最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
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記事索引「ブリキの文書箱

【事件の重要なネタバレ】メアリに贈る暗号

Save souls now
John or James Watson?
Saint or sinner?
James or John ?
The more is less?



メアリの携帯に届いたメール。
はじめはスパムかと思ったようですが(ロンドンでは、こういう聖書関係のスパムメールがよく届くのかな)、婚約者の名前があったら穏やかではありませんよね。
メアリはジョンに迫った危険を読み取って、シャーロックのもとへ。
シャーロックは"skip code"だと見抜きます。
【追記:2015.1.1】NHKの再放送を見てて気づいたのですが、メアリはスキップコードだとわかってそのまま報告してるので、シャーロックが見抜いたわけじゃないですね。後の伏線にもなることなので、お詫びして訂正します。

ここはかなり興奮します。
飛ばし読みの暗号といえば、ホームズ最初の事件「グロリア・スコット号」じゃないですか!!

「グロリア・スコット号」に出てくる暗号は以下の通り。

‘The supply of game for London is going steadily up, it ran.'
‘Head-keeper Hudson, we believe, has been now told to receive all orders for fly-paper and for preservation of your hen-pheasant’s life.'



若き(当時大学生!)ホームズによる解説も引用します。

最初からはじめて、三語目三語目と読んでいくと、トリヴァを落胆のあまり死にいたらしめるに十分の意味を持つ文句になった。


その通りに読んでいくと、こうなります。

`The game is up. Hudson has told all. Fly for your life.'
「万事休す。ハドスン凡て語れり。生命危険、直ちに脱出せよ。※」

※延原先生は暗号文を日本語でも同じ方法で解読できるように訳しているので、直訳とはちょっとニュアンスが違います。

同じ方法でメアリに届いた暗号を解読すると、
"Save John Watson St James The Less"
となるわけですが、ホームズはさらに「解読に必要のない、便宜上挿入された語句」にも注目し、そこに猟に関する語句が多いことから、送り主までも特定するのがすごいと思います。

では、現代版の「暗号」でも、原作のホームズに倣って「便宜上挿入された語句」に注目してみましょう。
解読に使われなかった語句は

souls now
or James
or sinner
or john
more is

となります。

"John or James"" James or John "というフレーズが出てくるのは、原作で一度メアリが夫のワトスンを「ジェームズ」と呼んだことがあるからだと思います。(関連記事:『ヘイミッシュ』)
しつこいようですが、漫画「シャーロッキアン!」のJames or John話はもう絶対読んでいただきたい!と
「むしろスパムはお前だ」と言われそうな勢いで3度目の布教をさせていただきます。(関連記事:『シャーロッキアン!』)

これは、犯人がメアリやシャーロックに向けたのではなく、製作者がファンに向けた「暗号」なのでしょうね。
いつもながら、"SHERLOCK"というドラマのこういう部分には、子どものようにワクワクさせられます。

ところで、「グロリア・スコット号」の事件は、特に前置きなくホームズが唐突に話し始め、「(前略)もしこの話が君の収集に役立つなら、どうぞ遠慮なく使ってくれたまえ」という台詞で締めくくられます。それまでにワトスンは何度となく「ホームズが犯罪捜査に興味を持ったきっかけ」を聞き出そうとしていたのですが、「いつでも憎めない冗談にまぎらされて、ついに成功したことがない」と同作中で述べています。
どうして、ホームズは自ら「最初の事件」について語り、記録を勧める気にまでなったのでしょうか。
ベアリング・グールドは「妻を亡くして落ち込んでいるワトスンを慰めるため」ではないか、と推測しています。(Wikipedia『グロリア・スコット号事件』)

"SHERLOCK"第3シリーズは、ジョンとメアリの関係を軸に、それに伴うシャーロックの変容を描いているといってもよいと思います。
もし、グールドの言う通り「グロリア・スコット号」が「ワトスンの、妻※との別れ」「それをそばで見ていて、ワトスンへの態度を和らげるホームズ」を描いたお話だとしたら。
第3シリーズの1話で、このお話をモチーフとした暗号を婚約したてのメアリにぶつけるのは、すごく悪意のあることに思えます。その悪意はメールの送り主ではなく、神(この場合マーク・ゲイティス)によるもの、ということになりますが。

※誤解を避けるために書き加えておきますと、グールドはワトスンの結婚3回説をとっていますので、この時亡くした「妻」はメアリ・モースタンではなく初婚の相手・コンスタンス・アダムズとしています。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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猟犬シャーロック

"His movements were so silent,so furtive he reminded me of a trained bloodhound picking out a scent."
"I couldn't help thinking what an amazing criminal he'd make if he turned his talents against the law."

