最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
①正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探し
②ドラマでまだ出てこない原作の事件は、SHERLOCKだとどんな話になるのかな?と妄想する

…を一人で(主にトイレとかお風呂で)楽しんでいたのですが、
さまざまな方にご意見をいただけたら楽しいだろうなあ、と思って始めました。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
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【お願い】 ★記事における間違いは、できる限り修正したいと考えております。お気づきの点がありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。
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記事索引「ブリキの文書箱

いつまでも幸せに

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シャーロックとジョンのもとには、妻を調査して欲しいという夫や、夫を調べて欲しい妻がしょっちゅう訪れるようです。その多くは、片方か、時には両方が浮気をしているというケースのよう。

サブリナ・ジェニングスが現われた時、シャーロックは彼女がフラットに入ってくる前に彼女の事情を見抜きました。この時の様子は、第3シリーズ2話でシャーロックのスピーチの中に出てきます。
ドアベルを鳴らそうかやめようか、迷っているサブリナを窓から見下ろすジョン。「彼女、ベルを鳴らすかな?」とシャーロックに聞くと、

"She's a client, she's boring. I've seen those symptoms before."
「依頼人だ。つまらない事件だ。同じような症状を見たことがある。」
"Oscillation on the pavement always means there's a love affair."
「入る前にためらうのは、だいたい恋愛問題だ(拙訳)」



この場面は、「花婿失踪事件」からですね。

彼女はこの非凡な服装で、からだを前後にゆらせて、手袋のボタンをまさぐりながら、おずおずとこっちの窓を見上げていると思ったら、まるで水泳選手のスタートの時のように、勢いよく往来へとびだして、こちらがわへわたってきた。そしてすぐに、ベルの音がはげしく鳴りひびいた。
「こういう徴候をみかけるのは、これがはじめてじゃない(“I have seen those symptoms before,”) 」といって、ホームズは吸いかけのタバコを暖炉のなかへ投げすてた。「入口まできてためらうのは、かならず恋愛問題だ。“Oscillation upon the pavement always means an affaire de coeur.)(後略)」



シャーロックの「診断」は劇中では明らかにされていませんが、おそらくホームズと同じだと思いますので、続きも引用しておきます。

「相談はしたいが、人にうちあけるにはちと恥ずかしい気がする。もっともこれにも差異はある。男にひどい目にあわされたのなら、その女はためらいなぞしていない。その場合は呼鈴の紐が切れるのが普通だ。きょうのやつは、恋愛問題であることは間違いないと思うが、女は当惑し、悲しんでこそいるけれど、怒ってはいないらしい。(後略)」



クリスという男性と結婚5年目のサブリナは、彼の浮気の証拠をシャーロックに見つけて欲しいとのこと。
しかし、サブリナにもまた、他に愛する人がいました。
サブリナは、実はゲイ。その事実を家族に知られたくないと思っていたのですが、彼女の実家の財産目当てのクリスに家族にばらすと脅され、不本意な結婚をしていたのです。
女性のお金目当ての男が愛のない結婚を目論む、というのも「花婿失踪事件」に似ています。こちらの場合は、結婚させないことで財産を手に入れようとしたわけですが……

シャーロックは、クリスの浮気の証拠だけでなくサブリナとその交際相手の写真も手に入れ、彼女に突きつけます。
結果として、彼女はクリスと泥沼状態で離婚し、大金を失いましたが、本物の愛を手に入れたようです。
シャーロックは仲人の役割を務めたわけですね。

原作で、ホームズがカップルの仲を取り持ったことといえば、やはりワトスンとメアリ・モースタンの結婚につながった「四つの署名」でしょうか。メアリがホームズの依頼人となったことで、ワトスンと出会ったわけですから……
それに、「ボスコム谷の惨劇」では男性の無実を証明することで若い夫婦が誕生しました。(グラナダ版のラストシーンは爽やかでよかったですね!)
また、アイリーン・アドラーとゴッドフリー・ノートンの結婚式では、「付添男(ベストマン)」を務めたんですよね。

