最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
★コメントを歓迎しております。初めてコメントくださる方は、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。
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「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
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印象的な登場

ハドスンさんがシャーロックたちの冷蔵庫を開けているところ。背後にいきなり大柄な男性が現れ、彼女は大いに驚きますが、この男性がいきなり転倒してしまいます。

この場面の元ネタは、「プライオリ学校」冒頭で依頼人のハクステーブル博士が現れるところかもしれません。
ワトスンによれば、ハクステーブル博士はこんな人。

学問的な堅苦しい称号や肩書をところ狭しとならべたてた名刺がまず取り次がれ、つづいてすぐに本人がはいってきたのだが、とても大柄で、尊大で、もったいぶって、まことに沈着堅実の権化かと思われる人物だった。


大柄というところを除けば、シャーロックたちの依頼人とはまるっきり違う人物ですね。
シャーロックによれば、

"Morbidly obese, the undisguised halitosis of a single man living on his own.The right sleeve of an internet porno addict, the breathing pattern of an untreated heart condition. Low self-esteem, tiny IQ and a limited life expectancy."
「病的な肥満。独身男・ひとり暮らしの口臭を隠そうともしない。右袖の様子から言ってインターネットポルノ中毒。呼吸の様子からして未治療の心臓疾患あり。自尊心は低く、知能指数も低く、ついでに余命も少ない(拙訳)」



と踏んだり蹴ったり。
しかし、登場のしかたは似ています。

しかもまず何をしたかというと、はいってきて後手にドアを閉めるなりテーブルにつき当たってよろめき、足を辷らせて暖炉の前の熊の皮の敷物の上へその大きなからだで倒れ伏して、気を失ってしまったのである。


ホームズとワトスンもこれにはびっくりした様子。

私たちは驚いて同時に立ちあがったが、しばらくはただ茫然として、人生の大洋のはるかな沖合いで突如おこった運命の大あらしを思わすこの不恰好な難破物を見おろして、あっけにとられるばかりであった。が、気がついてホームズは急いでクッションを頭の下にあてがい、私はブランディを取って口に流しこんでやった。



ホームズシリーズというと、名探偵ホームズはいつも余裕しゃくしゃくで、助手のワトスンは驚かされてばかり、というイメージをお持ちの方が多いようですが、こんなふうに二人して一緒にあたふたしたり、笑ったり悲しんだりする場面もたくさんあるんですよね。
たとえば、「赤髪組合」のこんな場面。

この簡単な一片の発表書と、その向うにある悲しげなウィルスンの顔とを、ホームズと私はじっと見つめていたが、いろいろと思慮せねばならぬことがあるのはさしおいて、何よりも事件のおかしさのほうが先にたち、二人はドッとふきだしてしまった。



シャーロックとジョンも、二人で大笑いする場面がありますね。
今のところ、"A Study in Pink"の犯人追跡の後で一度、"A Scandal in Belgravia"のバッキンガム宮殿の場面で一度。小さなクスクス笑いも含めればもっとあるだろうし、小説やドラマに出ていない場面でもきっとあったはず。
性格や趣味嗜好はまったく違って見える二人ですが、「笑いのツボ」は同じなのかもしれません。

きっと、「プライオリ学校」を読みかけたホームズも、「不恰好な難破物」というくだりでは思わず笑みをもらしたと思うのです。それをいたずらっぽい目で見ているワトスンも目に浮かびます。
このフレーズを読んで誰よりも笑えるのは、当事者のホームズのはず。ワトスンはこんな風にユーモラスに書くことで、誰よりもホームズを笑わせたかったんじゃないかな。

「探偵と助手」として紹介されることの多いホームズとワトスンですが、対等な友人同士として多くの感情を共有していることを、もっと多くの人に知ってもらえたらいいなあと思います。

