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最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探しをしております。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
ブリキの文書箱

SHERLOCK10周年

金魚の皆様おはようございます!ミジンコです!!
なかなか終わらないコロナ禍の中、いかがお過ごしでしょうか。
このブログ始めた頃(9年前!)は思いもよらなかったのですが、私はだんだんアウトドアに興味が向いてきて、これが加齢か……としみじみしております。

いや、若い頃から、または幼い頃から自然に親しんでいる人もいっぱいいらっしゃるんですけど、私は体育の成績は壊滅的だわ、興味はサブカル寄りだわで庭や山や森に見向きもしない若者だったもので……親世代がガーデニングやら畑作りやら登山やら、休日にわざわざ体力を消費して喜んでいるのが全く理解できなかったんです。つい去年までは!

それが今はどうでしょう、リモートワーク化をきっかけに近所に畑を借り、頼まれもしないのに山にせっせと通う日々。私は定年過ぎても仕事したいワトスンタイプだと思っていたのに、早期退職して田舎暮らししたがるホームズタイプだったとは……(もともと田舎住みなので引っ越す手間はないけど……)おい、そこで「ないわ~」って顔してる若者!予告させてもらうぞ!養蜂に興味を持つのは時間の問題だぞ!

ご挨拶のつもりが、話が260度くらい逸れました。
そう!2020年7月25日はSHERLOCK放映10周年記念日!
もちろん皆さん気づいてましたよね!私ですか?マスクして尾瀬をザクザク歩いてました!
春先仕事が忙しいんで、水芭蕉って異常に葉のでかいバナナみたいな状態しか見たことないな……あっ芭蕉の実ってバナナのことだっけか!じゃあ松尾芭蕉は松尾バナナなの?吉本ばななは芭蕉リスペクトなの?やべえ検索してえ…あっ圏外……(※インドア派卒業できてない)みたいな愚考にかまけてるうちに、しれっとそのようなアニバーサリーが……
Twitterやってなかったら絶対気づかないまま終わった……

ミズバショウ
↑私のアニバーサリーを持ってったバナ……ミズバショウ
篠田真由美先生が教えてくださったのですが、これはミズバショウでないそうです!
ミズバショウ 果実の検索結果 ←そこそこバナナではあるものの、そんなバナナではなかった……

2010年春、本国から3ヶ月遅れで上映されたガイ・リッチーの映画『シャーロック・ホームズ』にときめきまくっていた私。
公開日、「『アバター』も見たいね!3Dなんだって~!どんなのかな?(←時代感)」と、友人とわざわざ大きめのシネコンに行ったのに、朝イチで観た『シャーロック・ホームズ』のキャラ解釈と洒脱な世界観に心奪われてしまった我々。こんなホームズ&ワトスンもいるんだ!
午後にもう一回観て(そういえばそれ以来『アバター』観そびれてる……一周回って今すごく観たい)、次の日も観に行き、とっくに手放していた原作本も揃え直し、飽き足らず海外のfan ficに手を出し(この時覚えたアレな用語は、その後生涯に渡って役立つことになるのだった)……そんな折に聞こえてきた、現代版ホームズの噂。

当時の私はたぶん一生分の情報収集能力を使い果たしたと思います(いや、総量でも大したことなかったですけど)。検索でひっかかる記事を読み、インタビューを視聴し、ちょこちょこ更新され始めたジョンブログをリロードしまくり(日本時間だと朝更新されるので、出勤するなりトイレに隠れてチェックしてた)、7月25日はそわそわドキドキで、職場の先輩とランチしたり、たまたま家族の誕生日なのでちょっと素敵なケーキを買い求めてお祝いしたりしたけど、どこか上の空だったことを覚えている……
そんな甘ずっぱい青春が詰まった日に、バナナで頭をいっぱいにしてる場合じゃないですよ!
今でもこのブログ読んでくれる人が、まあアクセス数から仮定して日本に20人くらいいたとして!まさかバナナの画像見せられるとは思ってないでしょうよ!(※バナナじゃない)

バナナバナナ言ってるうちに、なんとマイクロフト兄さんからのメッセージが。
ですよね~~!ロックダウンといえば、政府の偉い人の会見!私ったら、一体どうしてマイクロフトの会見を期待しなかったのかしら?(答:しなそうだから)
どうやら、中国の「优酷」(動画配信サイト)でSHERLOCK十周年のイベントがあった模様。そこに寄せられた動画、ということのようです(間違ってたらすみません)。
知った時点でも、マーク・ゲイティス氏の高名なファンアカウント様のプレミアムな和訳が拝めたのですが(ありがてぇ……)初心を思い出すため自分でも訳してみることにします。

Good evening Gold fish
Or indeed, good morning.
It has fallen to me to say some few words during this unprecedented global crisis.
With all of us had to make sacrifices, we've all had to get used to Zoom calls and to step off the pavement to avoid strangers and totally to avoid friends and family.
This has become known as social distancing, or as I prefer to call it, ”paradise”.
(自らカメラを操作する様子のマイクロフト。リモートワーク風?)