「(前略)まるで引きずりあげるようにして、僕は聖壇にのぼらされたうえ、気のついたときには、耳のそばでささやく声にへどもどうけ応えしたり、まるきり知りもしないことの証人となったり、いつのまにか未婚婦人のアイリーン・アドラーと独身の男子ゴッドフリー・ノートンとの結婚成立に立ち会わされてしまったわけだ。」(ボヘミアの醜聞)



訳あって結婚を急いでいた二人ですが、「たまたま」そこにホームズがいなければこの結婚は法律的に無効だったそうで、ホームズはすごく感謝されています。

ジョンは、自分とメアリの結婚がシャーロックに影響を与え、ちょっと人間が丸くなったのではないか、幸せそうな自分たちを見て他の人を幸せにしてみたくなったのではないか、と期待したようですが、結局はいつものように謎解きに興味を持っただけ、という結論に落ち着いたようです。
原作では、「椈屋敷」で聡明な依頼人・ヴァイオレット・ハンターに親切なホームズを見て、ワトスンがジョンと同じような期待を抱くエピソードがありますが……

ヴァイオレット・ハンター嬢に関しては、私はそれを知って失望を感じたのであるが、ホームズはひとたび彼女が事件の中心でなくなると、それきり何の関心をも見せなかった。(椈屋敷)



やはり、ホームズはホームズ、だったようです。シャーロックはこの先どうなっていくのでしょうね。

(原作からの引用は延原謙訳)



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毒の巨人

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シャーロック帰還後の事件です。

ジョンに、奇妙なメールが送られてきました。
本文はなく、真珠の画像が1枚添付されているだけ、というもの。
6日間毎日、6個の真珠の画像が一枚ずつ。

これは、「四つの署名」でメアリ・モースタンに送られてきた真珠ですね!

『(前略)するとその日のうちに、私あてに小さなボール箱が一つ、小包郵便で届きましたから、あけてみますと、たいへん大きな真珠が一つはいっておりますだけで、手紙のようなものは何も添えてございませんでした。それからと申しますもの、毎年おなじ日になりますときっと、おなじような箱でおなじような真珠が参りますけれど、すこしも送り主の手掛りはございません。真珠はたいへん珍しい種類のもので、値もよほど高価なものだとか。(後略)』



「面白そうな連中ははいつも僕じゃなくてジョンにメールしてくる!」と荒れるシャーロック。
ホームズもそんなこと言ってたことがあるような気がします。だいぶ穏やかですが。

「(前略)君はもっと面白い事件を持ってきたんだろう?君ときたら、まったく犯罪の海燕だからな(『海軍条約文書事件』)」



真珠メールの送り主を訪ねていくと、毒矢で撃たれたダニエル・ブレナン(関係あるかわかりませんがこの方と同じ名前です)がノートパソコンの横で死んでいました。
どうやら二人とも「宝探し」に巻き込まれたようです。(ジョンは、人気番組"Tresure Hunt"のプレゼンター・Anneka Riceにひっかけたジョークを言ったらしいですが、シャーロックは取り合わなかったようです。具体的にはどんなジョークか私にはよくわからないのですが、シャーロックも番組を観てなかったのかも)ここまでは「四つの署名」でバーソロミュー・ショルトーが殺されるまでの流れとよく似ていますね。

ベーカー街に持ち帰ったPCを調べると、どうやら持ち主は宝石泥棒のジェームズ・スワンデールのようです。
PCには、残しておくのは迂闊としか思えないようなファイルが満載。明らかに、罠でした。
シャーロックは、スワンデールの名に聞き覚えがありました。彼はいわゆる「小人」で、平均的な大きさの人が入れないようなところにも侵入できたのです。スワンデールが90年代のインディーズ・シーンで活躍したポップスター、ジャイルズ・コノーバーの家で仕事することを知ったシャーロックとジョンは、張り込みに出向きます。
ジャイルズ・コノーバーの名は、1944年にベイジル・ラスボーンがホームズを演じた映画 "The Pearl of Death"のキャラクターからとられているようです。この映画、私は未見なのですが、キャラクター名以外にもこの記事との関連があるのでしょうか。ご覧になった方がいらっしゃれば、ぜひご教示いただきたいです!

