最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
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ワトスンの友人たち

以前、「ホームズの友人たち」という記事を書いたのですが、ワトスンの友人たちに触れられないままだいぶ経ってしまいました。
原作はワトスン視点で書かれていることもあり、やはりホームズよりもワトスンの友人の方が登場する名前が多いです。(ホームズは常に彼の『仕事』を通して描かれますので、仕事上の関係者はいっぱい出てくるのですが、『友人』と明記されていないケースが多いというのもあります…知人の数はホームズの方が多いと思います)
思いつくままに挙げていきますので、とりこぼしが多いかと思いますが、「こんな人もいたよ」と教えていただければうれしいです!

〈原作・現代版両方に登場〉

・マレー
ワトスンの命の恩人。戦場で傷ついたワトスンを馬の背に乗せて味方の陣営まで連れ帰ってくれました。
(挿絵はどう見てもおんぶなのがずっとひっかかってるんですが…)



現代版では、ジョンのブログにかなり早い時期から書き込んでいます。奥さんもいるみたいですね。ラブラブな空気が伝わってきます。
ジョンの過去の女性関係を色々知っててハリーに明るくばらしたり、あんまり空気読まないというか、ざっくばらんな人みたいですね。ジョンと彼のやんちゃな時代を想像できます。
マイク同様、ファーストネームをつけてもらったようですが、すごい人と同姓同名に…!
ビル・マーレイ

そういえばジョンのセラピストは「エラ・トンプソン」さん。
エマ・トンプソン
なんていうんでしょうか、今読み返すとこの頃のジョンブログは遊び心を通りこして雑というか、ゆるいというか、「こんなにヒットしちゃうことは計算してなかったんじゃないか」という感じがします…

・スタンフォード
原作ではワトスンの元助手。ホームズとワトスンを引き合わせた、歴史的マッチメーカー。
飄々とした性格で、ホームズが犯罪に詳しいことを茶化して「この方面の新聞を発刊するといいですよ。発刊するんだったら、『過去の犯罪新報』という名にするんですね」なんて言ってますが、案外この一言がワトスンが記録をつけるきっかけになったのかも、なんて思うともう彼に足を向けて寝られません(どこに向ければいいんでしょう)。

現代版にも登場。「マイク・スタンフォード」と名乗っています。なぜか「昔より太った」設定になってますが、これは飽食の現代を鋭く批判しているのか、単なるキャスティング上の都合なのかはよくわかりません(マイクロフトは原作の方が太ってますし)。
根拠はないんですが、年齢のバランスからいうとジョンとは同期、という感じがします。教鞭をとっているようです。 

以前へしこさんがおっしゃっていましたが、シャーロックとジョンが「合う」ことを確信していたのか、二人の様子を微笑みながら眺めていますね。シャーロックの奇矯さに驚くジョンを面白がっているようにも見えます。「昔と違って」無表情なジョンを心配していたようなので、目を丸くする様子が嬉しくもあったのでしょう。

スタンフォードは第一作「緋色の研究」冒頭に登場したきりですが、マイクはブログに書き込んでくれたり、第2シリーズでも一緒に夜遊びしていたり、ジョンと仲よしみたいですね。シャーロックと交流があった(おそらく数少ない)友人の一人である彼も「演技であんなムカつく態度を続けられる奴なんかいない」と思っていそうなので、シャーロック失踪後もジョンを励ましてくれていると思いたいです。


〈原作のみ登場〉

・アイザ・ホイットニー
ワトスンの奥さん、メアリの友人の旦那さん。ワトスンの患者でもありますが、家族ぐるみのお付き合いがあったようです。「唇の捩れた男」ではアヘンに溺れていて、ワトスンがアヘン窟まで迎えに行っています。

・サーストン
ワトスンのビリヤード仲間。ホームズ曰く、「君はサーストン君以外の者とは撞球をしない」そうです(『踊る人形』)。
南アフリカ証券の株を買わないか、とワトスンに持ちかけますが、結局買わなかったみたいです。

なんでサーストンとしかビリヤードをやらなかったんでしょう。「投資」の話を持ち出してくるあたり、サーストンも賭け事好きのようなので、ビリヤード勝負にも金銭が絡んでたのでしょうが、あまり勝てなかったので手を拡げなかった、とか…?