金魚の諸君、こんばんは。もしくは、おはよう。この世界的な未曾有の危機に際し、二言三言、話をさせてもらう機にあずかった。
我々はみな強いられている……Zoomを使って話すことを。見知らぬ者との接触を厭い、舗道を外れて歩くことを。そして友人や家族さえ、避けることを。
そうした行為は「ソーシャル・ディスタンシング」の名で誰もが知るところになったが、私はこう呼びたい…「楽園」と。(いい笑顔)

It's long been a maxim of mine that not engaging with any other human beings in anyway, whatever is bound to lead to the maximum of……What is that word? Oh, yes. "Happiness".
これは私の長きに亘る信条なのだが、どんな人間とも、どんな絆であれ、結ばないことこそが最大の「アレ」につながるのだ……何だったかな?そう、「幸福」。

This is a lesson I am afraid my younger brother Sherlock has yet to heed.
In fact, rather than using his considerable powers for the right purpose, he continues to get involved in all sorts of strange adventures and to form alliances and friendships and to, well, mingle.

残念ながら、我が弟シャーロックはその辺りのことがまだ学べていない。
彼の力は注目に値するものだが、正しい目的に使われていないのが事実だ。
未だに「巻き込まれること」にかまけているよ、ありとあらゆるおかしな冒険やら、絆やら友情やら……そうだな、「交わる」ことに。

Now it's come to my attention that it is ten years since a highly fictionalised account of my brothers' adventures were brought to the screen.
This was a mistake.
Detection is or should be an exact science.and should be treated with the same cold and unemotional manner.
These programmes have attempted to tinge it with romanticism which has rather the same effects as if one were to work a love story or an elopement into the fifth proposition of Euclid.
However, in their defence, the one who plays me is very handsome.

さて、そろそろ言及せねばなるまい。あの番組~弟の冒険をやたらと脚色した代物~が10周年を迎える。
あの番組を放映したのは大きな間違いだ。
推理とは、厳正な科学であるべきで、冷静に、感情抜きで扱われなければならない。この番組はロマンチックな味付けをされているから、まるでユークリッド幾何学の第五定理に恋物語を持ちこんだようになってしまっている。
しかしながら、長所を挙げるとすれば……私を演じる俳優は非常にハンサムだ(めっちゃいい笑顔)

So, if you want to see these programmes again and if you do, there must be something wrong with you then tune into……Youku.
Some of us have re-read Proust during lockdown or learn another three languages, but if you chose to vegetate on the sofa watching the television, that is entirely your concern. Goodbye.
Or indeed, go away.

もしこの番組を見直そうとしているなら君は正常とは言い難いが、あれを利用するといい(眼鏡をかけて画面外の何かを凝視しながら)……ヨウク。
このロックダウン期間中にプルーストを読み直す人間もいれば、新たに3カ国語をマスターする者もいる。しかし、ソファに寝そべってテレビを見ることを選択しても、それは全く君の自由だ。
さようなら。というか……さっさと立ち去れ。


もう~、マイクロフト節健在!
私の拙い訳で、あの溜めに溜めて最後の単語を吐き出しにんまりする話し方が伝わるかどうか……(たぶん伝わらないので元の動画をごらんください!)

さすがゲイティスさんというか、2分弱のこのスピーチの中にもちゃんと「原作ネタ」がちりばめられてます!
まず、マイクロフトが「長きに亘る信条」を述べますが、『緑柱石の宝冠』でホームズが例の信条を述べた時と言い回しがほぼ同じ。

"It is an old maxim of mine that when you have excluded the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth."

「(前略)あり得べからざることを除去していけば、あとに残ったのがいかに信じがたいものであっても、それが事実に相違ないというのを、昔から私は公理としております。」(後略・『緑柱石の宝冠』)


「すべてのありえないことをとり捨ててゆけば~」というこの「消去法」、ホームズが特によく口にする信条で、「四つの署名」「ブルース・パーティントン計画書」「白面の兵士」などでも言及されています。
マイクロフトがシャーロックの持つ「力」が正しく使われていない、と嘆くのは、『ギリシャ語通訳』や『ブルース・パティントン設計書』でホームズがマイクロフトの「力の使い途」について語ることの裏返しになってます。

“You wonder,” said my companion, “why it is that Mycroft does not use his powers for detective work. He is incapable of it.”
“But I thought you said– –”
“I said that he was my superior in observation and deduction. If the art of the detective began and ended in reasoning from an armchair, my brother would be the greatest criminal agent that ever lived. But he has no ambition and no energy. 

「どうしてマイクロフトが探偵の仕事に力をそそがないのかと君は不審に思うだろうが、じつはその力がないのだよ」
「だけどさっきの君の言葉では……」
「いや、兄は観察力や推理力では僕より優れているといったのさ。探偵術というものが、安楽いすに坐っていてするただの推理に終始するかぎり、僕の兄はまったく前代未聞の大探偵家といえるだろう。しかし兄にはそれを実行するだけの野心もなければ精力もない。(後略・『ギリシャ語通訳』)

The same great powers which I have turned to the detection of crime he has used for this particular business.

「同じ大きな能力を僕は犯罪の操作に向けているが、兄はこの特殊な仕事に注いでいるのだ。」(後略・『ブルース・パティントン設計書』)


そして、番組としてのSHERLOCKへの批評は『四つの署名』から。

He shook his head sadly.“I glanced over it,” said he. “Honestly, I cannot congratulate you upon it. Detection is, or ought to be, an exact science and should be treated in the same cold and unemotional manner. You have attempted to tinge it with romanticism, which produces much the same effect as if you worked a love-story or an elopement into the fifth proposition of Euclid.”

