも、招待客も牧師さんも、その結婚に対して「喜び」以外にもさまざまな気持ちがあるんですよね。

ハドスンさんも言ってましたが、「英国フラワースクール」サイト内の日高ちひろさんのブログによると、ベストマンやブライズメイドが新郎新婦よりも先に会場を離れるのは、本来あってはならないことのようです。
本人も言っていたように、結婚式はいかにもシャーロックの"field"ではない場のようですが、親友として信頼してくれたジョンのために、この日は役割を演じ切ろう、そして舞台を成功させよう、と心に決めたのでしょう。だからこそ、冒頭で「戦闘開始だ」 と呟いたんだと思います。そのシャーロックが、一番最後だけそれを放棄した。その行動に、口には出さなかったシャーロックの気持ちが垣間見えて切ないです。
ジョンの式に来なかったマイクロフトにも、この日に死を選ぼうとしたショルトーにも、シャーロックは「正論」を突き付けます。まるで、誰よりも常識外れな彼とは、人が変わったみたいに。
でも、シャーロックは本音より建前を大事にする「常識人」になったわけではなく、ジョンとメアリが好きだから、彼らのためにこの日を完璧にしたかったんですよね。そして、この日が「寂しい」のも、また彼の本音なのだと思います。
好きだから祝福するし、嬉しい。好きだから置いて行かれたくなくて、寂しい。
つくづく、人間って面倒です。シャーロックは、ジョンが言っていたように「誰よりも、人間」なのでしょう。

参照サイト
結婚にまつわる言い伝え「英国フラワースクール フラワーデザイン・オブ・ブリテン」http://fdb.jp/Topics/BritishWedding-1.htm
ベストマン、リングボーイの仕事「WEDDABROAD」http://weddabroad.com/wedding/attendants/bestman_duties/
英国の結婚式の流れ「ワーホリニュース」http://www.whic.jp/blog_workingholiday/cat14/post_1571.html
式の進行「京都発オリジナルブライダル商品 AMS」http://www.ams-kyoto.jp/bridesmaid_usher.htm
花嫁とブライズメイドの衣装コーディネート例「みんなのウェディング」http://www.mwed.jp/tokimeki/580/

……私もう、いつでも結婚式できるな。相手さえいれば。

(原作からの引用は、延原謙訳『四つの署名』より)

レストレードは知っている?(S3編)

一年以上前のことになりますが、「レストレードは知っている?」という記事にて、「"A Study in Pink"でのジョンの行動にレストレードが気づいていた可能性」について、コメント欄で皆さんとお話しました。その時は星宿さんに問題提起していただいたのですが、今回もれすとらさんにコメント欄でご指摘をいただきました。

「あの2年間グレッグはジョンとアンダーソンを見張っていたというか見守っていたんじゃないかと思っていました。」
「His Last Vowでマイクロフトとグレッグはつながっていたっぽいところがあったように思います。」


れすとらさんは、さらに二つの仮説を挙げてくださっています。

(1)マイクロフトが偽装工作にレストレードの協力が必要なため真相を話したので、知っていた。レストレードはチーム・ラザロのメンバーだった。
(2)マイクロフトはジョンとアンダーソンを監視・保護するため必要なことしか言わないが、レストレードは刑事の勘(が確かかはあやしいけど、A study in pinkではジョンが撃ったことには気がついていたと思います。)でだいたいの真相に気がついていた。マイクロフトはレストレードも暗殺されそうになった1人だから危険があるかもしれないと教えていた。


さらに、シャーロックと再会したレストレードの態度について、
「『死んでなかった!!!!』という驚き方はしないで『やっと帰ってきたな』という感じでハグしていた」とのご観察も。

私にはこの発想がなくて、レストレードはジョン同様シャーロックの生存を知らなかったものと思い込んでいました。
原作でのホームズは、自分の生存を知っていたのはマイクロフト一人だけだと明言しています。

「僕はひとりだけに事情をうち明けた。兄のマイクロフトだ。君にはまったく相すまないけれど、僕は世間から死んだと思われることが、絶対に重要だった。それに君に知らせたら、僕の遭難談をあれまでまざまざと迫力をもっては書けないからね、君という人は。」
「マイクロフトのほうは、金の必要にせまられて、何とも止むを得ず打ちあけたのだよ。」



