FC2ブログ
最初の挨拶
パンダとジョン

BBC制作、現代版シャーロック・ホームズのドラマ「SHERLOCK」ファンのブログです。
正典/聖典(原作)と比較しながらドラマを観て、元ネタ探しをしております。
ネタバレ満載ですのでお気をつけください!
★原作の文章を引用する際、主に新潮文庫版(延原謙・訳)を参考にさせていただいております。
★全ての記事は、推測やこじつけを基にしており、たまに妄想も入っております。ご了承の上ご利用ください。
★このサイト及び記事へのリンクは、どうぞご自由になさってください。
「あの場面の元ネタは?」という時はこちらへ
ブリキの文書箱

死のキャンドル

(ジョンの記事へのリンクはこちら

ヨガのインストラクター、ティム・レンが入浴中バスタブに横たわったまま死亡。
溺死ではなく、窒息死でした。
同居人のスコット・ベヴァンは、ジョンのブログの読者でした。警察に通報する一方で、シャーロックたちにも連絡。
密室殺人が大好物のシャーロックは、この事件に飛びつきます。

……この流れなのに登場人物に男しか出てこないのが、いかにも「SHERLOCK」って感じです。
まあ、関係者が女性だったら「まだらのブロンド」と似たシチュエーションになっちゃうんですけどね。

ここで、突然ジョンの風呂好きが判明。

Apparently, the deceased had liked candles. And long baths. I'm not judging. There's a possibility I might enjoy a long bath myself occasionally. When Sherlock was alive I did a lot of running and fighting and sometimes I needed to relax and recuperate. And a bath is good for that. That's a medical fact. So it makes sense. And essential oils and candles help with the whole relaxing thing. People might laugh. People did laugh when Sherlock told them I enjoyed having baths but I was fine with it. I'm still fine with it. Baths are good.

どうやら、被害者はキャンドル好きで長風呂だったようだ。おかしいとは思わない。
僕も、しょっちゅう長風呂を楽しむ方かもしれない。シャーロック・ホームズが生きていた頃は、たびたび走ったり格闘したりだったので、たまにはリラックスして、元気を回復する必要があった。そのためには、入浴が良い。これは医学的事実だ。だから、(ヨガ講師が風呂好きなのは)理にかなっている。エッセンシャルオイルとキャンドルは、リラックス効果を促進する。
みんなは笑うかもしれない。シャーロックが僕の風呂好きをバラすと、実際笑われたものだが、僕は平気だった。今でもそうだ。風呂はいいものだ。(拙訳)



この力説ぶり!
シャーロックはシャーロックで、「ジョンはまだ風呂に入ってるのか……」と呆れていたんでしょうね。原作でもワトスンの風呂好きに関する会話があります。

「バスのことだよ!風呂さ!何だってまた、だるくなる上に高価なトルコ風呂なんかへいったんだ?イギリスふうのにすれば、からだが引きしまって元気がでるのに!」
「この二、三日リューマチの気味で老いこんだような気がするものだからね。トルコ風呂は医者のほうでは薬の代用品だというよ―新しい出発点になる体質の清浄剤とでもいうかな」(フランクス・カーファックス姫の失踪)



ジョン同様「医者のほうでは」とか理屈をいうけど、まあ好きだったんでしょうね。「四つの署名」でもお風呂に入って元気になったことを、わざわざ書いていますし。
面白いのは、こんなことを言っていたホームズもトルコ風呂に「はまる」ことです。
(関連記事『ジョンの影響』)

ホームズも私も、トルコ風呂ときたら目のないほうだった。風呂からあがって、休憩室で汗のひく間、快い疲労のうちにぐったりしてタバコをやっているときは、彼もいくらか口が軽く、よほど人間味をおびてくるのだった。(高名な依頼人)



シャーロックも、ジョンの影響で長風呂になっているかもしれないですね。
男の人がお風呂好きなのって、笑われるようなことなのかな?古代ローマ人に感心されるような国に暮らしていると、特におかしいとは思わないのですが……

さて、シャーロックは、(自己申告によれば)この事件をたったの36秒で解いてしまいました。
この記事はいわゆる「読者への挑戦状」形式になっています。「正解」を見る前に36秒以内に解けた方、いらっしゃったでしょうか?