・パーシー・「おたまじゃくし」フェルプス
「海軍条約文書事件」の依頼人。ワトスンの幼馴染。ワトスンより頭も家柄もよいのですがひ弱なタイプだったみたいで、幼いワトスンたちは「運動場で追いまわしては棒ぎれで向こうずねをひっぱたいて面白がっていた」とのこと。(原文を読むと、この『棒』とはクリケットのウィケットじゃないかと思います。ひっぱたいたというよりは、これにひっかかって転ぶまで追っかけまわしたんじゃないでしょうか。どっちにしろイジメですけど…)
そんないじめっ子キャラだったとは、エドワード・ハードウィックのワトスンからは想像つかないんですが、ジュード・ロウの勝気なワトスンなら結構想像できるような。
ちなみにマーティン・フリーマンをそのままワトスン、ベネディクト・カンバーバッチをフェルプス君にキャスティングすると、たった今も撮影現場でやってるんじゃないかってレベルでしっくりくるのは私だけでしょうか…

大人になったフェルプスは、政治家のおじの後ろ盾もあり、外務省でエリートコースを歩んでいます。
でも、立派になってもくよくよする癖は直らないみたいで、ワトスンが懸命に慰めながらもちょっとイラっとしてるのがわかります。幼馴染ってこういう感じですよね…

・ロバート・ファーガスン
「サセックスの吸血鬼」の依頼人。互いに話したことはないようですが、ワトスンが「ブラックヒース」でラグビー選手をしていた頃、他チームの選手でした。ワトスンは彼を類まれなスリークォーターとしてよく覚えていましたし、ファーガスンの方でもワトスンを覚えていて、試合で観客の中にワトスンを叩き込んだというエピソードを披露します。
この人は現代版にはまだ登場してないんですが、ジョンのブログには「ブラックヒース」のメンバーと飲みに行ったことが書いてありましたね。(関連記事『ジョンはラグビー選手?』)
きっと、ジョンが一人になった後も、頃合いを見てジョンを呼び出してお酒を飲んで騒いで、でもシャーロックのことには一言も触れないんだろうなあ、と思います。

描写のされ方が違うだけかもしれませんが、ホームズに関しては人生のさまざまな局面で「深い付き合いの友人が一人ずつ」出てくるのに対して、ワトスンは「戦友」「仕事仲間」「ダンナ友」(←そんな日本語は聞いたことないですけど『ママ友』みたいな感じで読んで下さい)「ビリヤード仲間」など、並行してさまざまな分野に少しずつ友達がいる、つまり浅く広い付き合いをしているという印象を受けます。

これはシャーロックとジョンにも同じことが言えるかも。シャーロックは"The Hounds of Baskerville"で「ジョンがたった一人の友達」と明言していましたが、二人それぞれのウェブサイトを比べても、ジョンには人がたくさん集まってきて、男友達もガールフレンドも絶えない様子です(もちろん、付き合いの深さでいえばシャーロックは別格ですが)。ただ、少なくともシャーロックと同居をはじめてからは、ガールフレンドとは長続きしてないみたいですね。

また、ホームズとその友人たちが「話が合う」ことに重きを置いているのに対し、ワトスンとその友人たちには「おんぶ」とか「ひっぱたく」とか「投げ飛ばす」とか、肌と肌との触れ合いの話が多いみたいです。(私には、引退後のホームズはそれ以前に比べてだいぶ印象が違って見えるのですが、その時点ですら友人のスタクハーストと一緒にするスポーツは『水泳』で、触れ合いはないんですよね。)これは、それぞれが好んでそういう環境に身を置いてきた、ということなのでしょうね。

どちらの「付き合い方」に共感するかは人それぞれだと思いますが、二人の性格の違いが表れているのはおもしろいですね。そんな二人が出会って生涯の親友になるなんて、人生は不思議です。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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謙遜は美徳?

