最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
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ハドスンさんの恋

ひとつ前の記事のために"The Hounds of Baskerville"の台詞を読み返していて、ふと気になる人物が。
それは、ハドスンさんの恋のお相手のミスター・チャッタジー。

彼に関してわかっていることはとても少ないのですが、列挙してみますと

・階下のサンドイッチ屋さん(マイクロフトとジョンが話をしていたSPEEDY CAFE)で働いている
スクラッチ・カードが好き(←【追記:2014.5.5】これはハドスンさんの趣味かもしれない、としむらさとしさんにご指摘いただきました。コメント欄をご覧ください。)
ドンカスター※とイスラマバードに妻がいる(※ドンカスターは競馬場が有名)
・ハドスンさんをクルーズに誘ったが、その気はさらさらなかった

一夫多妻主義=イスラム教徒と決め付けてしまったらあまりにも安直でしょうが、インドっぽい名前、ハドスンさんが(彼のために)つけていた香水の名が「カスバ・ナイツ」であること、パキスタンの首都イスラマバードに奥さんがいることも考え併せると、中東出身の人なのでしょうか。飲食店で働いているのが中東系の人というのにも、すごく「今のロンドン」の匂いがします。

原作で外国人労働者の登場する話というと、思いつくのは「六つのナポレオン」で描かれるイタリア人たちです。
「赤い輪」でもそうだったのですが、「社員が命令に違反するとすぐ殺してしまうという例の政治的秘密結社マフィア」の内部の諍いが事件の発端になっています。
グラナダ版ではイタリア人街サフロン・ヒルの様子も描写されていましたが、窓辺で髪を洗うおねえさんが妙に官能的で、たぶんこれがイタリア女性のステレオタイプなんだろうなあ、と感じました。

もちろんイタリア人男性だってセクシーですが、原作の舞台は、性道徳に厳しいことで有名なヴィクトリア朝ロンドンですので、貞淑な英国婦人であるハドスンさんとその人たちがどうこう…なんて、まずあり得ないはず。
とはいえ、下宿人のおかげで、刑事さんたちから浮浪児、国王から凶悪犯人まで幅広いお客様に対応し続けたハドスンさんですから、常識では測れないかもしれませんが。

「シャーロック・ホームズ家の料理読本」には、スコットランド・ヤードのベインズ警部がハドスンさんに淡い恋心を抱いて、ベイカーストリート・イレギュラーズの子どもたちにからかわれるというエピソードが入っています。レシピ本の体裁をとったハドスンさんの半生記、といえるかもしれません。

シャーロック・ホームズ家の料理読本 (朝日文庫)シャーロック・ホームズ家の料理読本 (朝日文庫)
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ここからは下世話なおまけ話。
シャーロックとジョンのことは息子のように可愛がっているハドスンさんですが、男性として好みなのは、チャッタジーさんのように破天荒で危険な香りのする肉食系男子なんじゃないかしら。おそらく、死刑になった元旦那様もそんなタイプだと思うんですが。"The Reichenbach Fall"で(ジムが差し向けた)筋肉質でセクシーな職人さんに、すごくいい笑顔を向けてませんでした?
もし、ハドスンさんの好きなタイプまでリサーチしてたんだとしたら、改めてジムの犯罪王ぶりには舌を巻きますよ…!

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逃してなるものか!

"20-year-old disappearance,a monstrous hound? I wouldn't miss this for the world!"
「20年間の失踪にお化け犬だって?逃すわけにはいかない!」(拙訳)


原作同様「忙しいからロンドンを離れられない」と言っていたのに、一転して自分もダートムアに行くと宣言するシャーロック。

先日YOKOさんのブログにお邪魔したところ、この台詞の元ネタに関するコメントがあることを教えていただきました!そのコメントを書き込んでいらっしゃったよっしぃさんとYOKOさんのご承諾を得て、こちらでも取り上げさせていただきます。

「まア、まア」はや腰をあげかけたウィルスンを押しもどしておいて、ホームズはいった。
こんな珍奇な、おもしろい事件をのがしてたまるもんですか!(I really wouldn’t miss your case for the world.)(後略・『赤髪組合』延原謙訳)」


ほとんど同じ台詞なのですね!これは気付きませんでした!よっしぃさんのご慧眼に感服致します。
「バスカヴィル~」のように全体の元ネタがはっきりしている回は、ついその作品に注目してしまいますが、他の作品にもホームズが面白い事件を「逃してなるものか」と言う台詞はあったでしょうか。発見した方がいらっしゃれば、教えていただけたら嬉しいです。