結論から言ってしまうと、犯人は通報したべヴァンその人。
ドアの周りに濡れタオルを貼り付けて空気の通り道を塞ぐことで、徐々に酸素が不足していく状態を作ったんですね。ドアの下の床が濡れた跡、ドア枠に残ったテープのかけら、ベランダに干されたタオルが証拠になりました。
このバスルームの換気の悪さも、日本だったらまずあり得ない!乾燥した国ならではのトリックだなあ。(それでも、私も長風呂なのでちょっと怖いです。実際は何分くらいで意識がなくなるんだろう。とりあえず、疲れてるときはキャンドルは使いません!)

シャーロックの分析によると、犯人自らシャーロックを呼んだ理由は、自分の頭の良さに自信があって、ちょっとばかり見せびらかしたかったから。
でも、頭の良さも、それを見せびらかしたい欲望も、シャーロックの方が上だったみたいですね。

わざわざ現場の写真をアップしたジョン(死体の写真アップロードって、やってもいいんでしょうか。FC2さんだったらすごい怒られそうなんですが!まさか、ジョンかシャーロックによる再現!?)に、マイクがつっこんでますが、私はジョンの良識以上にシャーロックの画力に注目したいです。(ジョンが描いた可能性もあるけど、「緑のはしご事件」の時の字に似てるからシャーロックだと思う!)
いや、走り書きにしちゃ字は綺麗なほうかと思うんですけど……ティムの足、いくらなんでもひどくないですか!?

コメント欄には、ジムの信奉者によるものと思われる、#TEAMMORIARTYのタグを冠した書き込みも見えます。いわゆる「煽り」ってやつですね。彼らは、「最後の事件」でホームズが触れていた「モリアティの残党」にあたるのだと思います。

さて、事件全体の元ネタはなんでしょう。床についた水の「しみ」が決め手になるところは、「第二の汚点」を思い出させるのですが、密室殺人であったり、かなりの短時間で解決した点に目を向けると、また別の事件もあるかもしれません。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)

ハドスンさんの朝食

ここんとこ必ず週末に動きがあるので、先週末はわりと身構えてたんですが、やっぱりブログの更新と新しいトレイラーが来ましたね。
しかしBBCよ…いま師走ですよ!日本にはクリスマスと正月が両方来るんですよ!
ぶっちゃけ忙しいんでスルーでいいや!と一瞬思いましたが、原作との関連があると、誰にも頼まれてないのに更新せずにはいられない、己の業の深さよ…(そして、結局ここに来ないと誰ともSHERLOCKの話ができない悲しさよ…)

さーて、今週のジョンは!(巻きでいきます!)
今までに撮っていた写真を、いくつか公開したようです。ワトスンは写真での記録はしていなかったことを思うと、これは現代版ならではですよね。"The Blind Banker"や”The Great Game"など、劇中で撮った写真もあって懐かしいですね。友人が、ジョンが猫を抱き上げる仕草を見て「猫好きに違いない」と推理してたんですが、内心「世界で一番不細工な猫」だと思ってたことも判明しました。

シャーロックとジョンがハドスンさんにノートパソコンをプレゼントしたのも、懐かしいです。
確か、第2シリーズ中のクリスマスのことでしたね。それまでは、お隣のターナーさんのコンピュータから書き込んでいたのでした。(関連記事:『お隣の大家さん』)

そしてクルード!(関連記事:『シャーロックとボードゲーム』)
奥に転がっているのは、お友達のあの人でしょうか(ずいぶんな扱いに…)
私は「クルード」で遊んだことがないんですが、ナイフは付属品なんでしょうか?それとも"A Study in Pink"で出てきたあのナイフ?(関連記事:『ホームズ流お片付け』)

He liked playing Cluedo. So did I. Before I played it with him. He actually deduced that the victim had done it.

He deduced that the victim had faked his own death.

I said at the time that it wasn't very likely. In fact, I think I said it was impossible. And he told me that it might be improbable but nothing's impossible.