「彼の動きはとても静かでひそやかだった。よく訓練されたブラッドハウンド犬が、匂いを嗅ぎ出すところを連想させた。」
「考えずにはいられない。もし彼がその能力を法に反することに使ったら、どれだけ目ざましい犯罪者になることだろうか。」(拙訳)



メアリがジョンのブログを読み上げる場面。
自分のブログを音読されるって、人生で起こる災難の中でも最悪に近いと思うのは私だけでしょうか。でも、メアリがやるとカワイイな……

この文章、私たちがネット上で読めるジョンのブログにはなかったと思いますが(【追記:2014.5.11.】DVDで確認したところ、引用した部分以外は『まだらのブロンド』中のいくつかのパラグラフを、前後させてつなぎあわせてあるようです)、原作には似た部分があります。

So swift, silent, and furtive were his movements, like those of a trained bloodhound picking out a scent, that I could not but think what a terrible criminal he would have made had he turned his energy and sagacity against the law instead of exerting them in its defence.

その様子はよく訓練された警察犬が、臭跡をかぎまわっているようでもあった。私はそれを見ていて、これだけの知力と精神力を犯罪捜査のために使うのではなくて、もし犯罪をおかすほうに向けられたら、どんなことになるだろうと恐ろしく思った。(『四つの署名』)



この先は単なる愚痴なので、ここで止まっていただいても大丈夫です!

探すのにずいぶん時間がかかっちゃったんですが、それは私の脳内データベースが延原謙訳(のおぼろげな記憶)でできてるから、ということに、見つけて初めて気づきました。延原訳からは下線部分がごっそり抜けてたんですね。しかも、私が親しんだ版では最後の一文が「犯罪捜査を行っているのではなくて、恐るべき犯罪そのものを行っているのではないかとさえ思われた」となってます。

しかも、ほとんど唯一残された手がかりと言える「犬」のくだりは、「緋色の研究」にも似た描写があったりします。

見ていて私は、よく訓練された純血のフォックスハウンドが、鼻をならしながらいつまでも草むらのなかを、前後左右に駈けまわって、ついにはよく、一度失った臭気をも必ずさがしだすのを思い出さないではいられなかった。






どちらも猟犬の一種で、対象の血の匂い、毛皮の匂いを追跡します。
また、「踊る人形」ではレトリバー犬に例えられている、と以前コメント欄でRMさんに教えていただきました。
(関連記事:『犬、猫、探偵』)
レトリーバーも猟犬の一種ですが、こちらは撃ち落とされた獲物の位置を目視して正確に覚え、回収する役割を持っているそう。

イングリッシュ・フォックスハウンドのリンク先(wiki)に書かれていたのですが、イングランドでは、猟犬を使った狩猟は20世紀の終わりに全面禁止されたそうです(後に緩和されたようですが)。
ワトスンには狩猟の経験があるかもしれませんが(グラナダ版の『マスグレーヴ家の儀式』では狩りに参加していたと思います)、ジョンの場合は、猟の様子を見る機会がぐっと少なかったはず。子どもの頃見たことがあるか、映像などで観たのかも。もしくは、「ブラッドハウンド犬」の例え自体が英国人にとっては身近なのかもしれません。日本人も、直接会ったことはなくても「武士のような」とか言いますし。

あやしいDVD売り

ジョンの診察室を訪れた、見るからにあやしいお爺さん。

"Dr.Verner is your usual GP, yes?"
"Yeah, yeah, yeah. He looked after me man and boy."
「いつもはヴァーナー医師がGPですよね」 
「ええ、ええ、ええ。子供のころから面倒を見てもらってますわい」(拙訳)


ヴァーナー医師の元ネタは、「ノーウッドの建築士」に出てきます。

これを話しているのは、ホームズがロンドンに戻って数ヶ月後のことであるが、私はそのころ彼の乞いをいれて、ベーカー街で再び彼と同居の生活をしていたのである。ケンジントンの私の小さな医院を買ったのは、ヴァーナーという若い医者で、私の切りだした売値を驚くほど素直に承諾した。これは数年後になって、ふとしたことからわかったのだが、ヴァーナーはホームズの遠い親戚にあたり、金も実際に出したのはホームズであったという。