スワンデールの元ネタは、やはり「四つの署名」に出てきた、「アンダマン島原住民」トンガでしょうね!

『アンダマン島原住民は地球上最小の人種であろう。二、三の人類学者は南アのブッシュ人、アメリカの掘食インディアン、フェゴ島のテラ人種をもって最小であるとするが、本島の原住民は平均身長四フィート以下で、成人でもはるかにこれに満たぬものもある。一度信頼すると、きわめて厚い友情を示すこともあるが、一般には残忍獰猛で気むずかしく、親しみにくい人種である』
(中略)
『彼らは難破船を襲撃してその生存者を石頭の棍棒で殴殺し、毒矢を放つのでつねに航海者に恐れられる。これらの虐殺により彼らは食人肉祭りを行うを常とする』


トンガもスワンデールも、毒の矢を使います。
シャーロック、ジョンと追跡劇を繰り広げるところも同じです(追う方と追われるほうは逆転していますが)。
トンガにはジョナサン・スモールという主人がいましたが、スワンデールにも「相棒」がいました。The Headcrusher(頭つぶし)の名である種の人々に知られる、フィル・ディッキンソン。(棍棒で殴打するという、アンダマン島民の攻撃方法を受け継いでるっぽいですね)
ディッキンソンは、スワンデールとは対照的な大男。つまり、のっぽのシャーロックと小柄なジョンの、悪役バージョンです。誰かが、シャーロックとジョンを殺させるために差し向けたようです。
シャーロックは剣で、ジョンは銃で応戦します。原作ではホームズとワトスンが同時に発砲し、どちらかがトンガに当たるのでしたね。
シャーロックが剣術が得意、というのは原作由来ですね。ホームズに出会ったばかりのワトスンが作った「シャーロック・ホームズの特異点」リストに入っています。

十一、棒術・拳闘および剣術の達人。(『緋色の研究』)



犯人二人のうち、一人は追跡中に転落し、一人は逮捕された、という顛末も「四つの署名」と同じです。

結局、首謀者が誰かわからないまま、シャーロックは別の事件に気をとられてしまったようです。
事件に次ぐ事件でジョンはくたくたですが、こんな日々がずっと恋しかったのだと、感慨深げに記事を締めくくっています。
"A study in Pink"のジョンの"Oh,god,yes"ほどあからさまな言い方はしていませんが(していても書いていないのかもしれないけど)、ワトスンにも冒険を待ち望んでいるところがあって、ジョンがシャーロックに対するよりも素直に、ホームズに対してその感情をあらわしているように思います。

「いやじゃない。大丈夫さ。もうすこしこの事件の謎がとけてくるまでは、休む気になんかなれそうもないよ。僕もいくらか人生の暗黒面を見てきたけれど、今晩のように、それからそれへと不思議なことの連続に出くわしてみると、すっかり気も転倒してしまったが、どうせこうなったら、どこまでも君といっしょに、この謎のとけるまで働いてみたいよ」(『四つの署名』)



「やるとも!時と処のいかんを問わず、君のいう通りにするよ」(『空家の冒険』)



「二十年も若返った気がするよ。君から電報で、自動車をもってハーリッジにこいといってきた時くらいうれしかったことはないね。(後略・『最後の挨拶』)



ところで、毒を使うのは「小人」の方なのに、どうして「毒の巨人」なのかしら?と疑問だったのですが、ゲーム好きの友人によると「ウィザードリィ」というゲームに「ポイゾン・ジャイアント」というキャラクターが出てくるそうです。ジョンの記事と関係あるかどうかはよくわからないのですが、小人と巨人が同時に出てくる世界はこの事件に通じるものがあるのかもしれません。ジョン役のマーティン・フリーマンが小人を演じている"The Hobbit:The Desolation of Smaug"が公開中だったのも関係あるのかな?