彼は「クルード」で遊ぶのが好きだった。僕も好きだった。彼とやるまでは。
実のところ彼は、(ゲームの中の犯罪は)被害者による犯行だと推理した。
被害者が、自身の死を偽装したんだと。
あの時、僕はそれはありそうにないと言った。いや、「そんなことは不可能だ」と言ったんだと思う。
彼は、「ありそうにないかもしれないが、不可能ということはない」と言った。(拙訳)


"The Hounds of Baskerville"冒頭でのあの会話が、まさかシャーロック自身の「死」につながっていたとは、気がつきませんでした。
シャーロックは、ダートムアでもこんなことを言っていましたね。

"Once you've ruled out the impossible, whatever remains, however improbable, must be true."
「不可能なことを取り除いたら、どんなにありえなそうでも残ったものが真実だ」


この台詞はとても有名なホームズの信条で、原作では「四つの署名」「緑柱石の宝冠」「ブルース・パーティントン計画書」「白面の兵士」などに書かれています。シャーロックのサイトのトップページにも掲げられていますね。
ジョンと遊んだ「クルード」から、シャーロックは「自分の死を偽装すること」を思いついたのかもしれません。
だとしたら、ジョンはかなり真実に近いところにいることになりますが…
果たして、シャーロックの「信条」を思い出して、真実にたどり着くことが出来るんでしょうか。

さて、この記事にもおなじみだったり初めて?だったりする面々からのコメントが寄せられていますが、その中でハドスンさんが、"I still do an amazing fry-up."(『私の作る朝ごはんは今でも最高よ!』)とジョンを誘っています。これは、「海軍条約文書事件」から。

「ハドスン夫人はずいぶん気がきくね」ホームズはチキンのカレー料理のふたをとりながら、「あまり変った料理も知ってはいないが、スコットランド女にしちゃ朝食の作りかたは心得ているほうだ(後略・海軍条約文書事件・延原謙訳)」


ハドスンさんがスコットランド人かどうかは、ちょっと調べたのでこちらの記事をごらんください。
(関連記事:『ロンドン男子ごはん』)

fry-upは、ベーコンまたはソーセージ、焼きトマト、目玉焼きなどのイギリス風朝ごはんを意味するようです。ちょうど、昨年のホビットプレミアの帰り道、六本木のお店でこれを食べたのを思い出しました。ハドスンさんの作るものに似ているかどうかはわかりませんが、写真を貼っておきます。

ブレックファスト

ジョンのブログが過去の思い出を振り返るような感じだったので、私もここ数年間の過去記事をたくさん貼ることになりました。このブログもジョンのブログと同じ時間を経てきたんだなあ、と感じられて、なんだかしみじみ嬉しいです(アクセス数は全然違っても…)。
ジョンの文章には、シャーロックが「偽のヒーロー」だと思われていることへの鬱屈や、ジムへの怒りが見え隠れしています。その感情をなんとか抑えている、という調子で、ジョンはこんな風に書いています。

I'm not dwelling on the bad stuff. I'm remembering the good times.
悪いことをくよくよ思い悩むんじゃない。 楽しかった頃を思い出すんだ。(拙訳)


ジョンは必死に立ち直ろうとしている。でも、まだ完全には回復してはいないと感じられます。
前に倒れた時は、シャーロックが立ち上がるための足を、新しい人生を与えてくれた。
でも、もうシャーロックはいない。だから今度は自分の力で、なんとか立ち上がろうとしているのかもしれません。愛する人のために。

一方、シャーロックは…



再開と再会

実はついさっきまで別の記事を書いていたのですが、急遽差し替えます!

ジョンのブログ、再開していますね!

「シャーロック・ホームズの冒険」「シャーロック・ホームズの思い出」に収録されている短編群(『ボヘミアの醜聞』~『最後の事件』)がホームズの失踪中(ワトスンにとっては、ホームズの死後)に発表されたものであるということには、以前の記事で触れました。(関連記事:『不名誉と友情』)あと、長編ですが「バスカヴィル家の犬」もですね。

このうち、ワトスンがホームズの「死」に触れているのは「最後の事件」だけです。
「最後の事件」の発表は1893年12月。「空家の冒険」によれば、ホームズがロンドンに帰ってきてワトスンと再会するのは、1894年4月。たった4ヶ月しか間が空いていないんです。
「空家の冒険」で、ホームズはワトスンの作品を読んでいた様子がうかがえます。すぐ隣の国・フランスにいたホームズは、ワトスンのモリアティ教授の兄弟に対する怒りや、親友を喪った悲しみが今なお生々しいことを、「最後の事件」を読んで思い知らされたのではないでしょうか。また、まるでモリアティの残党を挑発するかのようなワトスンの文章に、友の身を案じたのかもしれません。表向きにはアデヤ卿事件が引き金となって「モリアティの残党を捕らえる準備が整ったから戻ってきた」ということになっていますけれど、あまりにもタイミングが良すぎるような気がしてしまいます。