来客が倒れた時、たまたまシャーロックとジョンはいなかったわけですが、この二人ならどうしたんでしょうね。

ちなみにこの後で、気絶しているハクステーブル博士が北イングランド地方のマクルストンからの往復切符の片割れを持っていることをホームズが指摘するのですが、"The Hounds of Baskervill”でヘンリーが列車の旅をしてきたことをシャーロックが当てる場面にすこし似ていますね。元ネタというほどの粘土ではないんですが…

(原作の引用はすべて延原謙訳)
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シャーロックのガウン

Anyway,speaking of silk purses…
「ところで、『絹の財布』といえば……」


シーズン1の3話、番組中でコニー・プリンスがちょっとだけ口にする「絹の財布」という言葉ですが、こんなことわざがあるようです。

You can't make a silk purse out of a sow's ear.(豚の耳から絹の財布は作れない)



絹の財布は「立派なもの」の象徴で、豚の耳は「粗末なもの」の象徴。
ミミガーおいしいよ…という私の主張は置いておいて、「よいものを作るには、それなりの材料を使わなくてはいけない」という感じでしょうか。
おそらくですが、コニーは「値段が張ってもそれなりのものを身につけなきゃダメよ」というような話をしていたのだと思います。(本当に財布の話だったらすみません……)

もしそうだとしたら、耳が痛いです。ファッションは私の大の苦手分野……!
興味はあるし、きれいに洋服を着こなしたい!という思いは強いので、ファッション雑誌は眺めるんですけれど、いかんせんセンスに自信がないので、買う洋服はコニーを激昂させそうなほど安いものばかり。
そんな私にも、このドラマに出てくる洋服がおしなべて高価そうということだけはわかります。シャーロックはアイリーンの家に行くとき「勝負服」を選ぼうとしてましたが、たくさん服を持っていそうでしたね。(まあ変装用もあるんでしょうが…)
原作の服の描写がこれまた、凄く細かい!(『ワトスンのファッションチェック』というぐうたらぅさんの名言は伊達じゃありません!)

そんなこんなで、わからないなりに、帽子とか細かいとこをちくちく攻めていこうと思います。今回は「ガウン」で。

ホームズは、部屋でくつろぐときよくガウンを着ています。何枚か違う色のガウンをもっていたようです。
まず、「ねずみ色(mouse-coloured)」のガウン。「ブルース・パティントン設計書」でも着ていますし、「空家の冒険」ではホームズの胸像にこのガウンを着せました。 

ホームズはみすぼらしいフロックを脱ぎすてて、半身像から取った鼠いろのガウンを着たので、すっかり昔の彼にもどってみえた。

  
とワトスンも言っているので、よく着ていたのでしょうね。「踊る人形」冒頭で着てたのもこれかな?(関連記事:『シャーロックのヘアスタイル』)

そして、「青いガーネット」に出てくる紫色のガウン(a purple dressing-gown)。
また、「唇が捩れた男」では、宿泊した「杉の家」で、上着とベストを脱いで大きな紺のガウン(a large blue dressing-gown)を着ています。(どうして延原先生が紺と判断したのかは謎です…)
でも、確かアヘン窟から直行でしたよね。寝巻きを持参してないのに、ガウンは持ってたんでしょうか。(少なくともワトスンは確実に着の身着のままだな…。)もし、「杉の家」の主人のガウンを借りたのだとしたら、長身のホームズが着ても大きいということは、セントクレア氏はかなり大柄だったということになりますね。

シャーロックは、シーズン1の3話"The Great Game"冒頭で紺に近い青のガウンを着ていました。これは、シーズン2でも何度か着用されてましたね。
シーズン2の1話では、ガウンが増えていましたね!
初めのほうで、ジョンのブログを覗き込んだときねずみ色のガウンを着ていました。しかしジンジャーブレッドマンの件があるので用心に越したことはない!と画面を最大化してみると(←まだUK版しか持ってないのか)、ブルー、赤のタータンチェック柄でした…危ない危ない…!しかし地はグレーと思われるので、これがSHERLOCK版「ねずみ色ガウン」と認定してよいかと思います。「踊る人形」と同じように実験中でもありますし!(と強引にまとめてみる)