よく考えてみると、原作のホームズも「他の事件で忙しい」と言いながらもなるべく早くダートムアに行く気でいたわけで、内心では同じ台詞を叫んでいたかもしれません。
「行かない」と言っていた段階では、原作と同じ展開を思わせる台詞もありましたね。

"But don't worry,I'm putting my best man onto it.I can always rely on John to send me the relevant data, as he never understands a word of it."
「でも心配しないで、最高の人材が行くから。情報収集はジョンが頼りなんだ。彼自身は何一つ理解してないにしても(拙訳)」


原作ではこんな感じです。

「それでは誰がよろしいでしょう?」
ホームズは私の腕に手をおいた。
「このワトスン君がひき受けてくれるといちばんいいのですがね。いつもあなたの身辺についていて、いざという場合これほど信頼できる人はないと、確信をもっていえます」(バスカヴィル家の犬)



原作と比べると、現代版シャーロックは一言多いのがよくわかります…

さらに、よっしぃさんのご指摘くださった「赤髪組合」では、依頼人にこんな風にワトスンを紹介していますね。

「(前略)ウィルスンさん、この紳士はね、いままでに私が成功した多くの事件に、たいていの場合私の相棒ともなり、助手ともなってくれた人なんですよ。ですからあなたの問題にだって、きわめて有力な役をつとめてくれるにちがいないと思うんです」



ワトスンに対しても、依頼人に対しても、現代版シャーロックより原作ホームズの方が「口が巧い」なあ、と思います。よっしぃさんとお話していて、ジェレミー・ブレット演じるホームズがワトスンにさっと寄って行って笑顔で事件に「巻き込む」様子を思い出したのですが、心からの笑顔や言葉だったにしろ、演技だったにしろ、ホームズはワトスンをその気にさせたり、依頼人にワトスンの捜査への参加を納得させるのが本当にうまい!

シャーロックだって捜査のためなら笑顔を作って見せることができるのですが、その技巧をジョンに対して使うことはないみたい。その分、面倒見の良いジョンが自分から歩み寄っている感じです。だからこのお話の中盤で、ジョンの方が臍を曲げた時、シャーロックは必死ですがりつく羽目になります。原作と現代版の二人の関係は、もちろん似ている部分もありますが、違うところもたくさんありますね。

「赤髪組合」から話をなんだか違う方向に持って行ってしまいましたが、よっしぃさん、YOKOさん、「逃すわけにはいかない」重要な発見を快くシェアしていただき、ありがとうございました!

(原作からの引用はすべて延原謙訳)

引用と矛盾

「緋色の研究」でホームズと出会い、共同生活を始めたワトスンは、この新しい友人の一風変わった性格に興味を持ち、「シャーロック・ホームズの特異点」をリストアップします。(『そんなくだらないことは早くよしたほうがいい』と本人はつぶやいていますが、まず『診断書を作る』という医者らしいアプローチが面白いですよね)

その中に

一、文学の知識―ゼロ。

という項目が。

しかし、後にホームズは文学に関する知識も披露しています。物語や章の締めが、ホームズによる文学作品ないし文学者の名言の引用であることも多いと思います。

「(前略)『自分の理解できないものを嘲笑するのは人生の常である』と、ゲーテはいつでも穿ったことをいうね』(『四つの署名』)


「(前略)『人はむなしく、業績こそすべてだ』とギュスターヴ・フローベールジョルジュ・サンドに書き送っているようにね」(『赤髪連盟』)



とりあえず、具体的に作家の名が出てくる(ので私にもわかりやすい)二つを挙げましたが、オックスフォード版(日本だと、河出書房新社版)のホームズ全集などには、それこそ数え切れないほどの注釈があります。シェイクスピアの引用なんてかなり多いようです。この時代の人(まあ、それなりの教育を受けた人に絞る)として、どのくらいの文学的知識があればワトスンに合格点がもらえるのか、私にはわからないのですが、少なくとも「ゼロ」は厳しいんじゃないかなあ…?「
知識があるのに、何も知らないふりをしてワトスンをからかっていた、という可能性もありますよね。その後、ワトスン自身も「あれは珍記録だった」と笑っています(『オレンジの種五つ』)。

それから、ホームズの絵画の鑑賞眼にワトスンはすごく批判的。

(前略)それから約二時間というもの彼は、そこに陳列された多くの近代ベルギー画家の傑作にまったく心を吸いよせられていた。話すことも美術の話しかしようとしなかった。そのまた彼の美術眼なるものがきわめてお粗末なもので、私は画廊を出てようやくノーサンバランド・ホテルにたどりつくまで、さんざん閉口させられたのである。(バスカヴィル家の犬)