そして、シャーロックも今日のこの更新(日付は4月ですけど…)世界のどこかで読んでいるんですよね。生まれる100年以上前に書かれた原作を読んでいた時はありえなかった、このリアルタイム感覚!ぞくぞくしてしまいます。(とか言って、更新久しぶりすぎて読んでなかったりして…RSS登録くらいしといて!シャーロック!)

では「最後の事件」冒頭とジョンのブログの記事を比較してみたいと思います。

It feels odd. Coming back here. This blog. It's taken me about a week to write this. I kept coming back. Deleting bits. Adding bits. The thing is, I'm not an emotional person. I'm emotional, obviously. I have emotions but I don't embrace grief. I guess I'm very British.

ここに…このブログに戻ってきたのは、なんだか変な感じだ。これを書くのに1週間はかかってる。書いては消したり、また少し書いたり。僕は感傷的なタイプじゃないけど、今はそうなってる、明らかに。でも、悲劇のヒーローを気取るつもりはない。我ながら、いかにも英国人って感じだ。

I don't like to talk about it.
But I've been told that I should talk about it. That if I don't talk about it I'll be how I was pre-Sherlock. And I can't go back to that. I've a life now.

あのことについては、話したくはない。
でも、話すべきだと言われ続けてきた。もし話さなかったら、シャーロックと出会う前の自分に戻ってしまうと。そうなるわけにはいかない。いま僕は生きているんだから。(拙訳)



この後、ジョンはシャーロックが「本物」であったと信じているが、一方でシャーロックの死を現実として受け容れていること、すでにシャーロックとの時代は終わり、前に進まなければならないのだと述べた上で、過去に書き溜めた記事や写真のいくつかを投稿することを宣言します。

この辺りは、ワトスンが「ボヘミアの醜聞」以下の短編を発表し続けたことと呼応していますが、ホームズ(シャーロック)の死に触れる順番が違いますね。ワトスンは、ホームズの死には一切触れずに作品群を発表したあとで、モリアティの兄弟に触発されるかたちで「仕方なく」ホームズの死を綴っています(※いつものごとくドイル先生の事情はちょっと置いといてください)。

シャーロック・ホームズの世に卓絶する不思議な才能を記録する最後の物語を書くため、このペンをとるのは、私にとって心おもき業である。支離滅裂な、ほんとに回らぬ筆をもって私は、「緋色の研究」時代に偶然彼と知り合ったころから、最後の「海軍条約文書事件」にいたるまで―これは面倒な国際関係の紛糾を未然にふせぎえたものと信じているが―彼とともになし得たかずかずの経験を伝えることに努めてきた。私はこの種の物語のペンを以上でとめておき、その後私の生活に空虚を生じたまま、二年後の今日にいたってもなお満たされないでいるところの、あの事件には口を閉じているつもりだった。
けれども最近ジェームズ・モリアティ大佐の書いた死んだ弟の名誉を支持しようとする二、三の文書は、私の出馬を強いた。かくなるうえは私もペンをとって、あるがままの事実を公表せざるを得ないのである。事件の絶対的真相を知るものは私だけである。私としてはこの真相を秘しておいても、もはや何の役にもたたない時節の到来したことを満足に思う。(空家の冒険)



ジョンの場合、シャーロックの名誉が傷つけられるタイミングが早かったのと、それが世間を大きく騒がせたのでちょっと状況が違いますが、ブログ再開の最大の動機は「過去にけりをつけ、新しい人生を始めよう」と思い立ったことのようです。
おそらくそのきっかけは、さっそくコメントを寄せてくれている友人たちの励ましと、同じくコメント欄でジョンへの思いやりを見せている「ある女性」。
なんと、わたしたち視聴者の見えないところで、既に彼女に出会っていたのですね!