場面がシーズン1のプールの続きから221Bに移った時や、朝食で着ていた赤いガウン
これは、たぶん原作になかったと思うのですが、私の元ネタ探しの友であるSherlock Holmes: The Complete Stories With Illustrations from the Strand Magazineというペーパーバックでは、ホームズが赤い上着を着ています。

Sherlock Holmes: The Complete Stories With Illustrations from the Strand Magazine (Special Editions)Sherlock Holmes: The Complete Stories With Illustrations from the Strand Magazine (Special Editions)
(2001/09)
Arthur Conan, Sir Doyle

商品詳細を見る
でもこれは、smoking jacket(喫煙服)というやつかもしれません。(グラナダ版でワトスンが着ていたような気がしています。しかも赤だったような気がしてるんですが、どのお話だったでしょうか…)
【追記・2012.11.20】RMさんが見つけてくださいました!「ボスコム谷の惨劇」でした。スクリーンショットも載せてくださいましたので、RMさんのブログにどうぞ!
「Jeremyのことが知りたくて~『ワトスンのガウンと喫煙服』」

チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンの着ている服に「赤がかった紫いろの軍服風の喫煙服で、えりにビロードがつけてある」(He wore a semi-military smoking jacket, claret-coloured, with a black velvet collar.)という描写がありますけれど(ファッションチェック!)、原文や延原訳を見る限り、赤というより「ワイン色」かな?「クラレット」は赤のボルドーワインを意味するらしいです。翻訳を見るととても派手な服という印象を受けましたが、クラレット実物の色を見ると、そうでもないですね。(リンク先に画像があります。)

「喫煙服」は丈が短めなのですが、シャーロックの赤ガウンは長いですね。
こんな色のガウンをさらりと着こなすとは、ベネディクト・カンバーバッチおそるべし…!
スタイリッシュっぷりが最前線過ぎて私のようなダサ女の理解の範疇を超えていることもままありますが、残る「紫色ガウン」も、彼ならかっこよく着てしまうに違いありません!うちの父あたりが着たら大爆笑ですけれど!

【追記2・2012.11.24】るあるあさんが連動記事を書いてくださいました。シャーロックのガウンと同一ブランドで現在入手可能なものなど、画像と情報・考察がいっぱいです。
「SHERLOCK HOLIC~『シャーロックはガウン、ジョンはバスローブ』」


(原作からの引用はすべて延原謙訳)

ホームズと鹿撃ち帽

※2012年6月の記事に、加筆して再投稿しました。

二人の窮地を機転で救ってくれた、ドクター・フランクランド。
どうやら、一躍有名になったシャーロックのファンのようです。

"I thought you'd be wearing the hat."
"That wasn't my hat."
"I hardly recognise him without the hat."
" It wasn't my hat."
「あの帽子をかぶってるものだと思っていたが」
「あれは僕の帽子じゃありません」
「あの帽子がないとホームズだとわからん」
「僕の帽子じゃない」(拙訳)


この帽子は、"A Scandal of Belgravia"の冒頭で、マスコミから顔を隠そうと、とっさにシャーロックがつかんだ鹿撃ち帽ですね。写真が新聞に載ったおかげで、シャーロックはいつもこれをかぶっているものと思われているようです。

リンク先にもあるように、シャーロック・ホームズといえばこの帽子、とされていますが(シャーロック・ハットという別名があるのは初めて知りました!)、本来狩猟用の帽子で、都市で着用されることはありません。
挿絵画家のシドニー・パジェットが「ボスコム谷の惨劇」で郊外に向かうホームズにかぶらせたもので、作中にホームズがこの帽子をかぶったという記述はないとのこと。(『白銀号事件』で『耳当てつきの旅行用ハンチング』をかぶっていますが、これは鹿撃ち帽とは違うもののようです。)
原作に忠実に作られている、と評判の高いグラナダテレビのホームズ・シリーズは、「鹿撃ち帽にインバネスコート」というホームズのイメージを一掃しましたが、今でも虫眼鏡やパイプと合わせて「探偵の象徴」として用いられることは多いと思います。