「四つの署名」は第3シリーズ2話…というより、第3シリーズ全体の重要なモチーフになっていると思います。今回読み返せてよかったです。
元ネタと同列に語るにはあまりに一般的な表現過ぎるんですが、ワトスンからメアリへのプロポーズの時、ワトスンが思わず漏らした"Thank god!"というシンプルな言葉がきっかけとなり、3度も繰り返されるのに気づいて、なんだかうれしかったです。ジョンが"Oh,god,yes"と呟く場面も、シャーロックとジョンの冒険の始まりで、ある意味プロポーズ場面のようなものですからね。

(原作からの引用は延原謙訳)

不可解なマッチ箱

ジョンの記事へのリンクはこちら

アイザック・ペルサーノがブライトンの「ロイヤルホテル」の一室で、口も聞けない、いわゆる「発狂した」状態で発見されました。
記事中にペルサーノの職業は明記されていませんが、たぶん書かなくてもわかるくらいの有名人と言う設定なのだと思います。(追記:2014.1.28"The sign of three"で『フランスの10種競技の選手』と言われていました。また、マッチ箱の正しい数も述べられていたので、その部分を訂正しました。)彼のトレーナーのガブリエル・アラードは(おそらくフランスの)ホテルの一室で撲殺されています。その後ペルサーノは失踪していました。
発見された当時、彼は1812個のマッチ箱に取り囲まれていました。そのうち1811個は空でしたが、残り一つの箱の中には…

ジョンの記事には、これ以上のことは書かれていません。例によって政府の誰かさんのストップがかかったようですね。
ただ、事件は動機、方法なども含め、完全に解決されたそうです。シャーロックがピエロの格好をする羽目になったり、ハドスンさんがヘリコプターから押し出されたり(ロンドンオリンピック開会式の女王様だ!)ジョンも何やら思いも寄らない役目を果たすことになったらしいです。相当面白い事件だったようですね。これは、全体が公表されないのにはストレスが溜まりますね!
アンチシャーロック派の「また嘘かよ」という煽りコメントにも、ちょっと共感してしまいます……もしこの世界の住人だったら、私も「話を作ってるんじゃないか?」と疑ったかも。

この事件の元ネタは「ソア橋」冒頭の「語られざる事件」。ホームズが「失敗した」、つまり事件の全容が最後までわからなかった事件の一つです。

A third case worthy of note is that of Isadora Persano, the well-known journalist and duellist, who was found stark staring mad with a match box in front of him which contained a remarkable worm said to be unknown to science.

また第三の注目すべきものとしては、有名なジャーナリストであり、決闘者だったイザドラ・ペルサーノの事件がある。この人は科学界にもまだ知られていない珍しい虫の入ったマッチ箱を前において、じっとそれを凝視したまま発狂しているのを発見されたのである。(延原謙訳)



ジャーナリストはともかく「決闘者(duellist)」というのが具体的に何をしていたのかよくわからないんですが、ジューン・トムスンのパスティーシュ「奇妙な毛虫」(『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』収録)を読むと、反権力的な記事も書くため命を狙われることが多いけれど、自分で身を守れる人、という印象です。

不可解なのは、シャーロックがジョンに出会う前に関わった事件にも、同じ事件を元ネタにしたと思われるものがあること。リンク先はシャーロックのサイトですが、過去記事で和訳を試みたものを一覧にしたので、そちらにもリンクを貼っておきます。→過去記事「推理の化学~シャーロックのサイトから」
事件名しかわかっていないので、内容は全く関係ないかもしれないのですが、それにしても被害者の名前がかぶりすぎですよね。二つの事件には深い関わりがあるのか、単に製作スタッフが、一度使ったことを忘れてもう一度ネタにしてしまったのか……

というわけで、

1、マッチ箱の中身
2、過去の似た事件との関連
3、結局ジョンは何をさせられたのか


事件そのものの顛末を置いといても少なくとも3つの疑問が残るという、なかなかストレスフルな記事なのですが、シャーロックがジョンに中身を見せる場面は第3シリーズ"The Sign of Three"の回想シーンに出てきました。結局、視聴者には見せてくれなかったのですが……気になりますよね!
ちなみに、個人的には3もかなり気になります。シャーロックがピエロなら、ジョンも何かに変装したのかな?まさか、芸を披露したとか!?サーカスが出てくる原作といえば「覆面の下宿人」ですが、道化のほかに猛獣つかいの美女や力持ちの大男も出てきましたね。【追記:2014.2.8】「語られざる事件」ですが「サーカス美人のヴィットリア」の事件もありました!「サセックスの吸血鬼」に出ています。