また、「ギリシャ語通訳」で、ホームズは「(前略)この性向はやはり血統からきている。たぶん祖母からうけ継いだものらしい。この祖母はヴェルネというフランス人の画家の妹にあたるんだが、えてして芸術家の血統は、いろんな変った人物をつくりだすものだ」と語っています。ヴァーナーという名前は、ヴェルネの英語読みにあたるそうです。

「帰還」後、原作のホームズは、結婚して開業したワトスンとまた一緒に暮らし始めるのに、現代版はまったく逆なんですね。シャーロック、かわいそう。
それにしても、現代版ヴァーナーさん全然「若い医者」じゃないな!いったい何歳なんだ!?

ここでお爺さん、隙あらば、という感じで営業を始めます。

「チャーチ・ストリートの角で小さな店をやってるんですがな。雑誌とかDVDです。いくつか、ご興味のありそうなイイのを持ってきましたぞ」(拙訳)



ここから先、いつも以上に訳に自信がないので原文つきで。(原文もあんまり聞き取れてないですけど)

"Tree Worshippers. Oh, that's a corker. It's very saucy.
And British Birds. Same sort of thing.
The Holy War.Sounds a bit dry, I know,but there's a nun with all these holes in her habit..."

「『樹木崇拝者たち』これはいい、なかなかいやらしい。
『英国の小鳥ちゃんたち』まあ似たような感じじゃな。
『聖戦』退屈そうでしょうが、しかしこの尼僧がなかなか……」



"with all these holes in her habit"はよくわからないんですが、あんまり追及しないほうがいいような気がします。

原作では、まず外でワトスンが本を抱えた老人にぶつかり、本を落とさせてしまいます。
その中に「樹木崇拝の起源(The Origin of Tree Worship)」という本があります。
その後老人はワトスンの診療所を訪ねてきます。

「なアに、ついご近所におるものでしてな。そこのチャーチ街の角のちっぽけな本屋が私の店なんで、以後どうぞお見知りおきを。お見うけするところ、あなたも集めていらっしゃるようですな。『英国の鳥類』『カタラス詩集』『神聖戦争』などあるようですが、みな掘り出しものですな。あの本だなの二段目のすきは、もう五冊もあると埋まるんですがな。あれじゃあちと不体裁じゃありませんかね」


ワトスンの蔵書のうち、「カタラス詩集(Catullus)」だけは現代版にいじられてませんが、元々結構いやらしいって、純真な少女の頃JSHC(日本シャーロック・ホームズクラブ)のおねえさんたちに教えてもらいました……

その後「さてはシャーロック」と疑ったジョンはマジギレ、ホームズだと分かったワトスンは気絶。

 私はそういわれたので、うしろのたなを振りかえったが、顔をもとへもどしてみると、そこにシャーロック・ホームズが、テーブルをへだてて、微笑をふくんで立っているのである。思わず腰を浮かして、数秒間は呆然とその顔を見つめていたまでは覚えているが、そのまま気絶してしまったものらしい。



原作ではどんな感じだったか、確かめるためにグラナダ版「空き家の怪事件」を観直してみたのですが、気絶してホームズに介抱された後、一分も経たずに笑顔になるワトスンは本当に凄いですね……
かといって、シャーロックも同じ現れ方をすれば感激してもらえたかというと、そうでもない気がします。
ジョンを介抱するには、誘拐されるという伝統の儀式が必要ですからね……。それでようやく仲直り。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)




仕事に戻ろう

喧嘩別れしたジョンとシャーロック。それぞれの日常の仕事ぶりが、テンポよく交互に紹介されます。
刺激的な言葉がたくさん出てきますが、二つの場面のつなぎでうま~く処理されるのには思わず笑ってしまいます。

今回FC2的にどこまで大丈夫なのか、それなりに気を遣いながら書こうと思います……
元ネタ検索に関わるところ以外はなるべく省くとして、え~と、口腔カンジダ症を患っているリーヴス夫人に、処方箋を渡すところで場面が切り替わり、"Monkey glands,but enough about Professor Presbury."というシャーロックのセリフが!
プレスベリー教授とサルのなんとやらについては、原作「這う男」をご覧ください。ものすごく端的に言うとこれみたいなものだったんじゃないかと思います。(ミスターリーヴスの方かい!)
……ジョンの言う通り、口腔カンジダは珍しい病気ではないですし、それ以外にもさまざまな原因によって起こるということを、ここでは述べておきたいと思います。