ホームズはかなしげに頭を振って、「僕もちょっと見たがね、正直なところ、あれはあんまり褒められた出来じゃない。探偵するということは、一つの厳正科学なんだ~~であるべきはずなんだ。したがって冷静に、無感情な態度でとり扱われなければならないところを、君はロマンチックな味つけをしているから、まるでユークリッド幾何学の第五定理に、恋愛物語か駆落ちの話を持ち込んだような結果になっている。(『四つの署名』)」


ちなみにこれとほとんど同じことを、ジョンのブログへのコメントとしてシャーロックが書き込んでたりします。メタ的に言えば「シャーロック・ホームズの人格をマイクロフトとシャーロックに振り分けている」わけですが、素直に見ればただの似たもの兄弟です。

まだまだ「元ネタ」あるかもしれませんが(コメント欄開けておくので、あったらご教示ください!)、何より面白いのは、『SHERLOCK』の作者の一人であるゲイティス氏がマイクロフト本人として内容をくさすという、セルフディスり芸!(あ、俳優としてのゲイティス氏は『顔が100点!』だったようですが……)
思えば、ホームズがワトスンの作品をけなす場面だって、けなされた作品を書いた本人のドイルが書いてるわけで、原作にも「セルフディスり芸」が成立してたわけですよね。やはりさすがのマイクロフト兄さんことゲイティスさん、的確にオタクのツボを突いてきます。

そして、シャーロックとジョンの冒険が続いていることをさりげなく仄めかしてくれたのが、やっぱりうれしい。こんな大変な時だからこそ、同じ空の下シャーロックとジョンが生きて活躍しているという「想像」が、何よりのプレゼントです。さすがマイクロフト兄さんことゲイティスさん!オタ(もういいか……)

人と人との「交わり」が否定されることになったこの数カ月間。
この異様な日々をマイクロフトに「楽園」と表現させ、シャーロックが選んだ「交わり」を視聴者に思い出させるこの作り。なんていうか、もう「外国のイベント向け映像」に要求される水準を軽く超えてますよね……たった2分19秒で笑わせ、想像させ、考えさせる。(ついでに元ネタももたらす……)やっぱりすごいよゲイティスさん。

本来東京オリンピックを観るためだった4連休がかなわず、悲しい思い、辛い思いをした方もたくさんいらっしゃると思いますが、この思わぬプレゼントに元気をもらった人もきっといっぱいいますよね。ありがとう、マイクロフト兄さん!ミジンコは明日からもがんばります!
(原作からの引用はすべて延原謙訳)
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スペシャルの元ネタを予想する

夏真っ盛りですね。今年も暑いです。
いい加減にS3元ネタ探しの一周目を終えなければ、と思いつつ、ちょろちょろ小出しに流れてくるクリスマススペシャル※の内容も気になる今日この頃。先日のThe independent紙ニュースサイトにも記事が載ってました。

Moffat shared a first look at the new episode in Comic Con last month, telling the audience that making it was "unbelievably thrilling".
先月のコミコンで、モファットは「信じられないほどスリリングな」新作の一部を初公開した。
"The main difference I would say, the only temperature change moving it to Victorian from Modern is ghost stories work better in the Victorian setting," he said.
「(通常版との)違いは、舞台が現代から幽霊譚が映えるヴィクトリア朝に移った、その温度差くらいかな。」と彼は語る。
"Doyle stories that are scary chillers we haven't done much. Victorian era gives us a chance to do a creepy one; a scary one."
「原作から、血も凍るような話はあまり取り上げてこなかった。ヴィクトリア朝ものは、不気味で怖い話をやるチャンスです。」


(※モファットさんは『クリスマスとは一言も言ってない。クリスマス……くらい?だ』というようなことをおっしゃっているようですが、ここでは希望的観測のもとにクリスマスということにしときます。大きく違ってしまったら後ほど修正しますね)

こちらはEntertainment WEEKLY誌

“Ghost stories work better in a Victorian setting,” Moffat teased.
Update: We’re told Moffat meant by this that the story is spooky, but does not involve ghosts per se.
(幽霊は出てくるのか、という質問に答えて)「幽霊譚をやるならヴィクトリア朝が舞台のほうがいいね」モファットはとぼけてみせた。
※これは「不気味な話ではあるものの、幽霊そのものは出てこない」という意味だそうだ。



「シャーロック・クロニクル」で発表されている第4シリーズのキーワードが"Ghosts"ですが、本物の幽霊というよりは、死んだはずのジムの復活を示唆しているのかしら。ほかにも「死んだはず」のキャラクターはいるので、まだまだ読めませんね。

とにかく、スペシャルは時代劇だからこそムードが出せるような怪奇譚らしい。コメント欄でさまざまなご教示を下さっている小説家の篠田真由美先生のブログ、「さて、怪奇趣味というのはどの作品を指すのか。皆さん予測してみませんか。」とあったので、私も予想してみたいと思います!("The Blind Banker"や"The Great Game"のように、メインとなる原作が一つじゃない可能性もあるんですが、まあ一つでも当たればいいやということで!)