"You're too modest, Mr Holmes."
「あなたは謙虚すぎますよ、ホームズさん」
"I'm really not."
「そんなことはない」 (拙訳)


一視聴者としても、全力を振り絞って「そんなことない」と言わせていただきたいですが(たぶん同居人も)、原作でも「謙遜」についての会話がワトスンとの間で交わされますね。

原作では、マイクロフトの存在はホームズとワトスンの他愛ない雑談の中で明かされます。
「ギリシャ語通訳」の冒頭で、「才能は遺伝によるものか環境によるものか」という話題で盛り上がる二人。その中で、ワトスンは「君の推理の才能は少年期からの訓練によるもの」と指摘しますが、ホームズはそれを認めながらも、遺伝によるものもあると思う、と言います。

「だって僕の兄弟のマイクロフトなんか、僕より多くその特性を持っているもの」



初めて兄の存在を知ったワトスンが、ホームズが謙遜して自分より兄弟の方が優れていると言っているのではないか、と聞くと、ホームズがこう答えます。

「ワトスン君、僕は謙遜を美徳の一つに数える人には同意できないね。論理家は、すべての物事をあるがままに見なければならない。自分の価値を法外にひくく見積るのは、自分の力を誇張するのとおなじに、はなはだ事実に即さない。だから僕がマイクロフトは僕よりも優れた観察力をもっているといったら、まったくのところそれが正真正銘の事実だと思ってくれていい」



状況が状況でなかったら、「そんなことはない」の後にこれだけの長広舌が続いていたのかと思うと、状況が状況でよかったです。多分ホープも若干うんざりです。(いや、むしろ意気投合するか?)
現代版では今のところ、マイクロフトの「探偵としての能力」は、それほど前面に押し出されていません。
しかし、ジョンの外泊中のできごとをシャーロックより細かく当てたこともありますし(関連記事:『ソッファ~♪』)、同じ場面で弟に「なぜ自分で調査しないんだ」と聞かれています。これは兄の力を認めていなければ出てこない発言だと思いますので、おそらくシャーロックと同等か、それ以上の観察力・推理力があるのでしょうね。

それにしても、原作のホームズは、ワトスンが「それ謙遜?」と思う程度には日頃から謙遜してるんでしょうか。
ニュアンスをどれほど理解できているかわからないのですが、原作ではこんな会話もあります。

「君は人類にとって恩人だよ」
ホームズは肩をすくめた。「うん、なァに、その、ほんの少しは役にたっているかねぇ。L’homme c’est rien–l’oeuvre c’est tout(人はむなしく、業績こそすべてだ)とギュスターヴ・フローベールもジョルジュ・サンドに書き送っているようにね」(赤髪組合)



「謙遜」というよりは、いつものごとくワトスンの表現が大げさなので、修正しようとしたという感じもありますね。(この時は活動期から停滞期に入る手前で元気が無いので、ワトスンの文章を責めた時のような攻撃的な印象はありませんが)
シャーロックも今のところ、謙遜とは縁がないように思えます。上記の「そんなことはない」だって、謙虚じゃないから謙虚じゃないと言ったまでのことですし。

ところで、自分の推理を披露せずにいられないシャーロックはよく"show off"(見せびらかし、自己顕示)だと非難されます。
ジムにはこの特性を弱みとして利用されてしまいます。本人曰く、「水道みたいに出したり止めたりできるものじゃない」。ということは、自分の力を見せ付けるために意図的に言っているわけではないのですね。
原作でも、ホームズが依頼人を見たとたんにその人の職業や出身地などを当ててみせることがよくありますが、これは依頼人を驚かせ、能力を信頼させるためのひとつのテクニックと解釈していました。どうやらシャーロックの場合はそうではないようです。口から勝手に出てしまって、自分でコントロールできないのかもしれません。
第2シリーズの2話では、ジョンがシャーロックの言動について「アスペルガー」と表現します。