シャーロックの場合も、印象的な帽子姿のイメージが一人歩きして、彼の象徴となってしまったようですね。
以前の記事でも触れましたが、「劇中人物の反応が、小説に対する読者の反応のパロディとなっている」パターンの一つだと思います。

ところで愛想のいいフランクランド老人は、ジョンにも話しかけます。

"I love the blog, too, Dr Watson."
"Cheers."
"The pink thing. And that one about the aluminium crutch."
「君のブログも大好きだ ドクター・ワトスン」
「どうも」
「あのピンクのなんとかは面白かった アルミの杖のやつも良かったな」(拙訳)


「ピンクの研究」はともかく、「アルミの松葉杖」事件はバッキンガム宮殿の人にも褒められていた、意外な人気コンテンツ!ところで、どのお話に一番人気があるんでしょう。

ジョンのブログの"Most popular posts"(人気記事一覧)には次の記事が挙がってます。

The Woman(あの女性)
The Aluminium Crutch(アルミの松葉杖事件)
Hat-Man and Robin(ハットマンとロビン)
The Great Game(大いなるゲーム)
Diamonds are forever(ダイヤモンドは永遠に)
My new flatmate(新しい同居人)
A strange meeting(奇妙な出会い)
Serial suicides(連続自殺)     ※括弧内は拙訳


ドラマ内での扱いは小さいですが、おそらく「アルミの~」は劇中の人々にとってセンセーショナルな事件だったのでしょう。二人が大活躍したものの、市井の人々への影響が少なかった"The Blind Banker"事件は見あたりません。
でも意外と、事件に関する記事は少ないですね。シャーロックの、名探偵としての活躍はもちろんでしょうが、読者の興味は彼の恋愛事件を思わせる題の"The Woman"や、ジョンとの出会いの経緯など、私生活の方面へ向かうようです。

(追記 2012.11.11)
"A Scandal in Belgravia"冒頭部を再視聴して気づいたので、追記します。
シャーロックが鹿撃ち帽を劇場で手に取る場面は、「アルミの松葉杖事件」を解決した後かもしれませんね。
(ただし、ブログによるとジョンはこの事件に立ち会っていなかったはずなので、二人一緒にいるのはおかしいのですが…既にマスコミがいるし、事件当日ではないということでしょうか。)

「アルミの~」事件の劇場だとしたら、おそらくこの帽子は劇中の探偵「シドニー・パジェット」がかぶっていたもの。
だとすると、「シドニー・パジェットによって『ホームズは鹿撃ち帽をかぶっている』というイメージが作られた」という事実を、現代版で再現してみせたのですね。深い!…って、1年近く気がつかなかった私が珍しいんでしょうか……

しかし、"SHERLOCK"の世界には19世紀の探偵「シャーロック・ホームズ」は存在しないはずですから「鹿撃ち帽をかぶった探偵」というステレオタイプもないはずなのに、演劇に出てくる探偵が鹿撃ち帽をかぶっているというパラドックスが起こってしまいます。う~ん、やはりこの説無理があるか?

もうひとつ追記。この記事で私が「ブログ読者の興味はシャーロックの私生活に向かう」と書いてますが、ジョンが既に似たようなことを言ってますね!