他にもあったらご指摘いただくとして、今のところ分かっているヒントを整理すると

・今までで一番(?)スリリング
・不気味な話
・幽霊は出てこない


幽霊はともかく、スリリングで不気味な原作エピソード、となるとかなり多いなあ。
クリスマス、またはそれまでに放映という保証もないようなので、噂されていた『青いガーネット』路線もちょっと怪しくなってきました(1月に放映された"A Scandal in Belgravia""His Last Vow"にもクリスマスの場面はあったので、まだ可能性はありますけれど)。

そこで、個人的に『これは不気味だ』と思う原作エピソードを列挙してみます。(カッコ内は私の独断と偏見による『不気味ポイント』です。ネタバレにご注意ください!)
「緋色の研究」「バスカヴィル家の犬」のように、すでにメイン元ネタ(?)として取り上げられている話は除外しました。「花婿失踪事件」のように重複して元ネタになる作品もあるので、タイトルやメイントリックに使われていない作品は入れてます。

マスグレーヴ家の儀式(お屋敷や古文書の醸し出す不気味さ。19世紀設定の方が映えそう。)
オレンジの種五つ(個人的にはこの話が一番不気味だと思っていますが、実在する団体への配慮が必要ですね……)
ぶな屋敷 (田舎の孤立した世帯ならではの犯罪。ホームズはその閉鎖性を不気味に思っているようなので)
ボール箱(バラバラ殺人)
技師の親指(これも親指が切断されますが、不気味と言うより工場のスチームパンク的な魅力に期待かな)
ウィステリア荘(儀式が不気味ですが、今となっては差別的な描写になってしまうのかしら)
覆面の下宿人(視覚的なインパクト)
サセックスの吸血鬼(これが一番『怪奇譚』らしい気がする)
這う男(これもビジュアルがえぐい!)

番外:「まだらの紐」(これは現代版では無理があるせいか、本編ではちょこっと、あとはジョンのブログで語られただけでしたが、今回の設定ならできるのでは!不気味度は満点ですし!)

思いつくままに挙げてみましたが、正直まったく予想がつきません。
現時点で無理やり選ぶなら、「ボール箱」かしら。

「ボール箱」は原作では真夏のお話ですが、グラナダ版ではクリスマスの話。
最後に撮影されたエピソードで、ジェレミー・ブレットの遺作でもあります。オープニングでのオマージュっぷりから、制作陣はこのスペシャルを単なる企画ものでなく、過去の名作を「受け継ぐ」意志を表明する一作に育てたいのかもしれないなあ、と想像しました。
このお話の最後に出てくるホームズの台詞も、未来に目を向け、それを憂えているんですよね。

「これは何を意味するんだ、ワトスン君?」ホームズはその供述書を下において、おごそかに言った。
「この苦難と暴行と不安の循環は何の役をはたすのだ?何かの目的がなければならない。さもなくばこの世は偶然によって支配されることになる。そんなことは考えられない。では何の目的があるというのか?これは永遠の問題としてのこされる。人知のおよぶところではない」



ホームズの問いかけに対する、未来からの回答として「現代版ホームズ」の存在があるとしたら、ジェレミーホームズも嬉しいかなあ、と。
すみません、お盆だからなのか暑さのせいなのか、自分でも何言ってるんだかよくわかりません。

篠田先生は「這う男」を推していらっしゃいますね。
皆さまはどう思われるでしょうか。

ちなみに舞台のヴィクトリア朝に合わせてシャーロックは紳士らしく、ジョンはお堅い感じに、とちょっとずつ社会に適合したキャラクターになっているようですが、基本的に彼らはいつもと変わらないらしいです。
上の方でもリンクしたAP NEWSによれば、ベネディクト・カンバーバッチはこの「ヴィクトリアン・シャーロック」がお気に入りで、毎シーズンやろうよ!と言っているみたい。オールバックのカンバーバッチが大好きな私としては、もう土下座してお願いしたいです。

(原作のタイトルと本文引用は延原謙訳。
ニュース記事は拙訳です。ちょっと難しく感じたので、間違いがあったらどうかご教示ください。)

クリスマススペシャルのトレーラー

『SHERLOCK』ファンの皆さんはとうにご存知かと思いますが、第4シリーズの前にスペシャル版が放映されるそうです。
英国で放映されるだけではなく、世界の劇場で上映されるとか!

「SHERLOCK(シャーロック)」新作、劇場公開へ!雪舞う初映像も公開(シネマトゥデイ)

リンク先は映画情報サイト「シネマトゥデイ」なんですが、アップされたのが関東初の真夏日だったせいか、カンバーバッチさん浴衣特集へのリンクを載せてくれてるところに限りない優しさを感じます……(せっかくのヴィクトリアン衣装に『くそ暑い格好しやがって』と八つ当たりしてしまうところでした……)

「限定された」劇場というところが気になるのですが、日本はどうなるんでしょうね。
クリスマス視聴が無理でも、お正月休みまでにDVDが届いたら嬉しいなあ。

スペシャルの舞台は原作と同じ、ヴィクトリア朝ロンドン。
BBCが公開したトレイラーがこちらです。



最初の、"BAKER STREET"の看板から路上の風景に移動するところと音楽、わかりやす~くグラナダ版に似せてる!
ファンとしては、これだけで嬉しくなってしまいます。
【追記2 2016.1.30】早川書房「カフェ・クリスティ」でのトークイベントで、日暮雅通先生が「ビリー・ワイルダー監督の映画のオープニングに似ている」とおっしゃっていました。

そして、これまたわかりやすいホームズ・ルックで馬車から降りてくるシャーロック。吸い口の曲がったキャラバッシュ・パイプはウィリアム・ジレットの舞台から使われているそうです。
御者にお礼を言っています。英語力に不安があって断定できないのですが、喋り方をちょっとジェレミー・ブレットに寄せてる?なんか、いつもより声に張りがある気がする……

【追記:2015.7.20】RMさんによると、ハドスンさんに向ける一瞬の笑みが、ブレットホームズの表情の動きによく似ているそうです。ベネディクト・カンバーバッチは、かねてからジェレミー・ブレットの表情の動きに注目していたとのこと。
RMさんの記事はこちらです!→Jeremyのことが知りたくて~「ホームズの瞬間的な笑み」