そ、そこまで言う…?詳細は書かれていないので真実はわからないものの、ホームズの鑑賞眼が本当に「お粗末」だったとしたら、宿敵のモリアーティ教授がジャン=バティスト・グルーズの絵画を書斎に飾っていたのと対照的、といえるのではないでしょうか(モリアーティに『美術眼』があったのかその価値に目をつけたのかはわからないのですが、書斎に飾っているからにはやはり好きで買ったのではないかしら)。現代版のシャーロックとジムにもこういう対照があるのかな?この件は、あらためてまた考えてみたいです。

現代版シャーロックの苦手分野は、ポップカルチャーではないかと思います。
英国人のくせに(失礼)007をよく知らない!という事実が、ジョンのブログのコメント欄で発覚します。(ジョンはそんなに驚いていないようですが、これって英国人として珍しくないんでしょうか。そう言う私も、日本人なのに寅さんシリーズを数話しか観てません…サブタイトルを言われたらなんとなくわかりますし、大体の説明はできますけど)

では観よう、という話になり、後日本当に揃って観ている様子がシャーロックのサイトでわかるのですが、思えばこの時ジェームズ・ボンドの名がマインド・パレスのどこかに置かれた(そして、かなり埋もれちゃった)ことが、第2シリーズへの伏線になっていたわけですね。


でも、シャーロックは映画の台詞の引用もするんですよね。
"A Study in Pink"で彼が叫ぶこの台詞。

「ヒューストン、僕たちは間違ってた(Houston, we have a mistake)」



シャーロックを馬鹿にできないほど映画に疎い私は気付かなかったのですが、この台詞は、「アポロ13」の台詞「ヒューストン、問題が発生した (Houston, we have a problem.)」のパロディ、と教えていただいたことがあります。
映画ではなくて実際のアポロ13号で発せられた言葉(Houston, we've had a problem.)をもじった可能性もありますが、リンク先のwikiでもこの改変は結構大きく取り上げられているので、(少なくとも脚本家さんは)映画の「アポロ13」の方を使ったのかもしれません。今回調べてみて初めて知ったのですが、元の言葉をタイトルにした映画もあるのですね。
他にもジョンが

「分かったよ、スポック、落ち着け(All right,Spock,just take it easy)」



という「スタートレック」からの引用(?)をする場面も"The Hounds of Baskerville"にありましたね。
この後シャーロック役のベネディクト・カンバーバッチが同シリーズに出演する、という「大人の事情」はとりあえず置いといて、「シャーロックは全く映画を観ない」と思っていたら、ジョンもそんな宥め方はしないんじゃないでしょうか。(日本人でしかも映画に詳しくない私には、ロンドンの若者への『スタートレック』の浸透具合はいまいちわかりませんから、口をついて出てしまった可能性がゼロとは言えませんが)
そんなこんなで、ジョンと知り合った後からか、その前からかはわからないけれど、シャーロックにも多少映画の知識があるんじゃないかなあ、と思います("The Great Game"以来テレビもよく観るようになったことですし)。

もうひとつ引っかかるのが、「天体関係の知識がない」ということ。
「緋色の研究」でカーライルを知らないと言っていたホームズがカーライルの引用をするように、シャーロックは("The Great Game"でプラネタリウムに行く前から)本当は宇宙についてちゃんと知っていたと思ってるんですが、どうでしょう。アポロ13号やスタートレックを知っているのに、太陽系を知らない、というのはちょっと考えにくいですよね。
「知らない」というのはジョンの誤解で、シャーロックは「『一般的』な知識があるかどうかは、僕にとって重要なことじゃない」と言おうとしていたのに、売り言葉に買い言葉で「知らない」ことになってしまった、という前日譚があるのではないか、と私は思っているのですが…

まあ、ホームズによると「人間の脳の物置はせまいのだから、使いそうな道具類だけちゃんとしまっておけばたくさんなのだ。ほかのものはみんな書斎のがらくた部屋に押しこんでおいて、必要のあるたびに出して見ればよい。(後略・『オレンジの種五つ』」ということですから、必要に応じて覚えては忘れ、覚えては忘れを繰り返しているのかもしれません。(ひょっとしたら忘れる、というのも正確な表現ではなくて、マインドパレスの奥の方に突っ込まれているのかもしれませんが…シャーロックは脳を『ハードディスク』に例えて、いらないものは消去する、と言っていましたね。)
面倒だからもう覚えとけばいいのに…というのは凡人のツッコミで、本人たちにしかわからない優先順位があるんでしょうね。

(原作の引用はすべて延原謙訳)
プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスンがより好きです。

2017年エイプリル・フールお片付けしました。お付き合いありがとうございました!片付けきれてないところがあったらお知らせいただければありがたいです。

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