ちなみに「ブライトンにあるロイヤルホテル」を検索してみたところ、似た名前のものは出てきたのでリンクを貼ってみました。
ロイヤル・アルビオン・ホテル(ブライトン)

オリエント・エクスプレス殺人事件

ジョンの記事へのリンクはこちら

※アガサ・クリスティ「オリエント急行殺人事件」のネタバレがあります。








……私はホームズが好きですが、特にミステリ作品全般に詳しいわけではないので、ホームズ以外の作品へのオマージュはいっぱい見逃していると思います。(ホームズへのもたぶん見逃してるけど)
でも、さすがにこれはわかりますよ!まんまだもん!!

ナイツブリッジの中華料理店「オリエント・エクスプレス」で、店主のテリー・ウォンが麺の皿につっぷした状態で発見されました。レストレードはシャーロックに相談に来ます。喉をつまらせた事故死のように見えたのですが、ウォンの顔にはあざがあり、何者かに襲われた様子。しかし、犯行があったと思われる晩、彼の周りにはずっと従業員や客がいました。その全員が、殺人を見ていないと証言しました。シャーロックとジョンは、「動機」に焦点をあてて捜査をすることにします。





要するにその場にいた全員が犯人なんでしょ!と思いながら読んでたらその通りでした。
シャーロックが「犯人」を見逃すのも、ポアロと同じですね。

とはいえ、クリスティや「ポアロ」のことをあまりよく知らないので、詳しい方にはもっと語るべき点があるのかもしれません。細部に関しては、クリスティに造詣が深い方に語っていただくのが楽しみです。

「オリエント急行殺人事件」、私は中学生くらいで読んだきりなので、この機会に再読したくなって先ほど文庫本を買ってきました。何か、気付いたことがあったら追記していこうと思います。今はこの作品以外のことを!

「オリエント・エクスプレス」、ここでは「急行列車」ではなくて、中華料理屋さんの名前になっています。
不意に思い出したのですが、北米で「パンダ・エクスプレス」という中華ファストフードのチェーン店を利用したことがあります。
リンク先はwiki。お店のサイトはこちら。パンダがかわいいです。

wikiを読んだら、従業員の時給が安いことで有名なんですね!テリー・ウォンが嫌われ者だったことに重ねてしまったら、経営者の方々に失礼かしら……

「パンダ・エクスプレス」は店名ですが、他にも、テーブルがある店舗と別に、フードコートなどに持ち帰り専用の小さな店舗を出店している場合、そちらを「○○(店名)EXPRESS」という名前にしていたお店があったと思います。店名は失念してしまったのですが……要するに「さっと買って食べられる」というような意味合いなのかな。

いずれにしても、ざっと調べた限りでは「パンダ・エクスプレス」に英国支店はなさそうです。ロンドンに詳しい方は、モデルになったお店をご存知かもしれませんね。


ジョンは「シャーロックには、彼独自の善悪の判断基準がある」と言っています。ポアロもそうですが、ホームズも同様ですね。犯人を見つけても、場合によっては告発して法に委ねることをせず、自己判断で見逃してやることがあります。

「要するに何だな」とホームズは陶製のパイプに手をのばしながらいった、「何も警察の欠陥を補うのを僕は頼まれているわけじゃないからね。(中略)ただ僕としては重罪犯人を勝手に減刑してやったことになるが、その代りこれで一つの魂が救われると思う。あの男は二度と悪いことはするまい。すっかり懲りて、震えあがっている。もしここで刑務所へ送ってやれば、あいつは常習犯に転落してしまうだろう。それにいまは寛容のクリスマスの季節でもある。偶然の機会から、はなはだ奇怪な事件を経験することになったが、われわれとしては事件の解決したことが報酬なのだ。(後略・『青いガーネット』)」


   