ヴィクトリアン風ドレスに身を包んだハドスン夫人が出迎えます。(221Bのドアがまだピカピカなの、芸が細かいなあ)

"Mr Holmes! I do wish you’d let me know when you are planning to come home."
" I hardly knew myself, Mrs Hudson. That’s the trouble with dismembered country squires – they’re notoriously difficult to schedule."
「ホームズ先生!お帰りになるなら、前もって知らせていただきたいわ」
「私にもわからなかったのですよ、ハドスンさん。バラバラにされた地方の大地主というのは、予定通りに事を運んでくれないものでね。」



事件の元ネタは「ライゲートの大地主(The Reigate Squires)」かしら。
この時代のハドスンさんはホームズとワトスンの食事の支度も仕事だったと思います(何だかんだで現代版でも結構やってあげてますが)。部屋にお湯を運んだり、掃除をしたり、こまごまとした世話もしていたはず。
当時の家事は、かまどに火を入れたり、お湯を沸かす段階から大変だったので、「帰ってくるのかこないのか」「家で食事をとるのかとらないのか」はハドスンさんにとって切実な問題だったと思います。メイドさんの存在も確認されてますが(『緋色の研究』)、一人一人の労働負担は今とは大違い。
不規則な生活を送るホームズと家主・ハドスンさんのバトルは、原作でも垣間見ることができます。

シャーロック・ホームズの下宿のおかみハドスン夫人は、辛抱づよい女である。二階には時をえらばず妙な人たちが、時には好ましからざる人物が押しかけるばかりでなく、この平凡でない下宿人がまた変わり者で、日常がおそろしく不規則ときているのだから、まったくたまったもんじゃないだろう。
話にならないほどだらしがないうえに、とんでもない時刻に音楽に熱中するし、時には室内でピストルの射撃練習をしたり、気味のわるいだけならいいが、どうかするとたまらない悪臭をはなつ実験はやるし、彼のまわりには乱暴で危険な空気がつきものなのだから、これはロンドンでも最悪の下宿人というべきだろう。(『瀕死の探偵』)



「はい、いま事件で一生懸命なんです。お体が心配ですよ。顔いろはだんだん悪くなるし、やつれてくるばかりで、何も召しあがりません。『お食事はいつなさいます?』ってハドスン夫人が尋いたら、『あさっての七時半に』とこうなんですよ。ワトスン先生は事件に熱中している時の先生のやり方はごぞんじですね」(『マザリンの宝石』)



出張帰りらしいシャーロックとジョン(今回は『ホームズとワトスン』と書くべきなんでしょうが、混乱するのでそのままで……)の荷物を運ぶのは、ジョンの結婚式で「ページボーイ 」を務めたアーチーくん。
今回はまんまペイジですね!可愛い!さすがにここでビリー・ウィギンズが出てきたらドン引きですよね!
この少年給仕の役は、ジレットの舞台では子役時代のチャールズ・チャップリンが演じていたそうですよ。

探偵の仕事に興味津々のアーチー(ビリー?)くん。

"What's in there?"
"Never mind."
「それ、何が入っているんですか?」
「気にするな」



ジョンの荷物に何が入っているかは、まあだいたい察しが……

"Did you catch a murderer, Mr Holmes?"
" Caught the murderer; still looking for the legs. Think we’ll call it a draw."
「殺人犯を捕まえましたか、ホームズ先生?」
「捕まえた。脚はまだだがね。引き分けというところかな」



二人の顔にも注目してみましょう。
NEWS:シャーロック、タカ派(←まだ言ってる)。
個人的に、ベネディクト・カンバーバッチはオールバックが一番色っぽいと思います……もう今からどっきどきです。
ジョンのひげは「カイゼル髭」で、両端を跳ね上げて固めてあります。第3シリーズ冒頭のひげとはちょっと違いますね。

玄関に入ってからは、ジョンの出版した小説が総攻撃に……

"Well, I never say anything, do I? According to you, I just show people up the stairs and serve you breakfasts."
「私は一言も喋ってないじゃありませんか?あなたが書く私は、お客様を案内したり朝食を出したりするだけ!」
" I’m your landlady, not a plot device."
「私は大家よ。小道具じゃありません!」



決め台詞出ちゃった……原作のハドスンさんがこんな風に考えてたなんて、思わなかったなあ。でも、よく考えればあり得る話ですよね。ハドスン夫人が「空家の冒険」でいきなりあの役を任されたと考えるほうが無理がある。普段から、家事だけでなく捜査においてもさまざまな活躍があったのかもしれません。
そして、どさくさに紛れてシャーロックまで

" Don’t feel singled out, Mrs Hudson. I’m hardly in the dog one."
「あなただけじゃないですよ、ハドスンさん。僕だって犬のやつにはほとんど出てない」


お前は自業自得だろ!(犬のやつ=『バスカヴィル家の犬』で、ホームズは身を隠してワトスンに単独捜査をさせます)

口喧嘩、シドニー・パジェットにまで飛び火。

"You make the room so drab and dingy."
" Oh, blame it on the illustrator. He’s out of control. I’ve had to grow this moustache just so people’ll recognize me."
「部屋も暗くて汚くて……」
「それは挿絵画家のせいですよ!あいつ、ほんとに勝手だ。あの絵のせいで、僕は髭をのばす羽目になったんですから!」




確かに部屋は若干黴臭そうな感じがしますが、まあ白黒だから……映画化を、映画化を待ってあげてハドスンさん……!
先にリンクを貼ったシドニー・パジェットのwikiに、彼の絵の「暗さ」への言及がありますね。