原作で、ホームズの「死後」のワトスンに訪れたのは、彼女との「出会い」ではなく「別れ」でした。ホームズもそのことをちゃんと知っていて、再会時にあたたかく励まします。

私の孤独の悲哀については、いくぶん聞き知っていたらしい。彼の同情は言葉よりもむしろ態度の方にそれが現れていた。
「悲しみには仕事が最良の解毒剤だ。今晩これから二人でやれる小さな仕事がある。これが成功すれば、一人の男がこの世に生き永らえていた意義が見出せるというものだ」(空家の冒険)



そして、結婚のため221Bを出ていたワトスンは、またホームズとの生活を再会するのですが、現代版はあえて真逆を行くのでしょうか。ワトスンにとっての終わりが、ジョンにとっての始まり。ワトスンにとっての別れが、ジョンにとっての出会い。だからといって、ワトスンは悲しんでいるばかりでもなかったのかもしれません。この悲しい話を書くことで、「ホームズとの時代」を終え、新たな人生を歩もうとしていたのかもしれません(実際、アデヤ卿事件では、ホームズのやり方を思い出しながら、なんとか自分で事件が解決できないかと頑張っていますよね)。
同じように、ジョンが悲しみから完全に立ち直っているわけでもありません。でも、生きているならとにかく前に進まなければならない。彼の言葉を借りれば、"And that's what life is." それが人生と言うもの、なのでしょう。

いろんな意味で気になる第3シリーズです。とりあえずシャーロックには、一刻も早く帰ってくることをお勧めします(言われなくても本人が一番焦っているでしょうが…)。

(原作からの引用はすべて延原謙訳)

六つのサッチャー像

「アルミの松葉杖事件」はシャーロック1人で解決しましたが、この事件ではジョンが大活躍!
元ネタは、言わずとしれた「六つのナポレオン」。

クリスマスのすこし前の事件です。そういえば、この記事が公開された時期は、映画"The Iron Lady"(邦題は『マーガレット・サッチャー~鉄の女の涙』)の封切と重なっていたような。わざとぶつけたんでしょうか。

冒頭に、クリスマスの買い物にシャーロックを連れて行って、彼が街頭のサンタクロースに「面白い殺人事件をよこせ!」と怒鳴ると言うエピソードがついてます。ジョン、大変だな……

事件の話が始まるのは、「警官にエスコートされて」彼らが帰宅した後。
221Bではサリー・バーニコットという大学生が待っていました。

彼女の親友である、美術科の学生・ピエトロ・ヴェヌチが、陶芸室で刺殺体で発見されます。第一発見者は彼のボーイフレンド、ベッポ・ロビート。

この二つのイタリア系の名前は、「六つのナポレオン」からの引用ですね(原作ではベッポの姓は不明ですが)。
原作では、二人とも「社員が命令に違反するとすぐ殺してしまうという例の政治的秘密結社マフィアの一員(延原謙訳)」。共謀して、イタリアの貴族・コロナ公爵の持っている「ボルジア家の黒真珠」を盗み出します。
また、サリーの苗字は、買ったナポレオン像を壊されてしまった開業医・バーニカット博士からとられています。

さて、同じ頃、ピエトロの友人や周りの学生、講師の家に強盗が侵入するという事件が頻発。
シャーロックは調査に乗り出します。ジョンに頼んで(ジョン曰く『命令して』)、シーズン1の3話に登場したモダンアートのギャラリー「ヒックマンズ」の学芸員と偽り、大学に潜入させます(ここ実写で見たかった!)

ジョンの対応をするのは講師のホレス・ハーカー。
原作での役どころは、ナポレオン像を買ったばかりに殺人事件に巻き込まれてしまう新聞記者なんですが、ちょっと面白いキャラクターなんです。


「なんとかこいつを物にしておかなければ。むろん夕刊の第一版はもう詳報をのせて発行されているに違いないけれど…ああ、私ゃいつだってこれなんだ!ドンカスターで観覧台がおちたのを覚えていますか?あのとき私はスタンドにいた唯一の新聞記者だったんです。しかも私ンとこの新聞が、その記事を出さなかった唯一の新聞なんです。私があんまり驚いたんで、記事を書いてなんかいられなかったんですよ。こんどだって自分の家の玄関さきで行われた殺人事件に、おくれを取りそうなんですからなあ」(延原謙訳)