「ちょっと試してみただけです。あなたはあくまでも正しいことがわかりました。これは私として非常に大きな責任なのですが、ホプキンズ君にはちゃんとヒントを与えたのです。それを利用し得なかったとしても、私の知ったことじゃありません。いいですか、それではここで、当然ふまれるべき法律的手続きをとることにしましょう。あなたは被告、ワトスン君は陪審員です。陪審員としてこれほど打ってつけの人物はまたとありません。私は判事です。さて陪審員諸君、諸君は証言を聴取されました。被告は有罪ですか無罪ですか?」
「裁判長、無罪です」私が言った。
「民の声は神の声なり。クローカー船長を放免します。別の犠牲者が現われないかぎり、あなたは再び捕えられることはありません。一年たったら、あの夫人のところへお帰りなさい。彼女とあなたの将来で、今晩私たちの下した判定の正しかったことが立証されますように(『アベ農園』)」



「見せびらかし屋」のシャーロックにも、ちゃんと彼なりに犯人を見逃すか、見逃さないかの基準があるんですね。まあ、暴いたところで誰も得はしないんですけど、シャーロックのやることだと、「ウォンよりも犯人たちの方が面白くて好きだから」くらいの理由に思えてしまうのは、私の偏見でしょうか。
一方、ホームズは「法」と「自分の信じる正義」の間で自分自身を納得させるのに、壮大な自己弁護が必要なようです。
これは、時代背景による違いなのでしょうか。シャーロックは、ホームズをモデルにして作られたキャラクターだけれど、人格は別人、と言ってしまえばそれまでなのですが……。

(シャーロックは否定的にはとらえていないものの)犯人たちがインターネットでつながっていき、犯行を企てたというくだりには、"Death by Twitter"事件に通じる視点を感じます。ものすごく陳腐な言い方になってしまいますが、「現代社会の闇」をネットに見出しているような……
ジムが仕掛けた"fall"は、肉体的な転落だけではありませんよね。シャーロックとジョンが堕ちて行った先は、まさにそこだったのでしょう。

それにしても、こうも大っぴらに「別の作家」作品のパロディをやられると、シャーロックたちの世界がどれだけ私たちの世界と違うのか、気になってきます。「ドイルとその作品」が存在しないのは当然として、「クリスティとポワロ」もいないのか!この世界の本屋さんを覗いてみたいです。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)

ツイッターの殺人

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ジェイラン・ハッサンという女性がバスに轢かれて死にました。(この読み方でいいのかな?トルコ風ですね)
それは、事故に見えました。CCTVに映像が残っていたのですが、誰かに押された様子もありません。
しかし、彼女の兄・フランクは、妹の死の間際のツイートに疑念を抱き、シャーロックとジョンに相談をします。

「私にはわかる。彼が来る」
「わかるの」


最後の4つの「呟き」は、この繰り返し。死の数日前から、彼女はひどく取り乱していたとのこと。
その理由について、フランクには心当たりがなく、彼からは(例のシャーロックの脅…いや、交渉術をもってしても)何の情報も引き出せません。
わかっているのは、ジェイランがフェイスブックのアカウントを抹消(※)したこと(※原文ではshut downです。私はフェイスブックをやっていないので、認識から間違っているかも。教えていただけたら嬉しいです)。
すべてのメールを消去し、家の鍵を増やさせたこと。

シャーロックは、フェイスブックの件に興味を持ちました。
ジョンのブログに書き込んでいる人たちから適任者を見つけ出し、ジェイランが消去した情報を復活させます。

この、適材適所の人材運用にほれぼれしますね。モリー然り、ホームレスのネットワーク然り。
「ソシオパス」とはいうけれど、仕事上のコミュニケーション力は人並み以上ですよね。
情報屋や街の孤児たちを雇ってうまく活用していた、ホームズを思い起こさせます。
さて、日頃の書き込みなどから白羽の矢を立てられたのが、モンタギュー街時代からずっとシャーロックのサイトやジョンのブログにコメントを続けている"theimprobableone"さん!