"People want to know you're human."
「皆、君の人間くさいところを知りたいんだよ(拙訳)」


これはちゃんと聞いてたはずなのに、さも分析でわかったようなこと言ってごめんね、ジョン……

(追記2・2011.11.15)ジョンのブログ「アルミの杖」事件の訳がコメント欄にあります。拙い文章でお恥ずかしいのですが、ブログ未読の方で追記1の疑問を一緒に考えてくださる方がいらっしゃるようでしたら、お使いください!また、英語の解釈などに間違いがありましたら、教えていただければうれしいです。原文はこちらです。

マイクロフトと王様の馬

ジムによる、ジョン、ハドスン夫人、レストレード抹殺命令を止めさせる、と言うシャーロック。
それに対するジムの台詞。

"So do you. Sherlock, your big brother and all the King's horses couldn't make me do a thing I didn't want to."
「できるのか、シャーロック。君の兄さんも王様のお馬も、僕に強要はできなかったっていうのに」(拙訳)


直接の「元ネタ」は、「マザーグース」の童謡の一つ、「ハンプティ・ダンプティ」。
リンク先のwikiから、歌詞を引用します。

Humpty Dumpty sat on a wall.
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
couldn't put Humpty together again.

ハンプティ・ダンプティが 塀の上
ハンプティ・ダンプティが おっこちた
王様の馬みんなと 王様の家来みんなでも
ハンプティを元に 戻せなかった


マイクロフトはking's men(王様の家来)の一人ですものね。正確には女王様の家来ですけれど。
落ちた卵はけして元通りにならない、という意味の歌詞も、状況に合っていますね。

これは原作ネタではないので、スルーしていたのですが、同じくマイクロフトが登場する「ブルース・パティントン計画書」に同じ歌からの引用を見つけたので、一応書いておこうと思います。
「必要なら国の軍隊すべてがおまえに協力する」(The whole force of the State is at your back if you should need it)というマイクロフトの電報に対するホームズの言葉。

“I’m afraid,” said Holmes, smiling, “that all the queen's horses and all the queen's men cannot avail in this matter.”
「どうもね」とホームズは笑いながらいった。「女王陛下の馬や兵隊をすっかり貸してもらっても、この問題には役にたちそうもないね」(延原謙訳)



ちゃんとqueenに言い換えてるホームズの律儀さがかわいらしい……

原作が元ネタというよりは、たまたま同じになったように思えます。
それほど、時代を超えて耳に馴染んだフレーズなのではないでしょうか。英文学の素養がない私が気づいていないだけで、そういう引用は多いのかもしれません。

それにしても、「SHERLOCK」を観て以来、原作でも弟の言葉の端々に兄への反感が読み取れるような気がしてしまう私です。
原作でのマイクロフトとシャーロックははっきり「仲が悪い兄弟」とはされていませんし、私の知る限りでは映像化された作品でも仲良しの設定が多いと思います。
でも同じように天才的な頭脳を持っていながら、片方は国家公務員、もう一方は自由業という設定は、能力は認め合っていても生きる姿勢に違うところがある、ということを意味しているのかもしれません。それが悪いことだとは全然思いませんが、少なくとも、何もかもあけっぴろげな関係の兄弟ではないのでしょうね。

マイクロフトとシャーロックの関係については以前にも記事を書いたので、ご興味があればごらんください。
過去記事 シャーロックとマイクロフト

ここからは「卵つながり」のおまけです。
シーズン2の1話で、マイクロフトが221Bにやってきた時、シャーロックとジョンは朝食中でしたが(なんでいつも朝来るんだろう)、主なメニューは半熟卵とトーストだったようです。
シャーロックたちは普通のトーストでしたが、このトーストを細く切ったものを半熟卵につけて食べる料理を、イギリスではBoiled egg and soldiersということを、先日「めざましテレビ」を観ていて知りました。
Wikiによると、soldiersは細く切ったトーストのこと(兵士の隊列を意味しているらしいです)。
別の記事では、「半熟卵を帽子に見立て、『兵隊さんに帽子をかぶせて食べるのよ』と、お母さんが子どもに教える」ともありました。
「兵隊さん」は卵と同じくらい国民にとって身近な存在だったのかもしれませんね。今もそうなのかな?
私も「兵隊さん」と言われると、あの黒い帽子に赤い服の「イギリスの兵隊さん」をまず思い出します。

シャーロックとごはん(S2編)