と、調査にきたレストレードやホームズたちがまだいるのに記事を書き始めてしまうという、いわばホームズといい勝負の「仕事バカ」。
この熱心な記者をうまく利用して、ホームズは犯人をおびきだす仕掛けをします。それがシーズン2第3話の大きな「元ネタ」となっていますので、ハーカー氏にはそちらでまた触れることになると思います。
それにしても、取材したい大事件の「当事者」に二度もなってしまうなんて、記者として運がいいのか悪いのか…

さて、ジョンのブログに戻ります。
ハーカーから、ピエトロが6つのサッチャー像を作ったと聞き出すジョン。
かねてシャーロックは予想していましたが、強盗が入ったのは、いずれもこのサッチャー像を買った人の家。
この時点で、残った像は二つ。シャーロックとジョンは、それぞれの住所で犯人を待ち伏せることに。
ジョンのほうに犯人が現れます。携帯で連絡をとったシャーロックと合流して、見事犯人をとり押さえます。

犯人はベッポで、サッチャー像の中には凶器のナイフを隠していました。
原作の彼がナポレオン像に隠したのは、「ボルジア家の黒真珠」。
証拠品と盗品。追い詰められた状況で犯人が「隠したいもの」の違いは、時代を反映しているのかもしれません。
というのも、「六つのナポレオン」でもベッポはピエトロを刺しますが、現場にナイフが落ちているんですね。結局これはピエトロ本人のものだったようですが、警察は犯人が遺棄したものである可能性も一応考えています。現場に凶器を遺棄なんて、DNA鑑定などがなかった時代ならではの無防備さ、ではないでしょうか。
(もっとも現代版ではベッポはナイフにイニシャルを書いていますし、刃傷沙汰に慣れたマフィアではなく学生、という違いもありますけど)

探偵側も、今は携帯があるから2箇所で同時に待ち伏せ、有事の場合すぐに合流、ということができますが、原作では同じ場所にホームズ、ワトスン、レストレードの3人が張り込んでいました。
こうして見ると、捜査の効率もずいぶんよくなったものですよね(まあ犯罪もですけど)。
人数が少なくてよくなった分、原作ではずいぶん活躍していたはずのレストレードが登場しなくて寂しいです。
グラナダ版では3人での張り込み、妙に楽しげだったんですよね。ワトスンがレストレードに飴を勧めて、ホームズに「ピクニックじゃないんだよ!」と怒られたりして。

もうひとつ残念なのは、現代版ではベッポが自ら像を壊してしまったので、ホームズが鞭をふるって像を破壊し、
紳士諸君!ボルジア家の有名なる黒真珠をご紹介申しあげます!」(延原謙訳)と高らかに宣言する名場面がなくなってしまったこと!せっかく初登場の時にあれだけ楽しそうに打ちまくってた鞭、ぜひ活用して欲しかった!シーズン2にはもう1人鞭の達人が出てくるので、キャラがかぶるからでしょうか…

もっとも、シャーロックは「乗馬鞭」と言ってましたね。ホームズが像を壊すのに使ったのは「鉛の入った、お気に入りの狩猟鞭」でした。原作では「赤髪連盟」「白銀号事件」などの危険な状況で「狩猟鞭」が武器として使われているのですが、乗馬鞭より大きくて重そう。石膏像を壊すのに向いているかもしれません。

狩猟鞭の画像検索結果(Google)

乗馬鞭の画像検索結果(Google)


アルミの松葉杖事件

待望の「語られざる事件」からのラインナップですね!
「マスグレーヴ家の儀式」に、事件名だけちょこっと出てきます。

ワトスンに部屋の整頓をしようと言われたホームズ、しぶしぶ寝室に入っていきますが、逆に青年時代の記録をひっぱり出してきます。

「このなかには事件がうんとあるんだぜ」彼はいたずらっ児の目で私を見ながら言った。
(中略)
「みんな成功した事件ばかりというわけじゃないよ。しかし中にはちょっと面白いものもある。こいつはタルトン殺人事件の記録、それからヴァンペリという酒屋の事件、ロシアの老婆事件、アルミニウムの松葉杖事件、それから蟹足のリコレッティとその憎むべき事件とね。(後略・延原謙訳)」