ハーコート夫妻の元ネタは、プレスベリー教授の奇行について221Bに相談に訪れた、教授の秘書と娘(婚約中)かと思ったのですが、どちらも名前が違います。
彼らと教授の関係がわからないし、シャーロックがどういう文脈でmonkey glandsという表現を使ったのかもわからないのですが、ハーコート氏は延々とプレスベリー教授の話をしていたようですね。
いずれにしても、ハーコート氏は原作のプレスベリー教授と同じように「若返り」を図って、若い女の子に迫っていたんでしょうが、彼はごく現実的な方法を選んだようです。

ペンパルがメールをくれなくなった事件(ペンパルって日本ではすごく久しぶりに聞くけど、英語では普通に使ってるのか!日本語でいうところのメル友ってやつでしょうか)は、もう、まんま「花婿失踪事件」ですね!義父の名前もおなじウィンディバンクだし。
ウィンディバンクには珍しくホームズが激昂するんですが、シャーロックも辛辣な言葉を投げかけてます(代わりにジョンが言ってますけど)。
「花婿失踪事件」を元ネタにした事件は"The Sigh of Three"にも出てきます。
"Happily Ever After"もそうですが、(関連記事:『いつまでも幸せに』)"The May Fly Man"(カゲロウ男)の事件も似ていますね。

最後に出てきたお爺さんについては長くなりそうなので、記事を分けたいと思います。
そんなこんなで、次回も下品です。

兄弟のゲーム

懐かしの221Bで会話するマイクロフトとシャーロック。ただ話をするだけでなく、並行してチェスを……と思ったら、よくよく見ればオペレーションゲームをやっているようです。(オペレーションゲーム、懐かしいな!もうあんまり見なくないですか?と思ったらちゃんとamazonで売ってたわ……)
「チェスをやってた→飽きたのでオペレーションゲームを始めた」のかと思ってましたが、椅子、移動してないですよね。ずっと「部屋にチェス盤置いてあるのに、やってるの見たことないよなあ」と思ってたんですが、ここにきてまさかの寸止め。
まあ、出してあるんだから、オペレーションゲームの前にチェスをやってたんでしょうが、やっている姿を見せないのは「ホームズチェス嫌い説」に関係あるのかも。この説に関しては過去記事でも取り上げましたので、よろしければご参照ください。(過去記事『シャーロックとボードゲーム』
ひょっとしたら、チェスはシャーロックの持ち物ではなく、もともと221Bにあったのかもしれません。第3シリーズではハドスンさんの夫の描写も出てきますけど、ちょっとアンバリー老人っぽいといえなくもない、強烈なキャラですしね。生きてたらジョンが話し相手にさせられてたかもな。

ゲームに飽きると、推理遊びが始まったようです。
ホームズ兄弟のこの遊びは、原作にもあります。221Bディオゲネス・クラブの窓から通りを見下ろしながら、通りかかった男について推理合戦を繰り広げます。

「軍人あがりだと思うな」シャーロックがいった。
「ごく最近除隊になったばかりだね」兄がいう。
「インドで勤務していたのだ」
「そして下士官だよ」
「砲兵だと思う」
「細君をなくした」
「でも子供が一人ある」
「一人じゃないなあ。何人かあるよ」(ギリシャ語通訳)



現代版での推理合戦の対象は、毛糸の帽子。
依頼人が忘れていった帽子についてホームズが推理をする場面は、「青いガーネット」にありますね。引用するとすごく長くなっちゃうので要約すると、

・持ち主は知能が優れている(帽子のサイズが大きいので、脳も大きい)
・過去3年以内に裕福な時期があったが、零落した(3年前の流行の型の上等な品だが、新しいものが買えていない)
・以前は思慮深く、今は堕落している(飲酒癖がついたと推定)が、自尊心は残っている(飛ばされないように紐と止め金をつけているが、今は紐がきれている。また、しみにインクを塗ってごまかしている)
・すわりきりの生活、運動はしない、中年、髪は半白、二三日前に散髪したばかり。ライム入りのクリームを使う。
(床屋のはさみで刈った短い髪がたくさんついている、それらはべとついて、ライム入りクリームの匂いがする。帽子に室内特有の埃がついている。汗のしみがついているので、汗かきで運動に向かない)
・妻とうまくいっていない(帽子の手入れをしてくれていないから)
・家にガスをひいていない(ろうそくの垂れた跡があるので、ガス灯がないと思われる)