でも、レストレードがホームズと再会した時の態度が、妙に落ち着いてるんですよね。

私がすかさず曲者を押さえるし、ホームズは鋭く呼子を吹きならした。すると舗道を駆けてくる靴の音がして、二人の制服巡査と一人の私服とが、正面玄関からとびこんできた。
「レストレード君ですね?」
「ホームズさんでしょう?自分で出かけてきましたよ。よくロンドンに帰ってきましたねえ、ホームズさん」



「自分で出かけてきた(I took the job myself)」っていうのは、ホームズがヤードにモラン逮捕協力の要請をしたら、それを聞いたレストレードが志願したってことですよね?
数時間前から心の準備ができていたとはいえ、死んでいたはずの友人に会うには落ち着き過ぎてる気もします(知らなかったのに余裕を見せてるとしても、それはそれでかっこいいんですけど)。
また、死んでいると思い込んでいたら、ホームズが名前を出して協力要請したとしても、それを信じるでしょうか。
シャーロックがグレッグを待ち伏せたように、既に何らかのコンタクトがあったのか?それとも、レストレードの方で連絡を「これは本物のホームズからに違いない。ホームズは生きている」と見抜いたのか?
二人はホームズの帰還後初めて会ったように見えますし、失礼ながら原作のレストレードはそんな重要なことを見抜けるキャラクターには見えないような……(ホームズが暗号を忍ばせたりしてれば、見抜けるかもしれませんが)
やはり、マイクロフト経由などで、ホームズの生存を知っていたと考えるのが自然なようにも思えます。

そして、ホームズのこのセリフ。

「(前略)この空家が樹で、君が虎なんだ。虎が一頭じゃなかったり、あるいは、こんな仮定はどうかと思うが、射ちそこなった場合に備えて、おそらく君も予備銃を用意されたろうが、これが」とホームズはぐるりと私たちのほうへ手を振って、「僕の予備銃だ。両者の対比はぴたりと一致する」



脱線しますが、この場面は"The Empty Hearse"でジョンに内緒で警察を呼んでおいたシャーロックの元ネタですね。
ホームズも、ヤードからの助っ人が待機していることをなぜかワトスンに話さず、張り込みしていた警察官をみつけたワトスンが不審に思っています。どんだけワトスンを驚かせたいんだ!

脱線終わり。ひゅー!(←結婚式のシャーロックのまね)
ホームズとモランの「両者の対比」は、現代版のシャーロックとジムにも当てはまります。
ジムにも複数の協力者がいます("The Reihenbach Fall"にもいっぱい出てきましたが、"His Last Vow"のラストシーンから察するともっといそうです)。
一方シャーロックには、れすとらさんおっしゃるところの「チーム・ラザロ」(約25名?)が。そして、原作で名指しされている「予備銃」レストレードの現代バージョンであるグレッグもまた、シャーロックとマイクロフトの「予備銃」だったのかもしれません。

YOKOさんのブログのコメント欄で、ご友人で英文学の先生でもあられるNHさんが、「調べてみたら、Gregory(Greg はこの短縮形)はギリシャ語の Gregorios という名から来ていて、それには "watchful, alert" (用心深く見張っている)という意味があるとのことでした 」とおっしゃっていて、おお~!と鳥肌が立ちました。"The Hounds of Baskerville"だけではなく、全編を通してグレッグはシャーロックやジョンの「見張り役」なのかもしれませんね。

さてここからは妄想コーナーです。ひゅ~!(←しつこい)
もし、レストレードがマイクロフトの指示のもとにジョンを監視・保護していたのだとしたら、(アンダースンはまあ一旦置いときます)、"Many Happy Returns"でのレストレードも、友情だけではなく、任務のためジョンを訪れていたことになります。
このタイミングでシャーロックの遺品を持ってきたのは、シャーロックの帰還が近づいたため、ジョンに心の準備をさせようという意図があったのかもしれません。そう考えると、街角で"THE GAME IS BACK ON"の見出しを目の端にとらえるレストレードの表情も意味ありげに見えてきます。