ホームズものの人気が上がるにつれ、パジェットのイラストはより大きく、より精緻になって行った。「最後の事件」が1983年に始まった時には、「ストランド」誌は一ページ全面を使ったイラストを呼び物とするようになっていた(同誌の他の作品では、イラストはもっと小さいのが普通だった)。その頃では物語の厳しいムードを受けてパジェットの単彩画法を使ったイラストも暗い調子を帯びるようになっていた。パジェットによる深い、翳のあるイラストは後のアメリカの探偵映画やフィルム・ノワールにおそらく影響を与えた。また数々のホームズ映画には大きな影響を与えた。



それにしてもワトスンの口髭が挿絵先行だったとは、ちょっとした新説じゃないですか。

「君は口ひげをのばしたので、ちょっとわかりませんでしたよ。といってもどうか悪くとらないでください。」(『海軍条約文書事件』)


という幼馴染の「ビミョーな」リアクションが心にひっかかっていた私ですが、口髭は軍人時代の名残かと思ってました。
(関連記事:『ジョンのひげ』)
でも、考えてみればホームズのイメージはパジェットによって決められてしまったわけで(ドイル自身はとがった鼻のインディアンの様な風貌を想像していたし、鹿撃ち帽にインヴァネスというスタイルもパジェットが考えたものだそうです)、もしホームズやワトスン、ハドスンさんがパジェットの絵を見たら、こんな反応をしたのかもしれませんね。

ドタバタのオープニングですが、たった1分弱の動画でもこんなに楽しいとは!
本当に、12月が楽しみです。
群馬の映画館が「世界の限定された劇場」に入りますように……(入りません)


(原作からの引用は延原謙訳。トレイラーからの引用は拙訳です。表記や訳の間違いがありましたら、教えていただければ幸いです)

Many Happy Returns

※第3シリーズの内容に関わる記述があります。

2013年のクリスマスに発表された、小さなエピソード。

(検索したところ、日本語字幕がついた動画もいくつかあるようです。ファンの方による、ご厚意の投稿だと思います。なにかご迷惑をかけるといけませんので、ここではBBCが投稿したものを載せましたが、ご興味のある方はタイトルを検索してご覧になってください!)

クリスマスイブにはもうアップロードされていたようでしたので、既にご覧になった方がほとんどだと思いますが、ざっと粗筋を書いてみます。

★★★
シャーロックの生存を信じている男がいた。それは、元・科学捜査官のアンダースン。
彼はこの説に固執するあまり、ヤードを退職してしまっていた。
「シャーロックは生きている」という根拠を、レストレードに向かって並べ立てるアンダースン。
さまざまな国で、シャーロックが関わっているとしか思えない難事件の解決が行われていた。
アンダースンによると、それはだんだんロンドンに近づいてきている。

アンダースンと別れたレストレードは、ジョンに会いに行く。
彼は、ジョンに一枚のDVDを渡す。以前、ジョンの誕生祝いのディナーに来られなかったシャーロックに、レストレードがお祝いのメッセージを言わせて撮影したことがあった。その動画の、未編集バージョンが入っているという。

★★★

全体的に、シャーロックの「帰還」を仄めかす内容になっています。
まず、(シャーロックからジョンへのメッセージでもある)タイトルがそうですね。お誕生日を迎えた人に贈る言葉"Many happy returns"(今日のこの幸せが、何度もあなたに訪れますように)"には、「空家の冒険」が収録されている短編集"The Return of Sherlock Holmes"の"Return"が含まれています。
そして、レストレードが街角で見かけるスポーツ紙の見出し"THE GAME IS BACK ON(試合再開)"。
これは"A Study in Pink"での、シャーロックの"The game is on"という台詞につながっていて、元ネタは原作のホームズによる"The game is afoot"(獲物が現れた)です。さらにその元ネタはシェイクスピアの…面倒なので過去記事にリンク貼ります!(関連記事:『タイトルについて(3)』

シャーロックからジョンへのメッセージには、「心配するな。もうすぐ、また君といっしょになる(←延原先生風に試訳)」という言葉も出てきます。もともと二人が一時的に離れていた時に撮られた動画なので、ほんの偶然なのですが、シャーロックと出会う前を思わせる、がらんとした部屋でこれを見ているジョンは、きっと胸が熱くなったと思います(視聴者も!)
ジョンが思わずつぶやいた"stop being dead"という「指示」に、画面上のシャーロックがたまたま"Okay"と「返事する」ところにも泣かされますね。

さて、元ネタ探しですが、「失踪中にホームズがいろいろな国をさまよっていた」ということは「空家の冒険」で明かされます。ちょっと信じられないような話なのですが……

「(前略)だから僕は二年間チベットへ行ってきた。そのあいだラサへも行って、面白かったし、ラマの長と数日を過したこともある。ジーゲルソンというノルウェー人の非凡な探検記を、君は読んだかもしれないが、あれが君の親友のニュースだとはまさか気がつかなかったろう。
それから僕はペルシャを通過して、メッカをちょっとのぞき、エジプトのハルツームで回教王をも訪問したものだが、それらのことは外務省のほうへ報告を出しておいた。
 フランスへ帰ってきてからは、南フランスのモンペリエのある研究所で、コールタール誘導体の研究をやったが、数カ月で満足すべき成果を得たし、ロンドンには敵が一人しかいなくなっていると知ったので、帰国しようと思っている矢先へ、こんどのパーク・レーン事件だ。(後略・延原謙訳)」



冒頭に出てくる「仏教徒の僧兵」たちは、ラサに行ったくだりへのオマージュでしょうね。
アンダースンが「だんだんロンドンに近づいてくる」と言うのは、ホームズが最終的にお隣の国であるフランスにいたことに由来しているのではないでしょうか。アンダースンの地図では、シャーロックの「最新目撃地点」は フランスの北端あたりに見えます。ホームズの辿ったルートと、アンダースンの地図、比較してみたら面白そうです。

そして、シャーロックが解決した事件の中には「語られざる事件」が!