さて、ジョンのブログに戻りましょう。
ストランド街(劇場がたくさんあることで有名らしい)で観劇することになったシャーロック。

って、「名探偵コナン」を思わせる(唐突な)始まり方ですが、そもそもどうして行くことになったんでしょう…
コナン流を通すなら、劇場に向かいながらジョンが「雑誌の懸賞に当たるなんて僕もついてるよなあ」とチケットを眺めるオープニングがいいんじゃないかと思いますが(余計なお世話)、そのジョンはデート中につき不在(ちなみにうまくいったそうです)。この事件は、シャーロックからジョンへのボイスメールという形で綴られます。

ホームズの一人称で語られる事件、といえば「白面の兵士」と「ライオンのたてがみ」。
現代版では、シャーロックのウェブサイトで「緑のはしご事件」が読めますね。
緑のはしご事件はいかにもシャーロックらしく、物語というより「記録」という印象でしたが、今回はジョンに向かって話していますので、ちょっと趣が違います。

原作では、この事件は二人が出会う前に起こっていますので、ワトスン=ジョンがいないのは原作に沿っているといえます。
「マスグレーヴ家の儀式」や「グロリア・スコット号」も、ホームズが昔の話をワトスンに語って聞かせる、というスタイルですが、「バスカヴィル家の犬」でワトスンがホームズに書き送った、事件の経過を報告する手紙にも似ています。そういえば、「バスカヴィル~」はモーティマー医師の「杖」をめぐるホームズ&ワトスンの推理合戦で始まりますよね。
(もっともこちらは『松葉杖(crutch)』ではなく『ステッキ(stick)』ですが)

シャーロックが見た劇のタイトルは"Terror by Night"。「夜の恐怖」という感じでしょうか?
ミステリ劇らしいですが、この舞台上で実際に殺人が起こります。
内容をあまり詳しく述べると役名と実名が入り混じってややこしいので、手っ取り早く関係図をごらんください。
名前をクリックすると、青山剛昌先生の挿絵が見えるかもしれません(←うそです)。
人物相関図
…ここで告白します。私はホームズ好きではありますが、ミステリ全般に詳しいわけでは全然ないので、このブログの本分である「元ネタ検索」にはたと行き詰ってしまいました。

この事件、「元ネタ」があるとしたら、おそらく「キャラクター名」です。
シドニー・パジェットはいいんですよ、ホームズ関係だから!
しかし、正直言って他が全っ然わかりません。唯一、「ヘイスティングス」はポアロかな、と思いましたが…(それと、chapletteという姓で『四つの署名』のアグラの大秘宝にあった "chaplet"を思い出しましたが、たぶん関係ないですよね)

この事件や登場キャラクター名の由来がお分かりになる方がいらっしゃったら、コメント欄などでご教示いただければありがたいです。真実はいつもひとつ!

追記(2012/5/9)
劇中劇のタイトルについて、RM様がかなり有力と思われる情報をくださっています!
コメント欄をごらんください。


追記2(2015/3/7)
友人が教えてくれました。
らばQ「演劇で小道具のナイフが本物にすりかえられ、本物の自殺シーンに」

とてもよく似た事件です。最近ツイッターで話題になっているとのことですが、2008年の事件ですね。関係はあるのでしょうか。

≪PREVNEXT≫
プロフィール
Author:ナツミ


シャーロック・ホームズが好きです。どちらかというとワトスン君がより好きです。

エイプリルフール記事を片付けました。

例年、背景画像を変えて違うサイトに擬態したり、ブログ名を変えたりと派手派手なネタが多かったのですが、すっかり過疎った状態で地味にひとつ記事を追加しただけの今年、多くの人の心にひっかき傷を残すことになろうとは……(追記参照)
マジすみませんでした……

ネットを見渡して思ったんですが、ウェブサイトがエイプリルフールに全力でウソをつく!という風習(?)自体が古びつつあるのかもしれませんね。
私は好きなんでやりたいですけど。

メールはこちらへ

カテゴリ
最新記事
最新コメント
Twitter
月別アーカイブ
索引
このブログで考察した「元ネタ」を、ドラマの時系列に沿って探すための索引サイトです。 順次更新致します。 「21世紀探偵・ブリキの文書箱」
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
blog mura