現代の感覚だと首をひねってしまうものもちらほらあります。原作の時代の科学では、「頭が大きい=脳の容量が大きい=頭がいい」と思われていたんですね。(関連記事『シャーロックと頭蓋骨』)現代版では、採用されているネタもされてないネタもあります。

"He?"
"Obviously."
"Why? Size of the hat?"
"Don't be silly.Some women have large heads too.No, he's recently had his hair cut,you can see the little hairs adhering to the perspiration stains on the inside."
「男?」
「明白だ」
「どうして?サイズか?」
「馬鹿なこと言うな、女性だって大頭はいる。そうじゃなくて、最近髪を切ったようで、内側の汗じみにごく短い髪がくっついているからだ」(拙訳)



特にしなくてもよさそうな「サイズの話」がわざわざ出てくるのは、前述の「脳の容量」の話を思い出させます。

【追記:2014.4.20】蝋のしみは5個、補修痕が5個という「数」も一致しているそうです。フレリンさんからメールで教えていただきました。(更新して1時間くらいで!)ありがとうございました!

決定的な証拠はないまでも、確率論で持ち主が男性だとあたりをつけるマイクロフト。Balance of probabilityというフレーズは、後にもう一度出てきますね。マイクロフトのほうが世慣れているから、こういう台詞が出てくるのかな。
一方、シャーロックはマイクロフトが孤立していることを厳しく指摘します。

"I am not lonely, Sherlock."
"How would you know?"
「私は孤独ではないよ、シャーロック」
「どうしてそんなことが言える?」(拙訳)



これは"A Scandal in Belgravia"での
"I'm not afraid of sex" "How would you know?"というやりとりの「報復」ですよね。

”The Empty Hearse"には"The Reihenbach Fall"の回想シーンが何度も出てくるんですが、その中で、シャーロックがビルから落ちたと思い込んだジョンが「通して下さい!彼は友達なんです」と叫ぶところも何度も繰り返されます。
ひょっとしたら、シャーロックはこれがすごく心に残っていたのかもしれません。「友達」という具体的な言葉で、ジョンの中の自分の場所を確認できたことが。もちろん嬉しいだけじゃなく、そう言ってくれるジョンのもとを去っていく痛みもあったでしょうが、離れていた2年間ずっと、シャーロックはある意味では心強かったんじゃないのかな。「お前より自分のほうが賢い」と長年弟に思い込ませ、自分以外の人間をすべて「金魚たち」と見下している兄に、「金魚の中の一匹である喜びを知ること」を経て、初めて本当の意味で反論できたのかもしれません。

ブログで「天然繊維の伸長強度を比較した(I've written a blog on the varying tensile strengths of different
natural fibre)」というシャーロック。ハドスンさんはともかく私に言われたくないでしょうが、相変わらずアクセス数の少なそうな記事を頑張って書いてるな……。
ホームズの(ワトスンの記録ほど)庶民一般に人気がない論文については、このブログでも以前まとめました。(関連記事『煙草の灰の研究』

ちょっとびっくりしたのは、"Elementary"(初歩だ)という台詞がここで出てきたこと。
ホームズは この表現を「背の曲がった男」で使っています。

“Excellent!” I cried.“Elementary,” said he.
「おみごと!」「なに、初歩さ。」



「初歩だよ、ワトスン君("Elementary,my dear fellow")」という台詞は実は原作には存在しない(※正確には、それぞれの文を言ったことはあるが、組み合わせて使ったことがない)というのは有名な話ですが(P.G.ウッドハウスの小説やウィリアム・ジレットの映画など広まったフレーズらしいです)、ここではマイクロフトが使ってるんですね。小さなことですが、こだわりを感じます。
【追記2】観返したところ、どちらが話していたか聞き違えていた部分がありました。はじめシャーロックがElementaryと言ったように思ってたのですが、聞き違いでマイクロフトの台詞でした。すみません!打消し線で修正するとややこしくなるので、文全体を書き換えました。
【追記3:2014.5.2】221Bとディオゲネスクラブを間違えてました……なんかもう色々すみません。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

『高名の依頼人』のこと書きましたが、6月24日までグラナダ版がGYAOで無料で観られるそうです。
こちら

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このブログで考察した「元ネタ」を、ドラマの時系列に沿って探すための索引サイトです。 順次更新致します。 「21世紀探偵・ブリキの文書箱」
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