……お恥ずかしい告白をします。実は私、この人の正体はマイクロフトだと、ずっと思い込んでまして、このブログにも何度もそう書いちゃってました。
確かにマイクロフトらしからぬ言動もあるにはあったんですけど、ジョンブログ自体を「たぶんそれほどホームズオタクじゃないライターさんが書いてるんだよね、そんなに深く考えなくてもいいや」と軽く考えてまして……しかも、ここ数日は「まさかアンダーソン!?」なんて言っておりました……
(でも、思えばS2放映前頃にらいかみんぐさんがメールで『私は単なる1ファンじゃないかと思います』っておっしゃってたんですよ!さすがだ……!)
お正月は、自らのブログを検索しては訂正しまくるという世界一楽しくない作業をして過ごすことに決定。今日仕事納めしたばかりなのに!もう!決定!(号泣)

愚痴はこのくらいにしまして、事件の顛末を。
この記事のはじめにリンクを貼った、元記事の画像をごらんください。
一見、ありがちなスパムメールなのですが(下のほうにある「本物のロレックスを安価で」みたいなスパム、よく海外ドラマで見かけるけど、そんなにしょっちゅう来るんでしょうか)、標題ではなく差出人に注目すると、
「お前に近づいている」「逃げ道はない」「死んだ女、30」「どん詰まりだ」など、不気味な言葉が並んでいます。
どうやら、彼女にふられた元カレの仕業だったらしいです(シャーロックは犯人を逃してしまったので、断言はできませんが)。ジェイランは精神的に追い詰められた挙句、彼から逃げようとしてか、または自暴自棄になって、車の前に身を投げてしまったのかもしれません。

「以前につながりがあった人(たち)に、本人にしかわからないやり方で追い詰められ、死に追いやられる」というパターンは原作にも多くあります。ぱっと思い出せるのは、「踊る人形」「オレンジの種五つ」。依頼人=被害者ではないけれど、「入院患者」もこの系譜に連なるのかな。「恐怖の谷」も当てはまりますね。

ホームズはこの手の事件だと失敗することが多いような気がします。いずれの事例においても、事件の全容は解読できても、ターゲットの殺害を防げていません。多くの場合組織的な犯罪ですし、すでに被害が出始めてから謎解きをはじめるわけなので、どうしても後手にまわってしまうのですよね。しかしホームズは自分自身の不甲斐なさを悔い、犯人の卑劣さに強い怒りを燃やします。

二人ともしばらくは口がきけなかった。ホームズのしょげかたは、私もかつて見たことがないほどであった。
「僕は誇りを傷つけられたよ」しばらくたって彼がいった。「むろん、つまらない感情にはちがいないが、僕は自尊心を傷つけられたよ。こうなったら僕には事件じゃなくて、個人的な問題だ。命のあるかぎり必ずこのギャングを押えてやる。せっかく僕を頼ってきたものを、むざむざと死なすために帰してやるなんて!」(オレンジの種五つ)



ホームズは返事もしないで、急いで馬車へ乗りこんだが、それから七マイルという長い道中を、ひと言も口を利かなかった。彼がこれほど悄気たのを見たことがない。ロンドンから来る途中も気にかかるらしく、しきりに朝刊を心配そうに引っくり返すのを見たが、ここへ来て、彼の恐れていた懸念が事実となったことを知らされ、ぼうぜんと暗い気持になってしまったのである。座席により掛って、沈痛なもの思いにふけっている。(踊る人形)



ジョンによると、シャーロックもそうだったようです。

He always regretted never being able to bring the man to justice right up until the day he died.
シャーロックは、この男を罰することが出来なかったことをいつも悔やんでた。それこそ、彼の死ぬ日まで。(拙訳)



そして、この記事にはジョン自身の怒りも滲み出ています。
ブログの再開以来、ジョンはネットという戦場で、シャーロックを中傷する見えない敵と戦うことになりました。
顔の見えない相手に、真実を証明したくてもできないまま、いつまでもいつまでも貶められ、辱められ、苦しめられる。
「嘘」と「真実」の間で、ひたすら精神的に消耗していく。
それは、想像以上につらい戦いだったのでしょう。「ツイッターに殺された」(正確には、そこに潜んでいる誰かの悪意に、ですが)彼女に、ジョンはシャーロックの死を重ねています。

(原作からの引用は、すべて延原謙訳)
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プロフィール

Author:ナツミ
シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

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