「ニューデリー事件(命名:アンダースン)での、犯人が「チョコレートフレークがアイスクリームにどれだけ沈んだかで判明した」エピソードは、「六つのナポレオン」に出てくる「アバネティ一家の事件」からですね!

「(前略)ワトスン君は覚えているだろうが、あのアバネティ一家の恐るべき事件は、夏の暑い日にパセリがバターのなかへ沈んだその深さに僕が気づいたのが始まりだったんだからね(後略・延原謙訳)」



余談ですが私、この「パセリがバターに沈む」というのがどういう状態か、想像できなかったのです。小学生の頃からずーっと。
バターは塊だとして、パセリは刻まれているのか、ひと房(?)ぽんと載っているのか。
この疑問は一生「とけない」かと思っていたのですが、ドイツに旅行した時、宮廷での晩餐会を模したイベントに参加してこれを見つけたときはすごく嬉しかったです!ホームズがアバネティ家で見つけたものと同じ状態かはわかりませんが。

パセリとバター

「トレポフ氏の妻の殺人事件」(これも個人的な感慨ですが、トレポフがドイツ系の名前だということに、アンダースンが地図を指差すまで気付きませんでしたよ……!カタカナはぜんぶ英語だと思ってた、小学校の図書室での読書時代から基本的に進歩してない……!)は、「ボヘミアの醜聞」に出てくる「語られざる事件」から。

たとえばトレポフ殺人事件でオデッサへ招かれていったこと、トリンコマリーのアトキンスン兄弟の奇怪きわまる惨劇を解決したこと、さてはオランダ王室から頼まれたむずかしい使命を、いともみごとに果したことなどである。(延原謙訳)



レストレードが「シャーロックなしでも解決した」という事件を挙げ、アンダースンが「でも、タワーハウスの件は読み違えてた」と突っ込むくだりは、「空家の冒険」でのレストレードとホームズの再会シーンを思い出させます。

「非公式な助力も少しは必要かと思ってね。迷宮入りの殺人事件が一年に三つでは、困りますよね。しかしあのモールセイ事件だけは日ごろの君にも……いや実にお手際でしたよ(延原謙訳)」



「クライン兄弟の事件」「ケンジントン・リッパー」「タワーハウスの事件」と、レストレードが単独で解決した(?)事件も、すごく面白そうですね。「ケンジントン・リッパー」はやはり切り裂きジャック事件、「クライン兄弟」は先述した「トリンコマリーのアトキンスン兄弟の奇怪きわまる惨劇」、「タワーハウス」は「ギリシャ語通訳」でマイクロフトが弟に「お前には荷が勝ちすぎてる」と言った「マナーハウスの事件」を思いだすのですが……犯罪史やホームズ学に詳しい方には、もっと別の意見がありそうです。

レストレードが持って来た箱の、DVD以外の中身も気になります。
携帯はあの事件の証拠品として、マスクはなんだろう……原作の「黄いろい顔」を思い出すのですが。現実にあれが窓から覗いてたらすごく怖いな!!

ジョンの友人たちと顔を合わせたくなくて、「忙しい」と嘘をつくシャーロック。
「言い訳をもっとよく考えなくていいのか」と聞くレストレードに
"Only lies have details.(つべこべ言うと、余計に嘘っぽくなる)"と返すのですが、この「嘘だけが細部を持つ(≒真実は常に単純?)」という表現、原作になかったかしら。「赤髪組合」の 「一般に事件というものは、不可解であればあるだけ、解釈は容易なもの(延原謙訳)」かな?全体的な意味合いが違いますが……
ちょっとこれは思いつかないのですが、#SHERLOCKLIVES期間中は「歴史の生き証人として」勢いで記事をアップしてしまった方がいいような気がするので、後ほど時間をかけて探してみます。


さて、この動画はジョンの心を大きく動かしたようです。
ブログにこのことを書き、それを最後の記事としています。記事の最終行では、シャーロックがテレビの中からジョンに語りかけたように、ジョンもシャーロックに語りかけています。

もしシャーロックがこの記事を読んだら、帰りたいという気持ちを強めるのではないかしら。
過去記事「シャーロックとハドスンさん」のコメント欄でRMさんが引用してくださっていますが、「最後の事件」の終わりにはワトスンの個人的な、友を想う熱い言葉が書かれています。
以前も、「最後の事件」の記録の発表と「空家の冒険」での二人の再会の近さに触れましたが(関連記事:『再開と再会』)、ジョンが語りかける言葉が、シャーロックの帰還の呼び水になるような気がします。

以下は感想というか叫びです。


レストレードかっこいい!(こんなに洒落たことができるのに、なんで奥さん浮気したんだろう……)
疲れきったジョン、なんだか色っぽい!
そして、何よりもアンダースン!シャーロックとは犬猿の仲と思いきや、なんと人生狂わせてしまうほどのファンだったとは!
(ジョンのブログやシャーロックのサイトに初期から書き込んでいる"theimprobableone"は彼だったのかしら。私、ずっとマイクロフトだと思ってました!)
【追記:2013.12.28】ジョンのブログの、別にアップされた記事"Death by Twitter"を読んだところ、どうやらどちらとも別人ですね。当て推量を書いてすみませんでした!しかも与えられていたデータすら見ずに……!ホームズが激怒しそう!)