全ての人がそうであるように、ホームズにも彼の「特性」がたくさんあります。観察力、記憶力、分析能力が非常に優れている、一つの物事に寝食を忘れるほど集中する、恋愛など「思考の邪魔になる」干渉を好まない、精力的な時期と怠惰な時期を繰り返す、嫌いな人には失礼な態度をとる、部屋の整頓は苦手だが服装は常にきちんとしている…
現代版は原作の人物像のひとつの「解釈」ですので、やや大げさに描写されている面や、変更されている面もありますが、基本的にはホームズの特性を現代の「診断法」で捉え直していますね。
時代によっては、「個性」のひとつだったものが「病理」として捉えられたりもする。
「犯罪」だったことが「合法」になったり、その逆もある。("SHERLOCK"でいうと、『同性愛』が前者で『麻薬』が後者ですね)
「現代版」の面白さはそんなところにもありますよね。登場人物たちの性格は、現代の社会にこういう性格の人が生きていたら、周りの人にこんな反応をされ、こんな風に成長して…というシミュレーションのもとに設定されているのかもしれません。"The Blind Banker"に出てきた、シャーロックの学友セバスチャンの話からも、原作では明言されていなかった「皆に嫌われていた」という表現が出てきますね。

物語の導入部でホームズが誰かの細部を観察して「名推理」を見せるのは、原作になくてはならないシーンですが、初めてなら「すごい!」と感動しても、あまり何度も見ると「またやってるよ…」という印象は確かにあります。ましてや、シャーロッキアンならいくつもの映像化作品やパスティーシュを見てきているわけですから、「また見せびらかしてる」という感じは強いのかも。そういう作り手の思いも反映しているのかもしれませんね。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)

レストレードは知っている?

時々、このブログを読んで下さった方とメールでお話させていただくことがあります。
SHERLOCKに関係ある、なしに関わらずとても嬉しく、楽しくやりとりさせていただいているのですが、そこで思いもよらなかったような「元ネタ」を教えていただき、ぜひにとお願いして記事にとりあげさせていただいたことが何度かありました。
今回もそんな記事です。星宿さんのメールで教えていただいたものです。

「犯人は2人」に出てきたワトスンの容貌の話をしていたのですが、そのお返事にこんな一節がありました。

>スタディ・イン・ピンクの最後の方のレストレイド警部とシャーロックの会話シーンに似ている気がしました。
>どちらも、本当は判っているんだけど気付いてないふうに装うレストレイド?みたい。


星宿さんがおっしゃっているのは、「犯人は二人」で、ある目的のため「恐喝王」ミルヴァートンの家に忍び込んだ(つまり、不法侵入ですね)ホームズとワトスンをレストレードが訪ねてくる場面です。次に引用します。

この大活躍の翌朝、質素な居間で食後のパイプを楽しんでいるところへ、警視庁のレストレード君がひどくむずかしい顔をしてやってきた。
「ホームズさん、お早う。ワトスンさん、お早う。たいへんお忙しいですか?」
「お話をうかがっていられないほどじゃありませんよ」
「昨晩ハムステッドで大きな事件がありましてね。とくにお忙しいのでなかったら、ご協力ねがいたいと思ってうかがったのです」
「ふむ、ハムステッドでね。どんな事件ですか?」
「殺しです。(中略)そして金めのものは何一つ紛失していないことからみても、犯人たちは相当の地位ある人物で、秘密の暴露を防止するだけが目的じゃないかと思うのです」
「犯人たちというと、一人じゃないのですね?」
「犯人は二人でした。もうひと息で現行犯を押さえられるところだったのです。でも足跡や人相はわかっています。九分どおりそのほうから逮捕できるとは思いますが、一人はなかなか敏捷なやつでしたけれど、もう一人のほうは庭師の手つだいがいったん捕えたのに、格闘になって逃げられてしまいました。こいつは中背ながらがっしりした体格で、顎がはって首がふとく、髭があってマスクをつけていました」
「それだけではつかみどころがありませんね。そう、ワトスン君のようなやつだともいえますね」
「ほんとにね」警部はひどく面白がって、「まったくワトスンさんそっくりですね」



そして、"A Study in Pink"でのシャーロックとレストレードの会話。

「弾丸は小銃から窓を突き抜けている。あの距離からだ。射撃の名手。」
「ただの狙撃屋ではない、戦士だ。全く手が震えていなかった、戦闘に慣れているのは明らかだ」
「僕が本当に危なくなるまで撃たなかった。堅い道徳規範の持ち主。おそらく軍務の経験がある男だ、そして、鋼の神経…」

ここで、シャーロックは狙撃したのがジョンだということに気づきます。急にそわそわして「今の話は忘れてくれ」と言い出し、ジョンに駆け寄ろうとするシャーロックをレストレードは不審げに見ていますが、やがて