「仕事中は食べない」ものの、原作では結構おいしいもの好きで、食べ物への言及の多いシャーロック・ホームズ。(関連記事:『シャーロック・ホームズとお食事を』
最も原作に忠実に作られているとされる、グラナダテレビ製作のドラマシリーズでは、ジェレミー・ブレット演じるホームズは、けして食べ物を口にしませんでした。
といっても、「海軍条約文書事件」などの原作での食事シーンは再現されていますし、「青い紅玉」でワトスンとクリスマスの食卓を囲む場面もあります。食べること自体が嫌いなのではなくて、原作ホームズ同様、おいしいもの好きという設定なのでしょう。ただし、食べる瞬間は最後まで見せてくれなかったと思います。(たぶん…最近見返してないので不安になってきました)
(追記・2012.11.5)申し訳ありません、ちゃんと「食べる場面」はあるそうです!RMさんに教えていただきました。コメント欄をごらんください。

おいしい料理や音楽といった芸術を愛するホームズと、寝食を忘れて捜査に没頭するホームズ。
ホームズはこういう二面性に富んだキャラクターですよね。精力的な彼と怠惰な彼、冷たい彼と温かい彼、ワトスンは両方書きとめています。
文章に書かれたキャラクターを映像化するということは、脚本や演出、演者が新たな要素を付加して、新しい人物像を創るということでもありますから、どちらの面をどの程度汲み取るか、製作者は悩むのではないでしょうか。

現代版でも、シーズン1では、シャーロックはものを食べませんね。食事の場面は何度かありましたが、いずれの場合も、食べているジョンを見ているだけだったと思います。

ただし、1話のラストシーンに「いい中華料理屋は、ドアの取っ手の下3分の1を見れば分かる」というセリフがあります。
何かとシャーロックをこきおろしがちなジョンブログも(イギリスの番組をいくつか観ると、「ユーモアを持ってひどいこという」のがイギリス人の普通のコミュニケーションなんだろうな、とわかりますけど…『トップギア』なんて特に)、この件に関しては「本当にいい店を知ってる」と絶賛。シャーロックもやっぱりおいしいものが好きなんでしょうね。
ちなみに、もう2年以上も中華料理屋さんのドアを注視してる私ですが、未だにシャーロックの言ってる意味がよくわかりません……イギリスの中華料理屋さんと日本のでは、ドアの形状が違うのかなあ……
(追記5・2013.12.16)コメント欄に、トレッキーさんが考察を寄せてくださっています。また、別記事でナツミも考察致しました。

シリーズ1はそれほど目立たなかった「食べものの描写」が、シリーズ2ではわりと増えたように思います。
1話で印象的なのは、何と言ってもクリスマスですね!(映っている食べ物はジョンのガールフレンドが持っているバゲット?くらいですが…ところでこの彼女も、すらっとしていてなかなかの美人さんです。ジョン、やるなあ)
一体どうして221Bでクリスマスパーティをやることになったのか、その経緯は謎です。シャーロックもジョンも、進んでパーティを主催するタイプには見えないんですが…
(追記3・2012.11.8)よく見ると、彼女が持っているのはバゲットではないみたいですね。粉砂糖がかかっているように見えます。お菓子なのかな?)
でもシャーロックは、お客さんがきてなんだか嬉しそうに見えます。原作・現代版共に、仕事に没頭しすぎて機械人間とすら言われてしまう彼ですが、帰還後ワトスンと再び同居することを強く望んだのはホームズのようですし(『ノーウッドの建築士』)、基本的に人間が好きというか、人恋しがるところがあるのかもしれませんね。

他にも、冷蔵庫を開けて何やらかじっている場面や、朝食の場面がありました。
シャーロックは立ち食いしている場面が二度ありますね。コメンタリーによると、カンバーバッチは「彼は空気を食べて生きている」と、食べる演技を後悔している様子。
でも原作には「ホームズはがつがつ食べるし(海軍条約文書事件)」という描写もありますし、