れすとらさん、色々な想像がふくらむ話題をありがとうございました。
果たしてレストレードは「知っていた」のか「知らなかった」のか。皆さんのご意見をうかがえたら嬉しいです。
(個人的には、ジョンの結婚披露宴の序盤で、やたら不機嫌な顔で飲んでいたのも気になってます。『奥さんとはどうなったんだ問題』『ひょっとしたら一緒に招待されてたのに来てくれなかったのか問題』へのご意見も、お待ちしております。)

(原作からの引用は、延原謙訳『空家の冒険」より)

タバコとスリッパ

ゆいさんやソラマメさんにいただいたコメントから「時系列問題」を考えていますが、シャーロックの帰還やジョンの結婚式といった大きな節目はもちろんですが、小さなことで気になっている件があります。
それは、シャーロックの禁煙問題。

ジョンが221Bに越してくる前、シャーロックはニコチンパッチを使ってましたよね。(1)
その後、"The Great Game"で「禁煙は順調だ」と言っていました。(2)
第二シリーズ"A Scandal of Belgravia"では、マイクロフトにもらった低タールタバコを一本吸ってます。(3)
"The Hounds of Baskerville"冒頭では、コールドターキーに踏み切ってますが、第1シリーズに比べ、だいぶ余裕がない様子。(4)
そして第3シリーズの"The Sign of Three"で出てくるシャーロックの回想シーン。(★)
コンピュータに向かうジョンに「ジョン・H・ワトスン?」と聞くとき、シャーロックは大量のタバコを咥えていて、それをスリッパに入れようとしています。

シャーロックがジョンのミドルネームをまだ知らないことから、アイリーンが二度目に221Bにやってくる以前の出来事であるのは間違いないと思います。
(4)でこのスリッパは、もう一度出てきますね。

シャーロックがタバコをスリッパに入れるのは、原作と同じです。

けれども私のだらしなさには際限がある。葉巻を石炭いれのなかへしまっておいたり、きざみタバコをペルシャ製の室内くつのなかへ入れておいたり、返事を出すべき手紙を海軍ナイフでマントルピースの木わくのまん中へ突きさしておいたりする男を見ると、私だとてつい自分が謹直端正であるようなことをいってみたくもなるのだ。(『マスグレーヴ家の儀式』)


それはともかく、(★)の回想シーンで、シャーロックはスリッパにタバコを詰める作業を、ジョンに対して隠していません。
禁煙はジョンに出会う前からやっていたはずなのに、これはどのタイミングでの出来事なんでしょう。

シャーロックの喫煙は、薬物依存の問題と並行して描かれていると思うのですが、少なくとも禁煙に関する限り(1)から(3)に至るまでの流れは、ほぼ順調に見えます。
途中から、ジョンも協力していたようです。 (3)でマイクロフトがジョンに電話した時の反応でもわかりますし、"The Hounds of Baskerville"の冒頭で、ジョンはイライラしているシャーロックを慣れた様子でなだめています。ジョンの結婚後はタバコもドラッグも再開してしまったのが"His Last Vow"でわかります。これも原作由来かと思います。

その輝かしい経歴をいちどはおびやかしかけた麻薬嗜好の悪癖を、私は何年もかかって徐々に捨てさせた。いまでは普通の状態では、もはや彼もこの人為の刺激を求めようとはしなくなったが、それでも根治したわけではなく、邪念が休眠状態に入っているだけなのはよくわかっている。(『スリークォーターの失踪』)



ちなみに、"A Study in Pink"でシャーロックとニコチンパッチを披露しあっていたレストレードも、禁煙に失敗してしまったようですね。「帰還」後の再会で、タバコを吸っているレストレードにシャーロックは開口一番

"Those things will kill you."
「喫煙はあなたに死をもたらします」(拙訳)


と声をかけています。「禁煙」は、二人の共通の話題だったんでしょうね。いいコンビですよね。

ところで、シャーロックの台詞はたばこの箱に書いてある警告表示っぽい感じがしたので調べてみたら、各国の表示の違いが面白かったのでリンクを貼ってみます。喫煙なさる方はげっそりしてしまうかもしれません……

たばこ警告表示(Wikipedia)
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Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスンがより好きです。

2017年エイプリル・フールお片付けしました。お付き合いありがとうございました!片付けきれてないところがあったらお知らせいただければありがたいです。

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このブログで考察した「元ネタ」を、ドラマの時系列に沿って探すための索引サイトです。 順次更新致します。 「21世紀探偵・ブリキの文書箱」
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