「わかった、尋問は明日だ。行け」とシャーロックを促し、なんともいい笑顔で二人のいる方向を見やります。

話題に上っている「犯人」がワトスン(ジョン)であるということ、そしてその「人物像」がレストレードやシャーロックの言葉でだんだん浮かび上がってくる描写が「ぜんぜん違うけど、根っこのほうで酷似している気がする」と星宿さんは指摘なさいます。

そして、その「人物像」へのホームズ(シャーロック)の反応。
ホームズはこんな感じ。

「せっかくですが、レストレードさん、これはお手つだいできませんね。というのは、このミルヴァートンという男を私は知っているのです。あれはロンドンでも有数の危険人物の一人でしたし、この世には法律でどうにもならない犯罪というものがあります―ということは、個人の復讐というものも、ある程度みとめねばならないと思うからです。(後略)」


一方シャーロックは
「ええと、そうだな、忘れてくれ」「全て無視してくれ」「ただの…あー、ショックによるたわごとだ」
と、しどろもどろ。もっとも、実質「首謀者」で心の準備ができていたホームズと、ジョンの行為に気づいたばかりのシャーロックを比べるのは酷かもしれません。ミルヴァートンに対するホームズの気持ちは、ジョンの台詞に反映されています。

「大丈夫か?」
「もちろん大丈夫だ」
「でも、人を一人殺したばかりだ」

「ああ…その通りだ。否定はしない。でもすごくいい奴じゃなかった」


ここでジョンは、自らの道徳規範を語ったり、「君のためにそうせざるを得なかったんだ」というような弁明はしません。そっけない台詞ではありますが、言っている内容はホームズと同じではないでしょうか。

このジョンの行動は、ワトスンの姿も受け継いでいます。
ミルヴァートン宅への侵入をホームズが決意した時の、ホームズとワトスンの会話。

「(前略)この手段が法的には許されないにしても、道義的に正しいのは君も認めてくれると思う。ミルヴァートンの家に押し入るのは、例の手帳を力づくで取りあげる為だ―そのためには、君もいすを振り上げて僕に力を貸そうとしてくれたじゃないか」
「そうさ」そういわれて私もちょっと言葉につまったが、「不正な手段に使おうとしているものだけが目的であるかぎり、道義的には正しいといえる」


「(前略)僕は自尊心と名声にかけても、かならず仕とめるまで闘ってみせるよ」
「どうも気がすすまないけれど、やるしかなかろうね。いつ出かける?」
「君は来なくてもいいよ」
「そんなら君も行かせないよ。僕は断じていうが、今晩の冒険に僕をつれていかないというなら、まっすぐに警察に馬車を乗りつけて、君のことを訴えてやる。決しておどかしなんかじゃないよ」
「君は行っても用がないのだよ」
「どうしてそんなことがわかる?何が起こるかしれないじゃないか。いずれにしても決心はできているんだ。自尊心は君の専売じゃないよ。名声だってそうだ」


ホームズの身が危ないとなると、いすを振り上げて相手を攻撃しようとするワトスン。
相手の家に不法侵入して書類を破棄するという危険な犯罪行為に、迷わず加わろうとするワトスン。
「君は行っても用がない」と言うホームズに(もっと危険が少ないケースでは常にワトスンの同行を望むので、これは明らかにワトスンの身を案じての『嘘』です)自らの強い意志を見せるワトスン。

原作では「道義」「自尊心」「名声」を持ち出して、現代版では「ひどい運転手だった」などという冗談に紛らせてと、それぞれの時代らしい伝え方をしていますが、ワトスン(ジョン)の本心はただひとつ「君を破滅させるくらいなら、自分が犯罪者になったほうがいい」ということではないでしょうか。

って、いつの間にかジョンの話になってますけど(星宿さんすみません!)今回はレストレードでした。
果たして、レストレードは「犯人」のひとりがワトスンであることに気づいていたのでしょうか?
ここで、星宿さんの見解を引用させていただきます。

>ただ単純に、犯人の容貌を話しているうちにワトスンに似ているから笑ってしまったともとれるし、警部自身、取り逃がされた男がワトスンだとなんとなく判っていてミルヴァートンは悪いヤツで殺されても仕方なかったし、彼が抹殺されたことで助かる人が大勢いる筈だから、このまま証拠不十分でお蔵入りにしてしまおう、と思いながらカッコ良く諦めて笑っているようにも読めてしまったのです。

星宿さんの分析は、現代版のレストレードのジョンに対する思いにもそのまま当てはまるのではないかと思います。皆さんはどう思われるでしょうか?