これは、「アンダースンが意外なキーパーソン説」に信憑性が出てきました……!
(関連記事:『アンダースン』

#SHERLOCKLIVES

★そろそろ、第3シリーズのネタバレ要素が多くなってきております。
放映まで物語の内容に触れたくない方はご注意ください。


先日、ジョンのブログ再開に関する記事でYOKOさんのコメントへのお返事に
「(S2E3の終了時点でシャーロックの生存がわかっていたので)ファンがBBCにメールをしたり、喪章を付けて歩いたりする必要がなくてよかった」というようなことを書きましたが、これは、原作もお好きなYOKOさんに向けて、「最後の事件」でホームズが「亡くなった」時の読者の反応のことを意識してのことでした。
当時の「ホームズ」ファンの反応について、「最後の事件」のwikiから引用します。

『ストランド・マガジン』に「最後の事件」が発表され、ホームズの死が明らかになると、世間は大騒ぎとなった。ホームズの死を悼んで外出の際に喪章を着けた人々がいたこと、20000人以上の読者が、続けていた『ストランド・マガジン』の予約購読を取り消したこと、ドイルに対して抗議や非難・中傷の手紙が多数送られたことなどが知られている。ドイルは後に、自分が現実で殺人を犯した場合でも、これほど多数の悪意に満ちた手紙を受け取ることはなかったはずだと記している。
ホームズの死は他の雑誌でも取り上げられた。『スケッチ』では「悲劇的な死」と評され、『パンチ』では目撃証言などホームズの死を確認できる証拠がないという指摘がされた。『ストランド・マガジン』を創刊したジョージ・ニューンズは、雑誌の売り上げに大きな影響を与えることから、株主に対して「とんでもない出来事」と話している。
「最後の事件」発表後、ドイルは読者や出版社からホームズを復活させるよう幾度となく要望されることになる。しかし、ドイルは長期間にわたりこの要望を拒絶し続けた。やがて様々な要因からドイルはシリーズの執筆を再開することになるが、ホームズが再登場した1901年の長編『バスカヴィル家の犬』は、「最後の事件」より前に発生した事件だった。ホームズが本当に「復活」するのは1903年の短編「空き家の冒険」で、「最後の事件」の発表から9年と10ヵ月が経過していた。



ところが、その直後に第3シリーズのトレイラーを見て、自分がとんだ思い違いをしていたことに気がつきました。



シャーロックの「復活」に際して、世間が大騒ぎしなくて済んだなんてとんでもない!
BBCは、世界中の「実在する」SHERLOCKファンを巻き込んで「ホームズ死亡→復活」当時の熱狂を21世紀に再現するという、一大プロジェクトを起こそうとしていたのですね!

もちろん、世界中のファンが実際に「#sherlocklives」のハッシュタグを使って動き出します。
さらに、メインスタッフのマーク・ゲイティス、スー・バーチューなどから「明日の朝、ベーカーストリートやガウアーストリート、バーツなどにある車両が現れる」という趣旨のツイートが。

そして予告どおりに、ロンドンの街に現れた車。



第3シリーズ1話のタイトルになっている"The Empty Hearse"!
この車の登場で、ひっぱりにひっぱった「第3シリーズ放映開始日」がついに発表されるという凝りよう!
もう、スタッフにはこの言葉を贈るしかないですよね!心からの賛辞として!

「(前略)ワトスン君はよく知っていますが、私はとかく芝居がかりにやらないじゃいられない癖があるもんで……(海軍条約文書事件・延原謙訳)」




きっと、この他にも取りこぼしている情報がたくさんあると思います。
このブログはあくまで原作との比較がテーマなので、最新情報は知らなくても別にいいや、というスタンスでやってきたのですが、この「究極の原作リスペクト」には、できるだけしっかりついていかなくては!

「作る人」もまたホームズの「ファンである」ということを、しみじみと思いました。
そして、提供側のプロモーションとファンによる口コミの広がりがソーシャルネットワークによって地続きとなっていることや、ただ「作品を見せる」「見せられるのを待つ」だけではない、製作者と視聴者の双方向的な関係に、「現代」らしさを感じます。
過去にも何度か「作品に対する現実の読者の反応が、物語に取り入れられている」例を挙げましたが(関連記事:「ヘイミッシュ」ビリーは二人いる」など)、この作品が、ホームズ物語の舞台を現代に移しただけのものではないこと、ヒット作としてシリーズを重ねてなお、わくわくするような趣向が随所に仕掛けられていることにも、ひたすら感心させられます。
プロフィール
Author:ナツミ


シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

エイプリルフール記事を片付けました。

例年、背景画像を変えて違うサイトに擬態したり、ブログ名を変えたりと派手派手なネタが多かったのですが、すっかり過疎った状態で地味にひとつ記事を追加しただけの今年、多くの人の心にひっかき傷を残すことになろうとは……(追記参照)
マジすみませんでした……

ネットを見渡して思ったんですが、ウェブサイトがエイプリルフールに全力でウソをつく!という風習(?)自体が古びつつあるのかもしれませんね。
私は好きなんでやりたいですけど。

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