彼は食器戸棚の上で牛肉の大きな塊りからうすく一片切りとって、輪切りのパンの間にはさみ、その粗末なサンドイッチの弁当をポケットへねじこんで、捜査の遠征へと出かけていった。(『緑柱石の宝冠』)

という場面などは、むしろ「食べる」という行為にホームズらしさを見出すことができます。
カンバーバッチ氏の描くシャーロック像が原作通りとは限りませんが、私としては彼の「食べる」場面は「食べない」場面と同様にとても「ホームズらしい」と思いました。皆さんはどう思われたでしょうか。


2話では、ジョンにコーヒーを淹れてあげて、「淹れたことないじゃないか」とつっこまれていました。
でも、シリーズ1の2話の最後、ジョンにお茶を淹れてあげてましたよね!一瞬なので分かりづらかったですが、よ~く耳をすますと、ジョンの"Ta."(ありがと)って声が聞こえます。
(追記2・2012.11.6)またまた申し訳ありません。「最後」というのは記憶違いでした。詳細はコメント欄をごらんください。
初期はそれなりに同居人に気を遣っていたのに、だんだん家事をしなくなって、もうグダグダっていうパターンでしょうか。
原作のホームズも、ワトスンと同居を始めてしばらくは、「理想的な同居人」だったようです。

ホームズはいっしょに暮しにくい男では決してなかった。日常はもの静かで、起居とも規則的だった。夜は十時すぎて起きていることはめったにないし、朝はきまって私の起きないさきに食事をすまして出てゆくのであった。(『緋色の研究』)



10時に寝るって!小学生か!百歩譲って当時の燃料事情などを鑑みたとしても、この後のホームズと同一人物とはとても思えません。

コーヒーですが、ジョンはブラック無糖派のようです。 シャーロックはシリーズ1の1話冒頭で「砂糖ふたつ、ミルクなし」と言ってましたね。
二人共ミルクを使わない割には、たまに牛乳がないない言ってます(シリーズ1第3話で一度、シャーロックのフォーラムで一度)。牛乳は紅茶に入れるのかもしれません。直接飲んだり、料理に使う可能性もゼロではないですけど……料理、まともにしてるんでしょうか。1話でハドスンさんが二人の冷蔵庫を開けた時、若干野菜など入っているのが見えて「お、頑張ってるな(ジョンが)」と思ったんですが、よく考えると彼女が冷蔵庫を開けているということは、既に台所はハドスンさんの管理下なのかもしれません。

超・蛇足ですが、2話中盤で出てくるお菓子、パヴローヴァは数少ない私の得意料理のひとつです! メレンゲをあんまり甘くしないのと、小さいのをたくさん作るのではなく、大きいのを作って切り分けるのがコツだと思います。このお菓子、バレリーナのアンナ・パヴロワ がオセアニアを訪れた記念に作られたものらしいですが、オーストラリアとニュージーランドで「うちが先に作った!」とずーっと争っているとのこと。レシピを教えてくれたオーストラリア人の友人は、酔っ払うとたまに「もう何もかもどうでもいい!パヴローヴァもニュージーランドのものでいい…」と意味不明の愚痴を言います…

2話のラスト近く、ジョンが庭で食べる朝食は気持ちよさそうです。イギリスに行ってあんな食事をしてみたい!と(正直Sherlockを観てて初めて)思いました。
シャーロックが「それにソースかける?」「ケチャップだったっけ?ブラウンソース?」と親切に(※大嘘)声をかけています。ブラウンソースは日本でよく売っている、ウスターシャーソースみたいなものかな?

eikokutabi.com「イギリスの食べ物 味くらべ ブラウンソースとケチャップ」

3話で食べ物といえば、やはりジムがメッセージに用いるものでしょうか。
"I O U"(I owe you―『君には借りがある』)のメッセージが書かれるりんごは、グリム童話「白雪姫」のモチーフでもあり、アダムとイヴが楽園を追われるきっかけとなった「知恵の実」「禁断の果実」でもあり(リンク先によると諸説あるようですが)。文化的背景の違う私が見るよりも、西欧の人々にとっては色々と暗示的なのかもしれません。
原作関連では、「オレンジの種五つ」で果物の種が脅迫(殺人予告)の暗号として用いられていますね。