私なりの考えを述べさせていただくと、原作のレストレードも、現代版レストレードも、十分なヒントを得ているんですよね。

原作のレストレードは、ワトスンの人相や足跡から調べていけば「九分どおり」犯人が見つかるという確信を得ています。ホームズはああ言いましたが、「ブルドッグのように粘り強い」(関連記事:『レストレードについて』)彼なら、捜査を進めさえすれば、自らの言葉通りワトスンにたどり着くのではないでしょうか。それを引っ込めたのは、星宿さんの仰るように事情を察してあえて「かっこよく諦めた」からかもしれません。

現代版レストレードは、シャーロックの「推理」を聞いています。該当する人物がジョンであるという結論に辿りつくのは難しいことではないはず。状況から見ても、シャーロックの居場所を連絡してきて、なおかつ先に現場にいたジョンは「容疑者」になり得るにも関わらず、全く追及しなかったのはやはり「見逃した」のだと思います。
(ジョンの指にはシャーロックが指摘した「火薬やけど」が残っているので、ちょっとでも突っ込まれたら危なかったんですよね。マイクロフトはしっかり見ていると思いますが…)

「犯人は二人」の翌月には、「六つのナポレオン」が発表されています。共に、発生年の明記されていない事件ではありますが、「六つのナポレオン」冒頭ではレストレードが221Bに遊びにきて、ホームズやワトスンと仲良く会話する様子が描かれます。

現代版のレストレードも、221Bのクリスマスパーティーに顔を出したり、やむなくシャーロック逮捕の運びになったことを事前に教えてくれたり、シャーロックやジョンと「仕事の枠を超えた友達になっている」と言っていいと思います。
シャーロックとレストレードの、面倒見のよい兄と素直でない弟のような独特の関係は相変わらずですが、ジョンとレストレードはぐっと仲良くなった模様。シャーロックが知らないうちに、いつの間にか「グレッグ」「ジョン」と呼び合うようになっています。

職務に情熱を燃やすレストレードにも、警察官として遵守すべき「法律」とは別に、彼自身の正義感や、人間の命に対する思いがあって、ひとりの人間としての判断でジョンやワトスンを「守った」のではないかしら。その行動のおおもとには、シャーロックやホームズを「守ろう」としたジョンやワトスンへの共感があったのだと思います。だからこそ、その後「仕事仲間」ではなく「友人」として仲良くなったのではないでしょうか。今のところはそんな風に考えています。

(原作の引用部分は延原謙訳、現代版の台詞の引用部分は拙訳)

プロフェッサーの撮影に成功

カメラ
ニュークロス駅でのオオカミ女・ソフィーの発見、ワンズワース・コモンでの「空とぶ棍棒」との遭遇に引き続き、メラス氏はベッケンハムで、「クラティディス」のリーダーのダヴェンポート教授を目撃。
なんと、撮影に成功したとのこと!!
クリスから画像が届き次第アップします。


【解説】第2シリーズ1話にちらっと出てくるクリス・メラスの運営する「クラティディス」のファンサイト日本支部、という設定でした。
サイバーパンクっぽいテンプレートを探してきたりして頑張ったんですが、日頃のPCスキルの低さが災いし、コメント欄が「ナツミさんのブログ、ハッキングに遭ったのかと思った」という心配一色になってしまいました。あらためて、その節は申し訳ありませんでした……(2015.4.5)
プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

『高名の依頼人』のこと書きましたが、6月24日までグラナダ版がGYAOで無料で観られるそうです。
こちら

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このブログで考察した「元ネタ」を、ドラマの時系列に沿って探すための索引サイトです。 順次更新致します。 「21世紀探偵・ブリキの文書箱」
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