また、シャーロックが言及しているように、駐米大使子女誘拐事件の時にジムが送ってきたパン屑は「ヘンゼルとグレーテル」で「道しるべ」として使われます。
その後、もう一度パリパリに焼かれたお菓子が送られてきますね。あのお菓子は何かなあ、と考えていたのですが、「ヘンゼルとグレーテル」でお菓子の家の壁の材料とされている「レープクーヘン」(ジンジャーブレッド)かもしれません。
ジンジャーブレッドといえば、英語圏でもクリスマス時期などによく食べられるお菓子ですよね。私は"The Gingerbread Man"という童話を第一に思い出します。"Run, run,run! As fast as you can! You can't catch me,I'm the Gingerbread man!"「走れ、走れ、走れ!できるだけ速く!つかまえられやしないさ、ぼくはジンジャーブレッドマン!」と、逃げるジンジャーブレッドマンが追っ手を挑発するフレーズは、出典が思い出せないくらい体にしみこんだものですし、英語圏の子どもは諳んじているのではないかと思います。
この「ジンジャーブレッドマン」、追って来る人たちや彼を騙す動物にさまざまなバリエーションがありますが、いずれも最後にはつかまって食べられてしまいます。シャーロックを挑発するジムの心理についてはあらためて考えたいと思いますが、果たして逃げ切る(打ち勝つ)のが目的だったのか、捕まる(敗北する)のが目的だったのか、こんなところからも彼の思いが垣間見えるような気がします。または、シャーロックをジンジャーブレッドマンになぞらえたのかもしれません。この直後に、シャーロックは警察に追われることになります。
もっとも、送られてきたお菓子がレープクーヘン=ジンジャーブレッドであるという説明はないので、私の考え過ぎでしょう。
追記4・2012.11.11 "SHERLOCK THE CASEBOOK"にアップの写真が載っているのを友人が写メしてくれました。明らかにジンジャーブレッドマンですね。個人的にはガッツポーズですが、『見ればわかるだろ』と思いながら読まれていた方がいらっしゃったらすみません…パソコンでしか観られないUK版DVDで押し通してきたのですが、反省してBD買います…)パリパリに焼かれている(Burnt to a crisp)ことから、シリーズ1・3話の

"If you don't stop prying, I'll burn you.I'll burn the heart out of you."
「詮索するのをやめなかったら僕は君を焼却する。君の心を引きずり出して火をつける」

というジムの宣言と絡めて考えるのが妥当かと思われます。

シリーズ2では、アイリーンが何度も「食事に行きましょう」とシャーロックを誘うのも印象的です。
素直に受け取れば「デートに誘っている」んですが、観察対象として、シャーロックがものを食べているところを見たかったのもあるんじゃないかなあ、と私は思います。
人間の三大欲求といえば、食欲・性欲・睡眠欲ですが、眠っているところ、もとい昏倒しかけているところをかなり早い段階で見てますよね。性欲に関しては、ジムの言葉や、ジョンとの関係を確かめたことで、かなり正確に把握したんじゃないかと思います。なんたって、プロフェッショナルですものね。
そうすると残るは食欲ですから、シャーロックを深く知るためにも、比喩ではなく本当に一緒に食事をしたかったんじゃないでしょうか。大抵のカップルは観察する順番が逆になると思うんですけど、こんなところも非凡なふたりだと思います。もし実現したら、何を食べに行くんでしょうね。

いろいろと見落としもあると思いますが、シリーズ2の「食べ物がらみ」で思いついたことを挙げてみました。シリーズ1も含めて、印象深いエピソードをお持ちの方がいらっしゃれば、ご教示をいただけたらうれしいです。
プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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